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エネルギーセクター上昇 金属セクター下落
  • MRA商品市場レポート

2024年1月10日 第2625号 商品市況概況

◆昨日の商品市場(全体)の総括


「エネルギーセクター上昇 金属セクター下落」

【昨日の市場動向総括】

昨日の商品市場は、液体系エネルギー価格と発電燃料の一角が上昇、その他農産品などが上昇したが、工業金属や貴金属は水準を切下げた。

昨日の市場は解釈が難しいが、エネルギーに関しては前日の売られすぎの反動による買い戻しと、北米の寒波の影響などが材料となり、その他の商品は米金利低下にともなう割高感から株が調整、リスク回避的にドル高が進行したことが価格を総じて下押ししたと整理するのが妥当だろうか。

年初の取引は今年の取引の方向性を決めるため注目しているが、今年はまだ方向性がはっきりしない。経済統計は減速しているものの、米国の労働関連統計は労働市場需給がタイト化していることを示唆するようなものも多く、結果的に金融政策の方向性がはっきりしないためだ。

今に始まったことではないが、市場は金融政策をかなり先行して織り込むため、今はこの反動が起きていると整理しても良いのではないか。

昨日のレポートのコメントを再掲するが、やはり今年の重要なテーマの1つが、景気底入れのタイミングに加えて、金利動向であることは間違いが無いだろう。

米長期金利は、まだ何の利下げも行っていないにもかかわらず、米長期金利は5%から4%前後に低下している。単純な感応度分析を行うと、±1%のFF金利の変動で10年金利は±0.6%変動する。

10年金利が5%から4%に低下していることは、▲1.5%の政策金利引下げと同じ効果といえ、現在の市場コンセンサスである「2024年は5回程度の利下げ」とほぼ同様の水準。

しかしFOMCメンバーはせいぜい3回程度の利下げしか想定していない。これを埋め合わせる動き(市場よりもタカ派な政策による動き)がしばらく見られると考えられる。

【本日の見通し】

本日も目立った手掛かり材料に乏しい中、長期金利動向、株価動向も不安定であり、方向感に欠ける展開が継続すると考える。

ただ、総じて経済統計は景気減速を示唆するものが多いため、景気循環系商品を中心に軟調に推移すると考える。

本日の注目材料は以下の通り。

・ニューヨーク連銀総裁講演

・米大統領選共和党候補の討論会

・NATOウクライナ理事会

・インド投資誘致イベント「バイブラント・グジャラート・グローバル・サミット」開催

【昨日のセクター別動向と本日の見通し】

◆原油・石油製品

昨日の原油価格は上昇した。前日の下落の反動による買いもどしと考えられる。

昨日発表された米DOE月報では、2024年の石油需給見通しがやや引き下げられた。

2025年は中国の需要の伸び鈍化、自動車の燃費改善などで需要の謳歌ペースが前年比+1.4%→+1.2%に鈍化する見込み。この+1.2%は2023年を終年とする直近20年の需要の伸びと同じ水準。

一方生産はOPECプラスの抑制的な生産スタンス維持と、米原油増産ペースの鈍化で需要同様、伸びは鈍化するとみている。

2024年は最大消費国である米景気動向、並びに労働市場需給環境に焦点が当たり、加えて懸念していた通り中東情勢が悪化していること、同時にOPECプラスの結束がこれも想定通り揺らいでいることから、「下げ基調ながらも上下に振れやすい展開」が想定される。

今年は多くのリサーチハウスが弱気な見通しを予想しているが

1.OPECプラスの減産がきちんと遵守された場合2.景気減速で想定よりも早く米国が利下げに舵を切る場合3.ガイアナ危機の顕在化、ないしはガザ紛争を受けたアラブ諸国の親イスラエル国ヘの原油(ガス)供給制限

といったことがあれば、水準は切り上がることになる。米労働市場の改善があれば上昇は顕著なものになろう。

しかし、金融緩和を渋り過去に見られたような「政策金利据え置き~緩やかな利下げ局面での危機発生」の場合、ないしはOPECプラスの減産遵守を促すために逆にサウジなどが増産するという可能性もあり、その場合はBrentで60ドル程度までの下落リスクもリスクシナリオとして棄てきれない。

