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日刊工業新聞連載『調達コストのリスク管理(40)調達コストのリスクの取り方』
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目的に沿ったリスク選ぶ

「原材料価格の上昇により調達コストが予算を超えて困っている…」。世界的な原材料・資材価格の上昇を受けて、このような相談が後を絶たない。話をよく聞くと、顧客自身で打てる対策はやり尽くしているにもかかわらず、その成果が表れていないというのが実情のようだ。なぜそうなってしまうのか。

【対策を打つ場所】

原因は二つある。まず一つは、対策を打つ場所が、調達単価の構成要素の内、加工費などの“固定要素”に働きかける対策“のみ”となってしまっていることだ。売り手の集約などの固定要素を引き下げる対策を打つこと自体は大事だが、この部分だけの対策にとどまれば、原材料価格などの変動要素が上昇すれば、調達コストは容赦なく予算を超える。

二つ目の原因は、事前の値決めやヘッジなど、変動要素を抑制する対策のリスクの取り方が誤っていることだ。相場の安値拾いに固執しているうちに相場が上昇してしまい、結果として調達コストが予算を超えてしまったパターンだ。予算達成が目的なら、本来は予算を下回っている段階で安値追いもほどほどに適宜、値決めを進めていかなければならない。

【異なる戦い方】

ゴルフに例えてみよう。ゴルフにおいて優勝争いと予選通過狙いでは、戦い方が全く異なる。優勝争い(=最少スコア狙い)では一打でも多く縮める必要があるが、そのためにはOBやハザードに捕まりスコアを崩すリスクを背負ってでも、1打目ではドライバーを握り、2打目ではピン狙いで攻め続ける必要がある。

対して予選通過を確実に決めようと思えば、予選通過スコアと自分のスコアを睨みながら、リスクを減らすために1打目では短いクラブでフェアウエーを、2打目ではグリーンセンター狙いに徹した攻め方をするだろう。

要は目的達成の確度を上げようと思えば、その目的に沿った攻め方(=リスクの取り方)が必要だという話だ。優勝争いの最中に予選通過仕様の攻め方をしても優勝の可能性は下がるし、逆に予選通過を目指している時に優勝争いさながらの攻め方をすれば、予選通過もおぼつかない。

【ゴールに合わせ】

事前の値決めやヘッジも同じだ。リスクを目いっぱい取り相場の安値を追求した場合、うまくいけば調達コストの低減に成功するかもしれないが、予算超過のリスクも高まる。自分たちの予算価格を睨みながら、必要以上のリスクは取らず適宜値決めを進めていけば、予算達成の確度は確実に上昇する。目指すゴールとリスクの取り方を一致させなければ、いくら対策を打っても目的達成の確度は上がらない。(隔週木曜日に掲載)

◇マーケット・リスク・アドバイザリー代表 大崎将行

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調達コストのリスク管理(41)リスク対策実施による副次的効果