【(再)カービングスキーは危険なスキー板-最終回】
- 新村ブログ《油売りのひとりごと》
車を運転して、近所の病院に。
恥も外聞も捨てて、看護婦さんに症状を説明する。
私 「かくかくしかじかで、こうなりました」
看護婦さん 「ええッ!?どうやって転んだんですか?
エビ反りしながら転んだんですか?」
私 「正直、自分でもどうやって転んだのか覚えてません。
大丈夫でしょうか?」
看護婦さん 「大丈夫かどうかは先生に聞いてみないと分かりません。
今、担当の先生は休暇でご自宅なので、呼び出しますね」
早くしてくれ。俺の人生がかかっているんだ。
でも、後で聞いてみたところこの先生、ぶっ続けで働いていて、
久し振りの休暇だったらしい。申し訳ない、の一言に尽きる。
しばらくして先生到着。治療室の看護婦と先生の会話が聞えてくる。
先生 「で、その患者さんはどうしたの?」
看護婦 「どうも信じられないんですが、スキーで転んで局部を強打したらしいですよ」
先生 「ええッ!?局部強打!?他のところはなんともないの?」
看護婦 「ええ、そこだけ打ったんですって...」
先生 「ふーん...どうもにわかには信じがたいなぁ...。
まぁ、診てみましょう。場合によっては手術になるので、準備しておいて」
え?手術?ここを?
嗚呼。カービングスキーなんて、買わなきゃよかった。今後悔しても後の祭り。
先生 「次の患者さん、どうぞ」
運命の時が来た。診察室に入ると先生が、散々説明した話を質問してきた。
「どうやって局部を強打したのか」と。
もう、その説明は何回もしているので立て板に水である。
それを聞いて先生、
先生「私も結構長くこの病院で働いてるけどね...。
局部から転んだ人は君が初めてだよ。」
もう、言われ慣れました。
先生「人間の体の構造としてね。この部分は衝撃に弱いからさ、
手や足を折り曲げれば外的から保護できるようになってるんだよね
なので、君はエビ反りながら転んだとしか思えないんだけど、
どうかね。その点に関しては」
その点はどうかね?っていわれても....
全く治療と関係ないと思うのだが....
早く診てくださいッ!!
先生「はいはい分かりましたよ。じゃあ、下半身、裸になってください」
若い看護婦さん(しかも、結構かわいかった)と
中年の先生の前で裸になる恥ずかしさ。
しかも、自分が今まで見たことのないような形に変形している局部。
このまま手術室に連れて行かれるのか...と、思ったら。
あれ?
見慣れた形のものがそこにあった。
先生、看護婦とも露出狂を見るかのような目で(どんな目だ)私を見ている。
私「いや、あのですね。ちょっと前には凄く腫れててですね、激痛も走って...」
先生「まぁ、局部の打ち身ですよ。暫くは痛むけど、1週間ぐらいで治るでしょ。
血も出てないしさ。はじめは結構大手術になるかと思ってたんだけど、
見るからになんともなさそうだね。紫色になってるけど」
私「ありがとうございます...って。何にも治療はいらないんですか?」
先生「いるわけないじゃないか!!打ち身だってせいぜい湿布だよ。」
私「でも...」
先生「分かった分かった。東京からわざわざやってきてさ、
看護婦さんの前で恥ずかしい思いしたんだからさ、せめて消毒だけしてあげよう。
小林さん、消毒して」
と言った瞬間、身動き一つしなかった若い看護婦さんが、
なんともない局部を消毒し始めた。
なんともいえぬ、恥ずかしい瞬間。
恐らく私の人生の中で、最も恥ずかしい瞬間であったであろう。
そんな私も無事に再婚し今に至ります。
本当にありがとうございました、人は1人では生きていけないのですね...
(おわり)