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強まる米国景気への楽観、金利シナリオの揺らぎ
  • MRA外国為替レポート

2024年10月14日号

◆先週の市場総括


先週は中東情勢の緊張が高まり原油価格が上昇。前週末の強い米雇用統計とあいまって米長期金利が上昇した。10年債利回りは4%台に乗せ週後半には一時4.1%台をつけ週末は4.096%。一方2年債も一時4%をつけたが概ね3.9%台で推移した。

注目の米CPIはインフレ率低下の停滞を示した。年内利下げ幅が縮小するとの見方が台頭。米国株は上下しながら堅調。中国の景気対策への期待、企業業績への期待などから買われNYダウは史上最高値を更新して引け。

為替市場では米長期金利上昇を背景にドル高・円安のまま推移。ドル円相場は週初に149円台に乗せた後一時147円台に下落したが週末は149円台半ばへ上昇し引けは149円10銭台。

ユーロ円相場は163円台で始まり161円台に下落したが週末は163円ちょうど近辺で引け。

日経平均は総じて堅調。米国株高、ドル高円安、が支え4万円の大台に迫った。ただ大台前で利益確定売りが上値を抑え引けは39,600円台。

月曜日の東京市場では日経平均が3営業日続伸。一時前週末比+900円高。週末の米雇用統計が強くリスク選好が強まった。週末にかけて進んだ円安ドル高を好感して輸出関連株に買い。石破首相が所信表明演説で賃上げと投資で成長を促進すると述べたことも市場心理を支えた。

為替市場では財務官の過度な市場の変動を注視とする円安警戒発言で円安一服。ドル円相場は148円80銭で始まり朝方は149円10銭に上昇。

ただその後は148円20銭に反落し148円60銭に反発するも30銭~60銭で上下して夕刻には148円10銭。欧州市場では148円70銭に持ち直したが147円80銭台まで下落した。米国市場では持ち直し148円30銭に上昇し引けは148円20銭。

ユーロ円相場は163円10銭で始まり朝方50銭台に上昇。その後は反落して163円中心に上下したあと夕刻には162円後半で上下した。欧州市場では163円ちょうどに反発したが上昇一服。米国市場では162円台後半で上下し引けは162円60銭。

ユーロドル相場は1.0970~80で小動き、欧米市場でも1.0980中心にもみ合い引けた。

米長期金利は上昇。中東情勢の緊迫で原油価格が上昇。WTI先物は77.14ドルへ。強い雇用統計とともにインフレ再燃を警戒。10年債利回りは4.027%とおよそ2カ月ぶりに4%台。2年債は利下げペースが鈍化するとの見方から3.995%へ上昇。

米国株は下落。金利上昇が重石。消費先行き懸念が強まった。NYダウは前週末比▲398ドル安の41,954ドル。ナスダックは▲213ドル安の17,923ドル。VIX指数は22.64ポイントに上昇した。

火曜日の東京市場では日経平均が4営業日ぶりに反落。米株安、中東情勢懸念、円安一服、などで幅広い銘柄に売りが入った。中国国家発展改革委員会の発表が、市場が期待する早期の追加財政出動に言及せず、これまでの対策の振り返りに終始したことも失望された。引けは前日比▲395円安の38,937円。

ドル円相場は148円20銭で始まり朝方147円60銭に下落すると148円を挟んで上下。夕刻にかけては下げが強まり147円40銭割れ。その後欧州市場から米国市場にかけては持ち直し148円40銭に反発し20銭~40銭でもみ合い引けは148円20銭。

ユーロ円相場もドル円相場と同様の値動き。162円60銭で始まり162円ちょうど近辺に下落し、その後も概ねその値幅で上下し夕刻は162円ちょうど。欧米市場では持ち直し162円60銭~80銭で上下し引けは162円80銭。

ユーロドル相場は引き続き小動き。1.0980~90近辺で小動き。欧州市場ではやや軟化して1.0960。米国市場では持ち直して1.0980で引けた。ドルインデックスは前日と変わらず102ポイント台半ばで横ばい。

