知っておきたい金融商品知識 第75回 ~地球温暖化対策について-省エネ法、温対法、GX推進法(5)、EU CSRD修正~
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地球温暖化対策について-省エネ法、温対法、GX推進法(5)、
EU CSRD修正
近時、平均気温の上昇や異常気象など憂慮すべき自然現象が頻発しており、その原因と言われる炭素ガスなどによる地球温暖化への「国際社会全体での対応」が強く求められている。さまざまな対策が講じられていたり、計画されていたりしているが、多くの規制や基準があり、整理しきれないのが実情ではないだろうか。本連載ではこれらをできるだけ整理しつつ、日本の企業としてどのように対処すべきかを考察しており、現在、温暖化対策に関する日本の法制度である省エネ法、温対法、GX推進法のうち省エネ法を概観している。
なお、具体的な検討や適用にあたっては、当該分野に習熟した弁護士等の専門家と相談する必要がある。参考文献等については本文末に掲示し、本文中では略記(氏名、発表年等)したい(項番は前回に続けます)。
6.省エネ法、温対法、GX推進法
(2)省エネ法
省エネ法(エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律)は、一定規模以上の特定事業者等に、エネルギーの使用状況等についての定期的報告と省エネ・非化石転換等に関する取組の見直しや計画の策定等を義務づけるもので、前回まで対象となるエネルギー(イ)、事業者(ロ)、事業者の工場・事業場に対する規制(ハ)、規制の具体的な内容(評価軸と言われる)(ニ)を読み解いた。
ホ.省エネ法を推進する制度
エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換を推進するため、主要な規制以外にもさまざまな仕組みが設定されている。
a.産業トップランナー制度(ベンチマーク制度)
特定の業種・分野(前回見た5業種から自動車製造業を除き、加えて電力供給業や小売業、ホテル、大学、データセンターなどが対象になっている)について、当該業種等に属する特定事業者等が、中⻑期的に達成すべき省エネ基準も設定されている(ベンチマーク)。たとえば、高炉製鉄業のベンチマークとしては、高炉による鉄鋼業におけるエネルギー使用量を粗鋼量にて除した値を 0.531kl/t 以下にすることを目標に定められているなどだ(工場等におけるエネルギーの使用の合理化に関する事業者の判断の基準 別表5)。
省エネの状況が他社と⽐較して進んでいるか遅れているかを明確にし、進んでいる事業者を評価するとともに、遅れている事業者には更なる努⼒を促すため、各業界で全体の約1〜2割の事業者のみが満たす⽔準を事業者が⽬指すべき⽔準として設定している。
b.事業者クラス分け評価制度
特定事業者等から各地の経済産業局に提出された定期報告書等の内容に応じて、事業者をS(優良事業者)・A(更なる努力が期待される事業者)・B(停滞事業者)・C(注意を要する事業者)へクラス分けされ、Sクラスの事業者は、優良事業者として経済産業省のホームページで公表される。
クラス分けの概要は以下の図の通り。
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※1 努力目標:5年度間平均エネルギー消費原単位又は5年度間平均電気需用最適化評価原単位を年1%以上低減すること (省エネポータルサイト 経済産業省資源エネルギー庁ホームページより) |
令和6年度に報告書等が提出された11,872工場・事業場(公共団体を含む)のクラス分けの結果、Sクラス52.7%、Aクラス31.8%、Bクラス(Cクラスを含む)15.5%となっている。
c.その他
複数の事業者が連携して省エネ取組(連携省エネルギー措置)を⾏う場合に、省エネ法の定期報告書において連携による省エネ量を事業者間で分配して報告することができる「連携省エネルギー計画の認定制度」、「他の者のエネルギーの使⽤の合理化の推進に寄与すること」及び「我が国全体のエネルギーの使⽤の合理化に資すること」に該当する事業者が他の者と共同でエネルギー使⽤の合理化を実⾏する場合に個社が省エネ法の基準を満たさなくとも共同して満たす場合に評価される「共同省エネルギー事業」などがある。
〇追記
本連載ではEUのCSRD(Corporate Sustainability Reporting Directive:企業サステナビリティ報告指令)について第61回および62回で紹介したが、従前からこの規制は過度に詳細で複雑であり、この制度自体が持続不可能ではないか、EU企業の競争力を損なうのではないか、投資のEU離れを招くのではないかなどの批判が強かった。そこで、EUではCSRDを大幅に簡素化・合理化するオムニバス法案(持続可能性オムニバス・パッケージ)が、2025年12月欧州議会で承認された。
新たな基準では、2024会計年度から開始したEU域内企業の場合、原則として従業員1,000人超かつ純売上高4億5,000万ユーロ超の大企業(従来は従業員500人超かつ上場企業または純売上高5,000万ユーロ超)に限定されることに修正され、対象となる企業は当初案(5万社の見込み)から大幅に減少する(約1万社の見込み)。また、2025会計年度から上記以外の大会社等、2026会計年度から上場中小企業等に適用される予定だったが、それぞれ1年の延期となった。
日本企業等のEU域外企業も2028年会計年度から、EU内での純売上高が4億5,000万ユーロ超、かつEU域内子会社が大会社、またはEU域内支店の純売上高2億ユーロ超える場合(従来は、EU内での純売上高が1億5,000万ユーロ超、かつEU域内子会社が上場企業・大会社、またはEU域内支店の純売上高4,000万ユーロ超)に適用対象となるよう限定されることとなった。
また、CSRDの開示の具体的な要求事項を定めているESRS(European Sustainability Reporting Standards:欧州サステナビリティ報告基準)も、開示のための情報項目であるデータポイントのうち必須のものが70%削減されるなど大幅に簡素化された。
(参考文献)
「省エネ法の手引き 工場・事業場編-令和5年度改訂版-」(経済産業省資源エネルギー庁)
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/media/data/shoene_tebiki_01.pdf
工場等におけるエネルギーの使用の合理化に関する事業者の判断の基準
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/overview/laws/data/pdf_001.pdf
Commission welcomes political agreement on Omnibus I simplification package(欧州委員会:EC)
https://ec.europa.eu/commission/presscorner/detail/en/ip_25_2981
https://data.consilium.europa.eu/doc/document/ST-16702-2025-INIT/en/pdf
「EU、CSDDD・CSRDの適用対象や義務内容の大幅簡素化で合意」(日本貿易振興機構)
https://www.jetro.go.jp/biznews/2025/12/1873de464ec37cfb.html
◇客員フェロー 福島良治
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