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デリバティブの勝ち負け
  • ビジネスへのヒント
  • MRA商品市場レポート for MANAGEMENT(週末版)

【ビジネスへのヒント】第380号

中村社長「デリバティブ取引を批判した本が大分出ているようだね」
阿部財務部長「そうですね。震災前後の相場急変動で、損失が拡大した企業が多いのではないでしょうか」
中村社長「うむ。やはりデリバティブは危険なものだ。我々も自重しなければ」

相場が急に変動することで、デリバティブで大きな損失が発生した、というニュースを良く耳にします。相場が上がると思ったので、価格を固定化しておいたら相場が下落した。あるいは為替が円安に行くと思ってドル買い予約を長期間にわたって入れておいたら、為替が円高に振れた。といったケースが、損失が発生する典型例としてよく取り上げられます。更に言うと、この商品を「より良いレート」にするためにその他のリスクを取るケースもあります。例を挙げると、為替の予約に株価の変動リスクを組み込んだもの等が挙げられるでしょう。ここまで書いてきてお気づきになる方も多いと思うのですが、上記の例は「予想と反対方向に相場が振れてしまったので、損失が発生した」場合が殆どです。価格リスクをコントロールするためにヘッジを行ったのに、なぜヘッジにならないのでしょうか?これは、リスクヘッジが「相場が○○になるから」という予測に基づいていることが理由です。つまり、リスクヘッジ実施の判断の大半が、相場観にのみ基づいていることを意味します。

では、こういう時にはどう考えたらよいのでしょうか?まず、何のためにリスクヘッジを行うのか、そもそもの理由を見直ししてみましょう。リスクヘッジの目線は相場に勝つことではなく、企業の目標(願い)である予算計画を達成することにあり、それはひとえに利益を計画通りに達成することを意味します。別の言葉を使うと、「できる限り予算計画達成の蓋然性が高まるように」、金融商品を用いるのです。
そして、その計画達成の蓋然性が高まるための、「ルール」を整備することが重要なのです。結果的にそうなれば、それはそれでよいのですが、「相場に勝つこと」が主な目的ではないとも言えるでしょう。デリバティブの提案や検討をする際には、その商品性のみを考えるのではなく、なぜその商品を使わねばならないのか、といった基本に立ち返ることが重要なのではないでしょうか。