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米統計悪化も金融緩和期待が支え
  • MRA商品市場レポート

2024年1月15日 第2628号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「米統計悪化も金融緩和期待が支え」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は乱高下したが、総じて底堅い推移となった。米PPIが発表されたが、市場予想を下回るベアな内容であり、米国の利下げ加速期待が高まったことが結果的にリスク資産価格の上昇要因となった。

また、中国の貿易統計やPPI・CPIが発表されたが(詳しくは昨日のトピックスをご参照ください)、こちらも中国の経済活動の鈍化を示唆する内容であり、週末に発表された統計は決して景気にとってプラスの内容とは言えなかった。

しかしそれに伴う米FRBの利下げ加速「期待」や、中国政府による経済対策「期待」が価格を押し上げたと考えられる。期待先行のファイナンシャルな価格上昇だったと考えるのが自然だろう。

ただ、この市場の「期待」は現時点においてはFRBの想定している金融政策のパスとは深度という点で同じではなく、想定よりも景気が底堅かった場合、この期待と現実の乖離を埋める動きになると予想されるため、短期的にはリスク資産を押し上げたとしても、結果的に下押し圧力が強まることになると予想される。

そのリスクがあるため、「商品市場」は株式市場などと比較すると比較的冷静に推移していると言える。

【本日の見通し】

週明け月曜日は、米国主要市場が休場のため方向感が出難い展開が想定される。しかし米利下げの期待が高まっていることから、リスク資産価格にはファイナンシャルな面で上昇圧力がかかるため、底堅い推移が想定される。

また、台湾総統選の結果を受けて「有事へのリスク」が意識され、リスクオフとなるシナリオも無視できないことから、特に貴金属価格動向には注目しておきたい。

週明け月曜日の注目材料は以下の通り。

・米アイオワ州で共和党の党員集会

・11月ユーロ圏鉱工業生産 市場予想 前月比▲0.3%(前月+1.8%)

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油・石油製品

昨日の原油価格は上昇後下落した。中東で米英勢力がイエメンのフーシ派に対する攻撃を継続していることを受けて、イスラエルの軍事侵攻を背景とする米情勢不安拡大への懸念が強まったことが価格を支えたが、引けに掛けては連休を控えた市場参加者のドル買い戻しで、ポジション調整的に水準を切下げて引けた。

12月の中国の原油輸入は前年比+0.6%の4,836万1,000トン(前月▲9.2%の4,24to4万5,000トン)と過去5年の最高水準(4,807万トン)を上回った。価格の下落による割安感が輸入増加に寄与したとみられる。

石油製品は輸入が前年比+45.2%の476万2,000トン(前月+34.1%の415万8,000トン)と過去5年レンジと比較しても非常に高い水準を維持している。

輸出は▲39.7%の464万トン(前月▲17.3%の508万トン)と減速し、過去5年平均を大きく下回った。海外需要の減速が影響したとみられる。

中国の国内需要回復の可能性もあるが、11月の顕在需要は前年比+3.6%の5,861万トン(前月+10.9%の6,289万トン)であることを考えると、国内在庫が増加している可能性は否定できない。

2024年は最大消費国である米景気動向、並びに労働市場需給環境に焦点が当たり、加えて懸念していた通り中東情勢が悪化していること、同時にOPECプラスの結束がこれも想定通り揺らいでいることから、「下げ基調ながらも上下に振れやすい展開」が想定される。

今年は多くのリサーチハウスが弱気な見通しを予想しているが

1.OPECプラスの減産がきちんと遵守された場合
2.景気減速で想定よりも早く米国が利下げに舵を切る場合
3.ガイアナ危機の顕在化、ないしはガザ紛争を受けたアラブ諸国の親イスラエル国ヘの原油(ガス)供給制限

といったことがあれば、水準は切り上がることになる。米労働市場の改善があれば上昇は顕著なものになろう。

しかし、金融緩和を渋り過去に見られたような「政策金利据え置き~緩やかな利下げ局面での危機発生」の場合、ないしはOPECプラスの減産遵守を促すために逆にサウジなどが増産するという可能性もあり、その場合はBrentで60ドル程度までの下落リスクもリスクシナリオとして棄てきれない。

