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総じて軟調
  • MRA商品市場レポート

2024年1月16日 第2629号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「総じて軟調」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場はその他農産品や貴金属セクターの一角が上昇したが、総じて軟調な推移となった。

米国市場がキング牧師の生誕記念日で休場の中、基本的には様子見気分が強まりやすいが、中国が金融機関向けの中期貸出制度金利を市場予想に反して引下げ無かったことや、独GDPの低下(分っていたことなので、改めて材料にするものではないのだが)や、欧州株の調整を受けてドル高が進行したことが全体の地合を弱気にさせた。

基本、各国の景気は、市場見通しと公的調査機関の見通しに若干の齟齬はあるものの、春先~夏にかけて減速する見通しであるため、特にエネルギーや工業金属などの景気循環系商品に価格に下押し圧力が掛りやすい地合にあることは、恐らく間違いがない。

需要減速の中で生産調整が置き、価格下落を下支えすると予想されるが、生産調整も即時に起きるものではないためこの「調整時間のギャップ」が商品価格を下押ししやすい。

この価格下落を、現在特に株式市場で意識されている「金融緩和期待」がどれだけファイナンシャルな面で支えるか、がポイントとなってくる。

また、景気が減速する局面では各地で暴動も起きやすく、中東でもフーシ派の攻撃により石油関連船舶の航行に支障が出ている状況で、このことも価格を下支えすると予想される。

【本日の見通し】

本日は、各国統計も日替わりで強弱まちまちなものが出てくる中、方向感に欠ける展開が予想されるが、それでも景気減速・金融政策による下支え、の構図でレンジワークを継続すると考える。

本日の注目材料は以下の通り。

・FRBウォーラー理事講演

・EU財務相理事会

・英10年インフレ連動債入札

・独5年債入札

・1月ニューヨーク連銀製造業指数 市場予想 ▲5.0(前月▲14.5)

・1月独ZEW景況感指数 11.7(12.8)、現況指数 ▲77.0(▲77.1)

・企業決算:GS、MS

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油・石油製品

昨日の原油価格はもみ合い、現状維持。米国市場が休場で様子見気分が強まる中、欧州統計の減速を受けたドル高が価格を下押しする一方、フーシ派の攻撃が米貨物船に命中し、同海域の船舶の航行に支障が発生するとの懸念がショートの買い戻しを誘ったため。

2024年は最大消費国である米景気動向、並びに労働市場需給環境に焦点が当たり、加えて懸念していた通り中東情勢が悪化していること、同時にOPECプラスの結束がこれも想定通り揺らいでいることから、「下げ基調ながらも上下に振れやすい展開」が想定される。

今年は多くのリサーチハウスが弱気な見通しを予想しているが

1.OPECプラスの減産がきちんと遵守された場合2.景気減速で想定よりも早く米国が利下げに舵を切る場合3.ガイアナ危機の顕在化、ないしはガザ紛争を受けたアラブ諸国の親イスラエル国ヘの原油(ガス)供給制限

といったことがあれば、水準は切り上がることになる。米労働市場の改善があれば上昇は顕著なものになろう。

しかし、金融緩和を渋り過去に見られたような「政策金利据え置き~緩やかな利下げ局面での危機発生」の場合、ないしはOPECプラスの減産遵守を促すために逆にサウジなどが増産するという可能性もあり、その場合はBrentで60ドル程度までの下落リスクもリスクシナリオとして棄てきれない。

上述の通り、かなり上下のリスクシナリオ顕在化時の「振れ」が大きくなる可能性が高い。

ロシア情勢・中東情勢を踏まえた原油供給状況は大きく変化していないため、原油価格の「想定されるレンジ」は以下の通り。

現在は 3.の状態。

<シナリオ別原油価格見通し>

1. 中東問題が悪化し、OPEC・OPECプラス諸国からの供給が途絶する場合 中東諸国の親イスラエル国ヘの供給制限など、オイルショック時
Brent 90-150ドル(Q324まで景気が減速する場合)

