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日銀は利上げ実施もハト派姿勢で円安加速
  • MRA外国為替レポート

2025年12月22日号

◆先週の市場総括


先週は米国の経済指標と日銀金融政策決定会合が注目された。米国の指標は、政府機関閉鎖の影響がまだ残り不完全で実態がつかみにくかった。ただおよそ雇用は弱く、インフレが加速せず落ち着いていることが示された。これらは追加利下げにとって追い風と解釈された。

日銀は事前予想通り0.25%の利上げを実施。ただ植田総裁の会見で利上げ継続も慎重な姿勢と受け止められた。

週末に円安が加速。ドル円相場は週前半には154円台に下落する場面もあったが週末の引けは157円台後半。ユーロ円相場は184円台後半で引け最高値を更新した。

米国株はAI関連の投資過剰、収益回収懸念が取り沙汰されて下落する場面もあったが持ち直し。日経平均も米国株につれて上下。一時49,000円を割り込んだが週末は49,500円近辺で引けた。日本の長期金利10年債利回りは2%の大台に乗せた。

月曜日の東京市場では日経平均が反落。後場に一時▲870円ほど下げて5万円の大台割れ。前週末に米国のハイテク株、半導体関連株が売られたことで、日本株も値がさ半導体関連株が下落。電子部品にも売りが広がった。

日銀短観はしっかり。日銀の利上げ継続観測が強まって銀行株は堅調だった。日本国債10年債利回りは1.958%。

発表された12月の日銀短観は、大企業製造業の現状判断DIが前期9月の14から15に改善。改善は3四半期連続。先行き判断は12から15に予想13を上回って改善した。非製造業の現状判断は34で変わらず。先行き判断も28のまま。中小企業製造業の現状判断は1から6へ、先行き判断は▲1から2へ改善した。

為替市場では円高が進んだ。ドル円相場は155円80銭~90銭で始まり午後東証引け頃には155円割れ。その後欧州市場では155円台前半で上下したが上値重く154円80銭台へ下落。その後も154円80銭台~155円20銭近辺で上下し米国市場終盤は155円20銭~40銭で上下して引けは155円20銭。

ユーロ円相場も同様の値動き。183円ちょうど近辺で始まり午後東証引け頃には181円80銭台へ下落。その後は戻して182円ちょうど~20銭で上下し米国市場では一時60銭に上昇するもそこまで。引けは182円40銭近辺。

ユーロドル相場は動意薄。東京市場から欧州市場にかけて終始1.1730~40で小動きもみ合い横ばい。米国市場で一時1.1770へ上昇するも反落して引けは1.1750。

米国株は下落。ハイテク株の一角に売り。前週に続きハイテク株から他の銘柄へ資金シフトがみられた。NYダウは前週に史上最高値をつけたあと、短期的な過熱感、高値警戒感で上値が重かった。NYダウの引けは前週末比▲41ドル安の48,416ドル、ナスダックは▲137ドル安の23,057ドル。VIX指数はさらに上昇して16.50。

米長期金利は低下。10年債は4.176%、2年債は3.505%。発表されたNY連銀製造業景気指数(12月)は前月18.7から▲3.90へ大幅に悪化して予想10.0を大きく下回った。

火曜日の東京市場では日経平均が大幅続落。2週間ぶりに5万円の大台を割り込んで引けた。米国市場の流れを受けて半導体、ハイテク関連株が売られた。米雇用統計発表前で積極的な買いが見送られた。

売りは、半導体メモリー、フィジカルAI関連、電機などに広がった。引けは前日比▲784円安の49,383円。

為替市場では前日の流れのまま日銀金融政策決定会合を前に、また株価調整を受けて円が堅調。ドル円相場は155円20銭で始まり午前中に154円70銭台に下落。その後は155円台での上値は重く、欧州市場にかけて154円70銭~90銭で推移した。

米雇用統計発表前には154円50銭台に下落。結果は判断の難しい内容となり154円40銭~155円ちょうどで乱高下。その後は154円60銭~80銭のレンジで上下して引けは154円70銭台。

ユーロ円相場は182円40銭で始まり午後には181円70銭台へ下落。その後欧州市場にかけて182円20銭へ反発。その後は40銭台まで上昇したが米国市場では反落して181円80銭~90銭で取引を終えた。

ユーロドル相場は東京市場では1.1750で始まりもみ合い小動き横ばい。米雇用統計を受けて1.1750~90で高下したあと1.18台に上昇。ただその後は反落して1.1740~60でもみ合い引けた。

