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局面切り替えのドル高円安、中期的ドル安円高リスクバイアスは不変
  • MRA外国為替レポート

2025年5月5日号

◆先週の市場総括


先週は米国株が堅調推移。ドル円相場は円安、ドル高、双方の要因で上昇し145円台を回復した。トランプ政権の関税政策に一部緩和など修正の動きがみられ柔軟な姿勢を好感。米中関税交渉の進展への期待も手伝い米国株を支えた。米政権の政策に端を発する懸念が後退し市場に安心感が広がった。

米国の経済指標には弱い数字も散見されたが週末の雇用統計にはまだ大きな悪影響はみられず過度な景気悪化懸念は後退。米国株は個別決算で左右されながらも総じて堅調。NYダウは週末まで9営業日連騰となった。

トリプル安一服でドルは底固く推移。ドルインデックスは100ポイントを回復して引け。

一方で円は下落。日銀の金融政策決定会合で示された展望レポート、会見での植田総裁の発言がハト派と受け止められ、利上げ後ずれ、年内利上げなし、との見方が強まった。

日本国債10年債利回りは1.25%台に低下。また2回目の日米関税交渉で為替は議題にならず。これらを受けて円先高観が後退。週末にかけて円売り戻しが進みドル円相場は一時146円に迫った。引けは145円ちょうど近辺。

日経平均は米国株の堅調、日銀の利上げ先送り、円高一服、円安の進行、などに支えられて堅調。週末の引けは36,800円台。

月曜日の東京市場では日経平均が上昇し3月28日以来の高値で引けた。米ハイテク株高を材料に一時+300円高。主要企業の決算発表が相次ぐなか業績見通しを材料に個別売買。後場は伸び悩み。日米関税交渉を前に様子見姿勢が強まった。引けは+134円高の35,839円。

ドル円相場は144円近辺の上値の重さが意識され軟調。143円60銭で始まり80銭台に上昇したあとは30銭台~80銭台で上下動を繰り返した。欧州市場では143円40銭近辺。その後は上値重く、米国市場に入ると弱い米経済指標を受けて142円10銭台へ下落して引け。

発表されたダラス連銀製造業活動指数(4月)は前月▲16.3から▲35.8へ大幅に悪化。パンデミック以来の低水準となった。ユーロドル相場は東京市場では1.1360で始まり1.13台半ばを中心に上下動横ばい。

米国市場に入ると1.1420へユーロ高ドル安が進みそのまま引けた。ドルインデックスは98.94へ下落。ユーロ円相場は163円20銭で始まり162円90銭に下落したあとは163円ちょうどを挟んでもみ合い、夕刻は163円30銭。

米国市場に入るとドル安円高に押されて下落し引けは162円30銭。米国株はまちまち。

ベッセント財務長官は、インドが最初の取引になるかもしれない、と述べ、関税交渉への進展期待が高まり下支え。一方、中国企業との競争激化懸念でハイテク株の上値は重かった。NYダウは前週末比+114ドル高の40,227ドル、ナスダックは▲16ドル安の17,366ドル。米長期金利は低下。10年債は4.213%、2年債は3.689%。

火曜日の東京市場は休場。アジア時間のドル円相場は142円台前半で上下したあと、午後から夕刻にかけては142円台半ばで推移。欧州市場に入ると70銭台に上昇したが米国市場にかけて142円ちょうど近辺に反落。その後は142円台前半で徐弓削し引けは142円20銭。

ユーロドル相場は1.1420で始まり1.14ちょうどを挟んでもみ合い横ばい。欧米市場でも変わらず米国市場引けは1.1390。

ユーロ円相場は162円台前半で上下したあと欧州市場では一時162円50銭に上昇したが米国市場にかけて反落。161円90銭をつけたあと162円ちょうど近辺で引け。米長期金利はさらに低下。

10年債は4.171%、2年債は3.656%。米国株は上昇。

トランプ政権が自動車部品の輸入関税を緩和。米国内生産車に使用した部品への関税の一部免除を決定した。これを好感して関連銘柄中心に買い。ラトニック商務長官は、ひとつの合意が成立した、と述べ、米政権の関税強硬姿勢の緩和への期待が株価を支えた。NYダウは前日比+300ドル高の40,527ドル、ナスダックは+95ドル高の17,461ドル。

