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日刊工業新聞連載『調達コストのリスク管理(15)「対応上限リスク」設定』
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  • 大崎将行

「守るもの」の重要度を考慮

【想定外「不安」】

前回までの3回にわたり、「調達コストのリスクの見積もり」について説明し、調達コストに関して「どの程度の確率で/どの程度の大きさのリスクが起こり得るのか」を具体的数値として認識することの重要性を説いた。実際に自分の手を動かして改めて調達コストのリスクを見積もると、想像以上に調達コストのリスクが大きく、「果たしてこれだけのリスクの大きさに対応できるのか」と不安に陥る。

ここでいったん調達コストを横に置こう。代わりに、地震による津波対策で沿岸に防潮堤を建設することを考えてみる。想定される津波の高さは、震度6クラスで10メートル、震度7クラスで30メートルとした場合、あなたは何メートルの防潮堤を作るだろうか。

防潮堤を建てて守るものが「原発」であれば、コストやリソースを十分にかけて震度7クラスの地震でも対応できるように30メートルの防潮堤を建てるであろうし、それが「公民館」であればそこまでコストやリソースを“かけられない”ので、震度6クラスまでの地震への対応を“上限”として10メートルの防潮堤の建設に落ち着く、おおむねこのような流れではなかろうか。

【限りある中で】

要は「防潮堤建設(リスク対策)のコストやリソース」に限りがある中では、「防潮堤を建てて守るべきもの(目的)の重要度」を考慮しながら、対応するリスク(津波の高さ)に“上限”を設けなければならない。調達コストも全く同じで、リスク対策に費やせるコストやリソースに限りがある中では、リスク管理の「目的」の重要度に応じ、想定されるリスクのどこかに“対応上限リスク”という一線をあらかじめ設けるステップが必要となる。

上述の公民館の津波対策のケースで、運悪く対応上限の10メートルを超える15メートルの津波が襲ってきたとしよう。その場合、10メートルの防潮堤の建設は無駄であったかというと決してそうではない。建てなければ“全壊”だった公民館は、その10メートルの防潮堤のおかげで“半壊”で済む可能性もある。

【ダメージ小さく】

当初の「公民館を守る」という目的は“完全”には達成できないかもしれないが、対応上限以上のリスクが顕在化した際でも、その損失を和らげる“ダメージコントロール”という役割は担える。

調達部門の予算達成を目的として取り組んだリスク管理において、運悪く“コロナショック”のような対応上限を超える「テールリスク(発生確率は低いが顕在化すると影響の大きいリスク)」に見舞われたとしても、平時の際に準備していたリスク対策は決して無駄にならない。(隔週木曜日に掲載)

◇マーケット・リスク・アドバイザリー代表 大崎将行

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