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不透明感のなか揺り戻し
  • MRA外国為替レポート

2025年3月24日号

◆先週の市場総括


先週は週央の日米双方の金融政策決定会合が市場の最大の注目材料。日銀は事前報道通りに金利据え置き。植田総裁は会見で景気物価動向が想定通りなら利上げ継続との方針をあらためて表明した。

春闘は想定よりやや強い結果、海外発の不透明感は次回会合にはある程度消化できる、と述べた。

米国ではFOMCで想定通り金利据え置き。ただバランスシート縮小のペースを4月から緩和することを決定。利下げに前向きとの見方も生じた。注目のメンバー予測では今年の利下げ回数の中央値は2回と12月と不変。ただ不透明感の高まりで予測は0回から3回まで広がった。

為替市場では日米の会合に向けて円売りドル買いが続いた。ドル円相場は週初148円台後半から一時150円台へ。ただFOMCを受けてドルは反落。148円台前半へ。週末にかけては持ち直し149円台前半。

ユーロドル相場は一時1.09台半ばまで上昇したが週末にかけてドル高に押されて1.08近辺で引けた。

米国株は下げ一服。関税に関するあらたな悪材料がなく、FRBが緩和気味のスタンスとの見方が支え。SP500は週間で上昇。日経平均も概ね37,000円台後半で底固く推移。TOPIXや日経400指数は堅調だった。

月曜日の東京市場では日経平均が上昇。前週末の米株高を受けて買い優勢。このところ下げていた半導体関連の一角が買い戻され急伸。一時+500円高。金利先高観で銀行株が堅調だった。引けは+343円高の37,396円。

ドル円相場は堅調。148円80銭で始まり50銭近辺~90銭で上下したあと午後は149円を挟んで上下。欧州市場では148円40銭に下落したが米国市場では149円10銭に反発。その後も148円40銭台に反落したが反発して149円10銭~30銭で上下して引けは149円20銭。

米国で発表された経済指標には弱い数字が目立ちドル安圧力となったが、自動車関連を除く小売売上高が堅調で個人消費への過度な不安が後退した。

NY連銀製造業景気指数(3月)は前月5.7から▲20.0へ大幅悪化。NAHB住宅市場指数(3月)は前月42から39へ悪化。

小売売上高(2月)は前月比+0.2%と前月▲1.2%からプラスに転じたが予想+0.6%を下回った。ただ除く自動車関連では前月▲0.4%から+0.3%に持ち直し市場予想通りしっかり。

米10年債利回りは前週末とほぼ変わらず4.309%。2年債はやや上昇して4.048%。

ユーロドル相場は東京市場では1.0880近辺で小動きもみ合い横ばい。欧州市場では1.0910へ上昇したあと、米国市場では1.0930へ上昇し1.0910~30でもみ合い引けは1.0920。

ユーロ円相場は堅調。東京市場では161円80銭で始まり午後は162円を挟んで161円90銭台~162円20銭で上下。欧州市場では一時161円70銭に下げる場面があったがすぐに戻して162円近辺で推移。米国市場では162円50銭に上昇しさらに終盤には163円ちょうどに続伸して引け。

米国株は上昇。消費への不安が緩和し消費関連が買われた。短期的な下げ過ぎ感から押し目買いも支え。NYダウは前週末比+353ドル高の41,841ドル。ナスダックは+54ドル高の17,808ドル。VIX指数はやや低下して20.51。OECDは世界経済見通しを下方修正した。

火曜日の東京市場では日経平均が続伸。前日の米国株が堅調。個人消費への不安が後退。午前中に一時+600円超買われて38,000円台。米投資家ウォーレン・バフェット氏が商社株を買いましたことが判明。バリュー株が買われ銀行株もしっかり。引けは+448円高の37,845円。

ドル円相場は底固く推移。149円20銭で始まり午後から欧州市場にかけては149円台後半で上下動。高値は149円90銭と150円に迫った。ただ米国市場では149円10銭へ反落。149円台前半で上下し引けは149円20銭台と東京朝方と不変。

ユーロドル相場は1.0920で始まり東京市場から欧米市場を通じて終始1.09台前半で上下もみ合い。欧州市場序盤に一時1.0950へ上昇したが押し戻された。引けは1.0940。FOMCの結果を前に様子見。

ユーロ円相場は東京市場では163円ちょうど近辺で始まりもみ合い。夕刻から欧州市場にかけて164円20銭に上昇し164円をはさんでもみ合い。米国市場に入ると163円ちょうど近辺へ反落して163円台前半で上下して引けは163円40銭。