2.OPECプラスの減産が遵守される場合
Brent 75-100ドル

3.OPECプラスの減産が遵守されない場合
Brent 60-90ドル

4.OPEC諸国が逆に増産する
Brent 55-80ドル

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

5. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)
Brent 60-90ドル

6. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)
Brent 40-60ドル

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次修正している。

Q124 欧米の景気後退局面入りによる需要鈍化・生産調整継続ただし、OPECプラスの自主減産開始で年初に水準を切り上げ(→その後OPECプラスの減産が下支え)Q124にOPECプラスの減産が確認されない場合(↓↓↓)
Q224~Q324 実質金利プラス維持による景気幻想継続 製造業の循環的な回復が下支え(→)OPECプラス減産維持の場合(→)
Q324以降 景気の循環的な回復・中国の正常化(↑)OPECプラス減産維持の場合(↑↑)

※矢印の向きは価格の方向性。

1月9日時点のWTIの投機筋ポジションは、ロングが▲10,806枚、ショートが▲1,659枚とポジション解消が進んでいる。

Brentはロングが+29,942枚、ショートが▲8,963枚と、こちらは逆に強気に転じた。フーシ派の反欧米・イスラエルの動きが強まる中、供給不安を受けてポジションの解消が進んだとみる。

本日は、原油価格変動に直結する新規材料に乏しい中、景気減速と供給不安が相殺し合い、レンジワークを継続すると考える。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は下落した。気温低下予報はあるものの、ガス在庫の水準の高さを勘案すると、シーズン中の追加調達の必要性が低下していることが価格を押し下げた。

今冬の欧州のガス調達リスクは後退している。しかし弊社のシミュレーションの結果では、今年の夏以降にガス調達が不足するリスクはまだ残存している。結局のところ需要動向が需給を左右すると考えられる。

欧州の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続

2.LNGターミナル・ガス田・船舶の不慮の停止

3.西側消費国に対するロシアの供給削減(価格の上昇要因)

4.景気減速(価格下落要因)

5.季節要因・気象状況

1.は弊社の試算では欧州が完全にロシア産ガスを排除(第三国経由でもロシア産のLNGを購入しない状態になる)できるのは2027年頃。ロシア産のLNGの輸出が阻害されなければ2025年頃と予想される。

今のところロシア産ガスの供給は実質的に制限されていないが、仮に脱ロシアが完了した場合、ロシアがこれまで供給してきた西側諸国向けのガスが「浮く」ことになる。

2022年、欧州向けにロシアが削減したパイプライン輸出量は708億立方メートルで、総輸出量9,685億立方メートルの7.3%に及ぶ。

これを他地域の需要増加で補うことは恐らく不可能であり、FID済みのプロジェクトも見直しせざるを得なくなると予想される。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

2.は、アラビア半島周辺海域の航行の不透明感が強まっている。

3.は既にロシアからの供給削減は現時点ででき得る限界まで行われているため、目先は材料になり難い。

4.は顕在化しているが、足下、欧州の統計が改善しており今年以降の需要回復が価格の押し上げ要因となる可能性が出てきた。

5.は2.とも関係するが、エルニーニョ現象中は暖冬になりやすく価格上昇方向のバイアスは強まらないと予想される。ただ、エルニーニョ現象発生後のラニーニャ現象発生はリスクとなる(2024年夏以降か)。

米メキシコ湾発のLNGのタンカーレートは、過去2年の平均程度で推移している。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米天然ガス価格は下落。記録的な寒波が北米を襲っていたが、今後、気温は上昇する見通しであることが材料となった。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物価格は休場。

11月のJLCの水準は11.85ドル(前月比▲0.01ドル)であり、現在のスポット価格はこの水準を下回っている。スポット調達圧力は今後弱まる可能性が高い。

今年は回避されているが、豪州は国内供給が充分でない場合、通常7月1日まで、遅くとも10月1日までにガス不足の懸念を通知し、実際に国内供給が不充分と判断された場合、次の1年間は輸出が制限される(ADGSM)。

この条項が発動された場合、スポット価格の上昇リスクとなるため、意識はしておきたい。

また、サハリン2の生産能力の低下、供給の減少はかなり前から指摘されているが、今のところ顕在化していない。多くの必要な部材は中国などを経由してロシアにもたらされている可能性があり、実は長期の供給リスクは懸念ほどではないかもしれない。

