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調達コストのリスク管理(38)資源・商品の急騰と事前の備え
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  • Web掲載
  • 日刊工業新聞
  • 大崎将行

ピンチ 事前の備えで好機に

【影響は不可避】

資源・商品価格の上昇が止まらない。非鉄に鉄鋼原料といった主要な商品価格は言わずもがな、農産品から木材価格に至るまでこの急騰の流れをくんでいる。結果として、川中の米卸売物価指数(PPI)は前月比1%を超える水準まで上昇してきた。これは年率では12%という高水準だ。日本の足元のPPIは前年比2・1%増と小幅な上昇に留まるが、業種によって時間差はあれ、早晩、自社の原材料コストへの影響は不可避だろう。川下の消費者物価指数が低位(直近は前年比マイナス)で推移する日本においては、この原材料価格の上昇を価格転嫁することは容易でなく、この状況はピンチ以外の何ものでもない。

【2つのケース】

「ピンチはチャンス」という言葉がある。非常に勇気づけられる言葉ではあるが、この局面においては、どう逆立ちしても「ピンチはピンチ」に変わりない。しかし、以下の二つのケースに該当する企業や担当者に限っては、このピンチはまさに“チャンス”なのだ。

一つ目のケースは、今回の資源・商品価格の急騰をリスクシナリオと認識し、事前に備えていた企業や担当者だ。彼らにとっては、仕込んでいたネタ(備え)がリスクイベントにより「形勢逆転装置」として発動した形だ。競合他社がリスクの顕在化で苦しむ中、むしろ自社への影響は限定的で、相対的に有利なポジションに立てる。リスクイベントは、備えていない者にとっては“ピンチ”だが、事前に備えている者にとっては“チャンス”そのもの。弊社の顧客の多くは、今回の事象を「想定内」として涼しい顔で普段通りに業務を続けている。

【教訓にできるか】

もうひとつのケースは、「今回のピンチを次に生かせる企業・担当者」である。リスクをあらかじめ想定し、それに対して備えていなかったという今回の失敗・不備を教訓として、同じ状況を生み出さないために具体的に行動を起こせる企業・担当者だ。もちろん、今回のピンチが致命傷にならず「次がある」ことが大前提ではあるものの、行動を起こすのであれば、早ければ早いに越したことはない。

次のリスクがいつ何時顕在化するかわからないからだ。リスクの顕在化は、おのおのにとっての「やるべきこと」も同時に顕在化させるが、その顕在化された「やるべきこと」をそのまま放置するか、すぐに解決するために行動に移すかが、その企業やその担当者にとっての将来を大きく左右する。今回のこの“ピンチ”を“チャンス”に変えられるか否かは、各企業・各担当者のマインドに全てかかっている。(隔週木曜日に掲載)

◇マーケット・リスク・アドバイザリー代表 大崎将行

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