原油価格は上昇一服し73.57ドル。米長期金利は一時上昇したが原油価格上昇一服でやや低下。10年債利回りは4.05%に上昇したあと引けは4.013%と前日から小幅低下。2年債は3.962%。

米国株は主要3指数ともに反発。インフレ懸念後退が支え、景気悪化懸念が一服。ハイテクも堅調。NYダウは前日比+126ドル高42,080ドル、ナスダックは+259ドル高の18,182ドル。

水曜日の東京市場では日経平均が反発。一時+500円超上昇。米ハイテク株高で半導体関連が強かった。中国で週末に財政政策に関する記者会見が開かれると報じられたことで中国関連株に買い。ただ上値では戻り売りが上昇を抑制。引けは前日比+340円高の39,277円。

為替市場ではドルが堅調、円が軟調。ドル円相場は148円20銭で始まり朝方148円ちょうどに下落したがその後は上昇。夕刻は148円60銭に上昇して30銭~60銭で上下。欧州市場から米国市場にかけては一貫して上昇して149円20銭~40銭で上下して引けは149円20銭。

ユーロドル相場は1.0980で始まり上値重く夕刻は1.0950。欧州市場では1.0970に小幅高も米国市場引けは1.0940。

ユーロ円相場は162円80銭で始まり40銭~80銭で上下。夕刻は163円ちょうどに上昇し162円80銭~163円でもみ合い。米国市場では一段高となり163円20銭~40銭でもみ合い引けは163円20銭。

ドルインデックスは102.93と103ポイント目前に上昇。米長期金利は上昇。強い雇用統計を受けた流れがなお続いた。10年債は4.073%。2年債も4%台に乗せて4.022%。ドルを支えた。

米国株は堅調。NYダウは最高値を更新。原油高一服、ソフトランディング期待、中国景気持ち直し期待が支え。NYダウは前日比+431ドル高の42,512ドル。ナスダックは+108ドル高の18,291ドル。

公表されたFOMC議事録(9月会合)では、0.50%の利下げを大多数の賛成で決定したが、複数のメンバーがインフレ上振れリスクを理由に0.25%を主張していたことがわかった。今後の利下げペースについては時間をかけて行うことで意見が一致していた。内容にとくに新味なく市場への影響は限定的だった。

木曜日の東京市場では日経平均が小幅続伸。米国株の堅調を受け買い優勢。円安も追い風となり輸出関連銘柄の一角が買われた。朝方は一時+300円高。ただその後は伸び悩み。4万円の大台を前に利益確定売りが上値を抑えた。引けは+102円高の39,380円。

ドル円相場は149円20銭を中心に149円ちょうど~40銭で上下動。夕刻から欧州市場にかけては軟化して148円80銭近辺。

米国市場に入ると朝方に注目のCPIが発表され予想より強い数字。一方、週次の失業保険申請件数は雇用情勢の弱さを示しまちまち。ドル円相場は149円60銭~148円40銭で大きく上下。その後は148円40銭~80銭で推移し一時149円ちょうどに戻したが引けは148円50銭台。

ユーロ円相場は163円20銭で始まり60銭に上昇したものの午前中から欧州市場にかけて一貫して下落し162円20銭。米国市場ではユーロ安円高一服、162円50銭近辺でもみ合い引けた。

ユーロドル相場は1.0940で始まり小動きもみ合い横ばい。米国市場ではCPIでやや上下したあと上値重く1.09ちょうど近辺に下落し引けは1.0930。

米国のCPI(消費者物価指数、9月)は前月比が+0.2%と前月と変わらず、予想+0.1%をやや上回った。前年同月比は前月+2.5%から+2.4%に低下したが予想+2.3%より強め。コア指数は前年同月比が+0.3%で前月と変わらず予想+0.2%を上回り、前年同月比は+3.3%と前月+3.2%から加速した。

週次の失業保険申請件数は新規申請が258千件と前週225千件から増加、継続受給者数も前週1,826千件から1,861千件に増加した。

米長期金利はまちまち。10年債利回りは一時4.1%台に上昇したが低下して4.066%と前日から小幅低下。2年債は3.963%と4%割れ。

アトランタ連銀総裁は、11月のFOMCで利下げ見送りでも問題ない、と述べた。NY連銀総裁は、インフレ緩和は続き一段と中立的にするプロセスを継続する、としたが、経済の基盤は強固とも述べた。

