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株価下落で再び調整
  • MRA商品市場レポート

2025年11月21日 第3107号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「株価下落で再び調整」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品価格はその他農産品価格が上昇したが、その他は軒並み水準を切り下げる動きとなった。この数ヵ月、商品市場を動かしているドライバーは株式市場であるが、昨日は株価が急落したタイミングでエネルギーや非鉄金属、貴金属は水準を切り下げる動きとなった。

結局の所、過剰流動性が市場に残存していること、中国などを除けば主要国のコアCPIは2%を上回っており、総じてインフレ圧力が強いことが商品の名目価格を押し上げる状況が続いている。

消費者物価指数の上昇に合わせて全ての商品価格が上昇する訳ではないが、物価上昇を前提とした価格水準の「目安」にはなる。

昨日も掲載しているが、2020年から直近までの米国の物価上昇率平均(4.5%程度)を元に、物価上昇を加味した価格を算出すると、2021年初のBrent原油は50ドルであるため、名目価格の基準となる価格は62ドル、銅は7,700ドル程度だったので、これに当てはめると9,600ドルという水準が出てくる。

これを基準に考えると原油は概ね妥当な水準、銅はやや割高となる。これに対して金で同様の計算をすると2,240ドルとなる。つまり、インフレや物価上昇では説明出来ない需要が発生して価格が上昇している、ということである。

詳細はマンスリーレポートや、MRA's Eye、貴金属セクターのコラムで解説しているが武器としてのドルヘの対抗措置としての需要増加が背景にあると言える。基本、どのような状況になっても人々が「金そのものの価値」を信じている上、それが前提で準備金として認められていることが影響している。

ただ、利息も配当も発生しない金を保有する投資家は、いずれかのタイミングで利益確定を行う。株価の上昇が足元の金価格を押し上げてきたことも恐らく事実であるため、しばらくは株価の調整に合わせて水準を切り下げやすいと予想される。

ドル建て商品価格の下落は我々消費国である日本にとっては慈雨となる。しかし、同時に円安が進行しているためこの効果を相殺してしまっている状況。直近3ヵ月程度、9月1日を基準にすると、ドル建てBrentは▲7.0%下落しているが、円建は▲3.2%の下落に留まる。銅はドル建てが+10.0%の上昇だが、円建が+14.5%の上昇になっている。

やはり、消費国である以上、円安はGDPの7割近くを占める個人消費にマイナスに作用することになる。

なお、高市政権以降トリプル安になっているが、円安・金利高は高市政権の政策ブレーンの方針がネット上にあふれる中で進行しているため、恐らく政権の政策の影響であるが、株については高市政権と特に関係ない、米国株の下落と同じタイミングで下落している。

下落を主導しているのはハイテク、AI関連株であり、これまでのAI関連株上昇が余りに急ピッチであったため、11月末のファンド決算を控えて利益確定の動きが出ていると考えるのが妥当だろう。株価の調整が商品価格を下押しする展開がしばらく続くと予想される。

なお、AIバブルという指摘があるが、GAFAMに代表されるテックの巨人はAmazonはやや厳しいがAI関連投資は自己資金で賄える範囲であり、過大とは言い難い。かなりの規模でAI関連に投資を行っているが、彼らのキャッシュフローで十分可能な投資であるため必ずしも過剰とは言えない。

しかし、財務体力がないテックベンチャーにもかなりの資金が流入していると考えられる。BBGの調査では2025年のAIスタートアップ向けのVC投資は1,927億ドルに達しており、その40%程度が中小ベンチャー向けとされる。その中にはAIブームでなければ資金を確保出来なかった企業も多数あるだろう。

これらの企業が十分なリターンを得るビジネスを展開していない場合、破綻する所も出てくると予想され、資本市場や債券市場に大きなリスクをもたらす恐れがある。特にPCなどの詳細が不明な手法で調達を行っている企業の状況はよく分からないため、クレジットイベント発生時に疑心暗鬼となった市場参加者がリスク回避の動きを強める可能性は高い。過去もそういったことが何回もみられた。

AIは今後、世界経済を牽引する可能性は高いがスピード調整時に発生する下落リスクは、リスク資産価格の下落のみならず実体経済にも影響を及ぼすため忘れてはならないリスクと言える。

本日はエヌビディア決算が良好だったものの株の調整圧力が強いため、軟調推移となる商品が目立つのではないか。

予定されている材料は以下の通り(米シャットダウンの影響で発表されない可能性がある統計も含む)。

・ニューヨーク連銀総裁講演
・ダラス連銀総裁講演
・ECBラガルド総裁講演
・10月日本全国消費者物価指数 実績 前年比+3.0%(+2.9%)
 除く生鮮 +3.0%(+2.9%)
 除く生鮮エネルギー+3.1%(+3.0%)

・10月日本貿易収支季節調整前 実績 ▲2,318億円の赤字(前月▲2,374億円の赤字)
 調整後 ▲42億円の赤字(▲3,024億円の赤字)
 輸出 前年比+3.6%の9兆7,663億円(前月+4.2%の9兆4,133億円)
 輸入 +0.7%の9兆9,981億円(+3.0%の9兆6,506億円)

 米国
  輸出 ▲3.1%の1兆7,540億円(▲13.3%の1兆6,050億円)
  輸入 +20.9%の1兆2,246億円(+6.8%の1兆819億円)

 欧州
  輸出 +9.2%の9,071億円(+5.0%の8,915億円)
  輸入 ▲9.0%の1兆39億円(+11.1%の1兆1,251億円)

 アジア
  輸出 +4.2%の5兆2,535億円(+9.2%の5兆1,695億円)
  輸入 +0.6%の5兆444億円(+5.9%の4兆9,211億円)

 中国
  輸出 +2.1%の1兆7,101億円(+5.8%の1兆5,933億円)
  輸入 +0.8%の2兆4,766億円(+9.8%の2兆3,675億円)

・11月日本製造業PMI速報 実績 48.8(前月 48.2)
 サービス業 53.1(53.1)
 総合 52.0(51.5)

・11月独製造業PMI速報 市場予想 49.8(前月 49.6)
 サービス業 54.0(54.6)
 総合 53.5(53.9)

・11月ユーロ圏製造業PMI速報 50.1(前月 50.0)
 サービス業 52.8(53.0)
 総合 52.5(52.5)

・11月米製造業PMI速報 52.0(前月 52.5)
 サービス業 54.6(54.8)
 総合 54.5(54.6)


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