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日刊工業新聞連載『調達コストのリスク管理(19)“事前の値決め”にバリエーション』
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  • 大崎将行

調達形態の違いによる”事前の値決め”

調達コストの想定リスクの低減を目的とした将来調達分の“事前の値決め”については対象となる調達品の調達形態が供給者(売手)との売買契約締結後、速やかに調達品の受渡が行われる「スポット調達(当用買い)」か、契約締結後一定期間先の受渡となる「計画調達(長期契約)」かで、取り得る手法が異なる。

【本来の趣旨】

スポット調達における事前の値決めについては、「計画調達量を前倒しでスポット調達(在庫化)しておき、必要なタイミングで取崩す」という手法一択である。スポット調達した時点で調達価格が確定されるので、結果として将来調達分を事前に値決めし、調達コストの想定リスクの低減を行ったことになる。ただ、スポット調達(当用買い)自体が必要な時に必要なだけ賄うという、どちらかと言えば調達数量(在庫)のリスク管理を目的として採用される調達形態だけに、計画調達量の範囲内とはいえ、前倒しで調達する行為そのものが本来の趣旨から外れてしまう可能性がある。その点で、この調達形態が事前の値決めと相性が良いとは言い難い。

【受渡時に確定】

計画調達については、値決めのタイミングと値決めの範囲の違いで、三つの形態に分かれる。一つ目は“受渡時値決め方式”である。契約時に取引数量はおおむね確定するが、取引価格自体は受渡時点の原材料や部材、調達品そのものの需給バランス、供給者(売手)のコスト構造を元に値決めされる。受渡時点まで値決めが行われないという点で調達コストの想定リスクの低減にはつながらない。

二つ目は“契約時値決め方式”である。こちらは一転し、受渡時の調達品の需給バランス等を予め勘案して、契約時に取引数量と併せて取引価格も確定する。先物・先渡市場が整備された調達品であれば、それら市場で取引されている価格も参照しながら値決めを行う。この方式はまさに事前の値決め、そのものであり、調達コストの想定リスクを低減させる効果を持つ。

【契約時に一部】

三つ目は“契約時部分値決め方式”である。取引価格において売手のコスト構造の中でも需給バランスの影響を受けやすい材料費に相当する部分については受渡時、それ以外の部分(売手のマージンも含む)については契約時に値決めする。(詳細については次回説明するが)調達コストの想定リスクの一定の低減効果を期待できるだけでなく、材料費相当の値決めの算式を工夫することで、事前の値決めのバリエーションが大きく広がる。(隔週木曜日に掲載)

◇マーケット・リスク・アドバイザリー代表 大崎将行

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