上述の通り、かなり上下のリスクシナリオ顕在化時の「振れ」が大きくなる可能性が高い。

ロシア情勢・中東情勢を踏まえた原油供給状況は大きく変化していないため、原油価格の「想定されるレンジ」は以下の通り。

現在は 3.の状態。

<シナリオ別原油価格見通し>

1. 中東問題が悪化し、イランやベネズエラに対する制裁、ガイアナからの供給減少、中東諸国の親イスラエル国ヘの供給制限など、オイルショック時
Brent 90-150ドル(Q324まで景気が減速する場合)

2.OPECプラスの減産が遵守される場合
Brent 75-100ドル

3.OPECプラスの減産が遵守されない場合
Brent 60-90ドル

4.OPEC諸国が逆に増産する
Brent 55-80ドル

(ここから先は比較的中・長期のシナリオ)

5. 脱ロシア完了(西側諸国+OPECで完全にロシア産原油代替可能の場合)
Brent 60-90ドル

6. 東西冷戦構造が構築されなかった場合(前回オイルショック時と同様に化石燃料の生産が増えて顕著な供給過剰となる場合)
Brent 40-60ドル

※上記価格レンジは市場動向を反映して、逐次修正している。

Q124 欧米の景気後退局面入りによる需要鈍化・生産調整継続ただし、OPECプラスの自主減産開始で年初に水準を切り上げ(→その後OPECプラスの減産が下支え)Q124にOPECプラスの減産が確認されない場合(↓↓↓)
Q224~Q324 実質金利プラス維持による景気幻想継続 製造業の循環的な回復が下支え(→)OPECプラス減産維持の場合(→)
Q324以降 景気の循環的な回復・中国の正常化(↑)OPECプラス減産維持の場合(↑↑)

※矢印の向きは価格の方向性。

1月2日時点のWTIの投機筋ポジションは、ロングが+275枚、ショートが+35,830枚と大幅に弱気に転じている。

Brentはロングが▲954枚、ショートが+28,578枚と、こちらも非常に弱気だ。

WTIは期近がコンタンゴになったため、ポジティブ・キャリーとなる期近での売りポジション形成のリスクが後退したため、投機筋の売りが加速していると考えられる。

しかしニューショートが積み上がっていることは、先々の買い戻し圧力が強まっていることも同時に正しく、金融緩和実施などの局面での上昇リスクは無視できない。

本日は、引き続き目立った材料がない中で、景気の減速と中東情勢不安を背景とする供給懸念、株価や金利を背景に方向感が定まらないドル指数動向などを背景に、現状水準でのもみ合いを継続すると考える。

◆天然ガス・LNG

欧州天然ガス先物価格は続落。気温低下が若干和らぐとの見方が材料になった。

ガス価格は気温の影響を強く受けるため、原油価格との連動性が必ずしも高い訳ではない。しかし、年始からの欧州ガス価格の動きは、ほぼ原油価格動向を追随する動きが目立つ。一部、原油価格にリンクするガス売買があるためと考えられる。

今冬の欧州のガス調達リスクは後退している。しかし弊社のシミュレーションの結果では、今年の夏以降にガス調達が不足するリスクはまだ残存している。

結局のところ需要動向が需給を左右すると考えられる(詳細は有料のマンスリーレポート12月号で解説)。

欧州の天然ガス・LNGのスポット価格変動要因を整理すると概ね以下に集約される。

1.脱ロシアの継続

2.LNGターミナル・ガス田・船舶の不慮の停止

3.西側消費国に対するロシアの供給削減(価格の上昇要因)

4.景気減速(価格下落要因)

5.季節要因・気象状況

1.は弊社の試算では欧州が完全にロシア産ガスを排除(第三国経由でもロシア産のLNGを購入しない状態になる)できるのは2027年頃。ロシア産のLNGの輸出が阻害されなければ2025年頃と予想される。

