過剰なリスク発生を否定しない
- ビジネスへのヒント
- MRA商品市場レポート for MANAGEMENT(週末版)
【ビジネスへのヒント】第362号
2014年3月10日第150号「風が吹けば桶屋が儲かる理論の重要性」で解説した通り、現在のような経済環境では、「こんなことは起きないだろう」と考えることは厳禁です。
「こんなこと」とは、想定しているメインシナリオ、すなわち「最もそうなる可能性が高いシナリオ」、という意味ですが、このシナリオ通りに事が進むことはまず進むことはまずありません。米中貿易交渉が順調に進捗している、と多くの人が希望的観測を以って考えていましたが、実際は期待ほど進んでおらず、トランプ大統領は関税引き上げを決定しました。
ここで重要なのは、こうした「テールリスク」が顕在化した場合、ほかのリスクも同時に顕在化する可能性がある点です。わかりやすい例を挙げると、東日本大震災を超える地震が近日中に発生している人はそれほど多くないでしょう。しかしそこが落とし穴で、ほとんどの人がそのように考えている結果、「そういった大規模地震は発生しない」という前提でリスクを想定することになり、実際にそのリスクが顕在化した時に想定外のリスクが降りかかってくることになります。
例えば、自社が調達している主要な部品の調達先A社の工場が、現在日本の法律が定める基準を満たしていたとしても、近隣にある山が土砂崩れで崩れ落ち、工場が崩壊ないしは崩壊しないまでも製品の運搬が支障が出るということは起こりえます。A社にとっては地震は想定の範囲内であっても、それに伴う土砂崩れまでは想定していませんでした。
つまり、「その他のテールリスクが顕在化した時に、自身が想定していなかったところが影響を受け、結果的に自分に降りかかってくるシナリオ」を想定していなかったということです。人はどうしても、自分の望まない結論になるようなリスクを想定したがりません。ですが、あえてそこを想定することで、今まで見えてこなかった対応すべきリスクが見えてくることがあるのです。