円相場を左右する要因は高市政策から日銀のスタンスへ
- MRA外国為替レポート
2026年2月23日号
◆先週の市場総括
先週は為替市場で総選挙後に続いていた円高が一服。月曜日に高市首相は植田総裁と会談。また水曜日に首相指名を受けて会見を行いあらためて積極財政姿勢を強調。政府と日銀の協力体制を強調したことで円安が進んだ。
米国ではFOMC議事要旨が公表され利上げの可能性を議論したことが明らかとなりドルを支えた。
ドル円相場は週初の157円台後半から週末にかけて155円台へ上昇。ユーロ円相場も181円台前半から一時183円をつけるなどして週末は182円台後半。ドルインデックスは97ポイント台で底固く推移した。
米国株はハイテク株、ソフトウェア関連株の下落が一服。落ち着きを取り戻した。ただ週末にかけては米国のイラン攻撃の可能性が高まったとの見方から中東での地政学的リスクが意識された。
一方、米最高裁がトランプ関税を違憲と判断したことは市場心理にプラス。日本株は前週に高市政権の政策への期待から急騰したあと一進一退。日経平均は57,000円を挟んで上下し週末は56,800円台で引け。
月曜日の東京市場では日経平均が3営業日続落。買い先行も続かなかった。高市政権の政策に対する期待や米国の利下げ期待の高まりは支えとなったが、発表されたGDPが弱く、円高に振れていることが重石。前週の急騰のあとでスピード調整が入りやすかった。引けは前週末比▲135円安の56,806円。
為替市場では円高一服。ドル円相場は152円70銭で始まり早々に153円台に乗せ底固く推移。夕刻から欧州市場にかけて153円60銭台まで上昇した。その後は上昇一服。米国市場では20銭~40銭でもみ合いのあと153円50銭近辺で推移して引け。
ユーロ円相場は181円20銭台で始まり堅調。欧州市場では182円30銭へ上昇した。ただその後は181円80銭近辺に押し戻されてもみ合い。引けは181円90銭近辺。
ユーロドル相場は動意薄。東京市場では1.1860~70で小動きもみ合い横ばい。欧州市場から米国市場は1.1850~60で動かず引けは1.1850近辺。米国市場はプレジデントデーで休場。
発表された日本のGDP(10-12月期、速報)は前期比年率+0.2%と前期▲2.3%からプラスに転じたものの、予想+1.6%を大きく下回った。この日、高市首相は植田日銀総裁と会談。植田総裁は金融政策についてはとくに話はなかったと述べた。
火曜日の東京市場では日経平均が4営業日続落。総選挙後の過熱感から主力株に利益確定売りが嵩んだ。主力ハイテク株、ソフトウェア関連株が軟調。一時▲600円超下落。売り一巡後は押し目買いに下げ幅を縮めた。引けは前日比▲239円安の56,566円。
為替市場では東京市場で円高、欧米市場で円安に振れ、米国市場の引けは東京市場朝方とほぼ同水準。ドル円相場は153円50銭で始まり朝方70銭近辺に上昇したがその後は夕刻にかけて152円80銭近辺へ、いったん153円10銭に戻したが152円70銭へ下落した。円高はそこまで。
米国市場朝方は153円10銭。さらに90銭まで上昇し引けは戻して153円30銭。
ユーロ円相場は181円90銭近辺で始まり182円10銭に上昇したあと夕刻にかけて180円80銭まで下落した。その後欧米市場では持ち直し。181円台に反発し米国市場引けにかけては181円60銭~70銭で推移して取引を終えた。
ユーロドル相場は引き続き小動き。1.1850で始まりやや上値重いながらもみ合い横ばい。夕刻も同水準。米国市場では一時1.18ちょうど近辺まで押したが引けにかけて反発して1.1850で引け。
ドイツZEW企業景況感指数(2月)は期待指数が前月59.6から65.8への改善予想に反して58.3へ悪化。米国ではNY連銀製造業景気指数(2月)が前月7.7から10.0への改善予想に反して7.1へ悪化した。
米国株は小幅高。米国とイランの核問題協議が行われ進展期待が支え。利下げ期待が盛り返したことも支えとなった。ただ経済指標が弱く売り材料に。
ダウは一時▲300ドル超下落。消費関連が買われたもののAIによる代替、悪影響がささやかれるソフトウェア関連がなお軟調。NYダウは前日比+32ドル高の49,533ドル、ナスダックは+31ドル高の22,578ドル。VIX指数は20.29と引き続き20台。