米国株は主要3指数がそろって反落。ハイテク株が下げを主導した。代表7銘柄の通称マグニフィセント7が50日移動平均線を下回り投資家心理が悪化した。ナスダックは前日比▲304ドル安の17,504ドル。NYダウは前日比▲260ドル安の41,581ドル。VIX指数は21.70へ上昇。

米長期金利は2年債が4.044%と横ばい、10年債は4.285%に小幅低下した。

発表された米国の経済指標は軒並み強め。住宅着工件数(2月)は季節調整済み年率換算で1,501千戸と前月1,366千戸から予想を上回る大幅増。

鉱工業生産(2月)は前月比+0.7%と前月+0.5%から加速。設備稼働率は77.8%から78.2%へ上昇した。

ドイツではZEW企業景況感指数(3月)の期待指数が前月26.0から51.6へ大幅改善。財政支出拡大を許容する動きに期待が高まったとみられる。

ウクライナ和平を巡る米ロ会談では部分停戦へ合意。一方、パレスチナ情勢ではイスラエルがガザを攻撃したことで状況が悪化した。

水曜日の東京市場では日経平均が小幅反落。この日は日銀の金融政策決定会合の2日目。結果は予想通り政策金利据え置き。結果を受けて昼前に先物中心に買われ一時前日比+280円高。ただ事前予想通りで失速。FOMCの結果待ちで様子見姿勢が強まり引けは▲93円安の37,751円。

ドル円相場は149円20銭台で始まり30銭~60銭でもみ合い。日銀の利上げ見送りを受けて午後には150円ちょうど近辺へ上昇。

その後15時半からの会見で植田総裁は、経済物価見通し通りなら利上げ継続、春闘はやや強め、海外発の不確実性は次回会合である程度消化できる、と述べた。

日本国債10年債利回りは1.515%へ小幅ながら上昇。これを受けて149円10銭台へ下落。ただ欧州市場では149円80銭中心に上下して米国市場にかけて一時150円10銭台へ上昇した。150円手前でFOMCの結果待ち。

結果は予想とおり金利据え置き。ただ資産圧縮(量的引き締め)のペースを4月からペースダウンすると決定。利下げに前向きととられた。

注目のメンバー予測では政策金利見通しの中心値は今年2回の利下げで12月予測と変わらず。ただ不透明感を受けて、1回、0回、が増え、同時に3回も増えて予測がばらついた。

成長率見通しは2.1%から1.7%へ下方修正、インフレ率見通しは2.5%から2.7%へ上昇修正した。市場の利下げ観測は6月と7月がともに3割程度で拮抗。発表後には148円70銭近辺へ下落。その後148円台後半で上下して引けは148円60銭。

ユーロ円相場も同様の値動き。163円40銭で始まり60銭台に上昇して30銭~60銭台で上下したあと80銭台に上昇。しかし植田総裁会見を受けて162円20銭へ急落。その後欧州市場では163円60銭へ戻したが米国市場では再び反落して引けは162円30銭。

ユーロドル相場は1.0940で始まりユーロ安円高に押されて1.0870へ下落。その後は1.09ちょうど近辺でもみ合い、米国市場では1.0860~1.0940で上下して引けは1.09ちょうど近辺。

米国株は上昇。利下げ見通しが維持されたこと、景気減速懸念も利下げが下支えとの見方が株価を支えた。資産圧縮ペースの減速決定が後押し。

長期金利の低下も好感。一方、戻り売りが上値を抑えた。NYダウは前日比+383ドル高の41,964ドル。ナスダックは+246ドル高の17,750ドル。米10年債利回りは4.235%へ、2年債は3.977%へ低下した。

木曜日の東京市場は休場。アジア時間のドル円相場は148円60銭で始まり20銭に下落したあと40銭近辺でもみ合い再び20銭に下落。米国市場でのドル安円高の流れを受けて上値が重かった。

欧州市場に向けては148円80銭に持ち直し40銭~60銭で推移し、米国市場では90銭へ上昇して70銭~90銭でもみ合い引けは80銭近辺。

ユーロは下落。アジア時間は1.09ちょうど~20でもみ合い、欧州市場に入ると下落して1.0840~60へ、さらに米国市場では1.0810台へ下落した。ただ引けは持ち直して1.0860。

ユーロ円相場は162円30銭から161円60銭台へ、さらに欧州市場では続落し161円40銭~70銭、さらに160円80銭~161円20銭でもみ合い。米国市場では持ち直し161円50銭で引けた。

米国株は小幅安。FRBのハト派的なスタンス、強い住宅指標、を好感も関税への懸念、個人諸費への懸念は拭えず。NYダウは前日比▲11ドル安の41,953ドル、ナスダックは▲59ドル安の17,691ドル。

