米関税引き上げ延期で後場急騰
- MRA商品市場レポート
2025年4月10日 第2949号 商品市況概況
◆昨日の商品市場(全体)の総括
「米関税引き上げ延期で後場急騰」
【昨日の市場動向総括】
昨日の商品市場は下落後上昇に転じた商品が目立った。
トランプ政権の関税政策が、関税を掛けている米国の経済を悪化させるとの懸念や、一部報道で海外投資家が保有する米国の資産(株や債券)に対して課税を検討している、と報じられたことで市場参加者の米国回避、それに伴う株安がリスク回避の動きを強めたことが価格を下押しした。
しかし、さすがにこの状況だと「米国経済が壊れて、立ち直れない状態になる」と諫言した当局者がいたと考えられ、米国に対して報復関税を行っていない国に対しては関税引き上げ適用を90日延期する、としたことで米ドル・米株・米債券に買い戻しが入る中で、買い戻される商品が目立った。
これまでは米景気の先行きが余りに不透明であるため、保有する資産の現金化、自国回帰(レパトリ)の動きが強まっていたと考えられるが、これが逆転した形。
しかし、報復関税を行ったカナダ、メキシコに対してもUSMCAに準拠していない製品は当初の25%から10%に引き下げるとした。よく分からないのが報復関税を決定したEUの扱いだが、コメントが明確に出ていないため緩和されない可能性がある。
中国に対しては合計で125%の関税を課す、としており実質、禁輸措置を行っているに等しい状況。今回の関税政策を、「初めからその意図でやっていた」と評価するならば、米政権の思惑通りになったといえる。
しかし、今回の一連の政策が、米株安・ドル安・債券安のトリプル安を引き起こし、米国債の格下げ(恐らくこれが起きると世界的な信用収縮に繋がるため、世界経済への打撃は最も深刻になる)に促されて決断した、という可能性も低くないと考えている。
・比較的大きく無い関税(10%)を導入して緩やかに米国に製造業を回帰させる(25%、50%という数字を見ているため小さく見るが、10%は小さくないため、米国へのシフトを考える製造業が出てもおかしくない)
・報復関税に付き合う国(中国)を対象に、貿易に関して対中包囲網を構築する
と、上手い具合に中国のみ高関税の世界に引きずり出した形だ。そしてもし、当初想定の通りであれば、関税問題を材料に市場がクラッシュするリスクが大きく後退することになるため、リスク資産価格には上昇圧力が掛かることになる。
市場参加者は景気後退局面入りをコンセンサスとしていたが、後退局面入りが回避されれば、当初の見通し通り「緩やかな回復~緩やかな減速」見通しに復帰する可能性も出てきた。
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