米国の経済指標は弱め。ケースシラー住宅価格指数(2月)は前年同月比+3.9%と前月+4.7%から上昇鈍化。雇用動態調査(3月、JOLTS求人数)は前月が7,568千人から7,489千人へ下方修正され当月は7,192千人へ減少。ただ解雇も減少したことからさほど悪くないとの見方もあった。

消費者信頼感指数(4月)は前月92.9から86.0へ大幅悪化。5ヵ月連続の低下。期待インフレ率は1年が前月6.0%から7.0%へ、5年が4.9%から6.0%へ、いずれも大きく上昇した。

水曜日、祝日休場明けの東京市場では日経平均が5営業日続伸。関税交渉の進展期待で米国株が堅調だったことで投資家心理が安定。一方、日米交渉を前に様子見姿勢が上値を抑制。決算シーズンで個別材料により上下した。引けは月曜日比+205円高の36,045円。

ドル円相場は142円20銭で始まり堅調推移。夕刻から欧州市場にかけて143円10銭まで上昇した。ただ米国市場では上値重く、142円台後半~143円で上下。一時143円20銭近くに上昇したが引けは143円ちょうど近辺。

ユーロドル相場は1.1390で始まり1.1360に下落したあと1.14ちょうど近辺へ持ち直し。ただその後は上値重く米国市場では1.13台前半で上下して引けは1.1330近辺。総じてドルが堅調。ドルインデックスは99.63へ上昇した。

ユーロ円相場は162円ちょうど近辺で始まり161円70銭に押したあと欧州市場にかけて上昇し162円60銭へ。しかしその後は161円70銭に反落し162円を挟んで上下し引けた。

中国で発表されたPMI景況感指数(4月)は製造業が前月50.5から49.0へ、非製造業が50.8から50.4へそれぞれ悪化。財新製造業PMIも51.2から50.4へ悪化した。

欧州で発表されたGDP(1-3月期)は概ね予想通り。ドイツが前期比+0.2%、ユーロ圏が+0.4%だった。

米国のGDP(同、速報)は前期比年率▲0.3%と前期+2.4%からマイナスに転じ予想+0.4%を下回った。ただ輸入が関税引き上げ前の駆け込みにより急拡大して純輸出が大幅に赤字となったことが要因。

個人消費は前期+4.0%から+1.8%へ鈍化したが予想+1.2%を上回った。こちらも駆け込み消費の可能性。

ADP雇用報告(4月)は雇用者数前月比が+62千人と前月+155千人から増加ペースが大きく鈍化。シカゴ購買部協会景気指数(4月)は前月47.6から44.6へ大幅に悪化した。

個人所得・消費支出(3月)は前月比+0.5%・+0.7%と堅調。PCEデフレーター(消費支出価格指数)は前年同月比+2.3%と前月+2.5%から鈍化。コア指数も+2.8%から+2.6%へ鈍化した。

米国株はまちまち。GDPがマイナスとなったことで当初はNYダウが▲800ドル下落したがすぐに下げ幅を縮めた。PCEで過度なインフレ懸念が後退。利下げ期待も株価を支えた。一方、雇用に陰りもみえ重石となった。NYダウは+141ドル高の40,669ドル。ナスダックは▲14ドル安の17,446ドル。

米長期金利は小幅低下。10年債は4.165%、2年債は3.608%。

木曜日の東京市場では日経平均は6営業日続伸。この日は日銀が金融政策決定会合の2日目を開催し政策金利の据え置きを決定したが、公表した展望レポート、植田総裁がハト派的な姿勢を示したこと、およびそれを受けた円安進行が好感された。

上げ幅は一時+500円を超えた。半導体関連株がしっかり。マイクロソフト、メタ、が決算を受けて時間外で上昇したことが材料。引けは+406円高の36,452円。

日銀の展望レポートでは、2025年の成長率見通しが0.5%に、26年が0.7%に下方修正された。インフレ率見通しも下方修正。植田総裁は関税の悪影響で景気下振れ、インフレ率下振れの可能性が高まっている、と述べ利上げに慎重な姿勢を示した。

