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日刊工業新聞連載『調達コストのリスク管理(43)都市ガスのコストと原油価格』
  • 日刊工業新聞
  • 大崎将行
  • 新聞掲載
  • Web掲載

都市ガスのコストと原油価格

半年―9カ月、時間差で連動

【広範な波及経路】

世界的にエネルギー価格の上昇が続いている。特に原油価格の上昇はさまざまな波及経路を通じて、タイムラグ(時間差)を伴いながら直接材・間接材と広範に影響を及ぼす。従って調達品別にその影響のメカニズムを理解しておくことはリスク管理上、重要な意味を持つ。その中でもより多くの企業に影響を及ぼす調達品の代表選手と言えば、電力・ガス(都市ガス)だろう。

電力コストに関しては、2021年1月の卸市場価格の急騰を契機に原油価格との連動性を主とする調達コストのメカニズムは広く知られることとなったが、もう一方の都市ガスの調達コストのメカニズムは、電力コストほどには広く認知されていない。実際、原油価格の上昇とともに、弊社顧客からの都市ガスのリスク管理に関する問い合わせも増えている。

【“調整項”】

都市ガスの料金は「基本料金」と、ガスの使用量に応じて課金される「従量料金」の二つで構成される。従量料金は、原料費調整制度という都市ガスの主原料であるLNG(液化天然ガス)と一部のLPG(液化石油ガス)の価格変動を単位料金(単価)に反映させる仕組みの下、料金改定時点の原料価格を基準とした「基準原料価格」と直近の「実勢原料価格」との差分が調整額として単価に反映される。

よって、原料費調整額が「マイナス」というと割引のイメージが、逆に「プラス」となると値上げのイメージが連想されるが、あくまでもこの部分は単に実勢の原料価格を単価に反映させるための“調整項”に過ぎず、良くも悪くも原料価格が上昇しようが下降しようが、料金改定時点の基準原料価格以外の単価の内訳(コスト構造)は維持される。

【異なる参照月】

その単価を実質的に決定する実勢原料価格は、日本に輸入されるLNGと一部LPGの貿易統計価格を基に算出される。調達月の2カ月前や3カ月前の単月の貿易統計価格を参照する場合もあれば、2カ月―4カ月前の平均価格や3カ月―5カ月前の平均価格を参照するケースなど契約形態によって参照月が異なる。ここで求めた実勢原料価格と基準原料価格の差分に一定の掛け目を乗じて最終的に単価の調整額が決まる。

原油価格との連動性では、日本に輸入されるLNGの多くが3カ月前の原油の貿易統計価格に連動する長期契約で値決めされていることに加え、原油の貿易統計価格自体が原油市場価格(BRENT)との間に1カ月のタイムラグがあるため、最終的に都市ガスの単価は半年―9カ月程度のタイムラグを伴いながら原油価格に連動していくカラクリとなる。(隔週木曜日に掲載)

◇マーケット・リスク・アドバイザリー代表 大崎将行

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