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円買い介入に追い風
  • MRA外国為替レポート

2024年5月6日号

◆先週の市場総括


先週は為替市場で日本の通貨当局が円買い介入を実施したとみられる。週初月曜日、東京市場が休場で取引が薄いなかドル円相場が157円90銭から160円20銭に急騰。しかしその後159円台から155円ちょうどへ、157円台から154円台へ、2回ほど急落する局面があり介入が実施されたとみられている。

さらに木曜日早朝、FOMCの結果判明直後にも157円台から153円ちょうど近くに急落。再度円買い介入が実施された模様。

FOMCでは政策金利据え置きも6月に量的引き締めのペースを市場の予想以上に緩める方針が示された。パウエル議長は次の一手が利上げとなる可能性を否定。全般的にハト派と受け止められた。

米国では重要な経済指標の発表が相次ぎ、景況感の悪化、雇用逼迫の緩和、などを示す一方、インフレの根強さも見受けられ、スタグフレーションリスクが意識された。

米長期金利は低下しドルの重石に。ドル円相場は雇用統計発表直後に一時151円台に下落して引けは153円ちょうど近辺。ユーロ円相場も週初に一時171円台に乗せたが週末は164円台後半。激しい値動きとなった。

米国株も乱高下。個別企業決算を受けて上下するなかインフレ懸念が下押し要因となったが、週末にかけて利上げ懸念が後退、利下げが早まるとの見方が持ち直し株価を支えNYダウは木曜、金曜で800ドルほど上昇した。日経平均は営業日数が少ないなか38,000円台に乗せて推移した。

月曜日の東京市場は休場。為替市場では円相場が乱高下。急速な円安のあと、当局の円買い介入と思われる動きで急激に円高に振れた。ドル円相場は157円90銭近辺で始まり朝方に160円20銭近辺に一気に上昇。その後は159円40銭近辺で推移した。

しかし昼過ぎに155円ちょうど近辺へ急落。その後157円20銭近辺に戻したが154円50銭台に急落した。

欧州市場から米国市場にかけてはじり高。156円80銭まで上昇したあと弱い米経済指標を受けて155円10銭に反落。引けに戻して156円20銭近辺で取引を終えた。

ユーロ円相場も同様の値動き。168円90銭で始まり朝方171円60銭近辺に急騰。その後は170円80銭近辺で推移したが昼過ぎに166円30銭に急落した。夕刻には168円50銭台に戻したが再び165円60銭台に急落。米国市場にかけてじり高となり167円80銭台に戻したが166円50銭に反落して引けは167円50銭近辺。

ユーロドル相場は1.07ちょうどで始まり1.0730へ小幅上昇。1.07ちょうどを挟んで上下し、米国市場では1.0720~30で円相場と異なり総じて小動き横ばいだった。

ドイツCPI(4月速報)は前年同月比+2.2%と前月と同様の上昇率。米長期金利は小幅低下。

ダラス連銀製造業活動指数(4月)が前月▲14.5と前月▲14.4から▲11.3への改善予想に反して変わらず。10年債利回りは4.611%、2年債は4.978%。

米国株は堅調。長期金利上昇一服が支え。個別決算で上下したがFOMC前に様子見姿勢も強かった。NYダウは前週末比+146ドル高の38,386ドル。ナスダックは+55ドル高の15,983ドルで引け。

火曜日の東京市場では連休明け日経平均が上昇。前日の米ハイテク株高が波及。半導体関連中心に主力株が買われ一時前週末比+600円超上昇。円先安観が根強く再び円安気味に推移したことも支え。決算発表本格化で個別業績を材料に値動き。引けは+470円高の38,405円。

ドル円相場は156円20銭近辺で始まり午前中に80銭台へ上昇して80銭近辺でもみ合い。欧州市場に入っても底固く、米国市場朝方の強めの経済指標を受けて一段高。157円ちょうどから50銭台へ。その後も底固く157円80銭~70銭近辺で引けた。

ユーロ円相場は167円20銭~50銭でもみ合いスタートのあと午前中に168円ちょうどへ上昇。その後やや押したが欧州市場から米国市場にかけて168円60銭まで上昇した。引けにかけてはやや押されて168円30銭近辺で引けたが、全般的に上下しながらじり高、堅調な展開となった。

