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日刊工業新聞連載『調達コストのリスク管理(24)巧拙を競う「ゴルフ」と共通点』
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  • 大崎将行

巧拙を競う「ゴルフ」と共通点

リスク許容度、見極め攻める

【リスクがなければ競技にならず】

読者の中にはゴルフを楽しまれる方も多いだろう。ゴルフはしばしばリスク管理の巧拙を競うゲームだと表現されるだけあって、調達コストのリスク管理とゴルフとの間には案外共通点が多い。そんなゴルフも試合となると決着にわざわざ4日間72ホールもかけるのは周知のところだが、それはなぜだろう。

答えはシンプルで、リスク管理の巧拙を競う競技である以上、リスクが訪れなければその巧拙を競うことができないからだ。およそ72ホールも回れば、大小さまざまなリスクが各選手に訪れる。リスク管理が徹底されていない拙い選手は、72ホールを回る途中、リスクに直面した段階でスコアを崩して戦線から脱落する。

【意識低いと離脱】

そのエッセンスは調達コストのリスク管理にも通じる部分がある。ある意味、調達コストのリスク管理の巧拙を競合と競わされている企業経営においても、72年は言わずもがな、72カ月ですら何のリスクにも遭遇せずに会社を営み続けていくことは奇跡に近い。競技ゴルフにおいて、リスク管理の拙いプレーヤーがリスクに遭遇した途端、スコアを大きく落として戦線から離脱するのと同様、企業経営においても調達コストのリスク管理の意識の低い会社は、原材料価格が高騰した途端、減益を招き、株主と約束した利益を未達にする。過去には事業撤退や部門閉鎖という大惨事もあった。多くの会社が調達コストのリスク管理への意識が希薄なゆえ、リスク許容度を超えるリスクを取っていることに気づいていない。たまたまリスクイベントが発生しない期間は何事もなく過ごせるが、いざリスク要因が顕在化すると前述の事態に陥るのはこのためだ。

【適切な対策を】

例えるならば、コース幅(リスク許容度)の狭いホールのティーショットで、己のドライバーの曲がり幅(リスク)を把握できていないがゆえにOBを打ってしまったと言ったところか。それではと、OBを恐れてアイアンを握るのも明らかに違う。要はリスクとリスク許容度を把握した上で、リスク許容度を超えない範囲でリスクを見極めて攻めていくということだ。ある人には3Wが、ある人には5Wが最適解になるかもしれない。試合で上位にくる選手はその攻めと守りのリスクの見極めがうまい。調達コストのリスク管理も同じで、自社のリスク許容度(許容コスト)と調達コストのリスクの大きさを見極め、適切なリスク対策を怠らなかった会社のみが安定的に利益を計上し、長く生き残ることができる。(隔週木曜日に掲載)

◇マーケット・リスク・アドバイザリー代表 大崎将行

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