今のところロシア産ガスの供給は実質的に制限されていないが、仮に脱ロシアが完了した場合、ロシアがこれまで供給してきた西側諸国向けのガスが「浮く」ことになる。

2022年、欧州向けにロシアが削減したパイプライン輸出量は708億立方メートルで、総輸出量9,685億立方メートルの7.3%に及ぶ。

これを他地域の需要増加で補うことは恐らく不可能であり、FID済みのプロジェクトも見直しせざるを得なくなると予想される。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

2.は、アラビア半島周辺海域の航行にやや不透明感が強まっている。

3.は既にロシアからの供給削減は現時点ででき得る限界まで行われているため、目先は材料になり難い。

4.は顕在化しているが、足下、欧州の統計が改善しており今年以降の需要回復が価格の押し上げ要因となる可能性が出てきた。

5.は2.とも関係するが、エルニーニョ現象中は暖冬になりやすく価格上昇方向のバイアスは強まらないと予想される。ただ、エルニーニョ現象発生後のラニーニャ現象発生はリスクとなる(2024年夏以降か)。

米メキシコ湾発のLNGのタンカーレートは、過去2年の平均程度で推移している。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

米天然ガス価格は気温低下見通しを受けて水準を切り上げた。米天然ガスも「何もなければ」原油価格との連動性が高まるが、やはり気温の影響をより強く受けると考えられる。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

JKM先物価格は、TTF価格の下落を受けて同様に水準を切下げた。

10月のJLCの水準は11.86ドル(前月比+0.32ドル)であり、現在のスポット価格はこの水準を上回っている。

その他のアジアの国の長期契約ベースの価格は恐らくJLCと大差がないと考えられ、今年の冬場の需要期の価格はほぼJLCの水準で推移している。

今年は回避されているが、豪州は国内供給が充分でない場合、通常7月1日まで、遅くとも10月1日までにガス不足の懸念を通知し、実際に国内供給が不充分と判断された場合、次の1年間は輸出が制限される(ADGSM)。

この条項が発動された場合、スポット価格の上昇リスクとなるため、意識はしておきたい。

また、サハリン2の生産能力の低下、供給の減少はかなり前から指摘されているが、今のところ顕在化していない。多くの必要な部材は中国などを経由してロシアにもたらされている可能性があり、実は長期の供給リスクは懸念ほどではないかもしれない。

11月の中国の天然ガス生産は+5.8%の1,470万6,000トン(前月+4.3%の1,411万8,000トン)と同じ時期の過去5年の最高水準を上回っている。

11月の中国の天然ガス(パイプラインガス+LNG)輸入は前年比+6.1%の1,095万トン(前月+15.5%の879万トン)と前年比ベースの伸びは減速したが、過去5年の最高水準を上回った。

11月のパイプラインベースの輸入は前年比+6.7%の415万トン(前月+1.1%の362万トン)と過去5年の最高水準(358万トン)を上回っている。

11月のLNG輸入は前年比+5.9%の680万トン(前月+28.2%の516万9,000トン)と減少し、過去5年の最高水準(690万1,000トン)に迫った。

国内生産の増加と、固定インフラであるパイプラインからの供給が優先される中で、調整弁的に用いられるLNG調達需要が低下している。

ただし合計の「ガス顕在需要」は前年比+8.4%の2,290万5,000トン、年初来累計は+7.3%の2億3,632万4,000トン(前月+6.3%の2,360万3,000トン、年初来累計+7.2%の2億1,341万7,000トン)と着実に増加している。

※中国のガス統計は、データ形式(年初来累計を単月に換算したものと、中国政府が発表する月次のデータなど)や単位換算で数値が一致しないことがあります。予めご容赦ください。

12月24日時点の日本の大手発電業者のLNG在庫は249万トン(過去5年平均245万4,100トン、大手発電業者在庫の過去5年平均は206万トン)と、過去5年平均を上回った状態が続いている。

現在発生しているエルニーニョ現象は今年の6月頃まで続く見通しであり、その影響もあって今年の北半球は記録的な暖冬が見込まれているため、この在庫水準であれば冬は乗りきれる可能性が高まっている。

