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日刊工業新聞連載『調達コストのリスク管理(18)“事前の値決め”』
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  • 大崎将行

“事前の値決め”

計画調達、工夫の余地大きく

【最も頭使う部分】

調達コストの想定リスクの低減は結局のところ、「計画調達量における単価未確定部分の割合を減らすこと」である。換言すれば、将来調達分の一定程度の単価を“事前に値決め”していく行為とも表現できる。

事前の値決めに関する論点は幾つか存在し、最も重要な点は「計画調達量のうち“どれだけの数量”を事前に値決めするか」で、これについては「許容コスト」を勘案した「対応上限リスク」との兼ね合いや現時点の市場価格を元に答えを出していくことになる。

次に重要な論点は「“どうやって”事前に値決めするか」だ。どうやってと言われると、値決めの仕方に何種類もバリエーションがあるのかと不思議に思われるかもしれないが、事前ゆえに“事前の値決め”特有の奥深さがあり、調達担当者として最も頭を使う部分である。

【2つのパターン】

通常、調達活動においては目的に応じ、「計画調達」と「スポット調達」を使い分ける。計画調達とは、ターム取引や長期契約とも呼ばれ、数カ月先から数年先までの将来の調達分に関し、事前に供給者(売主)との間で売買契約を締結する取引であり、主に安定調達を目的として用いられる。この際、取引数量は契約締結時点でおおむね確定するが、取引価格については契約締結時点で確定するパターンと、将来の受渡時点で確定するパターンの大きく2つに分かれる。

一方、スポット調達とはいわゆる短期契約であり、売買契約成立後、すみやかに調達品の受渡が行われる。こちらは取引数量も取引価格も契約締結時点で確定する。

必要な時に必要な分だけ調達する当用買いや、計画調達だけでは必要量が賄えない際の補填を目的として用いられる。

【スポット限定的】

将来調達分の事前の値決めを検討していく上で自分の取扱う調達品が、この2つのどちらの取引形態に属しているかは非常に重要なポイントとなる。仮に前者の計画調達で調達している場合、幸いにも事前の値決めの選択肢は割と多く工夫の余地も大きい。

一方、後者のスポット調達で調達している場合、その選択肢は非常に限定的で悩ましい。調達活動において調達コストのリスク管理の優先順位を上位に掲げるならば、事前の値決めの選択肢を広げるという意味で調達形態の一考も有り得る話となる。(隔週木曜日に掲載)

◇マーケット・リスク・アドバイザリー代表 大崎将行

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