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期間構造の変化
  • ビジネスへのヒント
  • MRA商品市場レポート for MANAGEMENT(週末版)

【ビジネスへのヒント】第357号

足元、WTIの期間構造が、期近がコンタンゴとなっています。このことは足元の商品需給が緩和している可能性があることを示唆するものです。商品市場動向を占うために、需要と供給のバランスを確認する必要があります。ですが、為替や株の市場と異なり、商品市場の需給関連情報が提供されるまで、通常2~3ヵ月の時間差があるのが普通です。

その中で、米国の石油統計は前週の米国の製油所の稼働状況や原油生産、輸出入動向の情報を提供してくれるため、原油市場動向を分析するのに非常に有用な情報となっています。米国は世界1位の原油生産国であり、かつ、世界最大の原油消費国でもあります。そして、日本と異なり民間エネルギー企業に万一の場合の原油・石油製品在庫保有を義務付ける、民間備蓄義務もありません。そのため、比較的現在の世界の原油需給動向を反映しやすくなるのです。

ですが、もちろんですが中国やインドなどの新興国の需要も増加しているため、いつまでも米国の統計が世界の需給環境を反映するわけではありませんし、実際、リーマンショック後にシェール・ブームが起きたため米国内の需給が緩和して、国際市場の需給環境と大きく乖離したことがあります(今でもこの傾向は続いています)。ですが、タイムリーな情報、という意味ではやはり米国の石油統計の右に出る統計はありませんので、引き続き注目されているわけです。

このWTIとBrentの期間構造に変化が生じている、ということは米国とそれ以外の地区の需給環境が変化していることを示します。少なくとも足元、世界最大の石油消費国の需給は緩和していると考えられます。

コンタンゴ・バックワーデーションの仕組みは弊社執筆の「原材料の市場分析入門」のP101~、米石油統計についてはP119~で詳しく解説しています。