上述の通り、かなり上下のリスクシナリオ顕在化時の「振れ」が大きくなる可能性が高い。

ロシア情勢・中東情勢を踏まえた原油供給状況は大きく変化していないため、原油価格の「想定されるレンジ」は以下の通り。

現在は 3.の状態。

<シナリオ別原油価格見通し>

1. 中東問題が悪化し、イランやベネズエラに対する制裁、ガイアナからの供給減少、中東諸国の親イスラエル国ヘの供給制限など、オイルショック時
Brent 90-150ドル(Q324まで景気が減速する場合)

2.OPECプラスの減産が遵守される場合
Brent 75-100ドル

3.OPECプラスの減産が遵守されない場合
Brent 60-90ドル

4.OPEC諸国が逆に増産する
Brent 55-80ドル

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

5. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)
Brent 60-90ドル

6. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)
Brent 40-60ドル

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次修正している。

Q124 欧米の景気後退局面入りによる需要鈍化・生産調整継続 ただし、OPECプラスの自主減産開始で年初に水準を切り上げ(→その後OPECプラスの減産が下支え)Q124にOPECプラスの減産が確認されない場合(↓↓↓)
Q224~Q324 実質金利プラス維持による景気幻想継続 製造業の循環的な回復が下支え(→)OPECプラス減産維持の場合(→)
Q324以降 景気の循環的な回復・中国の正常化(↑)OPECプラス減産維持の場合(↑↑)

※矢印の向きは価格の方向性。

1月9日時点のWTIの投機筋ポジションは、ロングが▲10,806枚、ショートが▲1,659枚とポジション解消が進んでいる。

Brentはロングが+29,942枚、ショートが▲8,963枚と、こちらは逆に強気に転じた。フーシ派の反欧米・イスラエルの動きが強まる中、供給不安を受けてポジションの解消が進んだとみる。

週明け月曜日は、米国の主要市場が休場であることから方向感が出難く、レンジワークを継続すると考える。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は上昇した。英米がイエメンのフーシ派を攻撃したことで、LNG船の航行に影響が出るとの見方が価格を押し上げた。

今冬の欧州のガス調達リスクは後退している。しかし弊社のシミュレーションの結果では、今年の夏以降にガス調達が不足するリスクはまだ残存している。結局のところ需要動向が需給を左右すると考えられる。

欧州の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続

2.LNGターミナル・ガス田・船舶の不慮の停止

3.西側消費国に対するロシアの供給削減(価格の上昇要因)

4.景気減速(価格下落要因)

5.季節要因・気象状況

1.は弊社の試算では欧州が完全にロシア産ガスを排除(第三国経由でもロシア産のLNGを購入しない状態になる)できるのは2027年頃。ロシア産のLNGの輸出が阻害されなければ2025年頃と予想される。

今のところロシア産ガスの供給は実質的に制限されていないが、仮に脱ロシアが完了した場合、ロシアがこれまで供給してきた西側諸国向けのガスが「浮く」ことになる。

2022年、欧州向けにロシアが削減したパイプライン輸出量は708億立方メートルで、総輸出量9,685億立方メートルの7.3%に及ぶ。

これを他地域の需要増加で補うことは恐らく不可能であり、FID済みの
プロジェクトも見直しせざるを得なくなると予想される。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

2.は、アラビア半島周辺海域の航行の不透明感が強まっている。

3.は既にロシアからの供給削減は現時点ででき得る限界まで行われているため、目先は材料になり難い。

4.は顕在化しているが、足下、欧州の統計が改善しており今年以降の需要回復が価格の押し上げ要因となる可能性が出てきた。

5.は2.とも関係するが、エルニーニョ現象中は暖冬になりやすく価格上昇方向のバイアスは強まらないと予想される。ただ、エルニーニョ現象発生後のラニーニャ現象発生はリスクとなる(2024年夏以降か)。

