リスク回避に傾くなか内外金融政策バイアスが逆行
- MRA外国為替レポート
2025年2月10日号
◆先週の市場総括
先週は週初から週末までほぼ一貫してドル安円高が進んだ。週初は対カナダ・メキシコへの25%関税発動との方針決定を受けてリスク回避が急速に強まった。日経平均は1,000円を超える下落。
為替市場ではクロス円相場を中心に円高で始まった。前週末にユーロ円相場は161円近辺で取引を終えていたが158円台半ばに円高へ飛んで始まった。
その後は両国に対する関税発動が延期となり160円台半ばまでユーロ高円安に揺り戻した。ただその後は日銀が追加利上げに積極的との見方が強まり円は全面高となった。
ドル円相場は当初156円近くで推移しいたがその後は反落。発表された米国の経済指標が弱め、雇用緩和を示したことで利下げ観測が強まり米長期金利が低下しドルの上値が重くなった。ドル円相場は一時150円台へ下落し週末は151円40銭。
ユーロ円相場は156円40銭で引けた。トランプ大統領が週末にあらためて相互関税の導入を仄めかしたことで株価が下落。一段と円高が進んだ。
米国株は関税発動の延期、利下げ期待の持ち直し、米長期金利の上昇一服、などが支えとなったが週末に下落。日経平均は日銀の利上げ観測が強まったことと円高が重石となり38,000円台を中心に上値重く推移した。
月曜日の東京市場では日経平均が急落、1,000円を超える大幅安。週末にトランプ大統領がカナダおよびメキシコに対して25%の関税適用を決定、中国にも10%の追加関税を適用する方針としたことから警戒感、リスク回避が一気に高まった。
世界経済への悪影響を懸念して海外勢が先物中心に売り。影響の大きい自動車関連株が大幅安となった。引けは前週末比▲1,052円安の38,520円。
ドル円相場は154円80銭で始まり上昇して155円70銭~80銭近辺で推移。その後は30銭~70銭で上下した。欧州市場に入ると反転下落。154円30銭へ。その後80銭に戻したが154円ちょうど近辺に続落した。
しかし発表された米国のISM製造業景気指数(1月)が強い数字だったことで反発。154円60銭~80銭で上下したあと155円ちょうどへ上昇。引けは154円70銭近辺。
ユーロ円相場はリスク回避から円高に飛んで始まった。先週末は160円80銭台で終えていたが、急落して158円40銭で始まった。すぐに159円70銭に戻したが反落して159円ちょうど~20銭で推移。欧州市場に入ると再び下落し158円割れに大幅下落。
その後米国市場では159円80銭に反発したあと158円台後半に下落したものの底固く持ち直し。引けは160円ちょうど近辺。
ユーロドル相場も前週末の1.0360から1.0230へユーロ安ドル高に飛んで始まった。その後は1.0210台に下落したあとじりじりと反発し欧州市場では1.0280へ。米国市場では1.03を挟んで上下し引けは1.0340。
ドルインデックスは前週末からやや下落して108.41ポイント。
米国株は乱高下の末に下落。NYダウは一時▲600ドル超下落したがトランプ大統領が対メキシコへの関税発動を延期したこと、対カナダ関税も延期の方針とみられたことで反発。
ただなお関税競争への懸念が残り上値は重かった。NYダウは前週末比▲122ドル安の44,421ドル、ナスダックは▲235ドル安の19,391ドル。VIX指数は18.62と上昇。
米10年債利回りは一時4.46%台に低下したが反発して4.553%。2年債は4.251%。
発表された米国のISM製造業景気指数(1月)は前月49.3から50.9へ改善し、予想49.5を大きく上回るとともに景況感の分かれ目である50を上回った。雇用指数が45.4から50.3へ、新規受注指数が52.1から55.1へ改善した。
ユーロ圏CPI(1月速報)は前年同月比+2.5%と前月+2.4%からやや加速、コア指数は+2.7%で変わらず。
火曜日の東京市場では日経平均が反発。対カナダ・メキシコ関税発動延期で自動車関連株を中心に買い戻しが活発化。上げ幅は一時+600円を超えた。しかしなおも関税への警戒感は残り多くの銘柄が前日の下げの半値戻しもできず。指数は押し戻されて上げ幅を縮めた。引けは+278円高の38,798円。