米国株は小幅安。雇用弱くインフレ鈍化が停滞という好ましくない指標の組み合わせ、長期金利の高止まりを嫌気。NYダウは前日比▲57ドル安の42,454ドル、ナスダックは▲9ドル安の18,282ドル。

金曜日の東京市場では日経平均が3営業日続伸。ハイテク株の一角が買われる一方、内需関連には下落する銘柄も。4万円の大台目前で利益確定売り、様子見が上値を抑えた。引けは前日比+224円高の39,605円。

ドル円相場は148円50銭で始まり底固い値動き。夕刻にかけては148円60銭~80銭で上下。欧州市場に入ると149円台に乗せ、米国市場にかけて149円ちょうど~30銭で上下し引けは149円10銭台。

ユーロ円相場は終始堅調。162円50銭で始まり欧州市場から米国市場にかけて163円40銭へ上昇した。その後は上昇一服し引けは163円10銭近辺。

ユーロドル相場は終始小動き。1.0930で始まり1.0940中心にもみ合い。欧米市場では1.0940~60で上下して引けは1.0940。

米長期金利はまちまち。10年債は4.096%へ上昇、2年債は3.953%へ低下。

米国株はしっかり。NYダウは最高値を更新。決算を材料に金融株が買われた。PPIが落ち着いた数字となり11月利下げ期待が強まったことも支え。NYダウは前日比+409ドル高の42,863ドル、ナスダックは+60ドル高の18,342ドル。

発表された米国の生産者物価指数(PPI、9月)は前月比0.0%と前月+0.2%から上昇鈍化。前年同月比は+1.9%から+1.8%へ低下。一方、コア指数は前年同月比+2.8%と上昇率がやや高まった。

ミシガン大学消費者態度指数(10月速報)は68.9と前月70.1から悪化して予想70.5を下回った。期待インフレ率は1年が前月2.7%から2.9%へ上昇、5年が3.1%から3.0%へ低下、とまちまち。

◆今週の3つの注目ポイント


月曜日は日本、米国、ともに祝日で休場。

1.ECB理事会、ラガルド総裁会見

木曜日にECB理事会が開催され、終了後にラガルド総裁が定例会見を行う。今会合では0.25%の追加利下げが予想されている。実施されれば今局面の利下げは3回目となる。預金ファシリティ金利は3.50%から3.25%へ。

欧州ではインフレ鈍化基調が継続し消費者物価指数は総合ベースで2%を切って低下。一方で景気悪化懸念が強まっており利下げに前向きな意見が増えている。

今後の利下げペースについて言及があるか。市場では四半期に1回、0.25%の利下げ実施との見方が大勢。織り込み済みとはいえユーロ安基調が強まるか。リスク選好を主因に堅調となっているユーロ円相場に変化は生じるか。

2.米国の経済指標

米国経済は底固くインフレは鈍化というベストな組み合わせ、ソフトランディング期待が強まっている。今週の指標はそうした楽観的な見方を支持するか。あるいは不透明感をあらたに投げかけるか。

火曜日 NY連銀製造業景気指数(10月、予想0.5、前月11.5)

木曜日 小売売上高(9月、前月比、予想+0.2%、前月+0.1%) 鉱工業生産(同、予想0.0%、前月+0.8%) 設備稼働率(予想77.9%、前月78.0%) フィラデルフィア連銀製造業景気指数(10月、予想2.9、前月1.7) 週次の失業保険申請件数

金曜日 住宅着工件数(9月、季節調整済み年率換算、予想1,345千戸、前月1,356千戸)

3.日本の経済指標

水曜日に機械受注(8月、前月比、予想+0.3%、前月▲0.1%)が発表される。景気、設備投資の底固さを確認できるか。木曜日に通関統計(9月)が発表される。

貿易収支は前月▲6,950億円の赤字に対し、▲3,330億円の赤字との予想。赤字幅が引き続き抑制され円安圧力が弱い状況を確認するか。

金曜日には消費者物価指数(CPI、9月)が発表される。総合指数は前年同月比+2.5%と前月+3.0%から低下予想。除く生鮮食品では前月+2.8%から+2.3%へ、除く生鮮食品・エネルギーでは前月+2.0%と変わらずと予想されている。総じて日銀の追加利上げを許容する数字となるか。