日本国債10年債利回りは1.25%へ低下。為替市場では円が全面安。

ドル円相場は143円ちょうどで始まり日銀会合の結果を受けて午後から夕方にかけて144円70銭台へ。欧州市場では144円20銭~40銭で推移したが、米国市場では145円60銭台へ上昇。その後も145円台半ばを中心に上下して引けは145円40銭。

ユーロ円相場は162円ちょうど近辺で始まり昼頃から欧米市場にかけて一貫して円安ユーロ高が進んだ。夕刻には163円20銭~40銭でややもみ合ったが米国市場では164円40銭台に上昇して引けは164円20銭。

ユーロドル相場は1.1330で始まり1.13ちょうど前後で方向感なく上下動横ばい、米国市場ではユーロ安ドル高に振れて引けは1.1290。ドルインデックスは100.17ポイントへ上昇した。

米国で発表された週次の失業保険申請件数は新規申請が241千件と前週222千件から増加、継続受給も1,841千件から1,916千件に増加した。製造業PMI(4月改定値)は速報50.7から50.2へ下方修正。

ISM製造業景気指数(4月)は前月49.0から48.7へ悪化したが予想48.0よりは強め。雇用指数は44.7から46.5へ、新規受注は45.2から47.2へ、それぞれ改善した。

米長期金利は小幅上昇。10年債は4.215%、2年債は3.696%。

米国株は上昇。NYダウは8連騰。ハイテク株が堅調。マイクロソフト、メタ、好決算が支えとなり、他のAI関連銘柄に買いが広がった。一方、決算が不芳な銘柄には売り。NYダウは前日比+83ドル高の40,752ドル、ナスダックは+264ドル高の17,710ドル。

金曜日の東京市場では日経平均が7日連騰。米国株の堅調、円安が手掛かりとなり一時前日比+500円上昇。日米交渉が徐々に進展するとの期待が支え。自動車関連への一部関税緩和も好感された。引けは+378円高の36,830円。

ドル円相場は145円40銭で始まり朝方に一時90銭へ上昇。ただその後反落して午後から夕刻にかけて145円10銭~20銭近辺で推移。欧州市場ではさらに下落して144円40銭。米国市場朝方にかけては144円40銭~80銭で上下して雇用統計の発表待ち。

結果はまずまずの数字だったが市場は反応薄。トランプ大統領が利下げ要求を繰り返したことでドルは下落し143円70銭台へ。ただ引けにかけては米長期金利の上昇に支えられ持ち直し引けは145円ちょうど近辺。

ユーロドル相場は1.1290で始まり朝方1.1270に下落したがその後は堅調。欧州市場にかけてユーロ高ドル安が進み1.1320~50で上下。米雇用統計発表後のドル安で1.1380へ上昇。その後引けにかけてはドルが持ち直し1.13ちょうど近辺へユーロ安ドル高となり引けた。

ユーロ円相場は上値が重かった。東京市場朝方は164円ちょうど~20銭近辺から60銭へ上昇。その後は反落して164円30銭近辺でもみ合い。欧州市場から米国市場にかけて163円50銭へ下落し引けは163円80銭近辺。

発表された米国の雇用統計(4月)は、非農業部門雇用者数前月比が+177千人と予想+138千人を上回った。ただ前月が+228千人から+185千人へ下方修正された。

失業率は4.2%で前月と変わらず。ただ労働参加率が前月62.5%から62.6%へ上昇しておりまずまずとみられた。

米国株は上昇。米中関税交渉の進展で貿易摩擦が緩和するとの期待が高まったことが支え。米国から交渉が打診され中国側が内容を精査していることが明らかになった。

雇用統計は雇用情勢にはまだ関税の悪影響が表れておらず過度な景気悪化懸念が後退。早期利下げ期待も弱まった。NYダウは前日比+564ドル高の41,317ドルで9営業日連騰。ナスダックは+266ドル高の17,977ドル。

米長期金利は低下した後上昇。10年債は雇用統計後に4.2%に低下したあと引けは4.313%。2年債は3.826%に上昇。ドル金利上昇が支えとなりドルインデックスは上昇し100.04ポイントで引けた。

