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日米の金融政策の現状確認
  • MRA外国為替レポート

2024年2月5日号

◆先週の市場総括


先週はFOMCが最大の注目材料だった。結果は予想通り政策金利据え置き。声明文では追加利上げに含みをもたせる文言が削除され、次の一手が利下げとなることが明確に。ただ次回3月会合での利下げはなお材料が揃わず時期尚早と否定された。

市場の早期利下げ観測は後退したが量的引き締めの緩和検討など利下げに向けた準備が垣間見えた。

週央までの雇用関連の指標が弱く米長期金利は低下。ドル円相場は週初の148円近辺から一時146円割れまで下落した。

水曜日に公表された1月の日銀会合主な意見でマイナス金利解除の条件が整いつつあるとの意見が相次いだことが材料視され円高に振れた。

一方、週末の雇用統計が予想以上に極めて強い数字となり利下げ観測が後退、長期金利が反転上昇。10年債利回りは4%台を回復。ドル円相場は149円手前まで急反発して148円半ばで取引を終えた。

米国株は総じて堅調。決算発表、企業業績見通しを受けてまちまちの動きもみられたがハイテク株全般がしっかり。NYダウも史上最高値を更新した。日経平均は36,000円近辺で上下。上値では利益確定売りがみられたが36,000円割れでは押し目買いも。米国株堅調を支えに底固く推移した。

月曜日の東京市場では日経平均が上昇。米国株、NYダウが連日の最高値更新で市場心理が強気に傾き、また円軟調で輸出銘柄を支えた。バリュー株、銀行株にも買い。引けは前週末比+275円高の36,026円。

ドル円相場は148円10銭で始まり30銭に上昇したあと夕刻にかけては軟調、じり安。欧州市場序盤は147円70銭~90銭で推移した。その後148円手前まで強含みもみ合い。ユーロ円相場も同様の値動き。160円60銭から80銭に上昇したが夕刻から欧州市場にかけて159円80銭まで下落した。その後160円20銭に反発したものの反落して159円40銭台。

欧州市場ではユーロ安ドル高に押された。ECBデキンドス副総裁が、インフレリスクは下方へ傾斜している、と述べた。ユーロドル相場は東京市場では1.0840~50近辺で小動きもみ合い横ばい。欧州市場では上下しながら下落して1.08を割り込んだ。

米国市場では長期金利が低下。発表されたダラス連銀製造業活動指数(1月)が前月▲10.4から▲27.4へ大きく悪化した。10年債は4.076%へ、2年債は4.322%へ低下。

ドル円相場は147円60銭~70銭に下落してもみ合い、さらに30銭割れまで下落。引けは147円50銭。

ユーロドル相場は小幅持ち直し1.0830~40近辺。ユーロ円相場はじり高となり159円80銭近辺で引け。

米国株は長期金利低下に支えられて堅調。NYダウは3営業日続伸。史上最高値を更新。前週末比+224ドル高の38,333ドルで引け。ハイテク大型株の決算待ちもしっかり。ナスダックは+172ドル高の15,628ドル。

火曜日の東京市場では日経平均が小幅上昇。主要企業の決算発表前で様子見姿勢は強かったが、NYダウの史上最高値更新が続き、海外勢の買いは旺盛だった。引けは前日比+38円高の36,065円。

ドル円相場はFOMCの結果待ちで東京市場から欧州市場にかけて方向感なく推移。147円50銭で始まり20銭~50銭で上下横ばい。

ユーロドル相場は1.0830~40で上下したあと欧州市場では1.0810~50で上下。ユーロ円相場は159円60銭~80銭で上下したあと夕刻には159円20銭に下落。その後米国市場にかけて160円ちょうどに反発したあと159円60銭に反落した。

米国の経済指標は強め。消費者信頼感指数(1月)は前月110.7から114.8へ予想を上回る改善。雇用動態調査(JOTTS求人件数、12月)は前月8,790千人から9,026千人に増加。

ドル円相場は147円10銭に下落していたが90銭台に急反発し引けは147円60銭。ユーロ円相場は160円30銭に上昇し引けは160円ちょうど近辺。ユーロドル相場は1.08台前半でもみ合い引けは1.0840。

米国株はまちまち。金融、消費関連が堅調。大型ハイテク決算見極め、FOMC待ちでハイテクは上値重い。NYダウは4営業日連続で史上最高値更新。前日比+133ドル高の38,467ドルで引け。ナスダックは▲188ドル安の15,509ドル。