本日は、欧州は気温低下観測の緩和で下値を探る動きとなり、JKMもこれに追随しよう。米天然ガスは寒波の影響で堅調な推移になると考える。

※LNGの数量とガスベースの換算レートは、注記がなければBP・東京ガス提示の数値を使用している。 LNG1トン=2.19立方メートル(液体)=1,360立方メートル(気体)= 46MMBtu LNG船1隻 147,000立方メートル=67,000トン 1BCF=28百万立方メートル 1Gwh=10.55百万立方メートル=1,055万立方メートル=7,757トン 1Mwh=10.55千立方メートル

◆石炭

豪州石炭スワップ価格は上昇した。天然ガス在庫水準の高さを背景に、代替として石炭が物色される動きとみられる。これは昨年も見られた動き。

昨年12月以降の中国、日本、韓国などの輸入増加で石炭価格の期間構造はバックワーデーションになっているが、足下の石炭輸入はこれらの国で減少しているため、早晩、期近の下落があるだろう。

全ての発電業者が、ガスから石炭にスイッチができる訳ではないが、1.実際にスイッチ可能な消費者はガス価格対比で割安であれば石炭を選択する、2.ガス対比での備蓄のしやすさ、3.石炭が脱炭素の影響で否定される中、需給関連の統計が十分に提供されておらず、ガス価格を参考に価格が決まりやすい状況になっていること、からガス価格動向は無視できない。

現在のガス価格(JKM)との関係性を元に回帰分析を行うとNEWC価格は131ドル、±1標準偏差で60~200ドル程度までが統計的に説明可能なレベル。

期先の価格は現在の生産コストに近いことを考慮すると、期先の価格が120~130ドル程度まで再び上昇しているため、130~240ドルが説明可能なレンジであり、現在のスポット価格は価格想定レンジの下限。

ロシア問題が継続する以上、欧州が完全に脱ロシアを達成することが期待される2027年(早ければ2025年、現実的には2026年)までは、ピークシーズン中の価格上昇リスクはつきまとう。

※週次(原則金曜日)の更新となります。

11月の中国の石炭輸入は原料炭・燃料炭合計で前年比+34.7%の4,350万6,000トン(前月+23.3%の3,599万2,000トン)と過去5年レンジを大幅に上回る水準を維持した。燃料炭の輸入が10月は減少しており、恐らく原料炭の輸入が増加したと見られる。

11月の燃料炭輸入は、ロシアからの輸入が減少(564万トン→538万トン)したが、豪州(461万トン→612万トン)、インドネシア(366万トン→513万トン)、モンゴル(106万トン→158万トン)で増加している。

11月の中国の石炭生産は、前年比+0.2%の4億955万トン、1,365万トン/日(前月+4.7%の3億8,707万トン、1,248万トン/日)と伸びが加速、過去最高水準を上回っている。

11月の中国の電力消費量は前年比+11.7%の7,630億kwh(前月+8.6%の7,419億kwh(前月+10.1%の7,811億kwh)と伸びが加速した。

本日は、欧州ガス価格が気温低下観測の後退でやや軟調に推移していることから、やや水準を切下げる動きになると考える。

◆LME非鉄金属

LME非鉄金属市場は総じて軟調な推移となった。長期金利低下を受けて株に割高感が発生して株が調整する中、リスク回避的にドル高が進行したことが非鉄金属価格の押し下げ要因となった。

アルミはAlcoaの西豪州のアルミナプラントの閉鎖見通しを材料に水準を切り上げた。なお、ギニアの爆発事故の影響は長期化しない見通しが示されているため、目先の材料からは除外されている。

今年は中国の景気低迷と経済対策実施期待が相殺し合うと考えているが、欧米の経済活動の失速もあり、ドル高が進行する中では水準を切下げやすい。IMFやFOMCの見通しを前提とすればQ324以降の価格上昇が予想される。

ただ、市場コンセンサスはQ224で景気は底入れするとしており、中国の在庫循環も早ければQ124の後半で在庫調整が終る可能性があること、半導体サイクルもQ224以降の回復が見込まれているため、銅や錫など、半導体関連の金属価格は比較的早いタイミングで上昇する可能性がある。

