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粘り腰の米国景気と利下げ後ろ倒しリスク
  • MRA外国為替レポート

2024年4月8日号

◆先週の市場総括


先週は米国の経済指標に強めの数字が散見され、パウエル議長ほかFRB当局者から利下げに慎重な発言が相次ぐと利下げ先送り懸念が台頭。米長期金利は上昇。そうしたなか中東情勢の緊張感高まりや原油価格上昇なども重なってリスク回避が強まり株価が下落した。

米国株は週初から軟調に推移し木曜日に大幅安。NYダウは前週から1,000ドル以上下落した。

日経平均も期初の益出し売りが先行。4万円台は上値が重く軟調。加えて米国株安が重石となって金曜日には下げ幅が一時▲1,000円に迫った。引けは39,000円割れ。

ドル円相場は強めの米経済指標に支えられる一方、介入警戒感で上値を抑制され151円台中心に推移。株価急落、リスク回避による円買い戻しで週末には150円80銭近辺に下落する場面もあった。

注目の雇用統計は強めの数字となりドル円相場は151円60銭に反発して引け。米国株は大幅安のあとイベント通過の安心感から下げ止まった。

月曜日の東京市場では日経平均が大幅反落。4万円の大台を割り込んだ。機関投資家から新年度初の益出し、利益確定売り、アロケーション変更で幅広い銘柄が売られた。下げ幅は一時▲600円を超えた。引けは前週末比▲566円安の39,803円。

日銀短観は想定内。大企業製造業の現状判断DIは12から11へ小幅悪化。先行きは8から10に改善。非製造業の現状判断は30から34へ、先行きは24から27へいずれも改善した。中小企業の業況判断はいずれもほぼ変わらず。

日曜日に発表された中国のPMI景況感指数(3月)は製造業、非製造業、ともに前月から改善し50を上回った。為替市場は米国の重要指標を前に東京市場から欧州市場にかけて小動き。

ドル円相場は151円30銭~40銭の狭いレンジでもみ合い、米国市場朝方は151円50銭。ユーロドル相場は1.0780~90でもみ合い。ユーロ円相場は163円20銭~40銭でもみ合い横ばい。

注目のISM製造業景気指数(3月)は前月47.8に対し予想48.4を上回り50.3と強い数字。景況感の分かれ目である50を超えたのは2022年9月以来。内訳では、新規受注が49.2から51.4へ改善。支払価格が52.5から55.8へ上昇。雇用指数は45.9から47.4へ改善。これをうけて利下げが遅延するとの観測が強まり米長期金利は上昇。10年債は4.312%、2年債は4.712%。

ドルは上昇。ドル円相場は151円70銭台に上昇して引けは60銭台。ユーロドル相場は1.0730に下落して引けは1.0740台。ドルインデックスは104.97と105に迫った。

ユーロ円相場はユーロ安ドル高に連れて162円80銭に下落し引けは90銭台。3連休明けの米国株は利下げ先送り観測を受けて軟調。NYダウは前週末比▲240ドル安の39,566ドル。ナスダックは+17ドル高の16,396ドル。

火曜日の東京市場では日経平均が小幅反発。米市場でハイテク株が底固く推移したことで東京市場でも半導体関連株が堅調。一時+300円高。一方、機関投資家から期初の益出し売りが断続的に出ているようで上値が抑制された。引けは+35円高の39,838円。

ドル円相場は151円台60銭台で始まり70銭~80銭でもみ合いも上値重く、欧米市場では終始50銭~60銭近辺で推移した。ユーロは欧州市場で上昇。

ユーロ圏製造業PMI(3月改定値)は速報45.7から46.1に上方修正され欧州長期金利が上昇しユーロ高に寄与した。ユーロドル相場は1.0740台から20台へ軟化したあと、夕刻から上昇して欧州市場で1.0780をつけてその後は1.0760~80で推移して引けた。

ユーロ円相場は162円90銭台で始まり60銭台に下落。その後は80銭~90銭で上下して欧州市場に入ると163円30銭に上昇。その後は20銭近辺で推移して引け。

米長期金利は上昇。前日のISM製造業景気指数が強く、この日の雇用関連指標もしっかり。底固い景気やインフレの下げ渋りを背景に、利下げ先送り懸念、7月以降にずれ込むとの見方が台頭した。10年債利回りは一時4.4%台にのせて4.354%。2年債は4.693%に高止まり。