ドル円相場は154円70銭で始まり朝方155円40銭へ上昇。その後は一時154円80銭台に下落する場面もあったがすぐに戻し、欧州市場から米国市場にかけても概ね155円台前半で上下動。
その後発表された米国の弱い雇用関連指標を受けて154円20銭に下落し引けは154円30銭。
ユーロ円相場は引き続き値動き荒く方向感の定まらない展開。160円ちょうどで始まり上昇して50銭~60銭でもみ合い。その後は反落して160円10銭近辺でもみ合い、さらに159円20銭まで下落した。
欧州市場にかけては反発して160円60銭台へ。160円台前半で上下したあと米国市場では160円ちょうど近辺に下落してもみ合い引けは160円20銭近辺。
ユーロドル相場は1.0340で始まり上値重く午後には1.0270台へ下落。しかしその後は反発して欧州市場では1.0350へ、さらに米国市場にかけて1.0380へ上昇しもみ合い引けた。
ドルインデックスは108ポイントちょうど近辺に小幅下落。
米国株は反発。トランプ政権が対中追加関税を発動し、中国が報復措置に出たことで、NYダウは一時▲100ドル下落した。しかしこの日発表された雇用関連指標が弱く労働市場が過熱していないことを示したことで週末の雇用統計に対する懸念が後退。長期金利が低下して支えとなった。
NYダウは前日比+134ドル高の44,556ドル、ナスダックは+262ドル高の19,654ドル。VIX指数はやや低下して17.21。
10年債は4.521%へ、2年債は4.216%へ低下した。
発表された雇用動態調査(12月、JOLTS求人数)は前月8,098千人から7,600千人へ大きく減少し予想7,880千人を下回った。製造業新規受注(12月)は前月比▲0.9%と前月▲0.8%に続き大幅な減少。
水曜日の東京市場では日経平均が小幅高。前日の米ハイテク株高を支えに主力株中心に買い先行となり朝方は一時+300円超上昇。
しかし強い賃金統計で追加利上げ観測が強まり、円高とともに重石。追加関税への懸念もなお燻った。引けは+33円高の38,831円。
ドル円相場は154円30銭で始まり40銭台に上昇したが昼過ぎにかけて153円10銭台へ下落した。
朝方発表された毎月勤労統計(12月)で現金給与総額が前年同月比+4.8%の上昇と前月+3.9%から加速し予想+3.7%を大きく上回った。実質賃金も+0.6%と2か月連続でプラス。また日経サービス業PMI(1月)は前月50.9から53.0へ改善した。
赤沢経済再生相は、足元はインフレ状態との認識で植田総裁の認識と齟齬はない、と述べた。
これらを受けて日銀の追加利上げ観測が強まり、円が買われた。ドル円相場は夕刻にかけては153円台前半で上下。欧州市場に入ると152円50銭台まで円高が進んだ。米国市場にかけては反発じり高となり153円20銭へ。ただ弱い米経済指標を受けて米長期金利が低下すると152円10銭台まで下落して引けは152円60銭近辺。
ユーロ円相場も同様の値動き。160円20銭台で始まり午前中に159円割れに下落。その後159円50銭台に戻したが欧州市場では158円80銭台へ下落した。米国市場朝方は159円60銭に反発したがドル円相場の下落につれて158円50銭に下落し引けは158円70銭。
ユーロドル相場は東京市場では1.0380で始まり動意薄。もみ合い。夕刻から欧州市場にかけて1.0430へ上昇し1.04ちょうど~1.0430で上下。米国市場では上値重く引けは1.04ちょうど近辺。
ドルインデックスは107.62ポイントへ下落した。
発表された米国のADP雇用報告(1月)は雇用者数前月比が+183千人と前月+122千人から増加幅が加速し予想+155千人を上回った。
一方、ISM非製造業景気指数(1月)は前月54.1から予想54.3への小幅改善に反して52.8へ悪化。雇用指数が51.3から52.3へ改善したが、新規受注指数が54.4から51.3へ悪化した。
米10年債利回りは4.426%へ、2年債は4.186%へ低下。
米国株は上昇。長期金利低下が支えとなり、個別決算を材料に買われた銘柄が支え。NYダウは前日比+317ドル高の44,823ドル、ナスダックは+38ドル高の19,692ドル。