水曜日の東京市場では朝方に公表された日銀金融政策決定会合(1月)主な意見に注目が集まった。公表された資料では委員からマイナス金利解除の条件は整いつつあるとの意見が相次いだことが明らかに。震災の影響は1~2か月みれば政策変更は可能、との意見もあった。

ドル円相場は147円60銭で始まり10銭台に下落。ただその後夕方にかけては持ち直し147円90銭に上昇。ただ欧州市場では上値重く40銭に反落するなどして米国市場にかけては80銭近辺でもみ合い。ユーロ円相場は160円ちょうどで始まり159円60銭台に下落し、70銭台~90銭台で上下。

欧州市場では159円50銭に反落したあと反発sにて160円20銭近辺でもみ合い。ユーロドル相場は1.0840近辺でもみ合い、その後は1.0820近辺にレンジを下げてもみ合い。

日経平均は前日の米国株安や日銀の政策変更が近いとの見方を受けて朝方は一時▲300円下落。ただ36,000円割れでは押し目買いが支え。銀行株は堅調。決算好業績銘柄が買われ午後に持ち直し。引けは前日比+220円高の36,286円。

中国のPMI景況感指数(1月)は製造業が前月49.0から49.2へ、サービス業は50.4から50.7へ小幅改善した。

米国市場では弱い経済指標を受けて長期金利が低下、ドルが下落。ドル円相場は146円10銭へ、連れてユーロ円相場は158円60銭台へ。ユーロドル相場は1.0890へ上昇。

ADP雇用報告(1月)は雇用者数前月比が前月の+164千人から+107千人へ増加幅大きく減少。雇用コスト指数(10-12月期、前期比)は前期の+1.4%増から+0.9%に鈍化。シカゴ購買部協会景気指数(1月)は前月46.9から46.0へ悪化した。

注目のFOMCでは予想通り政策は現状維持。声明文から追加利上げに含みをもたせる文言は削除された。ただインフレは依然として高止まりしている、とし、持続的に2%に向かっていると確信するまで利下げは適切ではない、とした。

パウエル議長は会見で、3月会合までに確信できるレベルに達する可能性は低い、として3月利下げを否定した。また3月に量的引き締めの縮小・減速を開始すると示唆した。

ドル円相場は乱高下。146円90銭~146円ちょうどで乱高下したあと147円50銭に上昇し、引けは146円90銭。

ユーロドル相場も乱高下したあと1.08ちょうど近辺に下落し引けは1.0820。

ユーロ円相場は158円60銭台~80銭台で上下したあと159円20銭に上昇したが引けは158円90銭台。

米長期金利は低下。10年債利回りは4%割れ、3.929%へ低下。2年債利回りは4.217%。

米国株は主要3指数がそろって下落。FOMCが早期利下げに慎重な姿勢を示したことでハイテク株が下落。ただ労働市場の逼迫が緩和している経済指標は好感された。NYダウは前日比▲317ドル安の38,150ドル。ナスダックは▲345ドル安の15,164ドル。

木曜日の東京市場では日経平均が反落。米国株がハイテク中心に下落したことが重石。また低調な決算銘柄に売りが嵩んだ。中国景気への不安感から中国での売上比率が高い銘柄などが売られた。ただ36,000円割れでは引き続き買い。一時▲360円安まで下げたが引けは▲275円安の36,011円。

中国の財新PMI製造業(1月)は前月と同水準の50.8。

ドル円相場は146円90銭で始まり50銭に下落。その後夕刻にかけては147円ちょうど近辺まで反発した。欧州市場では146円台後半を中心に上下し、米国市場では一段安。

米国の雇用情勢緩和や長期金利低下を材料に一時146円割れに下落した。引けにかけては反発して146円台半ばで上下し146円40銭で引け。

ユーロドル相場は1.0820で始まり上値重く夕刻には1.0780へ下落。欧州から米国市場にかけては持ち直し1.0870に上昇してもみ合い引けた。

ユーロ円相場は158円90銭で始まり50銭~70銭で上下。夕刻には158円10銭に下落した。ただ欧州市場では反発して一時159円台を回復。米国市場では158円30銭~80銭で上下し引けにかけては159円に乗せて上下し158円20銭で取引を終えた。

発表された米国の経済指標は、チャレンジャー人員削減数(1月)が前月54,811千人から82,307千人に増加。週次の失業保険新規申請件数が前週215千件から224千件に増加。単位労働コスト(10-12月期)が前期比+0.5%と前期の▲1.1%からプラスに転じたものの予想+1.3%を大きく下回った。

ISM製造業景気指数(1月)は前月47.4から49.1へ改善したが依然として景況感の分かれ目である50を割ったまま。雇用指数は前月47.5から47.1へ低下した。

