知っておきたい金融商品知識 第74回 ~地球温暖化対策について-省エネ法、温対法、GX推進法(4)~
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地球温暖化対策について-省エネ法、温対法、GX推進法(4)
近時、平均気温の上昇や異常気象など憂慮すべき自然現象が頻発しており、その原因と言われる炭素ガスなどによる地球温暖化への「国際社会全体での対応」が強く求められている。さまざまな対策が講じられていたり、計画されていたりしているが、多くの規制や基準があり、整理しきれないのが実情ではないだろうか。本連載ではこれらをできるだけ整理しつつ、日本の企業としてどのように対処すべきかを考察しており、現在、温暖化対策に関する日本の法制度である省エネ法、温対法、GX推進法を概観している。
なお、具体的な検討や適用にあたっては、当該分野に習熟した弁護士等の専門家と相談する必要がある。参考文献等については本文末に掲示し、本文中では略記(氏名、発表年等)したい(項番は前回に続けます)。
6.省エネ法、温対法、GX推進法
(2)省エネ法
省エネ法(エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律)は、一定規模以上の特定事業者等に、エネルギーの使用状況等についての定期的報告と省エネ・非化石転換等に関する取組の見直しや計画の策定等を義務づけるもので、前回まで対象となるエネルギー(イ)、事業者(ロ)、事業者の工場・事業場に対する規制(ハ)、そして特定事業者が取り組むべき事項の「評価軸」(ニ)を読み解いている。
ニ.省エネの評価軸
年間エネルギー使⽤量1,500kℓ以上の「特定事業者」または「特定連鎖化事業者」(前々回参照)は、エネルギーの使⽤の合理化(a)、⾮化⽯エネルギーへの転換(b)、電気需要の最適化(c)を目標としなければならず、達成できないと中長期計画書の提出や定期報告が義務になり、改善命令が出たり、命令に従わない場合には罰則が科されるなど法的措置に繋がる。逆に優良事業者は公表されるというインセンティブ付けがある。前回はエネルギーの使⽤の合理化(a)について概観した。
b.⾮化⽯エネルギーへの転換
2050年カーボンニュートラル目標に向けて非化石エネルギーの導入拡大が必要であることから、特定事業者等は非化石エネルギーへの転換の目標に関する中長期計画の作成及び非化石エネルギーの使用状況等の定期報告を行うことが求められる。とくに5業種8分野に属する特定事業者等にはこの目標に関して定性及び2030年度における定量の目安(たとえば、外部調達電気の使⽤量が多い事業者に対して⾮化⽯エネルギーの割合を59%以上にすること、石炭を主燃料とする場合は2013年度比30%以上削減とするなど)が設定されている。5業種8分野とは、鉄鋼業(⾼炉・電炉)、セメント製造業、製紙業(洋紙・板紙)、⽯油化学業(⽯油化学系基礎製品製造業・ソーダ⼯業)、⾃動⾞製造業。その他、すべての事業者は、任意の指標に対する⽬標設定、計画、報告を⾏うことができるとされている。
⾮化⽯エネルギーの使⽤状況の計算方法は以下の通り。

分子に追加されるⅡは、Jクレジット等の⾮化⽯価値相当分のエネルギー使⽤量。Jクレジットとは、CO2等の排出削減量や適切な森林管理によるCO2の吸収量を「クレジット」として国が認証する制度で、これを売買することもできる。
分母・分子から除かれるⅢは、他社に供給する熱・電気を発⽣させるために使⽤した燃料の使⽤量。
分母のエネルギー使用量、分子⾮化⽯エネルギー使⽤量の両方に含まれる一定の非化石エネルギー(「重み付け非化石」電気)に関しては、1.2倍にカウントされる。1.2倍に重み付けできる非化石エネルギーとは、自家発太陽光やオンサイト/オフサイトPPAといったFIT/FIPによらない非化石電気を使用する場合である。PPA(Power Purchase Agreement:電力販売契約)のオンサイトは自社敷地内にPPA事業者に発電設備の設置、整備・保守点検を依頼するもので、オフサイトはPPA事業者の発電電気を小売電気事業者経由で購入するもの。需要家の直接投資や契約による追加的な非化石エネルギー利用努力を促すものだ。対象外になるFIT制度(Feed-in-Tariff)は再生可能エネルギーの固定価格買取制度であり、FIP制度(Feed-in-Premium)は市場連動型となるものだが、すでに国際的にも導入が進んでいる電源であり、対象外となったのは需要家の新たな投資や追加的努力へのインセンティブになりにくいと考えられたためである(なお、テクニカルなことだが、分母・分子のエネルギー使用量は電気使用量に一定の換算係数をかけて計算(火力発電所の熱効率をもとに算定:3.6または8.64)されるが、⾮化⽯割合を指標とするときには8.64が適用され、重み付け非化石にはこれに1.2をかけることになる)。