米長期金利は上昇。10年債は4.06%、2年債は3.436%。ドルインデックスは97.11と97ポイントを回復した。
水曜日の東京市場では日経平均が5営業日ぶりに反発。米国株が底固く支え。また対米投資第一弾がガス火力発電事業に決定したと報じられ、今後の投資案件への期待も含めて関連銘柄に買いが広がった。しばらく調整局面が続いていたあとで主力株に押し目買いが入った。
午後には一時+800円高。引けは+577円高の57,143円。
為替相場は欧米市場で円安が進んだ。ドル円相場は153円30銭で始まり朝方やや押したあとは底固く推移。50銭~60銭でもみ合い。夕刻から欧州市場では70銭~80銭。米国市場に入ると円安が進み154円80銭近辺でもみ合い引けた。
日本時間夜22時から高市首相が会見。政策方針を改めて説明。責任ある積極財政を強調し、また植田日銀総裁との会談での内容についてノーコメントとし暗に慎重な利上げスタンスをうかがわせるようなニュアンスで円売りを誘った。
発表された米国の経済指標は強め。耐久財受注(12月)は除く輸送機器で前月比+0.9%と前月+0.4%から伸びが加速。鉱工業生産(1月)は前月比+0.7%と前月+0.4%から加速した。
公表されたFOMC議事要旨(1月開催分)では、インフレ上昇の場合は利上げが適切になる可能性があるとの意見、逆に低下すればさらに利下げの余地があるとの意見、双方意見が割れていることが明らかになった。
ユーロ円相場は東京市場では181円70銭近辺で始まり夕刻にかけては182円手前でもみ合い。欧米市場では上昇して182円台前半でもみ合い引けは182円50銭近辺。
ユーロドル相場は1.1850でもみ合いやや軟調、夕刻から欧州市場では1.1830近辺でもみ合い。米国市場ではドル高に振れて1.1780近辺でもみ合い引けた。
米国株は上昇。大型ハイテク株の一角、金融株に買い。大手ヘッジファンドがハイテク株の保有を増加させたことが明らかになり投資家心理が改善した。
NYダウは一時+300ドル超上昇した。ただ引けにかけて伸び悩み。+129ドル高の49,662ドルで取引を終えた。ナスダックは+175ドル高の22,753ドル。
米長期金利は上昇。10年債は4.084%。2年債は3.463%。ドルインデックスは97.70へ続伸した。
木曜日の東京市場では日経平均が続伸。前日の米ハイテク株がしっかりだったことで朝方から半導体関連中心に買い先行。円軟調で輸出関連を支え。対米投資関連銘柄、高市政権の重点投資分野を中心にしっかり。
一方、アドバンテストがサイバー攻撃を受けたことで大幅安となり指数を▲250円押し下げた。引けは+323円高の57,467円。
為替市場では朝方から東証引けにかけて株高と並行して円が軟調。ドル円相場は154円60銭~80銭でもみ合いのあと午後にかけて155円30銭へ上昇。その後欧州市場から米国市場朝方にかけて154円50銭へ押し戻された。
米国市場では強めの経済指標を受けて155円30銭へ上昇。その後は反落して154円80銭~155円ちょうどで上下して155円ちょうど近辺で引け。
ユーロ円相場も同様の値動き。182円40銭~50銭もみ合いのあと午後にかけて183円10銭台へ上昇。その後米国市場朝方にかけて182円ちょうどへ反落。その後は一時60銭に反発したが上値重く182円20銭~40銭でもみ合い引けは50銭~60銭。
ユーロドル相場は東京市場では1.1780~1.18ちょうど近辺でもみ合い夕刻は1.1810近辺。欧州市場から米国市場にかけてユーロ安ドル高が進み1.1740。引けにかけて戻して1.1770台。
米国株は下落。米国とイランの協議が不調に終わり、イラン攻撃の可能性が高まったとして中東の地政学リスクへの警戒感が重石となった。ホルムズ海峡が通行不能となるリスクが意識された。NYダウの引けは▲267ドル安の49,395ドル、ナスダックは▲70ドル安の22,682ドル。VIX指数は20.23ポイントへ反発。
原油価格WTI先物は66.43ドルへ上昇した。米長期金利は10年債がリスク回避を受けて低下し4.069%、2年債は変わらず3.463%。