新規受注指数は47.0から52.5へ持ち直し。価格指数は45.2から52.9へ上昇。中東情勢悪化による航路変更がコスト増につながっているとみられる。

米長期金利は低下。10年債利回りは3.874%。2年債は4.205%。

米国株は主要3指数がそろって反発。雇用情勢緩和による長期金利の低下が支えとなり前日の下げから持ち直し。ただ一部地銀決算で商業用不動産融資の引当金積み増しの動きがあり懸念も生じた。NYダウは前日比+369ドル高の38,519ドル、ナスダックは+197ドル高の15,361ドル。

金曜日の東京市場では日経平均が上昇。米国高を支えに午前中は一時+400円超上昇したが午後に失速。36,500円近辺では利益確定売りが優勢。雇用統計の発表を前に見極め姿勢が強まった。引けは+146円高の36,158円。

東京時間の為替相場は米雇用統計発表待ちで小動き。ドル円相場は146円40銭近辺でもみ合い横ばい。

ユーロ円相場は159円20銭近辺でもみ合い。ユーロドル相場は1.0870~80で小動き。夕刻から欧州市場では一時ドル円相場が147円80銭へ、ユーロ円相場が159円90銭へ、ユーロドル相場が1.09ちょうど近辺へ上昇したが押し戻され、雇用統計前はそれぞれ147円50銭、159円40銭、1.0880。

注目の米雇用統計(1月)は予想を大きく上回る極めて強い数字だった。非農業部門雇用者数・前月比は+353千人、前月も+216千人から+333千人に上方修正された。

失業率は3.7%から3.8%へ小幅上昇予想に対し3.7%で不変。平均時給上昇率は、前月比が前月+0.4%から+0.6%へ、前年同月比が+4.1%から+4.5%へ加速した。

これを受けて利下げが遠のいたとの見方が強まり米長期金利は上昇。10年債は4.024%へ、2年債は4.374%へ。

ドル円相場は急騰し148円ちょうどからさらに148円60銭へ一段高。引けはやや押して148円40銭近辺。

ユーロドル相場は1.0780~90へ下落。ユーロ円相場は上下しながら160円20銭に上昇し引け。

米国株は上昇。午前中は強い雇用統計を受けて利下げが遠のいたとの見方でNYダウは下落。しかし強い経済指標はソフトランディング期待を強め株価の支えに。

この日は大型ハイテク決算発表が続き、メタ社、アマゾン社、などハイテク株が大幅高。ナスダックは前日比+267ドル高の15,628ドル。NYダウは+134ドル高の38,654ドルで取引を終えた。

他の指標は、ミシガン大学消費者信頼感(1月確報)が78.8から79.0へ上方修正。期待インフレ率1年は2.9%で速報と変わらず。5-10年は2.8%から2.9%へ小幅に上昇した。

◆今週の3つの注目ポイント


1.米国の経済指標

引き続き米国経済、雇用情勢の底固さに関する指標が注目される。

月曜日にISM非製造業景気指数(1月)が発表される。前月50.6から52.3へ改善が予想されている。雇用指数は前月に43.8へ大きく悪化したが、1月の雇用統計が強かったことと整合的な強い数字となるか。

またサービス業PMI(1月)の改定値が発表される。木曜日の週次の失業保険申請件数が前週に続いて弱いままとなるか、あるいは再び堅調な雇用情勢を示すか。雇用統計の数字は季節調整などブレも大きいため、総合的にどう判断すべきか。

2.日本の経済指標

日銀は景気物価見通しに自信を強めマイナス金利解除に傾いている。国内景気の動向はどうか。

火曜日に家計調査・消費支出(12月)、水曜日に景気一致・先行指数(12月速報)、木曜日に景気ウォッチャー調査(1月)が発表される。また国際収支(12月)が発表されるが収支動向は円需給に何らかの示唆をするか。

3.決算および株価動向

米国の決算発表が峠を越えるなか、日本で企業決算が佳境を迎える。米国株は史上最高値更新、日本株も戻り高値を更新する状況が続いている。リスク選好が円安の支えとなっているが、なおも株価堅調・円軟調が続くか。株価上昇一服となり円高に動きやすい状況となるか。

◆今週のMRA's Eye


日米の金融政策の現状確認

米国ではFOMCで政策は据え置かれたものの、利下げに向けて一歩前進、準備を始めるニュアンスが明らかになった。声明文では利上げに含みを残す文言が削除され、政策のバイアスが中立から緩和方向に傾いたことが確認された。

一方で、市場の過剰な金利先安感、早期利下げ期待を牽制するためか、次回3月会合での利下げを否定する表現となった。インフレは依然として高止まりしている、とし、持続的に2%に向かっていると確信するまで利下げは適切ではない、と記した。