米メキシコ湾発のLNGのタンカーレートは、過去2年の平均程度で推移している。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米天然ガス価格は上昇。北米の気温低下見通しと、中東情勢不安を背景とする中東産ガスの代替需要増加期待が材料となった。

ただ、北米の気温低下予想はこれまでよりも緩和しており、早晩下落要因に転じると予想される。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物価格は、TTF価格が方向性に欠ける展開となり、ほぼ現状水準を維持。

11月のJLCの水準は11.85ドル(前月比▲0.01ドル)であり、現在のスポット価格はこの水準を下回っている。スポット調達圧力は今後弱まる可能性が高い。

今年は回避されているが、豪州は国内供給が充分でない場合、通常7月1日まで、遅くとも10月1日までにガス不足の懸念を通知し、実際に国内供給が不充分と判断された場合、次の1年間は輸出が制限される(ADGSM)。

この条項が発動された場合、スポット価格の上昇リスクとなるため、意識はしておきたい。

また、サハリン2の生産能力の低下、供給の減少はかなり前から指摘されているが、今のところ顕在化していない。多くの必要な部材は中国などを経由してロシアにもたらされている可能性があり、実は長期の供給リスクは懸念ほどではないかもしれない。

11月の中国の天然ガス生産は+5.8%の1,470万6,000トン(前月+4.3%の1,411万8,000トン)と同じ時期の過去5年の最高水準を上回っている。

12月の中国の天然ガス(パイプラインガス+LNG)輸入は前年比+9.9%の1,165万5,000トン(前月+6.1%の1,095万トン)と前年比ベースの伸びが大幅に加速した。気温低下や、季節的な渇水による需要増加が材料と考えられる。

11月のパイプラインベースの輸入は前年比+6.7%の415万トン(前月+1.1%の362万トン)と過去5年の最高水準(402万トン)を上回っている。

11月のLNG輸入は前年比+5.9%の680万1,000トン(前月+28.2%の516万9,000トン)と過去5年の最高水準(690万1,000トン)に迫っている。

合計の「ガス顕在需要」は前年比+5.9%の2,573万5,000トン、年初来累計2億6,198万1,000トン(前月+8.4%の2,290万5,000トン、年初来累計は+7.3%の2億3,632万4,000トン、前々月+6.3%の2,360万3,000トン、年初来累計+7.2%の2億1,341万7,000トン)と、季節性の影響もあるが着実に増加している。

※中国のガス統計は、データ形式(年初来累計を単月に換算したものと、中国政府が発表する月次のデータなど)や単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。

1月7日時点の日本の大手発電業者のLNG在庫は251万トン(過去5年平均
228万8,500トン、大手発電業者在庫の過去5年平均は191万トン)と、過去5年平均を上回った状態が続いている。

現在発生しているエルニーニョ現象は今年の6月頃まで続く見通しであり、その影響もあって今年の北半球は記録的な暖冬が見込まれているため、この在庫水準であれば冬は乗りきれる可能性が高まっている。

週明け月曜日は、北米・欧州の気温低下見通しと、中東情勢不安を背景とする供給懸念が価格を押し上げるとみる。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP・東京ガス提示の数値を使用している。 LNG1トン=2.19立方メートル(液体)=1,360立方メートル(気体)= 46MMBtu LNG船1隻 147,000立方メートル=67,000トン 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル=7,757トン 1Mwh=10.55千立方メートル

◆石炭

豪州石炭スワップ価格は期近が上昇した。北半球の気温低下や中東の情勢不安を背景としたガス輸送への懸念が、石炭の代替需要を強めていることが価格を高値に維持している。

昨年12月以降の中国、日本、韓国などの輸入増加で石炭価格の期間構造はバックワーデーションになっているが、足下の石炭輸入はこれらの国で減少しているため、早晩、期近の下落があるだろう。

