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日刊工業新聞連載『調達コストのリスク管理(37)リスクに対する企業の姿勢評価』
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  • 大崎将行

製造業「備えの不備」収支直結

【エネ価格上昇】

コロナショック以降の経済回復と各国の財政出動を受けて、資源・エネルギー価格の上昇が続いている。ワクチンが世界的に普及し、経済活動が新型コロナウイルス拡大前の水準に戻る過程ではさらなる上昇の懸念も残る。商品価格への転嫁が可能な業種・企業においては、致命的な減益要因とはならないが、消費者物価指数が依然インフレ目標を下回り続ける日本においては、そう簡単に原材料の調達コストを顧客に価格転嫁することは容易ではない。

2020年4月の時点でこの調達コストの上昇をあらかじめ見込み、事前に備えていた企業はどの程度あるだろうか。5月以降本格化を迎える20年度の決算発表において、原材料の調達コストのリスクによる収支への影響が企業ごとに鮮明に表れてくる。

【稼ぎにバラつき】

事前の備えの不備は収支に直結する。またその企業のリスクに対する姿勢は「収支(最終損益)のバラつき」として過去の経営成績に刻まれている。ここに二つの製造業A社、B社(同業種)があるとしよう。過去10年間の収支の“平均”は共に10億円と同程度であるのに対し、その“標準偏差”は、A社が1億円、かたやB社は5億円と差異があったとする。これを統計的に解釈すると、A社の収支の約7割が10億円プラスマイナス1億円の狭い範囲に収まるのに対して、B社の収支は10億円プラスマイナス5億円とバラつきが大きいことを意味する。

取れるリスクに限りがある投資家の立場からすれば、同じ100億円を投資するにしても、毎年安定的に10億円のリターンを稼いでくれる会社と、年によって稼ぎにバラつきがある会社とでは、前者を高く評価することは言うまでもない。リスク管理が全てとは言わないが、ならせば同程度の利益水準の会社でも、リスク耐性が強く安定的に収支を稼げる企業が評価されるのは紛れもない事実だ。

【リスク取り過ぎ】

そのように考えた場合、果たして製造業にとって調達コストにおける資源・エネルギー価格に起因する市場価格リスクは、取るべきリスクなのだろうか。製造業にとっての本業は、製品に対する付加価値を積み上げていくことだろう。市場価格リスクをとってもうける投資家やファンドとは根本的にビジネスが異なる。もし想定利益の下方修正や減益に際して、資源・エネルギー価格の上昇を主因にしている企業があるならば、いま一度、自社のリスク管理を見直す必要がある。筆者の経験から言っても製造業の多くが原材料の市場価格リスクを取り過ぎている。製造業の株主はそのリスクを取ることを会社に求めていない。(隔週木曜日に掲載)

◇マーケット・リスク・アドバイザリー代表 大崎将行

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調達コストのリスク管理(38)資源・商品の急騰と事前の備え