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調達コストのリスク管理(9)調達コストのリスクの把握
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  • Web掲載
  • 日刊工業新聞
  • 大崎将行

“範囲”の絞り込みカギ

【彼を知ること】

前々回のコラムでリスク管理における“彼と己を知ること”の重要性を説明し、都合2回にわたって“己を知る”ことについて述べてきた。今回からは“彼を知ること”について説明していく。

彼を知ることとは「調達コストのリスクの把握」であり、具体的には調達コストのリスクを引き起こす「リスク要因(潜在リスク)の洗い出し」と、そのリスク要因が顕在化した際の「想定(計画)調達コストからの乖離(かいり)幅(リスク)の見積もり」の二つに分かれる。

具体的な数値としてリスクを見積もり、「調達コストのリスク管理の目的」や「許容コスト」と照らし合わせた時に初めて、打ち手として「いつ/何を/どの程度」行えば良いのかが明らかになる。

【愚直な作業】

以前、調達コストは上流側の各工程の「供給者のコスト構造」と「需給バランス」の変化の二つの影響を累積的に受ける、と本コラムで述べた(“二つの入れ子構造”とも表現した)。よって真正面から調達コストのリスクを把握しようとすると、各工程別に「供給者のコスト構造」と「需給バランス」を変化させるリスク要因をそれぞれ洗い出し、そのリスク要因が顕在化した際の想定(計画)調達コストからの乖離幅を愚直に見積もる作業となる。

こう書かれると、把握すべきリスクの範囲が多すぎて「自分には手に負えない」と感じる読者もいるだろう。専門家である我々ですら、サポートしている顧客の調達品によっては手を焼いてしまう時がある。

【避けて通れない】

とはいいながらも、個々に調達品を見ていくと、意外と把握すべきリスクの範囲が限定されていくケースも多い。例えば、調達品が“原油”や“非鉄”といった上流側の原材料の場合、上流側の調達品であるがゆえに、「その原材料の生産者のコスト構造」と「その原材料の需給バランス」のリスクの把握で十分だし、たとえ上流側でないとしても、値決めの形態が市場価格に連動するフォーミュラ方式であれば、その市場価格に影響を及ぼす「需給バランス」のリスクの把握に注力すれば良い。

また「供給者のコスト構造」の変化に伴う価格転嫁の影響が事前に想定(計画)に織り込める、もしくは交渉によって常識的な範囲に収まると仮定できるならば、「供給者のコスト構造」の変化に伴うリスクを無視し、各工程の「需給バランス」のリスクのみにフォーカスすることも可能だ。

調達コストのリスクの把握は、リスク管理上避けて通れないだけに、うまく範囲を絞り込みながらリスクを把握していきたい。(隔週木曜日に掲載)

◇マーケット・リスク・アドバイザリー代表 大崎将行

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調達コストのリスク管理(10)リスク要因、工程別に洗い出す