全ての発電業者が、ガスから石炭にスイッチができる訳ではないが、1.実際にスイッチ可能な消費者はガス価格対比で割安であれば石炭を選択する、2.ガス対比での備蓄のしやすさ、3.石炭が脱炭素の影響で否定される中、需給関連の統計が十分に提供されておらず、ガス価格を参考に価格が決まりやすい状況になっていること、からガス価格動向は無視できない。

現在のガス価格(JKM)との関係性を元に回帰分析を行うとNEWC価格は131ドル、±1標準偏差で60~200ドル程度までが統計的に説明可能なレベル。

期先の価格は現在の生産コストに近いことを考慮すると、期先の価格が120~130ドル程度まで再び上昇しているため、120~200ドルが説明可能なレンジ。

ロシア問題が継続する以上、欧州が完全に脱ロシアを達成することが期待される2027年(早ければ2025年、現実的には2026年)までは、ピークシーズン中の価格上昇リスクはつきまとう。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

12月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比+53.0%の4,729万7,000トン(前月+34.7%の4,350万6,000トン)と過去5年レンジを大幅に上回る水準を維持した。

11月の燃料炭輸入は、ロシアからの輸入が減少(564万トン→538万トン)したが、豪州(461万トン→612万トン)、インドネシア(366万トン→513万トン)、モンゴル(106万トン→158万トン)で増加している。

11月の中国の石炭生産は、前年比+0.2%の4億955万トン、1,365万トン/日(前月+4.7%の3億8,707万トン、1,248万トン/日)と伸びが加速、過去最高水準を上回っている。

11月の中国の電力消費量は前年比+11.7%の7,630億kwh(前月+8.6%の7,419億kwh(前月+10.1%の7,811億kwh)と伸びが加速した。

週明け月曜日は、欧州ガス価格が気温低下観測や中東情勢不安を背景とする供給制限で高値を維持する中、現状水準を維持すると考える。

◆LME非鉄金属

LME非鉄金属市場は総じて軟調な推移となった。中国の貿易統計は市場予想を上回る回復を見せたが、大幅に減少した昨年の反動出ある可能性が高いこと、総じてドルが高くなったことがファイナンシャルな面で価格を押し下げた。

今年は中国の景気低迷と経済対策実施期待が相殺し合うと考えているが、欧米の経済活動の失速もあり、ドル高が進行する中では水準を切下げやすい。IMFやFOMCの見通しを前提とすればQ324以降の価格上昇が予想される。

ただ、市場コンセンサスはQ224で景気は底入れするとしており、中国の在庫循環も早ければQ124の後半で在庫調整が終る可能性があること、半導体サイクルもQ224以降の回復が見込まれているため、銅や錫など、半導体関連の金属価格は比較的早いタイミングで上昇する可能性がある。

英国によるロシア産金属の取扱禁止の方針は、LMEの金属需給がひっ迫するため短期的には価格が上昇するが、時間経過後は取引量が減少し下落に転じると予想される。

そして、LME外で取引される金属が増加、ロシアに対する制裁発動国と、非発動国の価格が異なる「一物二価」の状態となることが予想される。

ロシア産のアルミやニッケルを加工して生産した製品が流通すると予想されるが、このとき西側諸国政府がどこまでこの原料のトレースを要求してくるかが次の焦点となろう。

米国のウクライナへの軍事支援が予算的に細る中、欧州は独自にロシアに対する制裁を強める必要性が出てきていると考えられ、非鉄金属以外の資源への制裁が強化されることも有り得る状況に。

中国が不動産危機を乗り切ることに失敗し、中国政府が想定以上にこれまで積み上がった余剰生産能力の解消に手間取った場合、景気は長期低迷、いわゆる「日本化」が10年単位で起きる可能性が高い。

さらに労働人口がピークアウトし、かつ、西側諸国の制裁によって先端分野の発展が阻害され生産性が低下、将来的にはインフレをもたらしソ連型の国家崩壊、というシナリオも長期的には有り得る話。

就任以降の習近平国家主席の政策は、決して成功しているとは言えない。

12月の中国の貿易統計では、ベンチマークである銅地金・製品輸入は前年比▲10.6%の45万9,338トン(前月+2.0%の55万566トン)と過去5年平均を下回った。