ユーロドル相場は1.0720で始まりもみ合い横ばい。午後は1.07ちょうど中心の値動きとなったが欧州市場では1.0730台へ上昇。ただ米国の強めの数字、米長期金利上昇でユーロ安ドル高に振れて引けは1.0670近辺。

米国で発表された雇用コスト指数(1-3月期)は前期比+1.2%と前期+0.9%から加速して予想+1.0%を上回った。これを受けて10年債利回りは上昇。引けは4.684%。2年債は5.039%。

ケースシラー住宅価格指数(2月)は前年同月比+7.3%。シカゴ購買部協会景気指数(4月)は前月41.4から44.3への改善予想に反して37.9へ悪化。消費者信頼感指数(4月)も104.7から97.0へ予想外に大きく悪化して1年9か月ぶりの低水準となった。

米国株は大きく下落。この日から始まったFOMCを傍目にインフレ指標の悪化で警戒感が強まった。景況感の悪化も重石。個別決算で買われる銘柄もあったが、利下げ後ずれ懸念が強まり長期金利が上昇したことが重石となった。

NYダウは前日比▲570ドル安、今年最大の下げとなり37,815ドルで引け。ナスダックは▲325ドル安の15,657ドル。

水曜日の東京市場では日経平均が下落。前日の米国株が大幅安、NYダウが今年最大の下げ。これを受けて値がさハイテク株が下落したが下げ幅は比較的小さかった。FOMCの結果を前に様子見姿勢も強かった。引けは前日比▲131円安の38,274円。

ドル円相場は157円70銭で始まりじり高。欧州市場が休場となるなか158円ちょうど近辺で推移したあと弱めの米経済指標を受けて下落。米国市場では157円40銭~70銭で上下した。その後、FOMCの結果をうけて157円ちょうど近辺まで続落した。

パウエル議長の会見を受けて157円60銭に戻したものの直後に急落し日本時間2日木曜日の早朝6時前に153円ちょうど近辺へ。再び日本の通貨当局が円買い介入を実施したとみられる。その後乱高下してNY引け、東京時間朝7時頃には155円ちょうど~20銭。

ユーロ円相場は東京市場では168円30銭近辺で始まり夕刻は50銭近辺へ小幅上昇。FOMC後、168円50銭近辺から164円10銭に急落。乱高下して引けは166円20銭。ユーロドル相場は1.0670で始まり小動き。米国の弱い指標で1.0730へ上昇し1.07を挟んで上下して引けは1.0720。

米国で発表されたADP雇用報告(4月)は雇用者数前月比が+192千人と前月+208千人から伸びが鈍化。雇用動態調査(JOLTS)求人数(3月)は前月8,756千人から8,488千人に減少して予想8,690千人を大きく下回った。

ISM製造業景気指数(4月)は前月50.3から予想50.1を下回り49.2と景況感の分かれ目である50を割り込み景気後退リスクを示した。雇用指数は47.4から48.6へ改善したが受注指数は51.4から49.1へ悪化。価格指数は55.8から60.9へ上昇。

総じて景気悪化・インフレ鈍化のスタグフレーションリスクを示すかたちとなった。

FOMCでは政策金利は予想通り据え置き。声明文では、2%の物価目標に向けたインフレ鈍化の進捗が不足している、とした。ただ量的引き締めのペースダウンを6月に実施するとして、国債保有額の圧縮を600億ドルから250億ドルへの減額を決めた。市場では300億ドルと見込んでいたため想定よりも緩和的と受け止められた。

パウエル議長は会見で、次の一手が利上げとなる可能性は低い、として市場の追加利上げ観測を否定。どれほど抑制的な金利を続けるかが焦点と述べた。総じて市場予想よりハト派的とみられ長期金利は低下。10年債利回りは一時4.6%を割り引けは4.638%。2年債は4.964%。

日銀の資金需給からみてこの日の介入額は3兆円程度と推測された。4月29日には5兆円程度の介入を実施したと推計されており、合計8兆円程度と想定された。

米国株はまちまち。主力株の一部に自律反発狙いの買いが入った。FOMCで利下げ先送りが確認されたがパウエル議長が利上げを否定したことで一定の安心感が広がった。NYダウは前日比+87ドル高の37,903ドルで引け。ナスダックは▲52ドル安の15,605ドルで引け。