英国によるロシア産金属の取扱禁止の方針は、LMEの金属需給がひっ迫するため短期的には価格が上昇するが、時間経過後は取引量が減少し下落に転じると予想される。

そして、LME外で取引される金属が増加、ロシアに対する制裁発動国と、非発動国の価格が異なる「一物二価」の状態となることが予想される。

ロシア産のアルミやニッケルを加工して生産した製品が流通すると予想されるが、このとき西側諸国政府がどこまでこの原料のトレースを要求してくるかが次の焦点となろう。

米国のウクライナへの軍事支援が予算的に細る中、欧州は独自にロシアに対する制裁を強める必要性が出てきていると考えられ、非鉄金属以外の資源への制裁が強化されることも有り得る状況に。

中国が不動産危機を乗り切ることに失敗し、中国政府が想定以上にこれまで積み上がった余剰生産能力の解消に手間取った場合、景気は長期低迷、いわゆる「日本化」が10年単位で起きる可能性が高い。

さらに労働人口がピークアウトし、かつ、西側諸国の制裁によって先端分野の発展が阻害され生産性が低下、将来的にはインフレをもたらしソ連型の国家崩壊、というシナリオも長期的には有り得る話。

就任以降の習近平国家主席の政策は、決して成功しているとは言えない。

11月の中国の貿易統計では、ベンチマークである銅地金・製品輸入は前年比+2.0%の55万566トン(前月+23.7%の50万168トン)と過去5年平均を維持した。中国の精錬銅輸入は年末にかけて増加する傾向があるが、今年は3月頃からの輸入量の回復トレンドが継続している。

11月の銅鉱石・コンセントレートの輸入は前年比+1.4%の244万3,318トン(前月+23.5%の231万トン)と過去5年の最高水準を上回った。

11月の中国の精錬銅生産は+0.4%の111万9,000トン(前月+23.8%の114万3,000トン)と過去5年の最高水準を大きく上回っている。

11月の銅スクラップの輸入は前年比+37.7%の15万5,359トン(前月+2.0%の17万283トン)と過去5年平均を維持している。

精錬銅輸入の増加と銅鉱石輸入の増加は、製造業PMIの悪化、海取引所在庫の水準が低迷していることを考えると、統計に反映されない企業在庫として取得されている可能性があると見ている。

本日は欧米諸国の高金利政策継続に伴う、景気の減速を受けて水準を切下げる展開が継続するとみる。

ただし、足下の中国の景気の悪さを背景に経済対策への期待が高まることや、季節的な在庫積増しの時期であることから、季節的に価格は支えられると考える。

◆鉄鋼・鉄鋼原料

中国向け海上輸送鉄鉱石スワップは下落、大連は上昇、豪州原料炭スワップ先物は上昇、大連原料炭価格は上昇、上海鉄筋先物は下落した。

11月の中国粗鋼生産は前年比+2.1%の7,610万トン(前月▲0.8%の7,609万トン)と減速し、過去5年平均を下回った状態が続いている。

11月の中国の鉄鋼製品の輸入は前年比▲18.1%の61万3,940トン(前月▲13.0%の67万トン)と低迷が続き、同じ時期の過去5年の最低水準を下回る状態が続いている。

11月の中国の鉄鋼製品の輸出は前年比+43.2%の800万51トン(前月+53.3%の793万8,700トン)と過去5年の最高水準を大きく上回る状態が続いている。同時に鉄鋼製品輸出額は前年比▲11.7%の64.9億ドル(前月▲7.1%の62.9億ドル)と金額・伸び率とも前月から減速した。

輸出額を数量で割ったトン当り単価は811ドル(前月792ドル)と、11月はやや改善した。しかし引き続き年初来では最低水準となっている。欧米のPMIやISM指数の減速を見るに、中国の景況感は改善するには至らず、値引きで在庫を解消する動きが続いていると考えるのが妥当だろう。

単月の統計で判断するのは早計であるが、まだ中国の在庫調整には時間が掛かる可能性があると考えるべきだろう。

週間の鉄鋼製品港湾在庫統計は、鉄鋼製品在庫は+33万7,000トンの971万2,000トン(過去5年平均 902万3,000トン)と過去5年平均を上回っている。

鉄鋼原料は、鉄鉱石在庫が前週比+150万トンの1億1,600万トン(過去5年平均 1億3,740万トン)、在庫日数は28.1日(+0.4日、過去5年平均 30.7日)。