また、電力会社の再エネ100%メニュー、再エネ指定の非化石証書やJクレジット、グリーン電力証書は1.2倍の重み付けにはならないが、分子のⅡとして勘案される。
c.電気需要の最適化
地球温暖化対策として重要な非化石エネルギー発電等においては太陽光等の供給量の変動が大きいという課題があり、省エネ法ではこれを利用する事業者側の電気の需要を最適化することが求められる。
事業者における電気需要の最適化に関する取組は、DR(Demand Response)実績(DR実施⽇数)及び電気需要最適化評価原単位により評価される。
・DR実績(DR実施⽇数)
主に3種類のDRがあるが、それらは区別せず、DRを実施した「⽇数」をカウントする。特定事業者等にDRに関心を持ってもらう観点からできるだけ簡便な報告としたということ。ただし、需給逼迫時の上げDR(需要増加)や再エネ余剰時の下げDR(需要抑制)は、需給調整に逆効果なのでカウント不可である。
DR実施日数のカウントイメージは下図の通り。
(図表)DR実施日数のカウントイメージ

(資源エネルギー庁「省エネ法の手引き」)
図中の電力の「需給調整市場」とは電力の周波数を維持し安定供給を実現するために必要な調整力を確保するための市場で、2021年4月よりエリアを越えた広域的な需給調整市場が開設されている。買い手は一般送配電事業者、売り手は発電機などのリソースを保持する発電事業者などであり、一般企業や家庭もアグリゲーターとよばれる中間業者を通じて需給調整市場に参加が可能(インセンティブ型DR)。取引会員数は、2025年3月末で89社、そのうち応札実績のある取引会員は34社となっている(一般社団法人電力需給調整力取引所「2024年度の取引実績について」)。また、電力の供給エリアが広域的に連携し、地域間の電力供給を調整するための基準として広域予備率を5%とし、これを下回る場合、電力需給ひっ迫警報が発令される可能性がある。
・電気需要最適化評価原単位
電力需給の厳しい時間帯に系統電気(電力供給の全体システム)の使用から燃料又は熱の使用への転換することや出力制御時間帯に蓄電池等を活用することなど電気の需要の最適化に関して取り組むことが求められている。そのための評価軸として電気需要最適化評価原単位を算出することになっている。これは、前回紹介したエネルギー使用量全体のエネルギー消費原単位に準じ、主に電気使用にスポットを当てた原単位である。
「年間エネルギー使用量」を「エネルギー使用に関係する数値」(⽣産数量、売上⾼、建物床⾯積、⼊場者数、外来者数、ベッド数×稼働率等)で割って求める。
分子の「年間エネルギー使用量」は、年間の燃料、熱、電気の使用量(A)から「外部に販売した副⽣エネルギー量」(B)および「外部から購⼊した未利⽤熱量」(B´)を差し引いた値であるが、Aの⾮化⽯燃料の部分(A´)に対しては補正係数0.8を乗じて合算できる。ここまではエネルギー消費原単位と同じ計算方法だが、分子Aのうち系統電力使用に関しては需給状況に応じた「電気需要最適化係数」(再エネ余剰時3.60 GJ/千kWh、需給ひっ迫時12.2 GJ/千kWh、その他9.40 GJ/千kWhの3段階で、時間帯別またはその平均の月別)で(原油換算)エネルギー使用量にする。
そして、エネルギー消費原単位と同様に、複数の事業所・工場を合わせた事業者全体の5年間平均が99%以下になること、すなわち事業者全体の電気需要最適化評価原単位についても5年間平均変化率1%以上の低減を目標にするということだ。
(参考文献)
「省エネ法の手引き 工場・事業場編-令和5年度改訂版-」(経済産業省資源エネルギー庁)
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/media/data/shoene_tebiki_01.pdf
⼯場等における⾮化⽯エネルギーへの転換に関する事業者の判断の基準
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/overview/laws/data/pdf_06.pdf
工場等における電気の需要の最適化に資する措置に関する事業者の指針
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/overview/laws/data/pdf_002.pdf
◇客員フェロー 福島良治
知っておきたい金融商品知識 第75回 ~地球温暖化対策について-省エネ法、温対法、GX推進法(5)、EU CSRD修正~