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日刊工業新聞連載『調達コストのリスク管理(32)燃調契約の電力コストのリスク』
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大きな振れ幅、単価上昇続く

【再確認する機会】

年明けから1月末までの電力卸市場のスポット価格の高騰により、卸市場に連動する契約(卸市場連動契約)で調達している需要家の電力コストの上昇が見込まれている。卸市場連動契約は「火力発電燃料費(原油/LNG/石炭)」と「卸市場の需給バランス」の二つのリスク要因を内包しているが、後者の「卸市場の需給バランス」のリスクが顕在化した形だ。一般的な契約形態である燃料費調整制度契約(燃調契約)で調達している需要家にとっては、リスク要因は火力発電燃料費のみであるため、今回の卸市場の需給逼迫(ひっぱく)の影響を直接的に受けることはないが、電力コストのリスクをあらためて再確認する機会になるだろう。

【上下に7・46円】

燃調契約では、タイムラグや契約する電力会社別の掛け目・係数などの複雑さはあるが、あらかじめ決まったフォーミュラにのっとった形式で「燃料費調整単価(燃調単価)」を通じ、火力発電燃料の実勢価格(貿易統計ベース)が毎月従量料金単価に反映される。電力コストのリスクを考える上では、この燃調単価の振れ幅が気になるところだが、この間の最高値でキロワット時当たりプラス2・69円、最安値でマイナス4・77円と上下に7・46円程の振れ幅があり、これは従量料金単価がこの間7・46円変動したことを意味する。また年間の振れ幅でみると、平均で2・12円、大きい年には4・34円も振れる年があった。従量料金単価自体は個別契約で需要家ごとに異なるが、仮に20円だとした場合、おおよそ年間で10%、大きい時には20%以上も変動する計算となる。

【向き合う時機】

電力自由化以降、相見積もりや価格交渉など、電力コストの「削減」に関する対策は広く知られて一般的になってきた。一方で、電力コストの「リスク管理」については燃調契約の複雑さゆえか、依然正確に認識している需要家は少ない。燃料価格が上昇し始めた半年後、支払い明細の金額に変化が表れて初めて電力コストのリスクに気付く企業も多い。電力コストの削減対策で10%の削減効果を勝ち取ったとしても、燃料価格の上昇でその効果が吹き飛んでしまえば、その努力も水の泡となり得る。昨年5月、コロナ禍で史上最安値を付けた原油価格は、現在に至るまで右肩上がりで上昇し続けている。

燃調単価のフォーミュラにのっとると、少なくとも今後半年―9カ月程度、燃調単価の上昇が続くことは既定路線だ。電力コストの「リスク管理」に真剣に向き合う時機だろう。(隔週木曜日に掲載)

◇マーケット・リスク・アドバイザリー代表 大崎将行

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