12月の銅鉱石・コンセントレートの輸入は前年比+18.2%の248万1,161トン(前月+1.2%の244万トン)と過去5年の最高水準を上回る状態が続いている。電力供給の回復や、TCが高い水準で推移していることもあり、鉱石からの生産インセンティブが維持されているためと考えられる。

11月の中国の精錬銅生産は+2.0%の111万9,000トン(前月+23.8%の114万3,000トン)と過去5年の最高水準を維持したが、前年比ベースでの増加幅は縮小した。ただし生産は過去5年で見た場合高い水準を維持している。

11月の銅スクラップの輸入は前年比+13.2%の18万2,935トン(前月+37.7%の15万5,359トン)と過去5年平均を維持している。

精錬銅輸入は減少しているが銅鉱石輸入が増加し、総供給量は増加している。製造業PMIが低迷、上海取引所在庫の水準が過去5年レンジを下回っていることを考えると、統計に反映されない企業在庫として取得されている可能性があると見ている。

週明け月曜日は、中国の需要動向が積極的に非鉄金属価格に影響し難い環境下、ドル指数動向が価格を左右しやすいが、米国市場が休場であることを受けて軟調地合の中、方向感がでない展開が予想される。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落、大連は小幅に上昇、豪州原料炭スワップ先物は下落、大連原料炭価格は下落、上海鉄筋先物は上昇した。

鉄鋼製品需要が低迷、鉄鋼製品価格は過去5年平均を下回っており、中国の景気刺激策が実行されない中で価格には下押し圧力が掛かりやすいが、季節的な在庫積増しの動きが価格を下支えしている状況。

11月の中国粗鋼生産は前年比+2.1%の7,610万トン(前月▲0.8%の7,609万トン)と減速し、過去5年平均を下回った状態が続いている。

12月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲5.0%の66万4,860トン(前月▲18.7%の61万トン)と低迷が続き、同じ時期の過去5年の最低水準を下回る状態が続いている。

12月の中国の鉄鋼製品の輸出は前年比+43.1%の772万8,000トン(前月+43.3%の801万トン)と過去5年の最高水準を大きく上回る状態が続いている。同時に鉄鋼製品輸出額は前年比▲13.5%の63.7億ドル(前月▲11.7%の64.9億ドル)と金額・伸び率とも前月から減速した。

輸出額を数量で割ったトン当り単価は824ドル(前月810ドル)と改善したが依然、低い水準。欧米のPMIやISM指数の減速を見るに、中国の景況感は改善するには至らず、まだ値引きで在庫を解消する動きが続いていると考えるのが妥当だろう。

週間の鉄鋼製品港湾在庫統計は、鉄鋼製品在庫は+33万7,000トンの971万2,000トン(過去5年平均 902万3,000トン)と過去5年平均を上回っている。

鉄鋼原料は、鉄鉱石在庫が前週比+150万トンの1億1,600万トン(過去5年平均 1億3,740万トン)、在庫日数は28.1日(+0.4日、過去5年平均 30.7日)。

鉄鉱石は在庫は日数ベースでも、数量ベースでも過去5年平均を下回っており、鉄鉱石の需給はタイトで一定の在庫積み増し需要が存在する。

主要原料炭の輸入港である京唐港の原料炭在庫は+5万6,000トンの208万トン(過去5年平均162万4,000トン)、在庫日数は±0.0日の9.4日(過去5年平均 6.4日)と、原料炭の需給は緩和している。

週明け月曜日は、鉄鋼製品需給の緩和観測を背景に鉄鋼原料価格にも下押し圧力が掛かると考えられるものの、季節的に鉄鋼製品在庫を積み増す時期でもあるため、鉄鋼原料在庫の積増し需要が期待されることから、結局高値維持の公算。