発表された週次の失業保険申請件数は新規申請が前週227千件から206千件へ減少。一方継続需給は前週1,862千件から1,869千件へ増加。
フィラデルフィア連銀製造業景気指数(2月)は前月12.6から悪化予想に反して16.3へ改善した。
金曜日の東京市場では日経平均が3営業日ぶりに反落。米国がイラン攻撃の可能性高まり中東情勢悪化懸念を意識。3連休前で利益確定売りが優勢となった。値がさ半導体関連株、銀行株などに売り。一時▲700円超下落。
ただ高市首相の施政方針演説を受けて性悪期待から押し目買いも。午後は下げ渋った。引けは▲642円安の56,825円。
発表された消費者物価指数(CPI、1月)は概ね予想通り。前年同月比は総合指数が前月+2.1%から+1.5%に低下、除く生鮮食品・エネルギーでは+2.9%から+2.6%へ低下した。
ドル円相場は155円ちょうどで始まり底固く推移。155円ちょうど~30銭でもみ合いのあと夕刻から欧州市場で60銭へ上昇。ただその後は10銭~30銭に押し戻されてもみ合い。
米国市場で再び50銭に上昇したが弱い経済指標を受けて154円70銭へ下落。その後は持ち直したが155円20銭まで、引けは155円ちょうど近辺。後半はドル安が重石となった。
ユーロ円相場は182円50銭台で始まり50銭を挟んで上下したあと夕刻は183円ちょうど近辺へ上昇した。その後米国市場では182円台後半で上下して引けは70銭近辺。
ユーロドル相場は終始小動き。東京市場では1.1770台で始まり欧州市場にかけて1.1750~70の狭いレンジで上値重いながらもみ合い横ばい。米国市場で一時1.18ちょうど近辺へ上昇したがすぐに押し戻されて1.17台後半で上下し引けは1.1780近辺。
発表されたPMI景況感指数(2月速報)は、ユーロ圏製造業が前月49.5から50.8へ、サービス業が51.6から51.8へ、それぞれやや改善。一方、米国製造業は52.4から51.2へ、サービス業は52.7から52.3へそれぞれ悪化した。
米国の個人所得・消費支出(12月)は予想通り。所得は前月比+0.3%で増加ペースは前月と変わらず、支出は+0.5%から+0.4%へやや鈍化。PCEデフレーター(個人消費支出価格指数)はコア指数が前年同月比+2.8%から+3.0%へ上昇率がやや加速した。
GDP(10-12月期速報)は前期比年率+1.4%と前期+4.4%から大きく鈍化して予想+2.8%を下回った。個人消費は+3.5%から+2.4%へ鈍化したが予想通り。
ミシガン大学消費者態度指数(2月確報)は56.6と速報57.3から下方修正された。
米国株は上昇。最高裁がトランプ関税に違憲判決を下し還付手続きを命令した。これが景気全般、企業業績にプラスとの見方となり株価を押し上げた。NYダウは前日比+230ドル高の49,625ドル、ナスダックは+203ドル高の22,886ドル。VIX指数は19.09へ低下。
米長期金利は上昇。10年債は4.089%、2年債は3.480%。
◆今週の3つの注目ポイント
1.米国の経済指標
米国の経済指標はまちまち。FRB内の意見も割れる。景気動向の全体観はどうか。
月曜日 製造業新規受注(12月、前月比、予想+1.0%、前月+2.7%)
火曜日 ケースシラー住宅価格指数(12月、前年同月比、前月+1/4%) リッチモンド連銀製造業指数(2月、前月▲6) 消費者信頼感指数(2月、コンファレンスボード、予想88.0、前月84.5)
木曜日 週次の失業保険申請件数
金曜日 生産者物価指数(1月、前年同月比、前月+3.0%、コア、前月+3.3%) シカゴ購買部協会景気指数(2月、予想52.5、前月54.0)
2.トランプ大統領一般教書演説
火曜日にトランプ大統領が一般教書演説を行い、今年の政策方針を示す。今年の秋に中間選挙を迎えるなか、支持率が低迷しているが、あらためて景気刺激策などを示すことになるか。
トランプ関税に対して最高裁が違憲判決を下したが、何等かの影響はあるか。市場の反応として、リスク選好が強まるか、逆に抑制されるのか、が焦点。イランとの協議決裂で米国がイランを攻撃するリスクが高まっているとの見方があるが、何らかの示唆があるか。
3.欧州の経済指標
