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日刊工業新聞連載『調達コストのリスク管理(13)想定コストの見積もり方』
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  • 大崎将行

想定コストの見積もり方

期間ごとに中立的試算を

【メインシナリオ】

前回は「調達コストのリスクの見積もり」の概要とその構成要素である「想定コスト」と「想定乖離(かいり)幅」のイメージを紹介した。今回はその構成要素の一つである想定コストの見積もり方について説明していく。

想定コストとは、現時点であらかじめ区切った期間(―半年/―1年/1年―)ごとに想定される最も確度の高い調達コストで、通常「メインシナリオ」とも呼ばれる。事業部門の計画利益や調達部門の予算の達成を実現しようとした場合、その予算策定の際のベンチマークとなる数値のため、この想定コストの見積もりについては合理的で中立的な試算が求められる。自分たちの都合による「思惑」「願望」をこの想定コストに入れ込むと、調達コストのリスク評価自体が歪み、リスク管理自体の精度が揺らぐ。

【確度高く】

期間ごとの想定コストを試算する際の出発点は現時点の調達コストだ。この現時点の調達コストに「原材料や素材・部品の需給バランスの変化」に伴う調達コストへの影響と「すでに供給者との間で妥結している価格交渉の結果(材料費を除く)」を加味することで、期間ごとの想定コストが試算される。原材料や素材・部品の需給バランスの変化については構成要素が二つあり、一つは景気循環、金融・財政政策、原材料や素材・部品特有の需給の趨勢(すうせい)といった「ファンダメンタルズ要因」、もう一つは事前に洗い出したリスク要因における「“発生確率の高い”リスク要因」である。発生確率の高いリスク要因は、文字通り“確度高く”調達コストの需給バランスに影響を与えるものなので、あらかじめメインシナリオを試算する際に考慮しておく。

【迷ったら専門家】

ファンダメンタルズ要因や“発生確率の高い”リスク要因、それぞれの需給に対する影響を期間ごとに積み上げ、期間別の需給バランスの変化を集計する。現時点の調達コストを起点として需給バランスの変化に伴う調達コストへの影響を期間別になぞっていくことで、それぞれの期間における想定コストが試算できる。需給バランスの変化を調達コストへ変換する手法については、過去の需給バランスの変化と調達コストの関係性から定量的に算出するなど幾つかやり方はあるが、いずれも慣れと工夫は一定程度必要となる。それゆえ最初から精度の高い想定コストを望むことは難しいが、この見積もり作業を繰り返していく中で勘所は必ずつかめてくる。迷ったら専門家にアドバイスを求めるのも一案だろう。(隔週木曜日に掲載)

◇マーケット・リスク・アドバイザリー代表 大崎将行

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