木曜日の東京市場では日経平均が小幅下落。朝方は急速な円高を受けて▲300円超下落し38,000円の大台を割り込んだ。

しかし先高感は根強く押し目買いにより下げ幅縮小。パウエル議長の発言で米国の利上げの可能性が低いとの見方も支え。引けは前日比▲37円安の38,236円。

ドル円相場は早朝の154円~155円近辺での乱高下のあとは上昇。10時半には156円30銭へ。ただその後は反落して東証引け頃には155円20銭。夕刻は20銭~50銭で上下したが欧州市場では154円70銭近辺へ続落した。

ユーロ円相場は早朝に166円を挟んだ乱高下のあとドル円相場と同様の値動きで167円40銭まで上昇。その後反落して欧州市場にかけて一貫して下落し165円50銭近辺。

ユーロドル相場は1.0710~20中心に横ばいもみ合いのあと、欧州市場ではやや下げて1.07ちょうど近辺。米国市場では前日のFOMCの結果やパウエル議長の利上げ否定発言を受けて米長期金利がさらに低下。

ドル円相場は円買い戻しの流れが続き153円ちょうど近辺まで下落。引けにかけてやや反発して153円70銭。ユーロ円相場は一貫してユーロ安円高が続き164円30銭まで下落。引けは164円80銭。ユーロドル相場は米国市場で1.0670台に下落したあと反発して1.0720で引け。

米国株は上昇。パウエル議長の利上げ否定発言、長期金利低下が支え。NYダウは前日比+322ドル高の38,225ドル、ナスダックは+235ドル高の15,840ドルで引けた。

米国で発表された週次の失業保険新規申請件数は208千件と前週とほぼ変わらず雇用の底固さを示した。労働生産性(1-3月期)は前期+3.2%から前期比+0.3%へ低下。労働コストが前期の前期比0.0%から+4.7%に上昇。業績圧迫懸念、インフレ低下停滞懸念は払拭されなかった。

金曜日の東京市場は休場。アジア時間のドル円相場は153円70銭で始まり、朝方早々に円買い戻しが進んで152円90銭に急落。その後は152円70銭台~153円40銭近辺、153円ちょうどを中心にもみ合い底固く、欧州市場では153円ちょうど~30銭。

米国市場に入ると発表された雇用統計が弱い数字となり151円80銭台に急落した。ただ根強いインフレ懸念やFRB当局者のタカ派発言、週末のポジション調整もあり反発。152円80銭~153円ちょうどで上下し引けは153円ちょうど。

ユーロドル相場はアジア時間には1.0730近辺でもみ合い横ばい。雇用統計発表を受けて1.0740から1.0810へ急上昇したがすぐに反落。1.0760~70でもみ合い引けた。

ユーロ円相場はアジア時間に164円80銭から164円ちょうどに下落。その後は164円台前半で上下動。欧州市場から米国市場では164円40銭~70銭で上下。雇用統計で一時164円20銭に下落したがすぐに戻して引けは164円70銭。

雇用統計(4月)は非農業部門雇用者数・前月比が前月+315千人から予想+240千人を大きく下回り+175千人に減少。失業率は前月3.8%から3.9%に上昇。平均時給は前月比が+0.3%から+0.2へ上昇鈍化、前年同月比は+4.1%から+3.9%に鈍化した。

予想を大きく下回り全般に悪化したことで利上げ懸念がさらに後退、利下げ予想が前倒し。米長期金利は低下。10年債は一時4.45%、2年債は4.77%へ。

続いて発表されたISM非製造業景気指数(4月)も前月51.4から49.4へ景況感の分かれ目である50を割り込んで悪化。1年4か月ぶりの低水準。

雇用指数は48.5から45.9へ、新規受注指数は54.4から52.2へ悪化した。一方投入価格指数は53.4から59.2へ上昇。

FRBボウマン理事が利上げも依然として選択肢と述べたこともあり長期金利低下は一服。10年債は4.509%、2年債は4.806%へやや戻して引けた。

米国株は上昇。労働市場の過熱感が緩和したとの見方あら利上げ懸念がさらに後退し、利下げ時期の予想が前倒しとなった。NYダウは一時+500ドル高となり引けは+450ドル高の38,675ドル。ナスダックは+315ドル高の16,156ドルで引け。原油価格WTIは77.99ドルに下落して引けた。