ほか、金曜日には中国の主要経済指標が発表される。9月の小売売上高は前年同月比+2.5%と前月+2.1%から伸びが加速、鉱工業生産は前月同様+4.5%の伸びが予想されている。また今週は米国企業の9月決算発表が本格化する。

◆今週のMRA's Eye


強まる米国景気への楽観、金利シナリオの揺らぎ

このところの経済指標やFRB当局者の発言を受けて、米国経済への楽観的な見方が一段と強まっている。FRBの2つの目標、最大雇用と物価の安定・インフレの抑制、がともに達成される過程にあると思わせる指標が散見されることが背景だ。

雇用情勢は緩和しているとの見方が大勢ではある。失業保険申請件数は増加基調にあり、求人数も減少傾向。失業率は緩やかながら上昇傾向にあった。非農業部門雇用者数の伸びも鈍化していた。

ただ単月の数字ではあるが、直近の統計では、求人数は増加し、失業率は低下。非農業部門雇用者数の増加幅は拡大した。一部には雇用情勢は急速に悪化する変曲点にあるとの見方もあった。しかし、少なくとも一方的ないし急速に雇用が悪化しているとの見方を否定する数字が相次いだ。

インフレに関しては鈍化基調にあるとの見方を否定するほどの証左はないが、このところ低下基調が一服している。景気減速基調、消費者のインフレ警戒感、支出の抑制姿勢、企業にとって価格転嫁が難しくなっていること、などを踏まえれば、インフレが再加速するリスクはなさそうだ。

最近のFRB当局者の発言をみると、ハト派、タカ派、に割れている。違いは利下げにどれほど前向きか、という点で、利下げ継続そのものは意見が一致している。

雇用景気とインフレの見方、そのリスクバランスをどうみるかで、微妙な違いが生じている。足元の景気動向に対する認識には、米国経済はなお堅調、雇用は底固い、との見方で相違はない。

9月のFOMC会合では0.50%の利下げが実施されたが、0.25%を主張する意見も数名あった。すでにFRB内ではインフレ警戒から景気重視にスタンスが変更されていた。そのもとで、慌てて大幅な利下げをする必要はない、そこまで景気や雇用情勢が急速に悪化するおそれはない、というのが小幅利下げ派の主張だった。

しかし実際にはパウエル議長主導のもとで0.50%の利下げが実施された。米国経済さらに雇用はなお力強いが、それを維持するために、予防的に大幅な利下げに踏み切った、と説明される。

景気悪化への懸念ではなく、あくまでも予防的な、先手を打って強い経済を維持するための利下げ。となると、大幅利下げでも市場の景気先行き不安は掻き立てられず、むしろ楽観的な見方が強まる。当局の景気悪化・雇用悪化を防ぐスタンスが強固と受け止められた。

焦点は今後の利下げペース。このところの様々な発言をみると、FRBメンバーの間では今後は緩やかなペースで利下げを実施することがコンセンサスのようだ。

前回は0.50%の大幅利下げとなったが、今後は0.25%が基本となりそうだ。市場は大幅利下げを織り込んでいたがすでに修正されている。9月のFOMCにおけるメンバー予測では年内利下げ幅の中央値は0.50%だった。

ただ0.25%との見方も相応に多く拮抗。どちらに傾くか微妙な状況だった。足元の強い雇用統計やインフレ低下の鈍化などから、年内利下げ幅が0.25%になるとの見方も市場で強まっている。

利下げを急ぐ必要がないなら11月会合では見送り、12月に0.25%の利下げを実施、との見方だ。

名目金利からインフレ率を差し引いた実質金利、実質政策金利はなお2%を超えておりかなり景気抑制的。利下げの余地は十分にあり、こうしたインフレ抑制的・景気抑制的な金融政策を長期間継続してきた累積効果が今後生じるリスクもある。