11月の中国の天然ガス生産は+5.8%の1,470万6,000トン(前月+4.3%の1,411万8,000トン)と同じ時期の過去5年の最高水準を上回っている。

12月の中国の天然ガス(パイプラインガス+LNG)輸入は前年比+9.9%の1,165万5,000トン(前月+6.1%の1,095万トン)と前年比ベースの伸びが大幅に加速した。気温低下や、季節的な渇水による需要増加が材料と考えられる。

11月のパイプラインベースの輸入は前年比+6.7%の415万トン(前月+1.1%の362万トン)と過去5年の最高水準(402万トン)を上回っている。

11月のLNG輸入は前年比+5.9%の680万1,000トン(前月+28.2%の516万9,000トン)と過去5年の最高水準(690万1,000トン)に迫っている。

合計の「ガス顕在需要」は前年比+5.9%の2,573万5,000トン、年初来累計2億6,198万1,000トン(前月+8.4%の2,290万5,000トン、年初来累計は+7.3%の2億3,632万4,000トン、前々月+6.3%の2,360万3,000トン、年初来累計+7.2%の2億1,341万7,000トン)と、季節性の影響もあるが着実に増加している。

※中国のガス統計は、データ形式(年初来累計を単月に換算したものと、中国政府が発表する月次のデータなど)や単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。

1月7日時点の日本の大手発電業者のLNG在庫は251万トン(過去5年平均228万8,500トン、大手発電業者在庫の過去5年平均は191万トン)と、過去5年平均を上回った状態が続いている。

現在発生しているエルニーニョ現象は今年の6月頃まで続く見通しであり、その影響もあって今年の北半球は記録的な暖冬が見込まれているため、この在庫水準であれば冬は乗りきれる可能性が高まっている。

本日は、欧米の気温が上昇する予報であること、中東を巡る供給不安が高まっていることから結局、現状水準を維持すると考える。ただしそろそろ季節的には上昇し難い時期に。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP・東京ガス提示の数値を使用している。 LNG1トン=2.19立方メートル(液体)=1,360立方メートル(気体)= 46MMBtu LNG船1隻 147,000立方メートル=67,000トン 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル=7,757トン 1Mwh=10.55千立方メートル

◆石炭

豪州石炭スワップ価格は小幅に低下した。欧米の気温低下緩和見通しを背景にガス価格が下落したことが材料視された。

昨年12月以降の中国、日本、韓国などの輸入増加で石炭価格の期間構造はバックワーデーションになっているが、足下の石炭輸入はこれらの国で減少しているため、早晩、期近の下落があるだろう。

全ての発電業者が、燃料をガスから石炭に切り替える訳ではないが、1.実際にスイッチ可能な消費者はガス価格対比で割安であれば石炭を選択する、2.ガス対比での備蓄のしやすさ、3.石炭が脱炭素の影響で否定される中、需給関連の統計が十分に提供されておらず、ガス価格を参考に価格が決まりやすい状況になっていること、からガス価格動向は無視できない。

現在のガス価格(JKM)との関係性を元に回帰分析を行うとNEWC価格は131ドル、±1標準偏差で60~200ドル程度までが統計的に説明可能なレベル。

期先の価格は現在の生産コストに近いことを考慮すると、期先の価格が120~130ドル程度まで再び上昇しているため、120~200ドルが説明可能なレンジ。

ロシア問題が継続する以上、欧州が完全に脱ロシアを達成することが期待される2027年(早ければ2025年、現実的には2026年)までは、ピークシーズン中の価格上昇リスクはつきまとう。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

12月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比+53.0%の4,729万7,000トン(前月+34.7%の4,350万6,000トン)と過去5年レンジを大幅に上回る水準を維持した。

11月の燃料炭輸入は、ロシアからの輸入が減少(564万トン→538万トン)したが、豪州(461万トン→612万トン)、インドネシア(366万トン→513万トン)、モンゴル(106万トン→158万トン)で増加している。

11月の中国の石炭生産は、前年比+0.2%の4億955万トン、1,365万トン/日(前月+4.7%の3億8,707万トン、1,248万トン/日)と伸びが加速、過去最高水準を上回っている。

