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日刊工業新聞連載『調達コストのリスク管理(36)電気料金、頭悩ます要因多く』
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“事前の備え”無駄にならず

過去6回にわたって説明してきた「電気料金の従量単価のリスクならびにリスク管理」について総括しておこう。

【タイムラグ】

電気料金の従量単価は、燃料費調整制度の下、料金改定時点の燃料価格を基準とした「基準燃料価格」と直近の「実勢燃料価格」との差分が燃料費調整単価(燃調単価)という形で調整される。いわば燃料市場価格の変動が直接的に電気料金に反映される仕組みとなっている。その燃調単価を決定する実勢燃料価格は(1)原油、液化天然ガス(LNG)、石炭の三つの“燃料価格”で構成され、(2)その“燃料価格”は“貿易統計価格”を参照し、(3)さらにその“貿易統計価格”は、過去3カ月前―5カ月前の平均価格を用いて計算されることが定められている。

この燃調単価の最大の特徴はタイムラグで、「原油の貿易統計価格が燃料市場価格(BRENT)との間に1カ月のタイムラグがある」ことと、「日本に輸入される多くのLNGの価格がその原油の貿易統計の3カ月前の価格を基準に値決めされる」こと、この二つの要因に燃調単価元来の複雑な計算方法が絡みあうことで、燃料市場価格に遅れること最大9カ月のタイムラグを伴って料金単価が変動していく。

【上昇は年末まで】

よって、電気料金単価もコロナショック以降の経済回復と各国の財政出動に伴う資源・エネルギー価格の急騰と無縁ではいられない。2020年4月に一時マイナス価格をつけた原油価格は、その後右肩上がりに上昇しているが、それに呼応する形で多くの電力会社の燃調単価もその9カ月後の21年1月から上昇に転じた。この上昇は年末まで継続する。

【燃料価格ヘッジ】

このような料金単価の変動に対してはリスク管理の一環として、「料金単価の固定化」という事前の“備え”を講じて対処していくことになるが、固定料金のメニューを用意している電力会社が少ないことから、金融手法によるヘッジで固定化することになる。その金融手法によるヘッジだが“燃調単価そのもの”を取引するヘッジ商品がないため、燃調単価の構成要素である各燃料価格のヘッジを通じて代替的に燃調単価をヘッジする。

燃料換算する際のヘッジ量やタイムラグの考慮、貿易統計価格と燃料市場価格との値動きの乖離(かいり)リスクなど、実際のヘッジにおいては頭を悩ます点が幾つかあるのも事実だ。しかし、昨今のエネルギー価格の変動性の高さを考えれば、事前の備えは決して無駄になることはないだろう。備えあれば患いなし。まさにこの言葉が電気料金の従量単価のリスクとリスク管理には当てはまる。(隔週木曜日に掲載)

◇マーケット・リスク・アドバイザリー代表 大崎将行

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調達コストのリスク管理(37)リスクに対する企業の姿勢評価