◆貴金属

昨日の金価格は上昇、銀価格は上昇、PGMは下落した。

米PPIが減速、利下げ観測が強まったことが金の基準価格を押し上げた。一方リスク・プレミアムは小幅な上昇に止まっている。

これまで政策金利の引き上げと共に「諸々のリスクの高まり」から、リスク・プレミアムが上昇して金価格を押し上げてきた。金リスク・プレミアムの上昇要因の主なところは、

1.米利上げによる信用不安の高まり(低格付企業・新興国)

2.ロシアに対するドル決済禁止制裁を受けた、準備金におけるドルから金ヘのシフト

3.ロシアのウクライナ侵攻

4.イスラエルとパレスチナの戦争開始による中東情勢不安並びに、テロ組織の大規模攻撃であるため、各地にテロが拡散するリスク

あたりだろう。これらと同じ事象は、ニクソン・ショック~プラザ合意~アジア危機収束まで30年近く続き、金価格に占めるリスク・プレミアムのシェアが高止まりした。

2019年基準で算出した現在のリスク・プレミアムのシェアは50%と、ほぼ上記の期間と同様の状況になっており金利水準以上にその他の要因が金価格の形成に影響を与えていることが確認できる。

現状を理解する手助けとなるため、あえて実質金利・信用リスク・その他、に分離した場合、実質金利部分が45%、信用リスク要因が20%、その他の要因が35%となった(2019年データを元にした分析結果に変更)。

直近1年間の説明力を相関係数で確認するとほとんどの項目が金価格と無相関の状態になっている。3ヵ月間の相関関係では、最も金価格に対する説明力が高いのがドル指数で▲0.82、次いで実質金利で▲0.77、10年金利で▲0.77、期待インフレ率で▲0.69となった。これまで説明力がほとんどなくなっていた実質金利要因の説明力が増している。

このことは、リスク・プレミアム以上に金融政策動向が価格を左右しやすいことを示唆している。

この5年間のデータを元にした分析では、FF金利±1%の変化で、金の基準価格は±150ドル変化し(負の相関)、リスク・プレミアムは±160ドル変化(正の相関)する。

今回のFOMCでFRBは今年▲0.75%の利下げを予想しているが、市場予想は2024年は▲1.75%程度のFF金利引下げを見込み始めている。

上記感応度分析の結果を正とした場合、金の基準価格は金の基準価格は+260ドル程度の押し上げ要因となり、リスク・プレミアムは、▲280ドルの低下要因となるため、仕上がりで▲20ドルの価格低下となる。

結果、金価格は現状の水準を維持すると予想される(FF金利の感応度を、基準価格とリスク・プレミアムに分けて行う方向に変更した結果、これまでの分析結果とは異なる結果に)。

なお、リスク・プレミアムが過去5年平均程度まで収れんするとの前提に立てば、リスク・プレミアムの低下は▲700ドル程度となるため、この場合、▲475ドルの下落となるため、1,575ドルまでの下落余地があることになるが、金の市場での位置づけがロシアの軍事侵攻以降で変化しているため、ここまでの下落は現状、想定し難い。

週明け月曜日、米主要市場が休場であることから、前日の反動でまず売りが入ると考えられる。ただ、週末の台湾総統選が独立支持派の与党・民進党が勝利したため、台湾有事を懸念する市場参加者の買いが入り、結局上昇するのではないか。

しかし、冷静に考えてこのタイミングでの有事発生の可能性は低く、逆に明日の金価格のリスク・プレミアム部分の変化が、台湾有事の発生可能性の観測気球になるのではないか。

銀、PGMも概ね金と同様の動きになるとみるが、米金融緩和期待を受けた株高によりPGMは堅調に推移するのではないか。

◆穀物

シカゴ穀物市場は下落した。注目の米需給報告が弱気な材料になったことが材料となった。小麦は比較的強気な内容だったものの、トウモロコシの価格下落に連れた。

・1月米単収見通し 実績(前月)
トウモロコシ 177.3Bu/エーカー(174.8Bu/エーカー、174.9Bu/エーカー)
大豆 50.6Bu/エーカー(49.8Bu/エーカー、49.9Bu/エーカー)
小麦 48.6Bu/エーカー(NA、48.6Bu/エーカー)