11月の中国の電力消費量は前年比+11.7%の7,630億kwh(前月+8.6%の7,419億kwh(前月+10.1%の7,811億kwh)と伸びが加速した。

本日は、ガス価格が気温低下緩和見通しでやや弱めに推移することが価格を下押しするものの、中東情勢不安を背景とするガス供給ヘの懸念から現状水準を維持すると考える。

◆LME非鉄金属

LME非鉄金属市場は高安まちまち。中国当局が中期貸出制度の金利を引き下げるとみられていたがこれが見送られたこと、ドル高が進行したことが価格を下押しした。

また、個別の材料ではNyrstarがBudel亜鉛製錬所をメンテナンスやエネルギーコストの上昇を理由に一時、稼働を停止したことが亜鉛価格を押し上げている。

今年は恐らく景気が減速する中で多くの非鉄金属価格に下押し圧力が掛りやすいが、金利や人件費、エネルギーコストの高止まりを背景に生産調整が発生する可能性は高いとみており、下落余地を限定することになろう。

IMFやFOMCの見通しを前提とすればQ324以降に景気が底入れすると期待されるため、年後半に掛けて価格上昇が予想される。

市場コンセンサスはQ224で景気は底入れするとしており、中国の在庫循環も早ければQ124の後半で在庫調整が終る可能性があること、半導体サイクルもQ224以降の回復が見込まれているため、銅や錫など、半導体関連の金属価格は比較的早いタイミングで上昇する可能性がある。

英国によるロシア産金属の取扱禁止の方針は、LMEの金属需給がひっ迫するため短期的には価格が上昇するが、時間経過後は取引量が減少し下落に転じると予想される。

そして、LME外で取引される金属が増加、ロシアに対する制裁発動国と、非発動国の価格が異なる「一物二価」の状態となることが予想される。

ロシア産のアルミやニッケルを加工して生産した製品が流通すると予想されるが、このとき西側諸国政府がどこまでこの原料のトレースを要求してくるかが次の焦点となろう。

米国のウクライナへの軍事支援が予算的に終了に向かう中、欧州は独自にロシアに対する制裁を強める必要性が出てきていると考えられ、非鉄金属以外の資源への制裁が強化されることも有り得る状況に。

中国が不動産危機を乗り切ることに失敗し、中国政府が想定以上にこれまで積み上がった余剰生産能力の解消に手間取った場合、景気は長期低迷、いわゆる「日本化」が10年単位で起きる可能性が高い。

さらに労働人口がピークアウトし、かつ、西側諸国の制裁によって先端分野の発展が阻害され生産性が低下、将来的にはインフレをもたらしソ連型の国家崩壊、というシナリオも長期的には有り得る話。

就任以降の習近平国家主席の政策は、決して成功しているとは言えない。

12月の中国の貿易統計では、ベンチマークである銅地金・製品輸入は前年比▲10.6%の45万9,338トン(前月+2.0%の55万566トン)と過去5年平均を下回った。

12月の銅鉱石・コンセントレートの輸入は前年比+18.2%の248万1,161トン(前月+1.2%の244万トン)と過去5年の最高水準を上回る状態が続いている。電力供給の回復や、TCが高い水準で推移していることもあり、鉱石からの生産インセンティブが維持されているためと考えられる。

11月の中国の精錬銅生産は+2.0%の111万9,000トン(前月+23.8%の114万3,000トン)と過去5年の最高水準を維持したが、前年比ベースでの増加幅は縮小した。ただし生産は過去5年で見た場合高い水準を維持している。

11月の銅スクラップの輸入は前年比+13.2%の18万2,935トン(前月+37.7%の15万5,359トン)と過去5年平均を維持している。

精錬銅輸入は減少しているが銅鉱石輸入が増加し、総供給量は増加している。製造業PMIが低迷、上海取引所在庫の水準が過去5年レンジを下回っていることを考えると、統計に反映されない企業在庫として取得されている可能性があると見ている。

本日は、中国の需要動向が積極的に非鉄金属価格に影響し難い環境下、ドル指数動向が価格を左右しやすいが、ドル指数も方向感が出難い展開が続いており、結局現状レンジでのもみ合いが予想される。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落、大連は小幅に上昇、豪州原料炭スワップ先物は上昇、大連原料炭価格は下落、上海鉄筋先物は下落した。

中国人民銀行が金融機関向けの中期貸出制度を通じた資金供給レートを据置いたことで、景気刺激ヘの期待が後退したことが鉄鋼製品価格を押し下げた。

11月の中国粗鋼生産は前年比+2.1%の7,610万トン(前月▲0.8%の7,609万トン)と減速し、過去5年平均を下回った状態が続いている。

12月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲5.0%の66万4,860トン(前月▲18.7%の61万トン)と低迷が続き、同じ時期の過去5年の最低水準を下回る状態が続いている。

