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日刊工業新聞連載『調達コストのリスク管理(21)契約時部分値決めと商品デリバティブ』
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  • 大崎将行

リスク対策「劇的に高度化」

【さらに一手間】

計画調達(長期契約/ターム契約)の際には(1)取引価格の透明性、(2)余計な都度交渉の削減、(3)価格交渉における論点の明確化を期待し、「原材料価格相当+α」という算式で取引価格を決定する“契約時部分値決め方式(フォーミュラー方式)”を採用するケースが多い。

この方式は、契約締結の時点で取引価格の一定部分が「α円」という形で値決めされるため、将来の調達コストの想定リスクの低減効果も併せて期待できる。

本方式を導入する際には、算式に透明性の高い指標を採用することは必須であるが、調達コストのリスク管理まで見据えた場合、さらに一手間加えることで、リスク管理が劇的に高度化する。

【透明性高い指標】

それは算式の指標を選定する際に、一歩踏み込んで透明性の高い指標の中でも「金融取引(デリバティブ取引)を使ってヘッジできる指標」を採用することだ。具体的には先物取引やスワップ取引といった商品デリバティブ取引が可能となる指標を選定することだ。デリバティブ取引と言うと馴染みも薄く、投機的なイメージを思い浮かべがちだが、日常的に為替リスクヘッジのために用いられる為替予約と同等の市場リスク回避手段と聞けばイメージしやすい。

こうすることで、取引価格のうちα円以外の残りの「原材料価格相当」のヘッジ(=値決め)が、サプライヤーとの価格交渉を経ずに実現できる。好きなタイミングで、好きな量だけ原材料価格相当部分の値決めが可能となる。これが調達コストのリスク管理上、非常に大きい。年度の枠を超えて割安と思える水準で将来の調達価格のヘッジ(値決め)ができるようにもなるし、変動性の高い市場価格もタイミングを分散しながらヘッジ(値決め)していくこともできる。計画調達のほかの値決め方式と比べても、格段にリスク対策の選択肢や自由度を広げてくれる。

【選択肢の1つに】

ある顧客も長年、取引価格の透明性を担保するため、重油の調達に全国紙の商品欄に記載されている価格に連動する形で値決めを行っていたが、直近燃料費のリスクマネジメントに注力する目的で、取引先に対し、金融取引が可能となる原油の貿易統計価格(JCC)に連動する形に算式の変更を打診し、改定された。

調達コストのリスク管理に本腰を入れて取り組むのであれば、計画調達において、契約時部分値決め方式(フォーミュラー方式)&商品デリバティブという選択肢を持つことを強く推奨したい。(隔週木曜日に掲載)

◇マーケット・リスク・アドバイザリー代表 大崎将行

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