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日刊工業新聞連載『調達コストのリスク管理(44)都市ガスコストのリスク対策』
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  • 大崎将行

直接交渉・金融取引でヘッジ

【“調整項”】

都市ガスの従量料金は、原料費調整制度という都市ガスの原料(LNG&一部LPG)の価格変動を単価に反映させる仕組みの下、料金改定時点の原料価格を基準とした「基準原料価格」と直近の「実勢原料価格」との差分が、原料費調整単価という“調整項”として単価に反映される。また実勢原料価格は、日本に輸入される原料の貿易統計価格を基に算出されるが、日本に輸入されるLNGの多くが原油価格に連動する長期契約で値決めされているため、都市ガスの従量料金単価は実質的に原油価格の変動リスクにさらされている。

この都市ガスの従量料金単価については、前述の原料費調整制度という形で明確にフォーミュラ化された計画調達であるため、「調達コストのリスク管理」の作法に沿ってリスク管理が可能だ。リスク対策を打つ前段階で、リスク管理の目的とリスク許容度(予算)を明確化し、リスク対策前のリスクの大きさ(固有リスク)を把握する。そのリスク許容度の水準を意識しながらリスク対策を講じ、対策後のリスク(残余リスク)をリスク許容度内に収めていく、といった流れとなる。

【事前の値決め】

そのリスク対策については、他の調達品同様、計画調達量の一定程度を事前に値決め(ヘッジ)していく形となる。事前の値決めのタイミングは、次年度の予算が確定する前後でも良いし、中期経営計画を策定する段階でも構わない。企業ごとの調達方針やヘッジ方針に基づき事前の値決めを行っていく。

事前の値決めの方法は、大きく分けて2通りある。一つはガス会社と直接交渉して原料費調整単価を固定化してもらうこと。ただこれは交渉ごとなので、契約しているガス会社によって対応の可否は異なる(最近では対応可能なガス会社も増えてきている)。もう一つは、金融取引を用いてのリスクヘッジだ。この手法のメリットはガス会社との交渉を経ずに、自社の好きなタイミングで自社が求める期間のヘッジが自由にできることだ。ただ、唯一の問題は、原料費調整制度のフォーミュラ指標であるLNGやLPGの貿易統計価格のヘッジ市場の整備がまだ十分ではない点だ。

【原油市場を代用】

一方でLNGの貿易統計価格が原油価格に連動しているという特徴を利用すれば、取引量が潤沢な原油価格(JCCやBRENT)のヘッジ市場を代用することで、事前の値決めを行うことができる。ヘッジ誤差(ベーシスリスク)が若干発生することで次善策とはなるものの、都市ガスの従量料金単価のリスク対策として十分その効果が期待できる。(隔週木曜日に掲載)

◇マーケット・リスク・アドバイザリー代表 大崎将行

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調達コストのリスク管理(45)原材料・素材価格上昇へ抜本的な対策