12月の中国の鉄鋼製品の輸出は前年比+43.1%の772万8,000トン(前月+43.3%の801万トン)と過去5年の最高水準を大きく上回る状態が続いている。同時に鉄鋼製品輸出額は前年比▲13.5%の63.7億ドル(前月▲11.7%の64.9億ドル)と金額・伸び率とも前月から減速した。

輸出額を数量で割ったトン当り単価は824ドル(前月810ドル)と改善したが依然、低い水準。欧米のPMIやISM指数の減速を見るに、中国の景況感は改善するには至らず、まだ値引きで在庫を解消する動きが続いていると考えるのが妥当だろう。

週間の鉄鋼製品港湾在庫統計は、鉄鋼製品在庫は+33万7,000トンの971万2,000トン(過去5年平均 902万3,000トン)と過去5年平均を上回っている。

鉄鋼原料は、鉄鉱石在庫が前週比+150万トンの1億1,600万トン(過去5年平均 1億3,740万トン)、在庫日数は28.1日(+0.4日、過去5年平均 30.7日)。

鉄鉱石は在庫は日数ベースでも、数量ベースでも過去5年平均を下回っており、鉄鉱石の需給はタイトで一定の在庫積み増し需要が存在する。

主要原料炭の輸入港である京唐港の原料炭在庫は+5万6,000トンの208万トン(過去5年平均162万4,000トン)、在庫日数は±0.0日の9.4日(過去5年平均 6.4日)と、原料炭の需給は緩和している。

本日は、中国政府の対策実施が遅れる中、季節的な在庫積増しの動きが価格を下支えすると考える。

◆貴金属

昨日の金価格は上昇した。中東の地政学的リスクの高まりが安全資産需要を高めていることが背景。銀も上昇、プラチナも上昇したが、パラジウムは株の調整もあって小幅安となった。

これまで政策金利の引き上げと共に「諸々のリスクの高まり」から、リスク・プレミアムが上昇して金価格を押し上げてきた。金リスク・プレミアムの上昇要因の主なところは、

1.米利上げによる信用不安の高まり(低格付企業・新興国)

2.ロシアに対するドル決済禁止制裁を受けた、準備金におけるドルから金ヘのシフト

3.ロシアのウクライナ侵攻

4.イスラエルとパレスチナの戦争開始による中東情勢不安並びに、テロ組織の大規模攻撃であるため、各地にテロが拡散するリスク

あたりだろう。これらと同じ事象は、ニクソン・ショック~プラザ合意~アジア危機収束まで30年近く続き、金価格に占めるリスク・プレミアムのシェアが高止まりした。

2019年基準で算出した現在のリスク・プレミアムのシェアは50%と、ほぼ上記の期間と同様の状況になっており金利水準以上にその他の要因が金価格の形成に影響を与えていることが確認できる。

現状を理解する手助けとなるため、あえて実質金利・信用リスク・その他、に分離した場合、実質金利部分が45%、信用リスク要因が20%、その他の要因が35%となった(2019年データを元にした分析結果に変更)。

直近1年間の説明力を相関係数で確認するとほとんどの項目が金価格と無相関の状態になっている。3ヵ月間の相関関係では、最も金価格に対する説明力が高いのがドル指数で▲0.82、次いで実質金利で▲0.77、10年金利で▲0.77、期待インフレ率で▲0.69となった。これまで説明力がほとんどなくなっていた実質金利要因の説明力が増している。

このことは、リスク・プレミアム以上に金融政策動向が価格を左右しやすいことを示唆している。

この5年間のデータを元にした分析では、FF金利±1%の変化で、金の基準価格は±150ドル変化し(負の相関)、リスク・プレミアムは±160ドル変化(正の相関)する。

今回のFOMCでFRBは今年▲0.75%の利下げを予想しているが、市場予想は2024年は▲1.75%程度のFF金利引下げを見込み始めている。

上記感応度分析の結果を正とした場合、金の基準価格は金の基準価格は+260ドル程度の押し上げ要因となり、リスク・プレミアムは、▲280ドルの低下要因となるため、仕上がりで▲20ドルの価格低下となる。