米長期金利はほぼ横ばい。10年債は4.24%、2年債は3.963%。

米国の経済指標はフィラデルフィア連銀製造業活動指数(3月)が前月18.1から12.5へ悪化。景気先行指数(2月)は前月比が▲0.3%と前月に続きマイナス。

一方、中古住宅販売(2月)は季節調整済み年率換算で426万戸と前月408万戸から増加した。

欧州ではスイス中銀が政策金利を0.50%から0.25%へ引き下げ日銀の政策金利0.50%を下回った。イギリス中銀は4.50%で据え置き利下げに慎重。スウェーデンも2.25%で据え置き。

金曜日の東京市場では日経平均が小幅安。銀行株が堅調。配当権利取りの動きが支えとなり一時+200円高も週末の持ち高調整売りに押された。引けは▲74円安の37,705円。

ドル円相場は底固く推移。148円70銭で始まり午後には149円60銭へ上昇。夕刻は149円30銭~50銭で推移。ただ欧州市場から米国市場朝方にかけて148円60銭へ押し戻された。その後は149円手前で上下したあと149円台に乗せ20銭~40銭で推移し引けは149円30銭近辺。

ユーロドル相場は1.0860で始まり夕刻は1.0820~40と上値重く推移。米国市場では1.08ちょうど近辺へ下落し引けは1.0810台。総じてドルがしっかり。

ドルインデックスは104.15ポイントと3月6日以来の104ポイント台。週末にドルの買い戻しが入った。

ユーロ円相場は161円40銭で始まり161円台後半で上下したあと夕刻は一時162円ちょうど近辺。ただその後米国市場にかけては軟調。161円を挟んで上下して一時160円70銭。引けにかけて持ち直して161円50銭。

米国株は小幅高。トランプ大統領が相互関税には柔軟性があると述べたことで強硬姿勢を緩めるとの期待が支え。中国との関税協議を行うとも伝わった。

朝方は売り先行でNYダウは一時▲500ドル安となったが持ち直し引けは+32ドル高の41,985ドル。ナスダックは+92ドル高の17,784ドル。VIX指数は19.28にさらに低下。

米長期金利はまちまち。10年債は4.247%とやや上昇。2年債は3.954%にやや低下した。

◆今週の3つの注目ポイント


1. PMI景況感指数(3月速報)

月曜日にPMI景況感指数(3月速報)が発表される。ユーロ圏製造業は予想48.2、前月47.6、サービス業は予想51.0、前月50.6、ドイツ製造業は予想47.0、前月46.5、サービス業は予想51.6、前月51.1。いずれも前月からやや改善予想。

一方米国は、製造業が予想51.8、前月52.7、サービス業が予想50.9、前月51.0、といずれも前月からやや悪化予想。

欧州の景況感改善、米国の悪化、と、さらに欧米間景況格差が縮小する結果となるか。

2. 米国の経済指標

個人消費への懸念が高まるなか、今週はとくに消費関連指標への注目が高そうだ。

火曜日 ケースシラー住宅価格指数(1月、前年同月比、前月+4.5%) 新築住宅販売(2月、季節調整済み年率換算、予想680千戸、前月657千戸) 消費者信頼感指数(3月、コンファレンスボード、予想94.0、前月98.3) リッチモンド連銀製造業指数(3月、前月6)

水曜日 耐久財受注(2月、前月比、予想▲0.7%、前月+3.1%)

木曜日 GDP(10-12月期確報) 週次の失業保険申請件数

金曜日 個人所得・消費支出(2月、前月比、予想+0.4%・+0.6%、前月+0.9%・▲0.2%) 消費支出価格指数(PCEデフレーター、前年同月比、予想+2.5%、前月+2.5%、コア、予想+2.7%、前月+2.6%) ミシガン大学消費者態度指数(3月確報、速報57.9)

3. FRB当局者発言

FOMCが終わりFRB当局者の発言が解禁された。メンバーの利下げ予想は中央値から上下にバラつきが増したが、各人はどのような見方か。インフレ懸念の程度や景気悪化リスクへの認識が注目される。

月曜日にアトランタ連銀総裁、火曜日にNY連銀総裁、水曜日にセントルイス連銀総裁、木曜日にリッチモンド連銀総裁、の発言機会がある。

◆今週のMRA's Eye


不透明感のなか揺り戻し

先週、日米で金融政策決定会合が開催され政策金利は据え置かれた。いずれも想定の範囲内の結果で、植田総裁、パウエル議長、双方の会見でもサプライズはなかった。

不透明要因が多く、また景気物価面から慌てて政策変更を要する差し迫った状況でもないなかでは、しばらく様子見は妥当だ。ただバイアスは依然として日銀が利上げ、FRBが利下げ、で逆行した状況には変わらない。