米国株は利下げ先送り懸念を受け下落。NYダウは一時▲500ドル安。引けは▲396ドル安の39,170ドル。ナスダックは▲156ドル安の16,240ドル。

発表された雇用動態調査(JOLTS求人件数、2月)は8,756千人と前月8,748千人(速報8,863千人から下方修正)からやや増加。

クリーブランド連銀総裁は、年内0.25%の利下げ3回は妥当とみられるが五分五分、と述べ不透明感を示した。サンフランシスコ連銀総裁は、インフレ減速が緩やかななか利下げに緊急性はない、と述べた。

水曜日の東京市場では日経平均が下落。前日の米国株が利下げ先送り観測でグロース株中心に売られ、台湾地震で半導体供給懸念も強まり、朝方から下落して一時▲600円安。ただ売り一巡後は押し目買いに支えられ下げ幅を縮めた。引けは▲387円安の39,451円。

ドル円相場は151円50銭~60銭でもみ合い。東証引け後に上昇して70銭近辺で推移した。

米国市場に入ると強いADP雇用報告、アトランタ連銀総裁のタカ派発言を受けた米長期金利上昇で151円95銭まで上昇。しかしISM非製造業景気指数が弱く米長期金利が低下すると151円60銭~70銭で推移し引けた。

ユーロ円相場は163円20銭で始まり30銭近辺でもみ合い。欧州市場から米国市場にかけては右肩上がり。164円20銭~40銭で上下して30銭で引け。ユーロドル相場は東京市場では1.0770中心にもみ合い。欧州市場では80近辺で推移。米国市場では弱いISM指数に反応してユーロ高ドル安に振れて1.0830~40で推移して引けた。

ADP雇用報告(3月)は雇用者数前月比が+184千人と予想+155千人、前月+155千人を大きく上まわる強い数字だった。アトランタ連銀総裁が、年内利下げは1回、10-12月の開始が適切、インフレ鈍化は想定より緩やか、と述べた。

一方、ISM非製造業景気指数(3月)は51.4と前月52.6から52.8への小幅改善予想に反して悪化。雇用指数は48.0から48.5に小幅改善したが、新規受注指数が56.1から54.4に悪化。支払価格指数は58.6から53.4に低下した。

米長期金利10年債利回りは一時4.42%に上昇したが反転低下して4.348%。2年債は4.672%。ともに前日からやや低下。

米国株はまちまち。長期金利上昇一服がハイテク株を支えたが、個別株の上下動、業績改善見通し後退が下押し。NYダウは前日比▲43ドル安の39,127ドル。ナスダックは+37ドル高の16,277ドル。

パウエル議長は、利下げには持続的なインフレ鈍化を確認する必要がある、データを精査する時間はある、と利下げを急がない姿勢を示した。クーグラー理事は、年内のインフレ率低下は続く、今年中に政策金利を引き下げることが適切、と述べた。

木曜日の東京市場では日経平均が反発。米長期金利の上昇一服で前日の米ハイテク株が底固く推移したことで半導体関連株が上昇。

日経平均は今週に入り▲900円ほど下落していたことで押し目買いが入った。その後は戻り売り、利益確定売りに上値を抑えられた。引けは+321円高の39,773円。

ドル円相場は東京市場から欧州市場にかけて終始151円60銭~80銭で小動きもみ合い横ばい。

ユーロドル相場は1.0840~50でもみ合いのあと欧州市場では1.0860近辺で推移。ユーロ円相場は164円30銭で始まり50銭近辺でもみ合い。欧州市場では164円60銭~80銭。米国市場ではリスク回避による円買い戻しが進んだ。

ドル円相場は151円50銭~70銭で上下したあと株価急落を受けて151円10銭台に急落。その後は下げ止まったが40銭では上値重く引けは151円20銭。ユーロ円相場も163円80銭近辺へおよそ1円急落した。

その後も164円は上値重く引けは163円90銭。ユーロドル相場は1.0880へ上昇したあとユーロ円相場の急落に押されて1.0830~40へ下落して引けた。

米国で発表された週次の失業保険申請件数は221千件と前週212千件からやや増加。米国株は主要3指数が大幅安。イスラエルとイランの対立が深まり中東情勢緊迫で地政学リスクが意識された。原油価格は上昇。

また午後にはミネアポリス連銀総裁が、今後インフレ率が下げ止まった場合利下げの必要はない、高金利でも米国経済の成長持続が可能な証左があれば利下げは不要、と述べた。

これら嫌気して株価は急落。NYダウは前日比▲530ドル安の38,596ドル、ナスダックは▲228ドル安の16,049ドルで引け。WTI原油先物は86.59ドルに上昇。米長期金利はリスク回避で買われ金利低下。10年債利回りは4.307%、2年債利回りは4.645%。

