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【元祖・タイの楽しいご旅行は-その8】
  • 新村ブログ《油売りのひとりごと》

何もすることがないので、この小道を進むことに決めた2人。 
道にはヘビやねずみの死骸がごろごろしている。 
本当に進んで良いのだろうか?

確か船の中でチラっとみたソムチャイの地図では
この先には、三日月湾という名前の
水辺があるはずであることを思い出した。 
但し、この道がそれに当たるかどうかは分からない。

山口「首狩り族とか出てこないだろうな?」

アジアに首狩り族がいたかどうかは定かではなかったが、
確かにディズニーランドのジャングルクルーズなみの怪しい小道である。
と、不安に思いながらとぼとぼ歩いていたら突如目の前が開けた。
 小さなテラスがあり、その先にはビーチらしきものが広がっていた。
「助かった!」と胸をなでおろす。

そこのテラスはバーになっていて、飲み物が飲めるようになっていた。 
ピィピィ島に来て初めて喉を潤す。
ビールがこれほど美味いものだとは思わなかった。

その頃まともに英語がしゃべれなかったが
そこに来ていた欧州出身の人と本当にカタコトで会話を交わし
ここの先にホテルがあること、毎日雨が降っているので、
することがないこと、などが判明した。 
聞いてみると、ここのホテルも何もすることがなく、
皆酒を飲んでダラダラしている、とのことであった。 
確かにテラスから見えるビーチは雨で薄汚れ、
とても泳ぐ気持ちにはなれない。

実際、ここのテラスに長居をしても飲むだけなので、
1時間ほど時間を潰した後、往復10分の町に戻って、
そこにある店を1軒1軒回ってみることに決めた。

「どこも開いてない...」

で、最終的に見つけたのが「ママレスト」というお店。
店の名前がカタカナで書いてある。
入っていいのだろうか....?
と思って入ってみると思った以上に普通の店で、
2時間、時間をつぶすことが出来た。
 
そもそも遊びに来ているのに
「時間をつぶす」という感覚はいかがなものか?
と思っていると、とうとう約束(?)の6時が近づいてきた。
子供は本当に来るのだろうか?
と、思ったら実にあっさり子供が来ていた。
とにかく何もすることがないので、早速船に乗り込む。 

辺りは真っ暗である。 
ところがこの船、(行きに乗ってきた小船)
何の照明設備も持ち合わせていないのだ。
漆黒の闇の中を滑るように小船が走る。

記憶力のある人は覚えているかもしれないが、
あの「サンゴ岩の突き出した」浅瀬の海である。
しかも雨が降り、風も吹き
小船は荒波に飲まれる木の葉のように揺れた。
本当に生きた心地がしない。 

小船が走り、波が砕けるとその中に夜光虫の緑色の光が無数に輝く。
 まるで、この海で命を失った人々の魂の明滅のようにもみえる。
なんて、文学的なことを思いながらビクビクしていると、山口が

山口「なあ、岩にぶつかって死ぬのと、溺れて死ぬのと、どっちが苦しいかな?」

そんなの知らない。死んだことないし。どっちも嫌だ。

私「多分、溺れるほうが辛いんじゃないか?」

因みに山口は今、医者である。今度、どっちが苦しいか聞いてみよう。
と、ほとんど冗談とも付かない会話をしているうちに、
泊まっているホテルの灯りが見え始めた。

私「見ろ!あれがホテルの灯だ!!」

大西洋を横断したリンドバーグの気持ちが分かった。
どうにかこうにか、無事に戻ってくることが出来た。 

船を降りて、二人ともなぜか駆け足でコテージに飛び込む。
何で走ったのかは分からない。 
とにかく海水をたっぷり浴びてしまったのでシャワーを浴びることに。
山口が先にシャワーを浴びた。暫くして山口の叫び声がっ!!

「うゎーーーーー!! しびれるッ!!」 

よっぽどシャワーが気持ち良いのか?いやそうではなさそうだ。
ちょっとシャワー室をのぞいたら、
シャワーのホースを握った山口が本当にしびれていた。
どうも、漏電しているらしい。
海水で濡れているからなおさら電気を通しやすいのだ。 
岩にぶつかるのでも、溺れるのでもなく、感電死するところだった。

「海外でシャワーのホースは握ってはいけない。」
(続く)