そのうえで3月会合までに確信できるレベルまで達する可能性は低いとの認識が示された。量的引き締め、保有債券の市場での売却による市場からの資金吸収、については、そのペースを緩めることを次回会合で検討することが表明された。これは利下げ開始に向けた準備と受け止められる。

こうした政策動向を左右する景気物価動向、それを示す経済指標はまちまちな内容となっている。PMI景況感指数は悪化に歯止めがかかり、製造業については緩やかに最悪期を脱する気配がみえる。米国では景況感の分かれ目である50を久しぶりに上回った。

一方、他の景況感指数は芳しくない。

ダラス連銀製造業活動指数、シカゴ購買部協会景気指数は悪化。ISM製造業景気指数は前月から改善したが49.1と50を下回ったままだ。

雇用関連指標は強弱入り混じり。求人件数は増加。一方ADP雇用報告では雇用者数増加ペースが大きく鈍化。失業保険申請件数も増加した。

ただ雇用統計では非農業部門雇用者数が大幅増となり雇用の力強さを示した。季節調整の不調もあって判断が難しい。ベージュブック(米地区連銀経済報告)では定性的な判断として雇用情勢の緩和が指摘されていることから、雇用情勢は底固いながらも緩和している、といえそうだ。

インフレ率はこれまで順調に低下してきたが足元で低下一服。消費支出価格指数や期待インフレ率は下げ止まりの様相を示している。原油価格の下落が一服。また中東情勢の不安からスエズ運河を迂回して喜望峰周りにするなどで海運市況がタイトになり運賃に上昇圧力がかかっていることも、インフレ率の低下に棹差している。

こうした状況を踏まえれば、FRBは次回3月会合の利下げを見送る確度がかなり高い。ただ量的引き締めのペースダウンを開始。市場からの資金吸収を緩和し、利下げに備え始めるとみられる。

地銀を中心に商業用不動産融資の焦げ付きが目立ち始めたことは景気ないし金融市場の安定にとってリスク。緩和バイアスを強める要因だ。

3月の次の会合は4月30日・5月1日の2日間。雇用統計は2月分(3月初)、3月分(4月初)の2回ある。

4月分についてはFOMCの直後となり政策判断の材料としにくいが、ベージュブックなどである程度の定性的な判断が下されているとみられる。すでにインフレ率が政策金利を大きく下回っていることを考えれば、雇用の強さだけで利下げがさらに先送りされる可能性は低い。

同会合での利下げの可能性は過半。6月会合ではほぼ確実に利下げが実施されているとの見方になる。

日銀は逆にマイナス金利解除、利上げに向けてさらに前進している。1月会合ではマイナス金利解除に向けた条件がさらに整ってきたとの発言が相次いだことが、公表された主な意見で明らかになった。

年初から震災の影響でマイナス金利の修正には動きにくいとの見方が広がり円売り戻し・円安の一因となった。

しかしこの点については、1~2か月様子をみれば十分との認識が示された。3月になりマクロ経済状況に著変なければマイナス金利解除の妨げにならないということになる。

引き続き植田総裁は賃金動向を注視している。春闘の結果は3月会合の前には判明。足元でも労使交渉から概ね動向は判明しつつあり状況把握を4月まで待つ理由は乏しい。

となると、日銀が3月会合でマイナス金利解除に動く可能性は相応に高く、さらに4月会合、25日・26日に開催され、これは月末からのFOMCの前となるが、そこまでにマイナス金利解除に動くのはほぼ確実だろう。

日銀が3月下旬ないし4月下旬にマイナス金利解除、FRBが4月末・5月初ないし6月中旬に利下げ、と、日米の金融政策は逆方向かつ日銀がやや先行というかたちになりそうだ。

ただ双方ともに緩慢な利上げ・利下げとなりそうで、ドル円相場への下落圧力もまた緩慢となりそうだ。

明確にドル安円高に動き始めるのは3月末以降。リスクバイアスはドル安円高方向ながら、当面は高値圏、145円~150円でもみ合い、となる可能性が高い。

欧州ではECBも利下げを検討し始めている。一時はFRBよりも早く利下げに踏み切るのではないかとみられたが、市場の早期利下げ観測をFRB以上に警戒しているようだ。

市場では早期利下げ観測が根強いものの、現時点ではFRBと同時かその後、時期としては6月となりそうだ。米欧の利下げが揃ったところで、円安の修正はもう一段強くなると想定される。


主要指標は、有料版「MRA外国為替レポート」にてご確認いただけます。
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