金曜日の東京市場では日経平均が大幅安。前日の米国株が大きく下落。ドル円相場が一時150円台に下落したことも重石。

主力株、半導体関連株などに利益確定売りが広がり午前中に下げ幅が▲1,000近くに達した。午後には押し目買いで下げ渋り、下げ幅を縮めて引けは▲781円安の38,992円。

ドル円相場は151円20銭~30銭で始まり前日の円買い戻しの流れのまま午前中に150円80銭近辺に下落。ただその後は反発して午後は151円20銭~30銭で推移し夕刻から欧州市場にかけ40銭近辺に上昇。

ユーロ円相場は163円90銭~164円で始まり163円50銭に下落。その後は反発して夕刻は164円20銭。ユーロドル相場は1.0840で始まり概ね1.0830~40近辺で横ばい小動き。

米国の雇用統計(3月)の発表待ち。結果は強めの数字。非農業部門雇用者数が前月+270千人から+303千人に増加ペースが加速。失業率は3.9%から3.8%に低下。一方、平均時給は前年同月比+4.1%と前月+4.3%から上昇率が鈍化した。

米長期金利は上昇。10年債は4.40%、2年債は4.751%。ドル円相場は151円80銭手前まで上昇したが、その後40銭台に押され引けにかけては151円60銭近辺で推移した。

ユーロドル相場は1.0790に下落したが反発して1.0840で推移して引け。ユーロドル相場は163円80銭に下落したあと反発し164円20銭~40銭で推移して引けた。

米国株は主要3指数とも上昇。雇用統計という大きなイベントを通過した安心感、前日まで警戒感やリスク回避で下落していたこともあり反発した。ハイテク株、景気敏感株、消費関連株にも買い。NYダウは前日比+307ドル高の38,904ドル。ナスダックは+199ドル高の16,248ドル。

◆今週の3つの注目ポイント


1.FOMC議事要旨

水曜日に3月19日・20日に開催されたFOMCの議事要旨が公表される。同会合では委員の政策金利見通し中央値が引き上げられるとの見方があったが、結果は年内3回の利下げ予測が維持された。ただ詳細にみると全体的に予想がやや上方修正されていた。

タカ派からは利下げ先送りやペースダウンを支持する発言がFOMC前後でも相次いでいる。パウエル議長はハト派寄りだがいかなる意見が多かったか。市場では6月利下げは五分五分との見方に傾いているが、先送りとの見方が強まるか。

2.米国の経済指標

今週は物価指標に注目

水曜日 消費者物価指数(CPI、3月、前年同月比、予想+3.5%、前月+3.2%、コア指数、予想+3.7%、前月+3.8%)

木曜日 生産者物価指数(PPI、同、前月+1.6%、コア指数、前月+2.0%)

金曜日 輸入物価指数(同、前月比、予想+0.4%、前月+0.3%)

ほか木曜日には週次の失業保険申請件数、金曜日にミシガン大学消費者態度指数(4月速報、予想80.0、前月79.4)、期待インフレ率が発表される。

3.ECB理事会、ラガルド総裁会見

木曜日にECB理事会が開催され終了後にラガルド総裁が会見を行う。今会合では政策金利の変更は予想されていない。焦点は利下げにどれほど前向きなスタンスが示されるか。

加盟国中銀総裁のなかには早期の利下げを主張する意見もみられる。今のところ6月会合での利下げが有力視されておりFRBより早期に利下げとの見方が大勢。その見方が裏付けられるか。またその後の利下げペースは不透明とされるが、どの程度前向きなスタンスがみられるか。

ほか、月曜日には日本の国際収支(2月)が発表される。経常黒字は3兆円弱の黒字、貿易収支は2,000億円程度の赤字が見込まれている。ほか単月では判断が難しいものの、旅行収支の黒字額、増加基調や、デジタル赤字額、増加基調がいかほどか。また直接投資の動向も注目される。

◆今週のMRA's Eye


粘り腰の米国景気と利下げ後ろ倒しリスク

米国経済は足元でなお粘り腰、底固く推移しているようだ。先週末に発表された雇用統計(3月)では非農業部門雇用者数が前月比で+30万人の増加。前月も+27万人の増加。それに先立つADP雇用報告(3月)も雇用者数前月比は+18万人。雇用情勢がなお堅調に推移していることを示している。

週次の失業保険新規申請件数は、先週221千件と一時よりやや増加したが顕著な増加基調は示していない。失業率は3.8%でこちらも4%手前で上昇が一服中だ。

雇用の前提となる企業の景況感もなお底固い。ISM製造業景気指数(3月)は前月47.8から50.3に改善。景況感の分かれ目である50を2022年9月以来で初めて上回った。