◆今週の3つの注目ポイント


1.FOMC(米連邦公開市場委員会)、パウエル議長会見

火曜日・水曜日の2日間にわたりFOMCが開催され、終了後にパウエル議長が定例会見を行う。今回は政策金利の変更は予想されていない。

トランプ政権の関税政策が不透明感を高めるなかこれまでパウエル議長は様子見姿勢を続けてきた。スタグフレーションリスクの懸念が強まるなか、インフレと景気悪化いずれもいよいよ顕在化し始める時期となる。

現時点でどのような判断を示すか。市場では早期利下げ期待が強まっているが、利下げスタンスは3月会合で示された今年2回から変化の兆しがみられるか。

2.米国の経済指標

主要経済指標は概ね一巡したが、引き続き景気動向、とくに景気悪化の気配に敏感な状況が続く。

月曜日 PMIサービス業(4月)改定値(速報51.4、前月54.4) ISM非製造業景気指数(4月、予想50.4、前月50.8)

火曜日 貿易収支(3月、予想▲1,290億ドルの赤字、前月▲1,227億ドルの赤字)

木曜日 週次の失業保険申請件数(継続受給者数、前週1,916千件)

3.中国の経済指標米国の高率関税の影響を最も受ける中国経済の動向は引き続き注目。貿易収支の動向は米中の関税交渉の影響を受け、また影響を与えるため一段と注目される。

火曜日 財新サービス業PMI(4月、予想51.7、前月51.9)

金曜日 貿易収支(4月)

貿易収支は前月が1,026億ドルの黒字。輸出は前年同月比+12.4%、輸入は▲4.3%、と、中国から米国への駆け込み輸出が際立っていた。

4月もなおそうした傾向が続くか。翳りが見え始めるか今後も注目される。

ほか、今週は引き続き日本で決算発表が多く株価動向が注目される。

◆今週のMRA's Eye


局面切り替えのドル高円安、中期的ドル安円高リスクバイアスは不変

先週は急速なドル安と円高の双方が一服した。米国においては株価が堅調に推移。NYダウは9営業日連騰。米長期金利は上昇したが、リスク回避の緩和や株高に応じた動きで米国債価格は「健全な」下落。ドルは底固く推移した。

米金融市場におけるトリプル安は一服している。トランプ政権の関税政策に微調整や一部緩和の動きがみえたことで、市場の過度な懸念が緩和したことが最大の要因。

米国経済の最大の懸念である米中貿易摩擦、高率関税の応酬が緩和に向かうのではないか、との期待が市場心理を支えた。関税政策からくる過度な景気への悪影響への懸念が相乗的にドル安をもたらしていた。

しかし4月下旬以降、これらが同時に緩和。足元で米国の経済指標に弱い数字が散見されるものの、先週末の雇用統計がさほど悪い数字とならず一定の安心感をもたらしたようだ。

トリプル安に対して、市場に安心感をもたらしとくに米国債利回りの上昇にブレーキをかけるべくトランプ大統領はFRBに過度な利下げ圧力をかけた。

しかしこれがかえって市場の不信を高めトリプル安を促す結果に。足元ではそうした過度な金融政策への介入も緩和している。ドルインデックスは一時97ポイント台後半まで下落していたが、4月下旬以降に持ち直して先週は100ポイントを回復した。

ただ米国の経済指標は企業の景況感悪化と家計のマインド悪化の双方が確認され改善の兆しはない。そうしたソフトデータが生産や雇用、消費の悪化を招き、いわゆるハードデータでも景気悪化が確認されるかが今後の注目点だ。

高率関税導入およびその後の交渉過程における不透明感は企業活動の抑制につながる。サプライチェーンの見直しやコスト上昇が今後雇用抑制につながるリスクがある。

消費者マインドの悪化は、目下のところ関税によりインフレ期待が急速に上昇したことが主要因のようだ。しかし雇用の不透明感が加わればさらに消費行動が慎重になる可能性がある。