木曜日の東京市場では日経平均が続伸。前日の米ハイテク株高、長期金利低下が支えとなり堅調。値がさ半導体関連株が買われた。一方、円高で輸出関連株の一角は売られた。引けは前日比+235円高の39,066円。
為替市場では午前中に日銀の追加利上げ観測が強まったことで急速に円高に振れた。ドル円相場は152円60銭台で始まり151円80銭近辺へ急落。
日銀田村審議委員が、2025年度後半に1%まで利上げの必要がある、中立金利は1%と決め打ちしているわけではない、物価上昇リスクはだんだん膨らんでいる、利上げペースは半年に1回と決めているわけではない、0.75%の壁は特に意識していない、と述べた。
その後夕刻から欧州市場にかけて152円90銭に戻したものの、米国市場にかけて151円60銭台へ下落した。その後は151円台後半で上下したあと151円20銭に下落して引けは151円40銭台。
ユーロ円相場も同様の値動き。158円70銭で始まり午前中に157円90銭台に下落。欧州市場にかけて158円60銭に戻したが反落。米国市場では157円20銭台に下落。その後一時70銭へ反発したが上値重く反落して157円ちょうどをつけて引けは157円30銭。
ユーロドル相場は東京市場では1.04ちょうど近辺で小動きもみ合い横ばい。欧州市場から米国市場にかけて下落して1.0360近辺でもみ合い横ばい。引けにかけては1.0380~90でもみ合い。米国株はまちまち。
雇用統計発表を翌日に控え主力株に利益確定売り。一方でイギリス中銀(BOE)が4.75%から4.50%へ利下げを実施し欧州株が軒並み上昇。投資家心理の支えとなった。NYダウは前日比▲125ドル安の44,747ドル、ナスダックは+99ドル高の19,791ドル。
米長期金利は小幅上昇。10年債は一時4.46%に上昇したあと4.44%、2年債は4.211%。
金曜日の東京市場では日経平均が反落。ドル円相場が一時150円へ下落、円高が進んだことで輸出関連株中心に下落し一時▲300円安。売り一巡後は決算を睨んで下げ止まり、一部銘柄に買い。日米首脳会談への警戒感は重石。引けは▲279円安の38,787円。
ドル円相場は151円40銭で始まり朝方一時151円割れ、150円台をつけた。その後反発して151円80銭を中心に70銭~90銭でもみ合い。欧州市場から米国市場朝方にかけ上昇し152円20銭台で雇用統計の発表待ち。
米雇用統計(1月)は非農業部門雇用者数前月比が+143千人と前月から減少し予想を下回った。ただ前月が+307千人に上方修正。また年次改定で下方修正が予想されていたが、改定前の月平均+186千人増加から+166千人増加となり市場予想の範囲内だった。
1月の失業率は前月4.1%から4.0%へ低下。平均時給は前年同月比+4.1%と前月+4.1(速報+3.9%)から高止まり。
これを受けて152円40銭台に上昇したあと151円30銭台へ下落と短時間で乱高下。その後は株安・リスク回避を受けた円買い戻しで150円90銭台へ下落。その後は151円80銭台に上昇したあと151円台前半で上下して引けは151円40銭。
ミシガン大学消費者信頼感(2月速報)は前月71.1から67.8へ悪化。しかし期待インフレ率(1年)が前月+3.3%から+4.3%へ急上昇したこともあり利下げ期待が低下。米長期金利が上昇したことがドルの支えとなった。
ユーロ円相場は欧米市場で下落。東京市場では157円30銭で始まり156円80銭割れに下落。その後は157円台前半で上下し欧州市場にかけて158円ちょうどに上昇。
米雇用統計発表後、米国市場では株安・リスク回避により大きく下落して155円80銭台へ。その後反発して156円台半ばを中心に上下して引けは156円40銭。
ユーロドル相場は東京市場では1.0380台で始まり1.0380近辺で小動きもみ合い横ばい。欧州市場では1.04ちょうど近辺に小幅強含み。米雇用統計を受けて1.0350~1.0410で乱高下したあと、米長期金利の上昇やユーロ安円高を受けて1.0310へ下落し引けは1.0330。
米国株は下落した。雇用統計は市場予想よりやや強め。ミシガン大学調査の期待インフレ率が上昇したこともあり米長期金利は上昇。10年債利回りは4.494%、2年債は4.291%となり株価の重石に。
