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テールリスク
  • ビジネスへのヒント
  • MRA商品市場レポート for MANAGEMENT(週末版)

【ビジネスへのヒント】第379号

今日のビジネスへのヒントでは、「テールリスク」について考えてみたいと思います。テールリスクとは「発生の可能性は低いものの、発生した場合にはその影響が極めて高いリスク」のことです。

通常、リスクを測定する場合には確率統計の手法を用います。確率統計の考え方では、極端な市場の変動が起きる可能性は低く算出されます。例をあげると、現在50ドルの原油価格が急に500ドルに上昇したり、0ドルに下落したりする確率は略ゼロです。これはその価格になる確率を過去の価格動向(主に価格の変動性)を元に算出しているためです。

世の中のシステムは、概ねこの確率統計を元に設計されています。金融機関のリスク測定にもこの概念(バリュー・アット・リスクと言います)が用いられていますし、損害保険や生命保険等にも同様の概念が組み込まれています。よって、「発生の可能性が低い事象が起きた時の手当て」が行われている可能性は高くありません。発生確率が略0%のリスクを手当てをする人は少ないと考えられるためです。しかし、発生の可能性が低い事象が起きた場合の手当てをしていないため、そのリスクが顕現化した場合には他のリスクに飛び火し、連鎖的にリスクが拡大する可能性があります。言葉を変えると「テールリスクが他のテールリスクを誘発し、リスクが増幅される」と言えるでしょうか。結果的にファット・テール化するわけですが。最近は生産の国際分業化が進み、金融市場も相互の関係を強めています。そんな中、中東の既存政権打倒の動きや、温暖化による異常気象の多発、理由は不明ですが巨大地震の発生等、過去の想定の範囲をはるかに超える事象が頻発しています。つまり、個別商品のテールリスクが、顕現化してしまう可能性が高まっているということです。

では、このようなときにどのように考えればいいでしょうか?やはりリスク量を算定し、「これ以上不利な状況になって困らないように」あるいは「想定予算を上回る確率を低下させる」といった具合に目標を決めて、スワップなどでコストをある程度確定させていくことです。オプションを活用する方法も考えられますが、その場合には全量をヘッジする必要が出てきますので現実的ではありません。こんなときでも安定した調達/販売価格を維持するためには、金融商品等も活用した価格リスクマネジメントが求められると言えるでしょう。