ただ足元の数字がなおソフトランディングの可能性を示していることから慌てて動かない姿勢に固まってきたようだ。

こうした当局の姿勢や足元の経済指標を受けて米長期金利は反発上昇している。10年債利回りは再び4%台を回復した。2年債利回りと10年債利回りの逆転はすでに解消し、10年債利回りのほうが高い順イールドとなっている。市場が景気後退懸念を解除したしるしでもある。

米国経済への信認が強まり、長期的には利下げが継続されるとの見方から、市場のリスク選好は回復している。米国株、NYダウは史上最高値を更新。ドル金利先安感の緩和、米長期金利の上昇、が支えとなって、ドルインデックスは一時100ポイント近くに低下していたが足元で103ポイント近くに反発した。

ドルの上昇が続くかどうかは今後の景気動向、雇用物価のバランス次第。単月の雇用統計では判断が難しい。雇用が引き続き減速基調にあり警戒感を持ったままの地区連銀総裁も多い。

一時的にせよマイナス成長となるリスク、消費が低迷する可能性もなお排除できず、軽い景気後退が起こる可能性もある。少なくとも利下げが継続することは確実。そのなかで10年債利回りが上昇を続けるのは難しい。

景気底打ち、持ち直し、再加速とならない限り一段と10年債利回りが上昇する可能性は低いだろう。政策金利が低下を続ければ、キャリートレードとしてのドル買いの魅力は低下する。

足元のドル高は、積み上がったドル売りが巻き戻される局面で生じている可能性が高い。今後積極的にドル買いに転じドルが上昇を続けるかは微妙だ。

一方、円サイドでは、投機ポジションが円買いに傾いていた反動での円売りが生じ円安方向へ揺り戻しが生じているとみられる。石破首相の金融政策に関する発言のブレ、利上げ継続か利上げすべきではないか、の揺れが影響している面もある。総選挙や党内調整のうえでの発言とみられるが真意はどうか。

もちろん、政権が金融政策に口を出すべきではなく権限もない。日銀の緩和解除を後押しするスタンスかどうか。アベノミクスの修正としての岸田政権の経済政策を踏襲する、総裁選において高市対石破というアベノミクス回帰か修正継続かで勝利したという点からは、緩和解除後押しとみるのが妥当だろう。

分配も重視し成長も加味、地方重視、となれば、円安志向ではなく円高志向が合理的だ。現在の円相場の水準についても、すでに財務官から円安警戒発言がみられた。政府日銀としては引き続き円安修正のスタンスにあることは、その実現の可否はともかく、明らか。日銀は年末に追加利上げする可能性は高い。

為替相場が円安に振れていること、米国経済に懸念がないこと、中国景気の悪化にひとまず歯止めがかかりそうなこと、などが背中を押す要因となる。

日米金利差の緩やかな縮小に応じた緩やかなドル安円高がメインシナリオだ。現時点では年末に140円台前半、来年に130円台半ば~前半へ。米国経済がノーランディング、さらに利下げ停止となれば、ドル円相場は140円台で底固く推移しそうだ。

リスクがあるとすれば、中東情勢の悪化にともない原油価格の急騰。グローバルに物価情勢に悪影響を与え、ウクライナ紛争当初のようなインフレ圧力となる可能性がある。

コロナ禍からのリオープンという需要面での圧力はないため、インフレ圧力は抑制的になる面もあるとみられるが、FRBが警戒的になれば利下げを停止する可能性もある。

米長期金利はインフレ圧力をみて上昇する可能性があり金利面でドル安円高を止め、逆にドル高円安に傾く可能性もある。また原油価格をはじめとする資源価格の上昇は日本の対外収支を悪化させ円安圧力となる可能性もあり留意を要する。

この場合、米国では雇用消費が一段と冷え込み、経済がスタグフレーションに陥るリスクがある。

景気後退確率は上昇し市場心理は悪化。リスク回避に傾くとみられる。足元でリスク選好や株高のなか円安が進んでいることを踏まえれば、最終的に円高に傾く可能性があり、ドル円相場は150円台~130円台で乱高下となるリスクが高い。


主要指標は、有料版「MRA外国為替レポート」にてご確認いただけます。
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