・1月米生産見通し 実績(前月)
トウモロコシ 153億4,200万Bu(152万1,181万Bu、152億3,400万Bu)
大豆 41億6,500万Bu(41億2,178万Bu、41億2,900万Bu)
小麦 18億1,200万Bu(NA、18億1,200万Bu)

・1月米輸出見通し 実績(前月)
トウモロコシ 21億Bu(NA、21億Bu)
大豆 17億5,500万Bu(NA、17億5,500万Bu)
小麦 7億2,500万Bu(NA、7億2,500万Bu)

・1月米在庫見通し 実績(市場予想、前月)
トウモロコシ 21億6,200万Bu(20億9,433万Bu、21億3,1000万Bu)
大豆 2億8,000万Bu(2億4,233万Bu、2億4,500万Bu)
小麦 6億4,800万Bu(6億5,874万Bu、6億5,900万Bu)
12月の中国の大豆輸入は前年比▲6.9%の982万3,000トン(前月+7.8%の792万トン)と前年比マイナスとなった。

中国の大豆港湾在庫は740万5,000トンと過去5年平均(684万トン)を上回っており、大豆ミール在庫も82万2,000トン(過去5年平均73万1,000トン)と、過去5年平均を上回っており輸入需要は低下している可能性が高い。

北アフリカの穀物生産動向に影響を及ぼすバッタ被害だが、今のところLocust Watchでは大量発生は確認されていない。

週明け月曜日は、米国市場休場。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

◆信用リスク・マクロ経済のリスク

・米国債の格下げリスク、米国債格下げの動きが連鎖して、金融機関の格下げが加速、信用不安に繋がる場合。

・日本政府の財政規律の欠如、成長期待への失望から円が暴落するリスク。

・景気が想定よりも早く底入れしてインフレが再燃、あるいは景気を刺激する目的で早期の利下げが行われ資源価格が高騰、各国中銀の金融政策が再びタカ派の状態になった場合(リスク資産価格の上昇→下落リスク これは顕在化している可能性)

新興国の財政破綻、先進国も含めた債券の格下げによる金融機関・ファンドの突発的な損失拡大による信用収縮、低格付企業の破綻や、市場変動性の高まりによるファンド破綻などもリスクに。

・中国の構造的成長が終了、過剰債務や不動産問題を抱え、中国が「日本化」するリスク(この場合長期低迷で工業金属やエネルギーなどの景気循環系商品価格の下押し要因となる可能性)

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、モディ支持率の低下による近代化投資の遅れ、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。

◆地政学的リスク

・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は非常に低いリスク)。

・中東情勢不安が拡大し、先進国でテロが発生(景気の下振れリスク)、産油国でテロが発生して原油価格が高騰(インフレ発生で景気下振れリスク)するリスク。

中東問題が、「反イスラエル・親イスラエル」の対立となり、世界に拡散する場合(可能性の低い顕著な景気下振れリスク)

・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとっては
CIF上昇で調達コスト上昇要因に)。

中国による台湾併合(武力行使、対話による併合、どちらでも)半導体覇権を中国が握る場合。

一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。暴動激化で中国が分裂するリスク(極めて可能性の低いリスク)。

・西アフリカ・北アフリカで、フランスが旧宗主国である国の反仏感情が高まり、武力衝突が発生して域内治安が悪化する場合。

欧州に難民が流入するほか、地域によっては(リビア、アルジェリア、ナイジェリアなど)原油・ガス供給に影響が及ぶ恐れ。

◆その他のリスク

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。
成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でインフレとなるリスク。