結果、金価格は現状の水準を維持すると予想される(FF金利の感応度を、基準価格とリスク・プレミアムに分けて行う方向に変更した結果、これまでの分析結果とは異なる結果に)。

なお、リスク・プレミアムが過去5年平均程度まで収れんするとの前提に立てば、リスク・プレミアムの低下は▲700ドル程度となるため、この場合、▲475ドルの下落となるため、1,575ドルまでの下落余地があることになるが、金の市場での位置づけがロシアの軍事侵攻以降で変化しているため、ここまでの下落は現状、想定し難い。

本日は、目立った新規手掛かり材料に乏しいが、中東情勢不安が意識されているため金価格は安全資産需要で高値を維持すると見る。銀も同様。

PGMは株の調整圧力の強まりから水準を切下げる展開か。

◆穀物

シカゴ穀物市場は休場下落した。注目の米需給報告が弱気な材料になったことが材料となった。小麦は比較的強気な内容だったものの、トウモロコシの価格下落に連れた。

・1月米単収見通し 実績(前月)トウモロコシ 177.3Bu/エーカー(174.8Bu/エーカー、174.9Bu/エーカー)大豆 50.6Bu/エーカー(49.8Bu/エーカー、49.9Bu/エーカー)小麦 48.6Bu/エーカー(NA、48.6Bu/エーカー)

・1月米生産見通し 実績(前月)トウモロコシ 153億4,200万Bu(152万1,181万Bu、152億3,400万Bu)大豆 41億6,500万Bu(41億2,178万Bu、41億2,900万Bu)小麦 18億1,200万Bu(NA、18億1,200万Bu)

・1月米輸出見通し 実績(前月)トウモロコシ 21億Bu(NA、21億Bu)大豆 17億5,500万Bu(NA、17億5,500万Bu)小麦 7億2,500万Bu(NA、7億2,500万Bu)

・1月米在庫見通し 実績(市場予想、前月)トウモロコシ 21億6,200万Bu(20億9,433万Bu、21億3,1000万Bu)大豆 2億8,000万Bu(2億4,233万Bu、2億4,500万Bu)小麦 6億4,800万Bu(6億5,874万Bu、6億5,900万Bu)12月の中国の大豆輸入は前年比▲6.9%の982万3,000トン(前月+7.8%の792万トン)と前年比マイナスとなった。

中国の大豆港湾在庫は740万5,000トンと過去5年平均(684万トン)を上回っており、大豆ミール在庫も82万2,000トン(過去5年平均73万1,000トン)と、過去5年平均を上回っており輸入需要は低下している可能性が高い。

北アフリカの穀物生産動向に影響を及ぼすバッタ被害だが、今のところLocust Watchでは大量発生は確認されていない。

本日は、ドル高の進行と先週発表された米需給報告を材料に軟調推移を予想。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

◆信用リスク・マクロ経済のリスク

・米国債の格下げリスク、米国債格下げの動きが連鎖して、金融機関の格下げが加速、信用不安に繋がる場合。

・日本政府の財政規律の欠如、成長期待への失望から円が暴落するリスク。

・景気が想定よりも早く底入れしてインフレが再燃、あるいは景気を刺激する目的で早期の利下げが行われ資源価格が高騰、各国中銀の金融政策が再びタカ派の状態になった場合(リスク資産価格の上昇→下落リスク これは顕在化している可能性)

新興国の財政破綻、先進国も含めた債券の格下げによる金融機関・ファンドの突発的な損失拡大による信用収縮、低格付企業の破綻や、市場変動性の高まりによるファンド破綻などもリスクに。

・中国の構造的成長が終了、過剰債務や不動産問題を抱え、中国が「日本化」するリスク(この場合長期低迷で工業金属やエネルギーなどの景気循環系商品価格の下押し要因となる可能性)

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、モディ支持率の低下による近代化投資の遅れ、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。

◆地政学的リスク

・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は非常に低いリスク)。

・中東情勢不安が拡大し、先進国でテロが発生(景気の下振れリスク)、産油国でテロが発生して原油価格が高騰(インフレ発生で景気下振れリスク)するリスク。

中東問題が、「反イスラエル・親イスラエル」の対立となり、世界に拡散する場合(可能性の低い顕著な景気下振れリスク)