鉄鉱石は在庫は日数ベースでも、数量ベースでも過去5年平均を下回っており、鉄鉱石の需給はタイトで一定の在庫積み増し需要が存在する。

主要原料炭の輸入港である京唐港の原料炭在庫は+5万6,000トンの208万トン(過去5年平均162万4,000トン)、在庫日数は±0.0日の9.4日(過去5年平均 6.4日)と、原料炭の需給は緩和している。

本日は、鉄鋼製品需給の緩和観測を背景に鉄鋼原料価格にも下押し圧力が掛かると考えられるものの、季節的に鉄鋼製品在庫を積み増す時期でもあるため、鉄鋼原料在庫の積増し需要が期待されることから、結局高値維持の公算。

◆貴金属

昨日の金価格は小幅に上昇した。実質金利の小幅安とドル高が相殺しあった。株の影響を受けやすい景気銀PGMは株の下落を受けて水準を切下げている。

これまで政策金利の引き上げと共に「諸々のリスクの高まり」から、リスク・プレミアムが上昇して金価格を押し上げてきた。金リスク・プレミアムの上昇要因の主なところは、

1.米利上げによる信用不安の高まり(低格付企業・新興国)

2.ロシアに対するドル決済禁止制裁を受けた、準備金におけるドルから金ヘのシフト

3.ロシアのウクライナ侵攻

4.イスラエルとパレスチナの戦争開始による中東情勢不安並びに、テロ組織の大規模攻撃であるため、各地にテロが拡散するリスク

あたりだろう。これらと同じ事象は、ニクソン・ショック~プラザ合意~アジア危機収束まで30年近く続き、金価格に占めるリスク・プレミアムのシェアが高止まりした。

2019年基準で算出した現在のリスク・プレミアムのシェアは50%と、ほぼ上記の期間と同様の状況になっており金利水準以上にその他の要因が金価格の形成に影響を与えていることが確認できる。

現状を理解する手助けとなるため、あえて実質金利・信用リスク・その他、に分離した場合、実質金利部分が45%、信用リスク要因が20%、その他の要因が35%となった(2019年データを元にした分析結果に変更)。

直近1年間の説明力を相関係数で確認するとほとんどの項目が金価格と無相関の状態になっている。3ヵ月間の相関関係では、最も金価格に対する説明力が高いのがドル指数で▲0.82、次いで実質金利で▲0.77、10年金利で▲0.77、期待インフレ率で▲0.69となった。これまで説明力がほとんどなくなっていた実質金利要因の説明力が増している。

このことは、リスク・プレミアム以上に金融政策動向が価格を左右しやすいことを示唆している。

この5年間のデータを元にした分析では、FF金利±1%の変化で、金の基準価格は±150ドル変化し(負の相関)、リスク・プレミアムは±160ドル変化(正の相関)する。

今回のFOMCでFRBは今年▲0.75%の利下げを予想しているが、市場予想は2024年は▲1.50%程度のFF金利引下げを見込んでいるため、金の基準価格は+225ドル程度の押し上げ要因となり、リスク・プレミアムは、▲240ドルの低下要因となるため、仕上がりで▲15ドルの価格低下となる。

結果、金価格は現状の水準を維持すると予想される(FF金利の感応度を、基準価格とリスク・プレミアムに分けて行う方向に変更した結果、これまでの分析結果とは異なる結果に)。

なお、リスク・プレミアムが過去5年平均程度まで収れんするとの前提に立てば、リスク・プレミアムの低下は▲700ドル程度となるため、この場合、▲475ドルの下落となるため、1,575ドルまでの下落余地があることになるが、金の市場での位置づけがロシアの軍事侵攻以降で変化しているため、ここまでの下落は現状、想定し難い。

本日は、米長期金利の方向性が不安定であり、ドル指数も不安定であることから現状水準でもみ合うと考える。

銀、PGMも概ね金と同様の動きになるとみるが、株の調整圧力が強まっていることからやや軟調な推移か。

◆穀物

シカゴ穀物市場は上昇した。前日米国の降雪の影響による土壌環境改善を材料に下落していた小麦に割安感から買いが入ったが、トウモロコシや大豆はこれまでの下落で割安感が出たことから買い戻されたと考えられる。