米雇用統計(11月)は、非農業部門雇用者数前月比が+64千人と予想+50千人を上回ったものの、前月が▲105千人に大幅下方修正。9月も下方修正される弱い内容となった。失業率は前月4.4%から4.6%へ上昇。平均時給は前年同月比+3.8%から+3.5%へ上昇が鈍化した。

PMI景況感指数(12月速報)は、製造業が前月52.2から51.8へ、サービス業が54.1から52.9へいずれも悪化した。

一方、小売売上高(10月)はしっかり。除く自動車のコアで前月比+0.4%と前月+0.3%から伸びがやや加速した。全体では0.0%と伸びが鈍化。

米国株はまちまち。雇用統計の判断は難しく不透明感が高まった。ダウは一時▲470ドル安に下落し引けは▲302ドル安の48,114ドル。一方、ハイテク株は持ち直し。ナスダックは+54ドル高の23,111ドル。

米長期金利は低下。10年債は4.150%、2年債は3.484%。

発表されたユーロ圏のPMI景況感指数は製造業が49.6から49.2へ、サービス業が53.6から52.6へ、いずれも悪化した。一方、ZEW企業景況感指数(12月)はドイツの期待指数が前月38.5から45.8へ大きく改善、ユーロ圏も25.0から35.7へ改善した。

水曜日の東京市場では日経平均が小幅高。前日の大幅下落の反動で買い優勢も、日銀金融政策決定会合を控え利上げ継続に対する警戒感から利益確定売りや持ち高調整売りに押されて一時▲300円安となるなど方向感を欠く展開となった。引けは前日比+128円高の49,512円。

発表された通関統計(11月)は貿易収支が3,220億円の黒字と前月▲2,320億円の赤字から改善した。機械受注(10月)は前年同月比+12.5%と前月+11.6%からやや上昇し予想を上回った。

ドル円相場は154円70銭台で始まり50銭に下落したあと夕方欧州市場の朝方にかけてとくに材料がないなか円安が進み155円60銭近辺へ上昇した。その後米国市場にかけては40銭~60銭でもみ合い上下動。引けにかけて70銭台に上昇して60銭~70銭で取引を終えた。

ユーロ円相場も同様の値動き。181円80銭で始まり60銭に下落したあと夕刻にかけて182円20銭近辺へ上昇しもみ合い。米国市場では一段高となり182円70銭~80銭で上下し引けた。

ユーロドル相場は東京市場では1.1750で始まり夕刻には1.17ちょうど近辺で上下。ただ米国市場にかけては反発し1.1760へ上昇し引けは1.740と東京市場とほぼ同水準。米国市場ではユーロが堅調だった。

米国株は下落。AI関連株が大きく売られ半導体関連全般に売りが波及した。オラクル株が大幅安。投資会社がデータセンター建設への出資を見送り撤退。AI投資の回収を巡る警戒感が高まった。

収益化や収益率の不透明感が強まり、エヌビディア、ブロードコム、アドバンテスト、AMDなども下落。さらに建機・発電機器のキャタピラーまで売られた。引けはNYダウは前日比▲228ドル安の47,885ドル。ナスダックは大きく下落した▲418ドル安の22,693ドル。VIX指数は17.62へ上昇。

米長期金利はほぼ横ばい、やや上昇。10年債は4.154%、2年債は3.485%。発表されたIFOドイツ企業景況感指数(12月)は前月88.1から87.6へやや悪化した。

木曜日の東京市場では日経平均が大幅反落。オラクル初のAI投資懸念が波及。ハイテク株安が重石となった。AI半導体関連株の売りが目立ちハイテク全体に売りが広がった。アドバンテスト、ソフトバンクグループ、東京エレクトロニクスの主要3社が指数を押し下げ。一時▲800円超下落し49,000円を割り込んだ。引けは▲510円安の49,001円。

ドル円相場は日銀金融政策決定会合の結果を翌日に控え155円台後半を中心に方向感なく推移した。

155円70銭近辺で始まり40銭台に下落したあとは70銭~80銭で推移、夕刻から欧州市場にかけては80銭~90銭台で上下。米国市場に入りCPIが落ち着いた数字だったことで155円30銭割れに下落。ただその後は下げ一服し40銭~70銭で上下して引けは50銭近辺。

ユーロ円相場は182円70銭~80銭で始まり50銭台に下落したあと夕刻にかけて183円10銭台へ上昇した。欧州市場に入ると182円40銭へ反落。その後は80銭に反発したものの上値重く182円30銭~50銭でもみ合い引けは40銭近辺。

ユーロドル相場は小動き。東京市場では1.1740で始まり終始小動きもみ合い横ばい。欧州市場に入ると1.1710に小幅下落したあと1.1760へ反発。その後は1.1720~40で推移し引けは1.1720。