ユーロドル相場の上値が重くなっている。景気底入れ感がいわれるなか、一方でなお不透明感もあり、次の一手が利上げといわれるなかでもその時期は見えない。
ユーロ円相場の行方が円の強弱に与える影響もあり、欧州の指標はどうか。月曜日にドイツIFO景況感指数(2月、予想88.3、前月87.6)、水曜日にユーロ圏CPI(1月改定値、速報、コア、前年同月比、+2.2%)、木曜日にユーロ圏経済信頼感(2月、予想99.8、前月99.4)、金曜日にドイツCPI(2月、前年同月比、予想+2.0%、前月+2.1%)、が発表される。
ほか、FRB当局者の発言が多い。利下げに向けたニュアンスはどうか。
◆今週のMRA's Eye
円相場を左右する要因は高市政策から日銀のスタンスへ
先週は日本株の上昇とともに円高が一服した。週初に高市首相は植田日銀総裁と会談。植田総裁からは、とくに金融政策の話はなかった、との発言があった。
しかし、市場は引き続き疑心暗鬼のままだ。
利上げのペースを緩やかにするよう要請があったのではないか、との推測は根強い。高市首相は国会での首班指名を経たあとの記者会見で、政策方針をあらためて説明。政策の大転換として責任ある積極財政をあらためて掲げた。政府と日銀が一体となって日本経済を支えていくとして日銀の政策への関与ないし要請を匂わせた。
さらに質疑において日銀植田総裁との会談の内容についてはノーコメントとして、金融政策を緩和気味に維持する要請をしたともとれるニュアンスを残した。こうしたことを受けて市場では財政悪化で円安とのストーリーが再燃。円は反落した。
ただこうしたストーリーが復活したようにはみえない。日本国債10年債利回りは2.1%台で推移し安定している。財政悪化懸念が強まったのであれば、長期金利上昇と円安が同時進行した、昨年秋以降、今年の年初まで続いた状況に戻るはずだ。
先週も長期金利が安定していたことからみれば、財政悪化懸念が強まったとは言い難い。財政悪化によるトリプル安リスクとは真逆に、総選挙での自民党大勝のあとは、株高、円高、債券高、のトリプル高だった。いわば日本買いが鮮明となった。
先週はそれが一服したにとどまると解釈したほうが良さそうだ。長期金利が安定するなか、株価上昇は一服し、円高も一服。円安に動いたことは、先週の円高のペースが速すぎたこと、日銀の利上げ積極姿勢の織り込みにやや調整が入ったことが要因だろう。
ドル円相場については、米国サイドの要因、FOMC議事要旨でFRBが利上げの可能性も排除していないことが明らかになったこともドル高円安に押し戻す要因となった。ユーロ円相場はやや持ち直したものの反発力は弱い。
短期的には、今週の円相場がさらに円安方向に振れるかが重要だ。円安に振れれば、過度な円安は修正されたものの、円は依然として弱いことを示唆する。ドル円相場は150円~155円のレンジに移行したというより、155円中心の保ち合いにややレンジを切り下げた程度との見方となる。
一方、153円台に下落すれば、ドル安円高基調がなお続いており、先週のドル高円安は一時的な調整との見方となろう。ユーロ円相場についてはドル円相場より上値が重い。再び181円割れとなれば、大きな流れとしてユーロ安円高、ひいては全般的な円安の修正が今後も続く絵が描かれる。
財政悪化懸念が円安の原動力ではなくなったとすれば、次の焦点は日銀の金融政策に戻る。高市政権の政策が信認を得るとすれば、インフレ率が高止まりすると考えるのが普通だろう。
そうしたなかで日銀が利上げを踏みとどまれば、インフレが加速しかねないとの見方となる。円安の原動力とみられる実質金利のマイナスが改善せず、むしろ悪化する可能性もイメージされるだろう。
積極利上げ姿勢が維持されるのかどうか、実際の利上げが近々実施されるのかどうか、が円相場の鍵を握る。
市場では春闘の結果を受けて4月会合で利上げとの見方が過半のようだ。3月の会合でその前振りがあるのか。3月会合で利上げに慎重な姿勢がみえ、また4月会合での利上げがないと受け止められれば、再び円安に振れる可能性もある。
3月、4月、の会合で日銀の政策スタンスが問われよう。高市政権の圧力に屈したとの憶測を招くか否かが今後の最大のポイントだ。
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