日銀を巡る状況は利上げを後押ししている。

景気物価動向には著変なく日銀の想定通りに推移している。景気は底固く推移。インフレ率は低下しつつもなお高い水準にとどまっている。

週末に発表されたCPI(2月)は前年同月比で総合指数が+3.7%と前月+4.0%から鈍化したが予想+3.5%は上回った。除く生鮮食品のコア指数では+3.0%と前月+3.2%から鈍化したが予想+2.9%より高め。除く生鮮食品・エネルギーのいわゆるコアコア指数では+2.6%と前月+2.5%からやや上昇率が加速した。

賃金動向は春闘の賃上げ率が昨年に続き高水準。植田総裁は物価賃金ともにオントラック、つまり想定通り推移している、との認識だが、賃金についてはやや強めと述べた。賃金物価の好循環が続いているとの見方には著変ない。

また企業物価の上昇率が4%と高い水準で推移していることが景気に悪影響を及ぼしているとの認識も示した。これは円安の悪影響を間接的に指摘したと解釈してもよいだろう。

総裁は長期金利の上昇についても問題視していない。市場が先々の金融政策やインフレ率を加味して長期金利が上昇している現状は自然とも述べた。現状の長期金利上昇と円高では円安による経済への悪影響のほうをより問題視している可能性が高い。

こうした状況で利上げに前向きな姿勢は変わらず、利上げ条件は整っているとの認識だろう。

インフレ率がコア指数で2%台半ば、総合指数では3%台の後半のもと、政策金利は0.50%。インフレ率を差し引いた実質政策金利はなお大きくマイナスで緩和的。景気を支える水準にある。

株価は底固く推移。米国株が調整しているのに対し、日本株の底固さは際立つ。金利との相対比較でみた株価の割高割安度合いは、米国株が割高、日本株が割安であることもそうした値動きの違いをもたらしている。

日本経済を巡る不透明要因は主として海外要因だ。

米国の通商政策、関税引き上げによる悪影響、米国景気の悪化や世界景気の悪化懸念だ。この点に関して、植田総裁は4月30日・5月1日に開催される次回会合には、ある程度見極めがつくと述べた。

注目は利上げのタイミング。従来の市場の見方は半年に1回程度のペースが大勢で、これによれば7月会合か、早くても6月会合となる。ただ政治日程を加味するかどうか。7月の参議院選挙の直前6月が可能か、7月末か。あるいは次回もありうるか。ただいずれにしても中期的な利上げサイクルのなかでの数か月のブレ。円金利先高観が強い状況が今後も続く。

海外勢も円の先高観を維持している。投機筋は円買いに傾いたまま。シカゴ通貨先物の円ポジションは過去最大の円買い越しが3週間ほど維持されている。

先週の日米の金融政策決定会合に際して手仕舞いの円売りが入ったとみられるが一時的だろう。米国経済とくにトランプ政策による景気先行き懸念、あるいは不透明感が解消するかどうかが鍵だ。

米国ではFOMCで予想通り政策金利が据え置かれた。メンバーの予測では成長率は下方修正、インフレ率は上方修正、となり政策対応の難しさを示した。

政策金利予測では中央値こそ今年の利下げ回数は2回、合計0.50%と、中央値そのものは12月会合時点の予測と不変。ただ0回、1回、もあり、一方で3回も前回より1名増えた。上下にばらついて極めて不透明な見通しを示している。

全体としてタカ派に寄ったかハト派に寄ったか。市場の受け止めは分かれている。利下げ回数だけでは何ともいえず。資産圧縮のペースダウンを4月から開始する点だけとればややハト派寄りか。

インフレリスクがないとすれば、景気減速悪化の可能性は以前より高まっている。関税引き上げと政府人員削減で財政が景気下押し圧力をかけている。関税のインフレ圧力は一時的との見方が大勢のようで、利上げ要因、ないしは利下げを妨げる要因となる可能性が低い。

トランプ大統領が利下げの必要性に言及したことで、市場の利下げ期待は高まっているようだ。

ただこちらも時間軸の問題。どこまで利下げを先延ばしにするか。市場では6月会合と7月会合がともに3割ほどの確率で想定されている。トランプ政権の政策が転換しない限り、景気には下押しリスクが拭えない。

先週はトランプ大統領が関税政策を柔軟にする気配がみられたことがドル安にややブレーキをかけた。ただドル先高観を醸成するには到底至らず。ドル先安観の緩和、ドル売りポジションの縮小にとどまる。

結果、緩やかなドル安円高基調を変更する材料は今のところみられず。短期的には投機ポジションの手仕舞いによるドル高ないし円安リスクを孕みつつ、年内はメインシナリオよりもドル安円高が想定よりも強まるリスクに傾く。

145円割れから140円を試す可能性を視野に入れておく必要はある。


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