またトランプ大統領が相互関税を計画しているとの報道で懸念が広がった。NYダウは前日比▲444ドル安の44,303ドル。ナスダックは▲268ドル安の19,523ドルで引けた。
◆今週の3つの注目ポイント
1.米国の経済指標
今週はとくに物価指標に注目
水曜日 消費者物価指数CPI(1月、前年同月比、予想+2.9%、前月+2.9%、コア指数、予想+3.1%、前月+3.2%)
木曜日 生産者物価指数PPI(同、予想+3.2%、前月+3.3%、コア指数、予想+3.3%、前月+3.5%)
金曜日 小売売上高(1月、前月比、予想▲0.1%、前月+0.4%、除く自動車、予想+0.3%、前月+0.4%) 鉱工業生産(同、予想+0.3%、前月+0.9%) 設備稼働率(同、予想77.7%、前月77.6%)
2.パウエル議長議会証言
今週、火曜日(上院銀行委員会)、水曜日(下院金融サービス委員会)にパウエル議長が半年に1度の議会証言を行う。追加利下げに対して積極姿勢・消極姿勢いずれのニュアンスを示すか。
トランプ政権の政策がいずれもなお不透明ななか断定的な判断は示さないとはみられるが、バイアスがどのように傾いているか。
3.トランプ政権の関税政策
先週末にトランプ大統領は相互関税の導入を表明した。相手国が米国製品の輸入にかけている関税と同率を同品目にかける方針。これを受けて欧州は早々と対米自動車関税の引き下げを表明した。
米国や他国の動向、米中間の関税、米国の対日関税はどうなるのか、など、株価や市場のリスクセンチメントに影響を与え、ひいては円相場に影響するために引き続き留意が必要だ。
◆今週のMRA's Eye
リスク回避に傾くなか内外金融政策バイアスが逆行
先週は円が全面高となった。ドル円相場は155円近辺で始まり一時150円台へ下落するなど大きく下落し週末は151円台前半。ユーロ円相場は159円近辺から一時155円台に下落して週末は156円台半ば。
円全面高の要因は引き続きトランプ関税を巡るリスク回避の強まり。加えてドル円相場の下落は日米金融政策のバイアスが逆行したことにある。
欧州その他の各国と日本の金融政策もバイアスが逆行し格差が拡大。ユーロ円相場も軟調だ。
トランプ政権の政策は目下のところ関税政策が最大の注目点。対カナダ・メキシコへの25%関税適用方針の表明、直後に発動を延期、と状況が目まぐるしく変化し市場は翻弄された。
一方、中国への追加関税10%の発動は決定された。ただ関税が移民規制などの対応を引き出すための「高めの直球」であることが一段と明確になっている。
しかし、関税発動か一時停止か、現状維持か、の結論であり、悪影響が生じるか、その程度の強弱、あるいは良くて現状維持。リスク回避が強まるか、その程度問題、ないし良くて中立。リスク選好が強まる話ではない。
最善のケースでも不安感の解消にとどまりポジティブな材料とはなりえない。リスク回避が円高材料とすれば、円高の程度問題であり、円安に振れることはないということになる。
関税引き上げによってインフレ圧力が強まりFRBの利下げが遠のくとの見方が市場の不安、リスク回避、株安要因の背景。インフレ再燃が景気に悪影響をもたらすとの懸念もある。
週末に発表されたミシガン大学消費者態度指数(2月速報)は前月71.1から67.8へ悪化した。その背景には期待インフレ率(1年)が前月3.3%から4.3%へ急激に高まったことも背景だろう。
関税引き上げが消費者心理に打撃を与えていることは確か。
またとくに中小企業では仕入コスト上昇、価格転嫁の難しさから業績悪化や倒産の増加も懸念されている。インフレが政権にとって大きなマイナスとなることは、トランプ大統領は理解しているはずで関税は最終的に回避されるはず、との市場の観測・期待・前提がある。
その前提のうえでリスク回避が強弱しており、本格的なリスク回避には陥ってはいない。トランプ大統領は株価の反応も気にしているという。自らの関税発動で株価が大きく下落するという反応をみて、一定の抑止力になっている可能性もある。
リスクはこれらの前提が崩れる場合、トランプ大統領の思考がこうした見方と異なる場合だ。
財政政策・景気刺激策に対する期待も緩和しているようだ。伝えられているところでは、トランプ大統領は減税の恒久化を最重点政策としているようだ。
