知っておきたい金融商品知識 第76回 ~地球温暖化対策について-省エネ法、温対法、GX推進法(6)省エネ法荷主規制~
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地球温暖化対策について-省エネ法、温対法、GX推進法(6)
省エネ法荷主規制
近時、平均気温の上昇や異常気象など憂慮すべき自然現象が頻発しており、その原因と言われる炭素ガスなどによる地球温暖化への「国際社会全体での対応」が強く求められている。さまざまな対策が講じられていたり、計画されていたりしているが、多くの規制や基準があり、整理しきれないのが実情ではないだろうか。本連載ではこれらをできるだけ整理しつつ、日本の企業としてどのように対処すべきかを考察しており、現在、温暖化対策に関する日本の法制度である省エネ法、温対法、GX推進法のうち省エネ法を概観している。
なお、具体的な検討や適用にあたっては、当該分野に習熟した弁護士等の専門家と相談する必要がある。参考文献等については本文末に掲示し、本文中では略記(氏名、発表年等)したい(項番は前回に続けます)。
6.省エネ法、温対法、GX推進法
(2)省エネ法
省エネ法(エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律)は、一定規模以上の特定事業者等に、エネルギーの使用状況等についての定期的報告と省エネ・非化石転換等に関する取組の見直しや計画の策定等を義務づけるもので、前回まで工場や事務所等の事業場の設置者(特定事業者)向けの省エネ規制について見てきた。今回は、荷主に対する規制を概観しよう。
へ.荷主向け制度
省エネ法では、工場や事業所等に加えて、輸送についてもエネルギーの使用の合理化に係る措置を定めている。このうち貨物分野においては、貨物輸送事業者だけではなく、直接エネルギーを使用する主体でない貨物輸送を発注する荷主に対しても、省エネルギー計画の策定、エネルギー使用量等の報告等の取り組みを求めている。これは、モーダルシフトによる鉄道や船舶の利用、共同輸配送等の取り組みが、荷主による主体的な関与があって初めて可能となるものであり、貨物輸送事業者と荷主との連携を促すことが省エネルギー対策を推進するうえで有効と判断されたためだということだ。荷主に関する制度の所管は、経産省になる。
なお、工場等の事業者向けと同様に、荷主間の物流拠点の共同化や共同輸配送を実施するなど複数の荷主で連携して省エネルギー取組を行っている場合に、省エネ量を荷主間で分配して報告することができる「荷主連携省エネルギー計画の認定制度」や、グループ企業の親会社等(認定管理統括事業者)が、グループの一体的な省エネ取組を統括管理する者として認定を受けた場合に子会社や関連会社等(管理関係事業者)も含めて定期報告等を行うことができる「認定管理統括荷主の認定制度」が用意されている。
a.対象となる荷主
国内における年間輸送量3,000万トン・km以上の「特定荷主」にはエネルギー使用状況等を報告させ、取組が不十分な場合には指導・助言や合理化計画の作成指示等が行われる。特定荷主はエネルギー使用を合理化しつつ、輸送効率改善・モーダルシフト等に関する中長期計画を作成し、エネルギー使用合理化や非化石エネルギー転換等についての定期報告も求められる。なお、荷主は貨物輸送の契約等により輸送事業者に輸送を指示する者であり、荷送り側、荷受け側のどちらか主導的な方になる。また、特定荷主に該当しない一般の荷主にも任意的努力が求められている。
特定荷主に該当するトン・kmのイメージとしては、東京-大阪間片道600kmを1日20台、1台当たり11tの荷物を積んで年間240日輸送させた場合、
600(km)×20(台)×11(t)×240(日)=3,168万トン・kmとなり、特定荷主に該当することになる。
2024年度の統計によると、特定荷主は、製造業570、卸・小売業116、その他50、合計736社になっており、1特定荷主あたりのエネルギー使用量は卸・小売業が多い。また、輸送モード別エネルギー使用量は、全体的にトラック輸送が70%を超え、船舶が20数%、ついで鉄道、航空機等になっている。
b.具体的な規制内容
荷主に対しては、工場等の事業者に対する省エネ評価軸(本連載第73・74回参照)と同様、以下の規制がある。
・エネルギー使用合理化
輸送エネルギー使用量および輸送エネルギー使用原単位を計算し、輸送エネルギー原単位の年平均1%以上の改善努力が課され、CO2排出量などとともに年1回の定期報告の対象に含まれる。

輸送エネルギー使用量の算定方法については、計算方法の複雑な順に「燃料法」、「燃費法」、「トンキロ法」の3つの方法が定められている(平成18年3月29日経済産業省告示第66号「貨物輸送事業者に行わせる貨物の輸送に係るエネルギーの使用量の算定の方法」))。分母の輸送エネルギー使用量と密接な関係を持つ値は、貨物輸送トン・km、貨物重量、売上高等であり、事業者向けの「エネルギー使用に関係する数値」(⽣産数量、売上⾼、建物床⾯積、⼊場者数、外来者数、ベッド数×稼働率等)に準じているものといえるだろう。直近過去2年度以上連続で「5年間平均エネルギー消費原単位を年1%以上低減」を達成している優良事業者は、中長期計画の提出が免除される(翌年度以降、最後に提出した中長期計画の計画期間内(5年上限))。
・非化石エネルギーへの転換
輸送に関する非化石エネルギー自動車(ハイブリッド自動車は対象外だが参考値として報告)の使用台数割合、充電インフラ整備の実施状況などが報告対象になる。いまのところ、8t 以下の商用車については、2030 年度の非化石エネルギー自動車使用割合を5%にすることが義務ではなく「目安」になっている。
・電気需要の最適化
輸送事業者の電気を使用した貨物輸送について、再エネ出力制御時や電気の需給逼迫時(広域エリアの予備率5%未満)に応じて、系統電気を使用した貨物輸送の時間変更やEV、PHEV 等非化石エネルギー自動車の充電時間の変更等の取組について報告することができる(任意)。
ところで、特定荷主は、自家用輸送車が対象になるのは理解できるが、輸送事業者ではないのにどうやってその非化石エネルギー自動車の台数や割合を把握するのか、また交渉力の強い荷主から圧力を受ける中小輸送事業者に対する非化石エネルギー自動車への転換に関する助成策はないのか等の疑問が生じる。
前者については、両者の輸送契約で「車両情報提供義務」を明文化するなどが行われている。後者については、経産省としても、荷主に対して、非化石エネルギー自動車での貨物輸送を発注することで生じる輸送事業者の非化石エネルギー導入費用の運賃等への反映について協議の要請がある場合には応じることとし、その上で、同費用を運賃等設定における考慮要素とするよう努めることとされている。ただし、これは努力義務に過ぎない。悪質な荷主に対しては、当局からの勧告や企業名の公表を行うことが省エネ法制度ではあるし、中小受託取引適正化法(取適法、旧下請法)や独占禁止法を適用で防止するということになり、実際にそういった制度の適用も求められるだろう。
また、輸送事業者におけるEV・FCV トラックの導入については、補助金(経産省・環境省)、物流脱炭素化促進事業(国交省)、自治体の上乗せ補助などの公的支援策が存在する。
(参考文献)
「省エネ法の手引き 荷主編-令和5年度改訂版-」(経済産業省資源エネルギー庁)
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/media/data/shoene_tebiki_02.pdf
省エネポータルサイト(経済産業省資源エネルギー庁ホームページ)
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/index.html
◇客員フェロー 福島良治
知っておきたい金融商品知識 第77回 ~地球温暖化対策について-省エネ法、温対法、GX推進法(7)省エネ法輸送事業者規制等~