◆今週の3つの注目ポイント


1.FOMC当局者発言

先日のFOMCで6月にバランスシート縮小ペース(引き締めペース)を緩和することを決定。パウエル議長は次の一手が利上げとなる可能性を否定した。

FRB内になお利上げの可能性を留保する見方も残っているか、あるいは現在の高い政策金利をどこまで維持するかが議論の中心か。

先週、ISM景気指数や雇用統計など重要指標の発表が一巡し、今週は指標の発表は少ない。最近の経済指標を踏まえて当局者の見解に注目。月曜日にNY連銀総裁、リッチモンド連銀総裁、火曜日にミネアポリス連銀総裁、水曜日にクック理事、金曜日にシカゴ連銀総裁の発言機会があり注目される。

2.イギリス中央銀行(BOE)金融政策決定会合

木曜日にBOEが金融政策決定会合を開催する。現在の政策金利は5.25%で今回は据え置きが予想されている。今後の利下げが示唆されており、次回6月会合で利下げに踏み切るとの見方もある。

BOEではメンバーの意見が割れることがしばしば。どれほど利下げに傾いているか。今会合で現状維持に反対意見があるか。会合後にはベイリー総裁が会見を行う。何等かの示唆はあるか。BOEがいよいよ利下げとなれば、幾分か円全面安への歯止めとなる可能性がある。

3.ECB理事会議事要旨

金曜日にECB理事会議事要旨(4月11日開催分)が公表される。

同会合では政策金利は据え置き。中銀預金ファシリティ金利は4.00%のまま。ただ声明文では今後の利下げが示唆された。メンバーの一部は利下げを支持。ラガルド総裁は会見で、インフレが持続的に目標に向けて低下していれば利下げが適切、と述べた。

議事要旨であらためて利下げへの傾斜が確認され6月会合での利下げが確実視されるか。ユーロ円相場は先週初に171円台まで急騰したが、政策金利動向をあらためて確認し円安の歯止めの一助となるか。

ほか、木曜日には4月の日銀金融政策決定会合での主な意見が公表される。追加利上げを否定する意見がみられるか、あるいは円安に配慮して政策調整すべきとの意見はあるか。現状維持バイアスが強ければあらためて円売りを促す可能性もある。

金曜日には国際収支(3月)が発表され黒字幅が拡大すると予想されている。旅行収支黒字、デジタル赤字の動向はどうか。

◆今週のMRA's Eye


円買い介入に追い風

政府日銀は先週円買い介入を実施したとみられる。日本がゴールデンウィークに入り東京市場が休場。取引が薄くなるタイミングで、往々にして円相場が急騰急落しやすい。

今年は市場の円先安観が根強いなか、29日の祝日早朝にドル円相場は一気に160円台までドル高円安が進んだ。ユーロ円相場は171円台へ急騰。ただ日本時間昼過ぎに155円ちょうど近辺へ、さらに反発して157円台に戻した夕刻、欧州時間早朝に再び154円台半ばまで下げた。

欧州は月曜日の未明、米国は日曜日の深夜にあたる時間帯。東京市場は休場で、少ない介入金額で最大の効果をもたらすには的確なタイミングだったといえる。

FOMCが開催される前、利上げへの傾斜も警戒される局面で、あえて実施されたのは想定外だったかもしれないが、160円という大台は看過しがたい水準だったことが明らかになった。市場の推計では介入金額合計は5兆円程度とみられている。

さらにFOMCの結果が公表された2日木曜日の未明、157円台で推移するなか、再び介入が実施されたとみられる。FOMCの結果発表が日本時間午前3時、パウエル議長の会見が3時半から行われたあと、円買い介入は早朝5時頃に実施された模様。このタイミングも市場の取引が薄い時間帯で介入効果を最大にするには絶妙だった。

