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日刊工業新聞連載『調達コストのリスク管理(20)契約時部分値決め』
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  • 大崎将行

契約時部分値決め

利点多くノウハウ生かせる

【リスク低減効果】

計画調達(長期契約)の値決めの3形態のうち、“契約時値決め方式”“契約時部分値決め方式”の2形態については、調達コストの想定リスクの低減効果を期待できる。特に契約時部分値決め方式は“フォーミュラ―方式”とも呼ばれ、日常の取引でも広く用いられている。改めて調達コストのリスク管理の視点でおさらいする。

契約時部分値決め方式とは、取引価格における原材料価格相当部分は将来の“受渡時”に、それ以外の部分については「α円」として“契約時”に前もって値決めする方式だ。この時、原材料価格相当部分については、石油製品であれば原油やナフサの貿易統計価格やブレント(BRENT)、ドバイ(Dubai)といった国際商品市場価格、非鉄製品であれば銅やアルミニウムのLME価格といった透明性の高い指標(市場価格)に取引価格を連動させることが一般的だ。買い手からしてみれば、原材料価格相当部分以外は契約時に「α円」として値決めできるため、取引価格の一部分については調達コストの想定リスクの低減効果を享受できる。この原材料価格相当部分以外を「α円」で値決めすることの本質的な意味は、調達コストのリスク要因である「売り手のコスト構造の変化」と「原材料/素材・部品/調達品そのものの需給バランスの変化」のうち、「原材料の需給バランスの変化」以外の全てのリスク要因を契約時点で取り除いていることに他ならない。

【ポイント明確化】

この方式は、調達コストの想定リスクの低減効果以外にもメリットをもたらす。一つ目は、取引価格の一部を切りだして市場価格に連動させるため、取引価格の透明性が増す。取引価格のブラックボックス化を軽減させる効果がある。二つ目は算式に基づき取引価格が自動的に決まるので余計な都度交渉が減る。人手不足、働き方改革が叫ばれている今日では非常に有り難い。三つ目は、売り手との価格交渉において注力すべきポイントが「α円」の引き下げに明確化される。

【論点を別々に】

自助努力ではどうにもならない原材料価格の変動と、自助努力のたまものである「α円」の引き下げという論点を別々に扱うことができる。「α円」の引き下げという論点であれば、集中購買や入札といった(調達コストのリスクの低減ではない)なじみの調達コストの低減のノウハウを最大限に応用することも可能であろう。このようにさまざまな利点のある契約時部分値決め方式だが、さらにもう一工夫することで、本題である調達コストのリスク管理がさらに高度化する。(隔週木曜日に掲載)

◇マーケット・リスク・アドバイザリー代表 大崎将行

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