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知っておきたい金融商品知識 第16回 ~金融商品の法令上の内部統制等(2)~
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金融商品の法令上の内部統制等(2)

前回は会社法における内部統制システムにおいて金融商品にどのように向き合うべきかを考察した。今回は、金融商品取引法における金融商品の内部統制等について見ていこう(項番は前回に続けます)。
(本文における意見は個人的なものであり、法令・ガイドライン・基準等の解釈や計理処理例を含め、それらの具体的適用の可否については関係する監査法人、公認会計士等にご相談のうえ自己責任・自己判断でご対応ください。)

2.金融商品取引法および企業会計における内部統制の充実と評価の取組み

金融商品取引法でも、上場企業等は、財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するために必要な体制について評価した報告書(内部統制報告書)を有価証券報告書とあわせて当局に提出し(同法24条の4の4)、かつ特別の利害関係のない公認会計士または監査法人の監査証明を受けること(同法193条の2第2項)とされている。そして、企業会計において、この財務報告に係る内部統制の評価および監査に関する具体的基準(以下、内部統制基準)が設定されている(「財務報告に係る内部統制の評価及び監査の基準」(以下、基準)、「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」(以下、実施基準)2007年2月、2019年12月改訂。財務計算に関する書類その他の情報の適正性を確保するための体制に関する内閣府令1条4項)。
この制度制定の背景には、米国で企業や監査法人の不祥事が起こったため内部統制の重要性が認識され、COSO(トレッドウェイ委員会支援組織委員会、Committee of Sponsoring Organization of the Treadway Commission )の内部統制の基本的枠組みに関する報告書(1992年)から企業改革法(SOX法、2002年)制定までの動きがあったことや、わが国でも企業不祥事が頻発したことがあげられる。4大監査法人の1つが、粉飾決算事件に関与したとして金融庁から監査業務停止処分を受け、2007年に解散せざるをえなくなったことを記憶されている方も多いことだろう。
内部統制基準における内部統制の定義は、「基本的に、業務の有効性及び効率性、財務報告の信頼性、事業活動に関わる法令等の遵守並びに資産の保全の4つの目的が達成されているとの合理的な保証を得るために、業務に組み込まれ、組織内の全ての者によって遂行されるプロセスをいい、統制環境、リスクの評価と対応、統制活動、情報と伝達、モニタリング(監視活動)及びIT(情報技術)への対応の6つの基本的要素から構成される」とされている(基準Ⅰ-1)。そして、内部統制基準では、このうち「財務報告の信頼性」を確保するための内部統制の有効性について、経営者、取締役会、監査役等、内部監査等による評価・報告ならびに監査人(公認会計士等)による監査実施の方法・手続についての考え方が示されている。
デリバティブ取引のリスク管理に関しては、この内部統制基準が、金融商品会計基準を補完する内容を示していると考えられる。なお、内部統制基準では、財務報告の重要な事項の虚偽記載に結びつきやすい業務の例として金融取引やデリバティブ取引をあげており、財務報告に係る内部統制の評価対象に含めることを検討するよう留意が促されている(実施基準Ⅱ-1-(2)②ロa)。
なお、コーポレートガバナンス全般に関する内部統制を求める会社法とは異なり、金融商品取引法上の内部統制は、あくまでも証券取引市場に参加する企業の財務報告の信頼性確保、すなわち証券市場の公益的要請から強行的に整備義務が課されたものである(神田秀樹ほか『Q&A金融商品取引法の解説』2007、324頁)。しかしながら、「取締役会は、内部統制の整備及び運用に係る基本方針を決定」し、「経営者の業務執行を監督することから、経営者による内部統制の整備及び運用に対しても監督責任を有している」(基準、実施基準共にⅠ-4(2))ことから、内部統制基準を実効化することは会社法における内部統制にも有益なことと考えられる。

3.会社法における会計規則

会社法は、金商法上の有価証券報告書作成企業だけではなく会社全般を対象とするため金融商品の評価は取得原価が原則ではあるが、市場価格のある資産等(もちろんデリバテイブ取引も対象になる)は時価評価ができることとなっている(会社計算規則5条6項)。
なお、旧商法では、配当可能利益については時価評価益(税部分を除く)を控除した貸借対照表上の純資産を限度としていたが、会社法ではそのような制限はなくなり、時価評価益が未実現益であっても配当対象利益になっている。なお、ヘッジ会計による純資産の部の繰延ヘッジ損益が配当の対象ではないことはもちろんである。

4.税務

時価会計処理については、会計基準に沿った内容(ヘッジ会計の効果を含む)となっており、会計と税務の取扱いはほぼ同じといえる。法人税法は上場・非上場に関わらず適用されるため、デリバティブ取引の時価評価の損益相当分が課税所得に算入されることには留意すべきである(法人税法61条の5)。

◇客員フェロー 福島良治

知っておきたい金融商品知識 第17回 ~包括的中長期為替予約(いわゆるフラット為替)について(1)~