米国株は反発。発表されたCPIがインフレの落ち着きを示し利下げ期待が強まったことが支え。半導体関連株が反発、AI関連株に見直し買いが入った。NYダウは前日比+65ドル高の47,951ドル、ナスダックは+313ドル高の23,006ドル。

米長期金利は低下。10年債利回りは4.115%、2年債は3.457%。

発表されたCPI(11月)は前年同月比+2.7%、コア指数が+2.6%と落ち着いた数字となった。ただ10月分が欠損して不正確な数字となったとみられている。週次の失業保険申請件数は新規申請が224千人と前週236千人からやや減少。継続需給が1,897千人と前週1,838千人から増加した。

フィラデルフィア連銀製造業指数(12月)は▲10.2と前月▲1.7から改善予想に反して大きく悪化した。

ECBはこの日の理事会で政策金利(中銀預金金利)を2.00%で予想通り据え置き。ラガルド総裁は、今後インフレは2%程度で安定する見込み、とした。公表された経済見通しでは成長率が上方修正された。

イギリス中銀は政策金利を4.00%から3.75%へ▲0.25%引き下げた。前回会合では5対4で据え置き。今回は5対4で利下げ決定となった。

金曜日の東京市場では日経平均が反発。前日の下げを取り戻した。前日の米国市場でハイテク株が反発、堅調。これを受けて日本株もAI関連、半導体関連株が持ち直した。

日銀は事前予想通り利上げを実施。年内の重要イベントを終え年末高期待が高まった。午後には一時前日比+750円超上昇。ただ10年債利回りが2%の大台に乗せたことは重石となった。引けは+505円高の49,507円。

為替市場では日銀金融政策決定会合および植田総裁会見を受けて大きく円安が進んだ。日銀は事前の予想通り0.25%の利上げを実施し政策金利を0.50%から0.75%へ引き上げた。

その後15時30分から行われた植田総裁の会見で総裁が利上げに慎重な姿勢を示したと受け止められ円売りが進んだ。

かねてから利上げ余地を測る上で注目されてきた中立金利について、1%~2.5%という従来の幅広いレンジを修正する姿勢を示さず。

推計は難しい、利上げをして様子見をしてみて判断する必要がある、と述べた。下限が引き上げられレンジが縮小するとの見方は否定された。なお緩和的と述べたものの利上げに慎重と受け止められた。

ドル円相場は155円50銭~60銭で始まり昼前に80銭に上昇して結果待ち。予想通りの利上げを受けて156円10銭台へ上昇。さらに植田総裁の会見を受けて円安が加速。

欧州市場にかけて157円40銭まで上昇した。その後は157円台半ばで推移。片山財務相の円安牽制発言を受けて一時157円割れに下落したが反発し引けは157円70銭台。

ユーロ円相場は182円40銭近辺で推移したあと結果を受けて183円へ上昇。さらに欧州市場では184円40銭へした。その後も底固く推移し米国市場では184円70銭へ上昇し史上最高値で引けた。

ユーロドル相場は終始動意薄。東京市場では1.1720で始まり小動きもみ合い横ばい。欧州市場では1.1700~10。米国市場では1.1710~30で推移して引けは1.1710。

米国株は上昇。ハイテク株に見直し買いが入り堅調。ナスダックは前日比+301ドル高の23,307ドル、NYダウは+183ドル高の48,134ドル。米長期金利は上昇。10年債は4.145%、2年債は3.486%。発表されたミシガン大学消費者態度指数(12月確報)は速報から下方修正されて52.9だった。

◆今週の3つの注目ポイント


米国市場は25日がクリスマスで休場。ロンドン市場は24日債券株式市場が半日取引、25日、26日休場。

1.米国の経済指標

引き続き利下げを後押しする材料となるか。

月曜日 シカゴ連銀全米活動指数、火曜日に耐久財受注(10月、前月比、予想▲1.5%、前月+0.5%) GDP(7-9月期確報、前期比年率、予想+3.2%) 鉱工業生産(11月) リッチモンド連銀製造業指数(12月、前月▲15) 消費者信頼感指数(12月、予想92.0、前月88.7)

水曜日 週次失業保険申請件数(新規申請、前週224千件、継続需給、前週1,897千件)

2.日本の経済指標

日銀の利上げ継続を後押しするか。

水曜日 企業向けサービス価格指数(11月、前年同月比、予想+2.6%、前月+2.7%)

金曜日 失業率(11月、予想2.6%で前月不変) 有効求人倍率(予想1.18倍で前月比不変) 都区部CPI(12月、除く生鮮食品、前年同月比、予想+2.5%、前月+2.8%) 鉱工業生産(11月速報、前年同月比、予想▲0.5%、前月+1.6%)

