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日刊工業新聞連載『調達コストのリスク管理(3)「原材料→部品→製品」の流れ』
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自然災害で「変化」、予算上振れ

【2つの要因】

前回のコラムでは手始めとして、予算の修正や未達が生じた際の煩わしさとともに、それらを引き起こす調達コストのリスクに関する定義(調達コストのリスク―「実績単価―計画単価〈予算〉」)について述べた。今回はその調達コストのリスクの発生要因について深掘りする。定義にのっとって考えるとリスクとは「実績と計画の差異」なので真っ先に「そもそも最初に計画した予算が的外れ」が頭に思い浮かぶが、この点についてはここでは横に置いておく(後日本コラムで触れる)。なぜ調達コストが計画より上振れするのか。調達方法(長期契約/スポット調達)やそれにひもづく値決めのルール(固定/指標連動/時価など)で細かいメカニズムは変わるものの、本質的には以下の二つの要因に集約される。

【需給バランスと供給者のコスト構造】

一つ目は「当該調達品の需給バランスの変化」である。法規制の変更による需要の極端な増加や、自然災害による操業停止に伴う供給減少・途絶などがこれにあたる。台風19号の影響で東北地方を中心に広範囲で工場が操業停止を強いられ、一部調達品ではすでに価格上昇の懸念が強まっている。まさに調達コストのリスクの顕在化である。二つ目は「当該調達品の供給者(売り手)のコスト構造の変化」。例えばアルミ製品であれば原材料のアルミ地金価格や割増金、加工賃や配送費、光熱費など、これら供給者のコストに変化が生じる場合である。供給者は価格交渉・改訂(いわゆる“価格転嫁”)を通じ自社の利益を守ろうとするため、買い手側の調達コストに影響が生じる場合がある。お決まりの交渉材料としては原材料コストや為替レートが通例だが、昨今では物流コストも俎上(そじょう)に載るケースが多い。

【2つの入れ子構造】

契約更新時や新規調達時に上記二つのどちらか(もしくは両方)が起これば調達コストは前回調達時から変化し、その変化が想定や予算を上回るとそれが調達コストのリスクとなる。逆に言えば上記二つの要因に変化がなければ、調達コストのリスクが顕在化する可能性は限りなく低い(よほど的外れな計画を立てない限り)。

ここで勘の鋭い方ならお気づきだろう。二つ目の「当該調達品の供給者のコスト構造の変化」の中には当該調達品の「“原材料の”需給バランスの変化」と「“原材料の”供給者のコスト構造の変化」が隠れているのではないか、と。「原材料→部品→製品」と川上から川下(当該調達品)に至る過程の二つの入れ子構造が調達コストのリスクと密接に関わってくるのである。(隔週木曜日に掲載)

◇マーケット・リスク・アドバイザリー代表 大崎将行

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