あらたな財政支出・財政拡大による景気刺激の可能性は低いとの見方が主流となってきた。現状の底固い米国景気の動向を維持、長期化することが主ではないか、との見方だ。
一方、政府機関の効率化は景気にマイナス要因となりうる。すでに多くの連邦職員の退職を促しているが、人件費削減による財政支出抑制となり、民間雇用には幾分かの緩和圧力となるだろう。
これはトランプ政策による景気刺激策でインフレ圧力が高まり金利も上昇する、との見方に逆行する。
ドル相場に関しては、貿易収支改善を主眼にドル安を志向するのではないか、との見方があったが、ベンセント財務長官は引き続き強いドルを支持する、と述べている。基軸通貨としてのドルの地位を重視するスタンスも表明。その結果としては、意図的にドル安を志向する可能性は低下したとみられる。
自然体でドルが下落するのは容認ないし歓迎する可能性はあるものの、自らドル安を志向する可能性はなさそうだ。これはインフレを回避する方針とも整合的。FRBに利下げ圧力はかけないとのニュアンスとも整合的だ。
ただ日米金融政策格差、あるいは他の先進国も含めた日本からみた内外金融政策格差は円高を示唆する方向にバイアスが変化した。
日銀は昨年末には利上げに慎重とみられた。しかし1月に利上げを実施。審議員の多くが追加利上げの必要性を認識しているようだ。田村委員は25年度後半に1%まで利上げしている必要がある、と発言。物価上昇リスクがなお高まっているとの認識が背景にある。
政府サイドからも足元はインフレ状態との認識が示された。これは利上げ容認ともとれる。なおも相次ぐ商品販売価格引き上げとともに、経済指標で賃金上昇が確認されたことが裏付けとなろう。
こうした動きは昨年末の市場観測を180度転換させるに十分だ。先週、円は全面高となったが、リスク回避とともに、日銀のタカ派姿勢を市場が認識したことが大きい。
加えて、そうした日銀の金融政策に対する見方がタカ派サイドに傾いたのと逆行し、海外の金融政策に対する見方がハト派サイド、緩和方向に傾いたことも大きい。
米国FRBの政策動向については、一時は利下げ打ち止め、次の一手は利上げとの見方まで生じていた。しかしFRB内では利上げの検討は一切なく、現状の金利水準が景気制約的との認識で変わらず。追加利下げ時期を模索する姿勢に変化がないことが確認された。
トランプ政権の政策動向が不透明で、これが追加利下げを躊躇させる要因だが、関税引き上げに慎重姿勢、財政支出拡大に動かず、政府人員削減、となると利下げの可能性は高まる。
他の先進国では利下げが続く。イギリス中銀は先週、政策金利を4.75%から4.50%へ0.25%引き下げた。しかしメンバー2人が0.50%の大幅利下げを主張している。
ECBは1月に0.25%の利下げを実施したあと利下げ継続姿勢を明確にしている。年内あと0.75%、合計1.00%の利下げが確実視される。その通り実施されれば中銀預金金利は2.00%に。日銀の政策金利との格差はわずか1%となる。
カナダ中銀は1月に6会合連続の利下げで政策金利は3.00%となった。米国の関税引き上げによる悪影響が現実となれば一段と利下げが加速する可能性がある。
オーストラリア準備銀行は一連のグローバルインフレのなかで利上げを継続し2023年11月に4.35%としてから据え置いてきた。しかし景気悪化リスクやインフレ鈍化を踏まえて2月の会合でいよいよ利下げに踏み切るとみられている。
内外中央銀行の金融政策スタンス、バイアスが逆行しその度合いが強まっていることは、今後も円高を促すとみられる。
ドル円相場はFRBがなお相対的に利下げに慎重なことから他の通貨の対円相場、ユーロ円相場などクロス円相場に比べれば円高のペースは緩慢になりそうだ。しかしドル高円安に振れる可能性は少なくなったとみられる。
クロス円相場で円高が一段と進むなかではなおさらだろう。緩慢なドル安円高基調が続くとの見方は変わらないが、その発射台はややドル安円高方向に振れ、またペースは年末時点の想定よりやや速め、水準はやや円高報告に振れた可能性があり、その見極めが当面必要だ。
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