非製造業は52.6から51.4に低下したがなお50を上回る。内訳で雇用指数に注目すると、製造業が45.9から47.4へ改善、非製造業は48.0から48.5に改善したが、こちらは50を下回る。これが今後の雇用減速に反映されるか。

インフレ率は緩やかな低下基調にあるが低下ピッチは昨年の勢いはなく遅々としている。

消費者物価指数CPIのコア指数は年初にようやく4%を割ったが、2月は3.8%。3月は3.7%だが、FRBの目標である2%から距離がある。FRBが最も重視する消費支出価格指数PCEデフレーターのコア指数は足元で2.8%でより目標値にかなり近づいた。

ただ3%を切ってから今年に入って横ばい、下げ渋りが続く。ミシガン大学の消費者調査でも、期待インフレ率は1年が2.9%、5年が2.8%、と3%を割って大きくみれば低下基調にあるが、昨年末以降はやや下げ渋っている。

こうした状況を受けてFRB当局者からは利下げに慎重な意見が多くみられる。

3月のFOMC前からタカ派の発言が散見されたため、会合ではメンバーの政策金利見通しが前回12月会合で示された年内3回の利下げから上方修正されるのではないかと想定された。しかし結果はとりあえず上方修正がなかった。

ただこれは中央値、メンバーの予測が最も多かった見通しであり、平均値でみるとやや上方修正されている。結果的に来年の利下げ回数は1回減少。つまり来年まで見通せば0.25%上方修正されていた。年内の利下げ回数は3回と2回で五分五分というところだ。

パウエル議長はハト派寄りで利下げに前向きとみられる。

雇用が堅調でもインフレ率が低下していれば利下げを妨げないと発言。インフレは鈍化基調にあるとの見方を崩していない。

ただFOMC後の発言からみれば利下げを急がない姿勢を示している。持続的にインフレ鈍化を示す指標がみられるか、精査する時間がある、と述べている。タカ派の発言は一段と強硬だ。

ミネアポリス連銀総裁は、インフレ率が下げ止まった場合は利下げする必要はない、高金利でも米国経済の成長持続が可能な証左、と述べた。

サンフランシスコ連銀総裁は、年内利下げは1回、10-12月期が適切、と踏み込んだ発言をしている。パウエル議長と異なりインフレ鈍化が想定より緩やかと判断している。

ハト派は年内利下げが適切としているが、その幅は不透明だ。クリーブランド連銀総裁は、年内利下げは3回が妥当とみているが五分五分、と述べた。

総合してみれば、年内利下げには異論がないが、その時期は当初より後ろ倒し、年内2回か3回かは五分五分。あるいは1回になる可能性もありうる、というところか。

一方、景気物価動向および当局者の発言から、次の一手が利下げであることは確実で、逆に利上げになる可能性はほぼなさそうで、かなり確度の低いリスクシナリオだ。

この状況からみれば、米長期金利が昨年秋につけたピークを再び試す可能性は低い。2年債は昨年10月に5%台、10年債は4.9%と5%に接近していた。その際にドル円相場が152円に接近するドル高円安をつけた。その時点からみればFRBの次の一手が利下げであることが確実になり、またそのタイミングも近くなっている。

6月が見送り、7月となっても、昨年10月時点に比べればインフレ率は実測値、期待値、ともに低下しており、金利見通しは低下方向。利下げ遅延で長期金利が高止まりすることはあろうが、景気物価動向、金融政策の織り込みからは、一段と上昇していく理由がない。米

長期金利の水準、日米金利差の動向からは、ドル円相場は高止まりとなる可能性はあっても、高値を抜いてドル高円安が進む論理的な理由は少ない。

足元でドル円相場が高値試しに最も寄与しているのは需給要因で、本邦投資家の海外投資意欲の強まりもあるが、何よりも金利差縮小が遅延することを奇貨とした投機的な円売り増しだろう。これは株価調整やリスク警戒、さらには介入警戒感で大きくは活発化しにくいとみられる。

結論として、メインシナリオは、ややドルの高止まりが長期化するかたちで調整する必要がありそうだ。150円近辺での高止まりが6月まで継続。その後はドル安円高方向にレンジを切り下げるが、年末時点は140円台前半程度に止まり、140円割れはさらなる利下げ継続が確認される来年以降となる可能性が高まった。

一方、ドル円相場が155円を目指して上昇する可能性は、高金利継続でも景気加速、需給面からインフレ率上昇、というリスクシナリオになる。


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