デリバティブ取引の仕組み
- ビジネスへのヒント
- MRA商品市場レポート for MANAGEMENT(週末版)
【ビジネスへのヒント】第358号
このコラムでは商品価格や、市場のリスクについてコメントしていますが、価格リスクを制御するための「ツール」の1つとしてデリバティブが用いられることがあるため、必要な場合にはその使い方や仕組みを説明しています。通常、こういった金融商品の説明は、そのサプライヤーである金融機関や商社などが行っていますが、リーマンショック後以降、積極的にこの商品を提案することがなくなりました。そのため、デリバティブの基本的な使い方が実は伝承されておらず、その存在すら知らない方もいらっしゃるようです。
そこで、改めて商品デリバティブがどのような商品であり、どのような効果を持つのかを説明したいと思います。まず、「何のために商品デリバティブをもちいるか」ですがデリバティブは、「将来どうなるかわからない価格を、今の時点で決める」ために用います。例えば、毎月「その時の価格」で購入している燃料の、1年後の価格を現時点で値決めする効果を持ちます。
通常であれば、消費者は、燃料を販売してくれているサプライヤーに対して、「1年後の価格を今、値決めしてください」と依頼します。ですが、多くの場合、サプライヤーがこれを認めてくれることはありません。というのは、1.通常、その時の価格で仕入れてその時の価格で売るならばリスクはありませんが、1年後の価格がどうなるかわからないこと、2.1年後にこの消費者がきちんと支払いをしてくれるか保証がないこと、3.相場が変動するリスクを回避するためにサプライヤーがデリバティブを用いる場合がありますが、サプライヤー自身がデリバティブの知識がなく活用できないこと、4.デリバティブを用いない場合、「過去、どこまで上昇したか」などを参考に価格を算出して過去に、「デリバティブによるヘッジなし」で固定価格で販売、残念ながら価格が高騰してサプライヤーが大きな損失を抱えることとなり「もう2度とやらない」とう状態になっていること、などが理由です。
サプライヤーが固定価格での受けてくれない場合、1年後の価格を今、値決めしたいならば、消費者が自分でデリバティブや先物取引を行う必要が出てきます。この時、デリバティブの契約は現物の契約に影響を及ぼしません。多くの場合、消費者とサプライヤーの間で取り交わされる現物契約、消費者と金融機関の間で取り交わされるデリバティブ契約の2本の契約が走ることになります。仮に1年後に金融機関に支払う価格が50ドル/バレルで決定しているとし、1年後に燃料価格が60ドルに上昇しているとしましょう。1年後、サプライヤーに対してはその時の時価、すなわち60ドルを支払います。そして金融機関に対しては50ドルを支払いますが、金融機関からは60ドルの受け取りが発生します。結果、この消費者は50ドルで燃料をサプライヤーから購入したのと同じ効果を得ることが出来るのです。