5月1日はメーデーで欧州市場は休場。NY市場も夕刻で通常でも取引が閑散となる。FOMCやパウエル議長会見をこなして一服感が生じていたなか、とくにドル高円安に振れていなかったところで実施されたことは想定外だったとみられる。

ドル円相場は153円ちょうどに急落。介入金額は3兆円程度と推計されている。また155円よりドル高円安水準は許容できない、とのメッセージを市場に示すことになった。

介入に効果があるかどうか、常に議論があり、否定的な見解もみられる。

ただ実施したボリューム確実に需給効果はある。そのうえでどれほど値動きに影響を与えられたかどうか、どれほどアナウンスメント効果をもたらすことができたか。

先週の介入ボリュームは正確には5月31日に公表されるが、現時点で合計8兆円程度と推計されている。最近円安の原因とされているデジタル赤字、クラウドやネット広告、AIなど海外ITサービスへの支払いは2023年で6兆円弱とされる。1年分以上は吸収したかたちだ。

貿易収支は概ねトントンないし若干の赤字。旅行収支は足元で毎月4千億円程度の黒字まで拡大している。円をめぐる需給は円買い介入によって足元で大きく改善した。

値動きへの影響度合いという点では、市場参加者が少なく取引量が少ないタイミングで実施されればそれだけ効果が大きい。

今回はベストなタイミング、日程としても、時間帯としても、これ以上の時間帯はないだろう。アナウンスメント効果については、許容水準を示せたかどうかという点で、29日は160円がレッドラインであることを示した。さらに円売りが加速していなかった2日に155円割れまで押し下げたことで、155円も許容水準ではないことを明示したかたち。

アナウンスメント効果で欠けているのは日銀との一体感。なおも緩和的な金融政策を続ける、とのガイダンスは、長期金利の急騰を避けるという点で必要だったかもしれないが、円安抑止という点では逆効果。あえてこのガイダンスを示し続ける必要があるかは一考の余地がある。

逆にいえば、緩和的な金融政策を続けるとの文言が削除されれば、投機筋の円買い戻しを促し、より適正な水準へと円高を進める要因にはなりそうだ。

そうしたなか、米国サイドから円安抑止に追い風が吹き始めた。米国ではにわかにスタグフレーション懸念が台頭している。先週、インフレ低下に停滞感が残るなか、景況感悪化、景気減速を示す指標が多く散見された。

ISM景気指数は製造業、非製造業、ともに景況感の分かれ目である50を割り込んだ。雇用統計でも非農業部門雇用者数増加幅が前月の+31万人台から+17万人台に急減。雇用情勢に変調の気配も伺える。

パウエル議長は次の一手が利上げになる可能性を否定し、現状の金利水準をどこまで維持するかが焦点と述べた。FRB内のタカ派は利上げの可能性に言及してきたが変化がみられるか。

市場では利上げ観測が解消。利下げ後ろ倒し、年内利下げなし、との見方が再び修正されて利下げ時期が11月から9月にやや前倒しとなっている。これにつれて米長期金利はピークアウトしている。

2022年秋にドル円相場が150円台をつけ、円買い介入が実施された際には、その後に米長期金利の低下をともなった。結果、翌年2023年初には130円割れまでドル安円高が進んだ。

今回は利下げ観測がまだ強まっていないので急激なドル安円高は想定されない。

ただベースラインの為替需給は2022年よりはかなり改善した状況で投機筋の円売りが積み上がっている。米国の利下げが確実になるまでドル円相場は底固く、150円台前半での高止まりが続くとのメインシナリオは現時点で不変。

ただ米国のデータがにわかにドル安円高リスクを示したことには留意を要する。

米国景気過熱・インフレ高止まり・追加利上げ・ドル高円安加速、とのリスクシナリオは確度が低下しつつある。

当面のポイントとして、6月にECBやBOEの利下げが実施されるか。これが現実となれば、ドルがなお堅調だとしても、円独歩安、という状況は一段と緩和しそうだ。

結果的に今回も円買い介入が効いたとなる可能性は高まっている。さらにFRBの利下げ開始が現実となれば、円安修正が速やかに進むリスクもみておきたい。


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