知っておきたい金融商品知識 第77回 ~地球温暖化対策について-省エネ法、温対法、GX推進法(7)省エネ法輸送事業者規制等~
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地球温暖化対策について-省エネ法、温対法、GX推進法(7)
省エネ法輸送事業者規制等
近時、平均気温の上昇や異常気象など憂慮すべき自然現象が頻発しており、その原因と言われる炭素ガスなどによる地球温暖化への「国際社会全体での対応」が強く求められている。さまざまな対策が講じられていたり、計画されていたりしているが、多くの規制や基準があり、整理しきれないのが実情ではないだろうか。本連載ではこれらをできるだけ整理しつつ、日本の企業としてどのように対処すべきかを考察しており、現在、温暖化対策に関する日本の法制度である省エネ法、温対法、GX推進法のうち省エネ法を概観している。
なお、具体的な検討や適用にあたっては、当該分野に習熟した弁護士等の専門家と相談する必要がある。参考文献等については本文末に掲示し、本文中では略記(氏名、発表年等)したい(項番は前回に続けます)。
6.省エネ法、温対法、GX推進法
(2)省エネ法
省エネ法(エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律)は、一定規模以上の特定事業者等に、エネルギーの使用状況等についての定期的報告と省エネ・非化石転換等に関する取組の見直しや計画の策定等を義務づけるもので、前回まで工場や事務所等の事業場の設置者、荷主向けの省エネ規制について見てきた。今回は、輸送事業者に対する規制を概観しよう。
ト.輸送事業者向け制度
省エネ法では、国土交通省が所管する輸送事業者についてもエネルギーの使用の合理化に係る措置を定めている。
なお、工場等の事業者や荷主向けと同様に、モーダルシフト等の複数事業者による省エネ取組を評価するための「貨客輸送連携省エネルギー計画の認定制度」や、グループ会社のグループ一体としての省エネ取組を評価するための「認定管理統括貨客輸送事業者の認定制度」が用意されている。
a.対象となる輸送事業者
貨物又は旅客の輸送区分(船舶は内航海運)ごとの輸送能力が図表1の基準以上の輸送事業者が、「特定輸送事業者」としてエネルギー使用合理化の目標達成のための中長期(3~5年)的な計画とエネルギー使用状況等の定期報告義務がある。
(図表1)特定輸送事業者とされる基準

(国土交通省ホームページより)
なお、直近過去2年度以上連続で「5年間平均エネルギー消費原単位を年1%以上低減」を達成している優良事業者は、中長期計画の提出が免除される(翌年度以降、最後に提出した中長期計画の計画期間内(5年上限))。
2025年3月の統計によると、特定輸送事業者は、貨物・旅客合わせて、鉄道27、貨物事業用自動車315、貨物自家用自動車74、旅客バス83,旅客タクシー23、船舶44、航空2で、合計568社・団体になる。
b.具体的な規制内容
荷主に対しては、工場等の事業者に対する省エネ評価軸(本連載第73・74回参照)と同様、以下の規制がある。
・エネルギー使用合理化
特定荷主等(本連載前回参照)と同様、エネルギー使用量およびエネルギー消費原単位または電気需要最適化評価原単位を計算し、エネルギー消費原単位の年平均1%以上の改善努力が課され、CO2排出量などとともに年1回の定期報告が求められる。
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分母の輸送量は、貨物は輸送トン・km、旅客は輸送距離(km)、航空は有償トン・kmである。
電気需要最適化評価原単位は、電気需要最適化を踏まえたエネルギー消費原単位であり、上記の式の分子のうち系統電力使用に関しては需給状況に応じた「電気需要最適化係数」(再エネ余剰時3.60 GJ/千kWh、需給ひっ迫時12.2 GJ/千kWh、その他9.40 GJ/千kWhの3段階で、時間帯別またはその平均の月別)で(原油換算)エネルギー消費量にするものだ(本連載第74回参照)。
・非化石エネルギーへの転換
各特定輸送事業者は非化石目標を設定する。省エネ法の告示で定める輸送区分ごとの目標目安は図表2の通り。なお、非化石エネルギーを使用する輸送機器の技術開発の見通しが定かでない輸送モード(大型トラック、船舶)については、「定性的」な目標として省エネ法の告示で設定される(今後の技術開発動向や新たな政府目標等の策定等を見据え、2030年度までに定量的な目標目安を検討予定)。
(図表2)特定輸送事業者における非化石目標

(国土交通省ホームページより)
・電気需要の最適化
荷主向けの制度と同様に、輸送事業者の電気を使用した貨物輸送について、再エネ出力制御時や電気の需給逼迫時(広域エリアの予備率5%未満)に応じて、系統電気を使用した貨物輸送の時間変更やEV、PHEV 等非化石エネルギー自動車の充電時間の変更等の取組について報告することができる(任意)。
c.省エネ関連の補助制度
以下のような補助制度がある。
・環境配慮型先進トラック・バス導入加速事業(国土交通省、経済産業省連携事業):ハイブリッド及び天然ガストラック・バス、低炭素型ディーゼルトラックの導入支援
・商用車等の電動化促進事業(同上)
・地域公共交通の脱炭素化移行促進事業(国土交通省)
・海事分野における脱炭素化促進事業(同上):LNG・メタノール燃料等脱炭素化推進システム等の実用化・導入や船体及び舶用品の生産の高度化等による脱炭素化への支援
・運輸部門におけるエネルギー使用合理化・非化石エネルギー転換推進事業費補助金:新技術活用によるサプライチェーン全体輸送効率化・非化石エネルギー転換推進事業、トラック輸送における更なる省エネルギー化推進事業、内航船革新的運航効率化・非化石エネルギー転換推進事業
チ.建築物省エネ法
国土交通省が所管する省エネ対策関連法としては、「建築物のエネルギー消費性能の向上等に関する法律」(建築物省エネ法)および建築基準法の一部もある。これは、エネルギー消費の約3割を占める建築物分野での省エネ対策を加速するために、2050年に住宅・建築物のストック平均でZEH・ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス/ビル)水準の省エネルギー性能が確保されることや、2030年度以降新築される住宅・建築物についてZEH・ZEB水準の省エネルギー性能を確保することなどを目指すことが定められている。
具体的には、窓などの採光確保、断熱機能、高効率熱源設備の設置、太陽光発電等の再エネ利用設備の導入、吸収源対策としての木材利用拡大などを義務付けるもので、一定の基準については2025年から義務化されている。
(参考文献)
2025年5月「令和7年度 省エネ法説明会~運輸部門の現況と省エネ法の概要~」(国土交通省総合政策局環境政策課)
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/content/001611576.pdf
国土交通省ホームページ・省エネ法(輸送)
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/environment/sosei_environment_tk_000002.html
国土交通省ホームページ・改正建築物省エネ法・建築基準法等に関する解説資料とQ&A
https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/build/r4kaisei_document.html
◇客員フェロー 福島良治