3.植田総裁講演

木曜日に植田総裁の講演が予定されている。先週利上げを実施したが、会見の発言が利上げに慎重、ハト派スタンスと解釈され円安が加速した。今回の講演で市場の見方を修正にかかるか。利上げ余地や利上げペースの解釈に変化が生じる内容となるかが注目点。

◆今週のMRA's Eye


日銀は利上げ実施もハト派姿勢で円安加速

日銀は事前予想通り0.25%の利上げを実施した。今回の会合での注目は、植田総裁が会見で何を語るか。今後の利上げ余地やペースについていかなる示唆、ニュアンスが示されるか。

結果は、質疑応答での発言がハト派と解釈され、大きく円安が進んだ。

利上げ余地については、なお政策金利は十分に緩和的との従来の発言を繰り返した。市場の関心は中立金利の議論についてあらたな変化があるか。

これまで総裁は1%から2.5%の幅広いレンジを示していた。そのレンジが狭められるか、下限が引き上げられるか、が注目されていた。今回の利上げで0.75%となったことで、仮にこのまま下限が1%のままとなると早々に中立金利に達することになる。

そのため市場では利上げ打ち止めが近いとの見方に傾きやすい。この点、総裁は、この数字について具体的なコメントはなく、市場は失望、利上げに慎重との受け止めとなった。

総裁は中立金利については様々な推計方法があり、結果として幅広いレンジとならざるを得ないとした。中立金利をみるうえでは、実際に政策金利を変更し、それを受けた景気物価動向がどのように変化するか、それを見極めることも重要な作業と述べた。

政策金利は一般に中立金利を中心に上下するものだが、残念ながら日本においては、これまで超低金利に張り付いてきたためその経験が乏しいとの考え。

今後は手探りでその水準を見極めていく必要があるとのスタンスだった。その結果、市場は、中立金利のレンジを狭めることになお消極的なニュアンスと受け止めた。

またアベノミクスとの関係においては、今は仕上げの段階と述べた。アベノミクスを否定することは難しいが、それを肯定しつつ仕上げと表現したことは、金融緩和継続のニュアンスを残していると解釈されたようだ。

発言からは高市政権のスタンスへの配慮も感じられ、これもハト派スタンスとの受け止めにつながったと思われる。

市場の利上げ見通しは、今のところ1.5%までとの見方が大勢となっている。ただそのペースは緩慢で、来年は1回か2回、1.00%か1.25%まで。半年に1回の利上げで2回までが目いっぱいとの見方。今後の利上げについては政権からの抑止圧力がさらに高まるのではないかとの見方が大勢だ。

インフレ率が低下しているとはいえ、なお3%から2%台後半に低下した程度。今後は食料品価格の上昇が一服すると想定されることからさらに低下すると予想されている。

ただインフレ率を差し引いた実質金利は大幅なマイナスで変わらない。そうしたなかで利上げ消極姿勢ととられたことが円安加速を招いた。

日銀の政権の政策スタンスに対する配慮が円安を招いたとすれば、円安抑止の成否は再び高市政権にボールが渡されたかたちとなった。

政権はリフレ派の発言をそのまま鵜呑みにはしていない。しかし経済諮問会議、成長戦略会議のメンバーにマクロ政策面でリフレスタンスをとるメンバーを置いていること自体が市場の思惑を生みやすい状況。

積極財政の姿勢に明確に修正を加えなければ、リフレ的、インフレ的、と解釈され、円先安観につながる状況に変化はない。片山財務相は円安牽制を繰り返すが効果はないとみられる。

もっとも金利差が縮小し、インフレ率が足元で低下傾向にあることも事実。本来は、ここから円安が加速する状況にもない。

ここまでの円安は高市政権のコミュニケーションスタイルに問題があることも事実。政権発足と現状で異なる点、円安が加速する要因は、具体的には少ない。市場の懸念、思惑、期待によるところが大きい。

この点に何か変化があるか。こうした点からみれば、今回の植田総裁発言は、明らかに政権への遠慮、配慮、が多く感じられた。円安を止めるという観点からは、重要な機会を逸するコミュニケーションだった。

思惑主導であればいずれ修正されるとみられるが、なおも円が安値圏で低迷する可能性は従前よりも高まったようだ。円安修正のペースは緩慢とみられる。

一方、足元で円安が加速した分、むしろ円高への反動の余地は大きくなった可能性には留意する必要もあろう。ひとまずの目途は150円台前半、あるいは高市政権発足前の145円~150円の水準となる。


主要指標は、有料版「MRA外国為替レポート」にてご確認いただけます。
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