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日刊工業新聞連載『調達コストのリスク管理(10)リスク要因、工程別に洗い出す』
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  • 大崎将行

カギ握る「3要素」分類

【「バランス」変化】

前回のコラムでは「調達コストのリスクの把握」に関する全体像、並びに実際に手を動かして作業すべき範囲と、その絞り込みについて言及した。調達コストのリスクの把握は「リスク要因(潜在リスク)の洗い出し」と洗い出したリスクが顕在化した際の「調達コストへの影響(想定/計画からの乖離〈かいり〉幅)の見積もり」の両パートで構成される。まずは「リスク要因の洗い出し」から説明する。

洗い出すべきリスク要因は、各工程の「供給者のコスト構造」と「需給バランス」の変化に分かれるが、ここでは「需給バランス」の変化に絞って話を進よう。(というのも「供給者のコスト構造」について言えば、供給者の材料費以外の4要素(労務費/減価償却費/光熱費/物流費)は、価格転嫁を受け入れるにしても、価格交渉の段階で、あらかじめ想定や計画に織り込むことが比較的可能であるし、材料費は「需給バランス」の変化に包含されるためである。)

【リストアップ】

作業内容としては、調達品の“原材料”の需給バランス、調達品の“素材や部品”の需給バランス、調達品“そのもの”の需給バランスの各工程のリスク要因の洗い出しとなるが、漠然と「潜在リスクをピックアップしろ」と言われても実際のところ手を動かすのは難しい。

その際のヒントが、弊社が提唱する「需給バランスに影響を与える3要素(図参照)」だ。調達品の需給バランスに影響を与える全てのリスク要因は、この項目のどこかに分類されると考えて良い。

例えば、石油化学製品における原材料(原油)のリスク要因であれば、特殊要素(戦争)として「米イランのさらなる対立激化」があげられるし、ロンドン金属取引所(LME)アルミ先物市場の売越額が高まってくれば、アルミ製品における原材料(アルミ)のリスク要因に「先物市場における買い戻し圧力の高まり」を投機要素としてリストアップできるだろう。

【天災も想定内に】

また、調達品の素材・部品が国内工場で生産される場合、昨今の台風の激甚化を鑑みれば、もはや“想定内”のリスクとして、調達品の素材・部品のリスク要因に「台風に伴う素材・部品の供給停止」を特殊要素(天災)として掲げてもおかしくない。

この図で示した分類を手がかりに、自社の調達コストに影響を及ぼす可能性のあるリスク要因を各工程別に一度洗い出してみていただきたい。このリスク要因を洗い出す作業が一段落すると、次はそれらを活用できる形にまとめる作業に移る。リスク要因の洗い出しはそこで完了する。(隔週木曜日に掲載)

◇マーケット・リスク・アドバイザリー代表 大崎将行

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