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用語解説-その8「米石油統計」
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  • MRA商品市場レポート for MANAGEMENT(週末版)

【ビジネスへのヒント】第390号

「米石油統計」
米在庫統計は米エネルギー省が週に1回、日本時間の水曜日深夜に発表する統計です。この統計では、原油、石油製品の生産状況、出荷状況、在庫の状況等が地区毎(PADD1~PADD5の5つの地区に分けて発表される)に発表されます。尚、出荷の数値のことを疑似的に米国の石油製品需要とみなして議論されることが多いようです。この統計が注目される理由はいくつかありますが、(1)米国が引き続き世界最大のエネルギー消費国でありその国の統計であること、(2)週に1回発表されるため、他のエネルギー関連統計よりも即時性があること、が挙げられます。尚、シンガポールやARA、石油連盟等も週次で統計を発表していますが、各々の地区のエネルギー消費量が米国の消費量に比して小さいことや、発表される統計が米国統計の方がより詳細であることから、米国統計の方がより重要視される傾向があります。米在庫統計の中で特に注目されているのは、タイトルにもある通り原油・石油製品の在庫の水準です。更に言うと、フォワード・サプライ・カバー(在庫日数)がより重要な統計であると弊社では考えています。在庫の絶対水準ももちろん重要なのですが、何日分の在庫が保有されているかが分からなければ意味がないためです(例えば2億バレルの在庫があったとして、1日当たりの消費量が1,000万バレルの場合と、2,000万バレルの場合では前者の場合供給が完全にストップした場合20日分の在庫があることになりますが、後者の場合には10日分しか在庫が無いことになり、同じ在庫水準でも「十分度合い」が違うことがお分かり頂けると思います)。尚、在庫の絶対水準は「危機時の供給バッファ」ととらえることができます。そのため在庫の絶対水準が高い時には価格の変動性は比較的抑制され、低い時には高くなることが知られています(ベースメタルの様にファイナンス取引が活発に行われていると、取引所在庫の水準のみで価格動向を説明するのは難しいのですが...)。また、コモディティはエネルギーに限らず消費に季節性が存在するため在庫の十分度合いを見るためには過去の同じ時期の在庫水準と比較する必要があります。この比較の方法もアナリストによって異なりますが、殆どのアナリストが過去5年の水準と比較して分析を行っています。このことは、多くのアナリストが過去5年の水準と比較して分析を行っているため、この分析を基準にトレーダーが取引を行っている可能性が高いことを意味します。具体的には、在庫を需要で割った在庫日数が過去5年レンジのどの水準に収まっているかで価格に影響を及ぼすことになる訳です。過去5年の平均水準よりもその水準が低ければ比較的需給が逼迫し易く価格に上昇バイアスがかかり易いと言えますし、過去5年平均を上回っていればその逆が言えます。尚、在庫日数は原油、石油製品、地区によって水準が異なるので項目別に分析を行う必要があることは、非常に重要なポイントの1つです。在庫統計の分析に関しては、また別の回で説明させていただきたいと思います。