・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとってはCIF上昇で調達コスト上昇要因に)。

中国による台湾併合(武力行使、対話による併合、どちらでも)半導体覇権を中国が握る場合。

一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。暴動激化で中国が分裂するリスク(極めて可能性の低いリスク)。

・西アフリカ・北アフリカで、フランスが旧宗主国である国の反仏感情が高まり、武力衝突が発生して域内治安が悪化する場合。

欧州に難民が流入するほか、地域によっては(リビア、アルジェリア、ナイジェリアなど)原油・ガス供給に影響が及ぶ恐れ。

◆その他のリスク

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でインフレとなるリスク。

また、再生可能エネルギーのコスト上昇で化石燃料回帰が起きる場合。

◆本日のMRA's Eye


「もしトラ発生時の影響」

今年最大のイベントの1つである米大統領線の予備選挙が始まった。今のところ民主党はバイデン現大統領が出馬するとみられているが、対する共和党の候補者がまだ決まっていない。

ただ、ここまでの情勢を見るに、元国連大使の女性であるニッキー・ヘイリーが猛追しているが、高齢者から非常に高い支持を得ているトランプ前大統領が代表になる可能性は現時点では最も高いと考えられる。

そして現政権の直近の支持率は39.3%まで低下、不支持率は56.7%まで上昇しており、このまま選挙に突入すれば共和党が勝利する可能性が高く、トランプ大統領再選となる。

トランプ前大統領が復権した場合、前回以上に内向的であり、高圧的で、国内の分断を助長する政策が取られることは想像に難くない。まず、ロシア・ウクライナ問題に関しては、既に米国も追加でウクライナ支援の予算が確保できない状況にあるが、トランプ大統領が誕生した場合、「いままで米国が払った金を返せ」と欧州に要求する可能性は高い。

そしてその資金を払わなければNATOは離脱する、ぐらいのことは言うだろう。これによって「対中国戦略」のために期待していた欧州の協力が得られなくなることになる。

また、トランプ大統領は在任時に「韓国の貿易赤字を不満」として2期目に在韓米軍を撤退すると回顧録で発言している。尹大統領になってから米国との関係は改善しているため在韓米軍の引き上げの可能性は低下していると考えられる。

中国への対応は恐らく民主党政権のときとさほど変わらないが、嫌中感情が米国内で高まっていることを考えると、中国叩きは今以上に苛烈になるのではないか。

この場合、仮に在韓米軍の規模が縮小されたり、本当に撤退したりしている場合、極東地域の軍事的な不安定さは増すことになる。日本が独自で仮想敵国からの攻撃に備える必要がより高まることが予想される。防衛力の強化は焦眉の急といえるだろう。

少し目線を変えると、恐らくパリ議定書から米国が離脱するのは確実とみられ、独自の脱炭素戦略を推進すると考えられる。ただ再生可能エネルギー向けに補助金が出ることは亡くなるのではないか。同時に化石燃料の開発は環境面に配慮した制限がなくなると予想され、増産バイアスが掛かることが予想される。

これにより、発電コストが低下して電気料金の低下も予想される。しかしこの場合、生産に多くの安定した電力を必要とする半導体関連ビジネスは「米国での展開が有利」となり、現在日本で投資が進んでいる半導体ビジネスを、ごっそり米国に持って行かれる可能性も十分有り得る。

むしろ国土や領土防衛よりも「カネになる」こちらの方に、トランプ前大統領が興味を示してもおかしくはない。

また、移民や他宗教ヘの嫌悪もすさまじく、恐らくイスラム教徒やアジア人、南米からの移民に対する差別が強まることも予想され、米国内が2つに分裂するリスクもある。むしろこのリスクが最も大きなリスクかもしれない。

冷静に考えるとこのような政策を遂行するメリットはほとんどないため(化石燃料価格に下押し圧力が掛かることは消費国にとってはメリットか)、普通の宰相ならそのような選択はしないだろう。しかし、トランプ大統領が誕生した場合、上記はリスクシナリオではなく、メインシナリオになってしまう。

これに備えることは非常に難しいが、基本「自分の国のことは自分で完結できる」ようにしつつ、政治家は米国との距離感を維持するための外交努力をより行うことが重要に成ってくるだろう。2025年は外交の年になるのではないか。


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