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調達コストのリスク管理(42)市場価格変動の波及経路とタイムラグ
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  • Web掲載
  • 日刊工業新聞
  • 大崎将行

「いつ・どこに」全体像把握

原油価格の上昇が止まらない。世界的なコロナワクチン接種率の高まりによる需要回復やOPEC(石油輸出国機構)プラスによる減産幅の維持など複数の要因が重なり合い、趨勢(すうせい)としては上昇傾向を維持している。今後についても脱炭素というキーワードの下、上流部門投資に対する抑制的な流れを考えると一時的な乱高下はあるにせよ、現在の傾向が中期的に持続する蓋然(がいぜん)性は相応に高い。

【川上から川下へ】

この原油価格の上昇による原油由来の素材・製品に関する調達コストへの影響は、時間差(タイムラグ)を伴って川上から川下へ波及していく。最も早く反応する製品としては、ガソリンや灯油、軽油といった燃料価格が挙げられるだろう。次いでナフサを通じて、素材・石化製品価格などへ波及した後、最終的に光熱費である電力・ガス価格への影響が顕在化する。

【タイミング】

このように、ある一時点の原油価格の変動は、直接材か、間接材かを問わず、さまざまな波及経路を通じて、タイムラグを伴いながら自社の調達コストに影響を及ぼす。特に自社のサプライチェーン(供給網)における居所が川下に近付けば近付くほど、その影響は広範にわたりタイムラグも長くなる。

調達コストのリスク管理において、きめ細かいリスク対策を実施していこうと思えば、この「タイムラグ」は無視できない重要な要素となる。

社内の管理会計や対外向けのIR資料などで、原油価格の変動による収支への感応度(=原油価格ドル1/Bblの変動に伴う影響額)までは企画部門を中心に集計することがあっても、それが「どの“タイミング”で影響を及ぼすのか」という“タイミング”の解像度を上げてまで把握しているケースは非常に少ない。

【影響を見極め】

このタイムラグを決定づける要因は、各資材の調達価格の仕切り方に依るところが大きい。値決めの参照指標で言えば、BRENTやDubaiといった国際市場価格を参照するのか国内貿易統計価格を参照するのか。値決めの更新頻度で言えば毎月取引価格を決定するのか、四半期に1度なのか。値決めの算出方法で言えば特定のある日の価格を基に値決めするのか、月間平均や四半期平均で値決めするのか。いずれもタイムラグに直接影響を及ぼす要素である。

“どの時点”の原油価格の変動が“いつ/どこに”影響を及ぼすのかという、タイムラグの全体像の把握が、会計上の影響の正確な見極めとともに、きめ細かいリスク対策につながることは言うまでもない。“言うは易く行うは難し”だが、決して避けて通れない道でもある。(隔週木曜日に掲載)

◇マーケット・リスク・アドバイザリー代表 大崎将行

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調達コストのリスク管理(43)都市ガスのコストと原油価格