また、再生可能エネルギーのコスト上昇で化石燃料回帰が起きる場合。

◆本日のMRA's Eye


「台湾総統選のもたらすリスク」

週末投開票が行われた台湾総統選は、ほぼ下馬評通り与党民進党が勝利した。頼清徳次期総統は、蔡英文政権で副総統を務めた民進党のホープとされる。

中国は今回の選挙に当たり、台湾に対して経済的な嫌がらせを行ってきた。実際にこれによって経済的な不利益を被っている台湾産業もあるわけだが、それでも独立推進派とされる頼清徳氏を国民が支持したのは、香港併合とその後の香港の状況を容認できないと判断したからではないか。

結局、言葉を選ばずに言えば、経済的な不利益を「民主主義のコスト」として台湾国民が受け入れることにした、と言えるのではないか。

頼清徳次期総裁の政治主義信条は、「台湾の独立」であるため最も中国が当選して欲しくなかった候補であるが、頼清徳自体は「親中派であり反中派ではない」と発言しており、これまで中国が台湾に行ってきた「嫌がらせ」によって一部の産業に影響が出ていることも勘案すると、実際に独立を進めるというよりは、現状を維持し、中国の妥協を引き出す政策を推進する、と考えるのが妥当だろう。

しかし、仮に融和や現在の路線維持を標榜したとしても、中国がこれを認めるとは考え難い。中国の中での解釈は「台湾問題は国内問題である」と整理しているためだ。

現に、早速今回の選挙結果を受けて「今回の選挙は台湾国民の民意を正しく反映したものではない」と内政干渉に当たる声明を発表しており、祝辞を送った日本に対しても抗議している状況である。

また、年初の演説で「祖国統一は歴史の必然、台湾海峡両岸の同胞は手を携え、心を合わせ、民族復興の偉大な栄光を分かち合うべきだ」と発言しており、台湾併合の意思は変わっていないと考えられる。実際、中国は現在の米国は「南北戦争によって統一されたため、現在の反映がある」と考えているため、台湾統一によって大国になれば「将来の歴史は中国の台湾軍事侵攻を賞賛するだろう」と整理しているのではないか。

余り考えたくないことだが、米国のウクライナに対する支援が終了する中、ウクライナがロシアに奪われた東部の地域を諦める可能性もあり、この場合「やったもの勝ち」となる可能性がある。このことを勘案すると、中国が武力で台湾の統一する選択肢をまだ棄てていないと考えるのが自然だ。

ここからいえることは、台湾は中国の攻撃に備えるため、軍事力の強化に動く可能性が高まること、そしてそれは同時に日本も尖閣諸島などへの中国の進軍に備えるため防衛力を強化する必要があることを示唆している。

そして、今回のロシアのウクライナへの軍事侵攻、イスラエルのガザ地区への軍事侵攻がこれまで行われてきた「重要拠点のピンポイント攻撃」ではなく、侵略に近い物量戦になっている点は見逃せない。

近代の戦争を巡る経済学で戦闘行為が景気刺激に繋がることはない(毎年一定の予算が軍事産業に配分されていること、戦闘が長期化しないことから景気刺激策にはならない)というのが、一般的な理解である。

しかし各地での大規模な戦闘が定常化するならば、武器に用いる資源、エネルギー、食料の価格は上昇することが予想され、発生する地域によっては物流に大きな支障が出る可能性もある。誤解を恐れずに言えば、現在は「戦時相場」に近いため、モノの価格が上がりやすいということである。

仮に台湾で有事が起きれば、マラッカから台湾を抜ける空運・海運は機能しなくなることが予想されるため、日本にとっては仮にサプライチェーンが寸断されなかったとしても、輸入価格の上昇要因となり得る。

米国も中国に対抗するが、近代兵器の能力ですぐれていても、現在、ウクライナ戦線で苦労している様に、最終的には物量が勝る。中国は米国の最新兵器に対してミサイルの飽和攻撃で対抗しようと考えていると見られる。

ただ、中国の経済状態は決して良いとは言えず、「戦争をやっている場合なのか」という声が国内から上がる可能性もあることも事実だろう。

今のところ実際に戦争が起きることは、確率の低いリスクシナリオの範囲に止めて起きたいが、現状、「起きるもの」と整理して準備をする必要がある状況になりつつあると認識すべきではないか。


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