北アフリカの穀物生産動向に影響を及ぼすバッタ被害だが、今のところLocust Watchでは大量発生は確認されていない。

本日は、金利・為替動向が不透明であり、現状水準でもみあうものと考える。

※中長期見通しは、7月・11月にリリースの商品市場為替市場動向見通しをご参照ください(有料)。

市場データ・グラフ類の添付ファイルのサンプルはこちら。

【マクロ見通しのリスクシナリオ】

◆信用リスク・マクロ経済のリスク

・米国債の格下げリスク、米国債格下げの動きが連鎖して、金融機関の格下げが加速、信用不安に繋がる場合。

・日本政府の財政規律の欠如、成長期待への失望から円が暴落するリスク。

・景気が想定よりも早く底入れしてインフレが再燃、あるいは景気を刺激する目的で早期の利下げが行われ資源価格が高騰、各国中銀の金融政策が再びタカ派の状態になった場合(リスク資産価格の上昇→下落リスク これは顕在化している可能性)

新興国の財政破綻、先進国も含めた債券の格下げによる金融機関・ファンドの突発的な損失拡大による信用収縮、低格付企業の破綻や、市場変動性の高まりによるファンド破綻などもリスクに。

・中国の構造的成長が終了、過剰債務や不動産問題を抱え、中国が「日本化」するリスク(この場合長期低迷で工業金属やエネルギーなどの景気循環系商品価格の下押し要因となる可能性)

・次の成長ドライバーとして期待されるインド経済が、期待通りの成長をできない場合(人種差別問題による国民の離反、モディ支持率の低下による近代化投資の遅れ、市場開放・規制改革の遅れ、中国との対立など)。

2018年にすでに人口ボーナス期入りしているため、鉱物・エネルギーをはじめとする景気循環系商品需要の増加は2023年後半~2024年頃。

◆地政学的リスク

・ロシア暴発による核ミサイル使用、それに伴う東西の全面戦争の勃発(可能性は非常に低いリスク)。

・中東情勢不安が拡大し、先進国でテロが発生(景気の下振れリスク)、産油国でテロが発生して原油価格が高騰(インフレ発生で景気下振れリスク)するリスク。

中東問題が、「反イスラエル・親イスラエル」の対立となり、世界に拡散する場合(可能性の低い顕著な景気下振れリスク)

・習近平国家主席の独裁体制構築による同国の景気減速リスク。台湾・尖閣を含む有事発生の懸念(リスク資産価格の下落要因となるが、日本にとってはCIF上昇で調達コスト上昇要因に)。

中国による台湾併合(武力行使、対話による併合、どちらでも)半導体覇権を中国が握る場合。

一連の「締め付け強化」に対する中国各地での暴動発生。暴動激化で中国が分裂するリスク(極めて可能性の低いリスク)。

・西アフリカ・北アフリカで、フランスが旧宗主国である国の反仏感情が高まり、武力衝突が発生して域内治安が悪化する場合。

欧州に難民が流入するほか、地域によっては(リビア、アルジェリア、ナイジェリアなど)原油・ガス供給に影響が及ぶ恐れ。

◆その他のリスク

・渇水、猛暑厳冬、発電燃料供給不足による工場稼働停止や消費低迷で景気が減速する場合(リスク資産価格の下落要因)。

・脱炭素・脱ロシア進捗による資源需要の高まりによる価格上昇や、資源の供給不足、ロシアの意図的な供給停止(枯渇のリスクも)が発生し、経済活動が抑制される場合(価格上昇→景気減速による価格下落リスク)

・環境重視型社会への急激な転換による、経済活動の鈍化リスク。成長ドライバーの1つとして期待される、中東・北アフリカ産油国が人口ボーナス期を活かせない(逆に鉱物産出国は高成長となる可能性も)。

逆に脱炭素に向けたインフラ投資の加速で資源価格が急上昇、金融緩和マネーが大量に市場に滞留する中でインフレとなるリスク。

また、再生可能エネルギーのコスト上昇で化石燃料回帰が起きる場合。


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