足元で個人消費が底固く推移していることが確認されたが、価格上昇前の駆け込み需要で押し上げられた可能性があり、5月以降のデータを精査する必要がある。

雇用に関するデータはハードデータにも翳りがみえる。週末の雇用統計こそ非農業部門雇用者数の増加が17.7万人増加と予想より多かったが、前月が22.8万人から18.5万人に下方修正された。

ADP雇用報告では前月15.5万人増から6.2万人増へ急減。雇用動態調査の求人数は減少している。

解雇が減っていることが好感されたが、企業に現状維持の守りの姿勢が強まった結果ともいえる。新たな職場を求めて自主的に退職する労働者が減少していることにも家計の守りの姿勢が垣間見える。

ハードデータがここから悪化を明確とするか、ここから2~3ヵ月が重要な時期となる。

市場では関税への過度な懸念が緩和し交渉への期待が高まっている。しかし実際には高率関税が導入されたままだ。市場では利下げ期待も高まっているがFRBは様子見姿勢で利下げは実施していない。

景気を持ち直す材料は何もなく、過度な懸念が緩和しただけ。なおも米国景気は悪化基調にあるとみておいたほうが良いだろう。

今週のFOMCでは利下げが見送られることが確実だ。市場では6月利下げを4割程度は織り込んでいるが、当局はそこまで前のめりになっているか。

確かに、FRB内には関税によるインフレ率上昇は一時的で、景気悪化による需給面でのインフレ低下圧力が勝るとの見方もある。むしろ景気悪化が明確となれば躊躇なく利下げを実施するとの姿勢は強まっているようだ。

難しいのはタイミング。関税引き上げによるコストアップが価格転嫁されるのは5月以降との見方が多い。なお足元では駆け込み輸入による在庫で何とか賄っているようだ。

ただその在庫があと1ヵ月もすれば尽きて値上げせざるを得ないという。インフレ率上昇が一時的と判断し、景気悪化に対処するため利下げを実施との決定が6月会合でできるかは微妙だ。

またトランプ関税引き上げの猶予期間である90日の期限は7月初。トランプ政権はそれまでに交渉を急ぐ姿勢だが、合意が得られるかは不透明。

合意となれば景気にとって安心材料であり、むしろ利下げを急ぐ必要はなくなりそうだがどうか。まずは今回5月の会合でどのような視点ないし姿勢が垣間見えるか注目される。

FRBよりも明確な見方を示したのが日銀、植田総裁だ。展望レポートでは成長率見通しを大きく下方修正。インフレ見通しも下方修正した。総裁は、金融緩和を調整していく、つまり利上げを継続する姿勢を維持しつつも、先行きは不透明となり、下方リスクが大きいと述べた。

円金利先高観が後退し円長期金利は低下。円先高観が弱まり急速な円売り戻し、円安が進んだ。日米関税交渉で為替が議題に上らなかったことが再確認されたことも円先高観の緩和にひと役買っている。

ただ日米が緩やかなドル安円高を望んでおり、ドル高円安にはネガティブであることは不変だろう。そうしたなかで積極的に円を売るまでには至らないとみられる。シカゴ通貨先物の円の投機ポジションは、29日火曜日時点で18万枚近くの円買い越しで過去最大。これがどの程度解消、売り戻されたか。

ただあくまでも円売り戻しに過ぎず、円買い越しに転ずる可能性は低い。ポジションが大きいだけにインパクトは大きいが、足元の動きは限定的な円売り、円安とみたほうが良さそうだ。

米国で関税懸念、景気懸念が緩和する一方、日本では関税懸念、景気懸念が強まった。実際には米国の影響のほうが大きいはずだが、こうした相矛盾するようなマインドの変化がドル高円安をもたらしたとすれば持続困難だろう。

トランプ関税に大きな修正、関税引き上げの明確な回避、さらには関税引き上げの撤回とならなければ状況変化とはいえず。緩やかなドル安円高を促す状況に変わらない。

トリプル安など急速なドル安局面は終了。しかしここからは緩やかなドル安円高局面が続く可能性がある。

足元のドル高円安は値動きとして小さくないが、その局面切り替えにおける調整ドル高・調整円安とみておいたほうが良いのではないか。引き続き中期的リスクバイアスはドル安円高方向とみる。


主要指標は、有料版「MRA外国為替レポート」にてご確認いただけます。
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