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グローバル市場の変調と総選挙・日本株・円相場
  • MRA外国為替レポート

2026年2月9日号

◆先週の市場総括


先週は株式市場が乱高下。貴金属市場の不安定な値動き、ビットコインの急落、など投資家心理が悪化する局面が散見された。

米国株ではAI関連の過剰投資懸念からディフェンシブ株や景気敏感株へのセクターローテーションの動きもみられた。ハイテク株は下げ止まらず。

ただ週末にはAI関連投資継続姿勢に半導体需要の拡大、さらには設備投資全体への期待が広がり米国株は全面高となった。NYダウは初の5万ドルの大台で引け。ナスダックも下げ止まった。

日経平均は月曜日に日中値幅1,500の下落のあと、火曜日には2,000円を超え上昇し史上最高値を更新と値動きの荒い展開。その後は反落したものの、円高一服のなか、総選挙での与党大勝期待を背景に週末には持ち直して54,250円近辺で引け。さらに米国株高のなか与党勝利の先回り買いで日経平均先物は米国市場で56,500円台へ急騰している。

為替市場では前週末の高市首相の円安容認ととれる発言を受けて円高一服。じりじりと円安が進んだ。自民党圧勝観測、内外株高、リスク選好の強まりに週末にかけて円は一段安。ドル円相場は週初に155円台に乗せ、その後は上下しつつ堅調、週末は157円20銭台で引け。ユーロ円相場は週初に184円に乗せ、週末は185円台後半へ上昇した。

月曜日の東京市場では日経平均が乱高下。朝高のあと急反落し午後は大幅安。総選挙に関し、自民党優勢、議席大幅増、との報道で54,250円近辺へ上昇。その後はハイテク中心に急落し安値引け。値幅は1,600円近くに及んだ。引けは前週末比▲667円安の52,655円。

ドル円相場は高市首相の円安容認ともとれる発言の影響で、154円90銭で始まり155円50銭へ上昇した。その後は円安一服。154円80銭に反落し、155円40銭へ反発、154円50銭台へ反落と上値が重かった。

しかし夕刻から欧米市場にかけては円安が進行。155円台を回復したあと米国市場では155円70銭へ。40銭台~70銭台で上下して引けは155円60銭。

ユーロ円相場は183円60銭で寄り付いたあと朝方184円20銭へ上昇。184円を挟んで183円70銭~184円20銭で上下したあと夕刻にかけて183円20銭へ下落した。

欧米市場では円高一服。183円台後半へ反発しもみ合い推移。米国市場ではやや軟調となり引けは183円40銭。

ユーロドル相場は東京市場では1.1850で始まり欧州市場にかけて1.1840~70を中心に小動きもみ合い横ばい。米国市場に入るとドル高ユーロ安に振れて1.1790近辺で引け。

米国株は堅調。NYダウは反発、大幅高。ISM製造業景気指数(1月)が前月47.9から52.6へ改善。50を上回るのは1年ぶり。内訳項目で受注、生産が強かったことが支え。景気の底固さを示したことで景気敏感株、消費関連が買われた。ハイテク関連もしっかり。

NYダウの引けは前週末比+515ドル高の49,407ドル、ナスダックは+130ドル高の23,592ドル。

米長期金利は上昇。10年債は4.283%、2年債は3.573%。

火曜日の東京市場では日経平均が大幅高、史上最高値を更新した。米国株高、ドル安円高を好感。与党勝利との予測で投資家心理が強気に傾いた。半導体が堅調。貴金属市場が落ち着きを取り戻したこともリスク選好を支え。引けは前日比+2,065円高の54,720円。

ドル円相場は155円60銭で始まり30銭~50銭でもみ合い。夕刻、欧州市場に入ると円安が進み156円目前まで上昇した。その後も底固く推移し米国市場で156円10銭をつけたが反落し155円台後半でもみ合い引けは155円70銭台。

ユーロ円相場は183円40銭で始まり夕刻まで183円台後半で上下動。欧州市場から米国市場にかけては堅調。184円ちょうどへ上昇した。その後も底固く引けは184円10銭近辺。

ユーロドル相場は東京市場では1.1790で始まり1.80台に乗せて小動き。その後欧米市場では1.18を挟んで上下したあと、1.1820に上昇して引けた。

米国株は反落。ハイテク中心に売られた。AIによりソフトウェアが代替されるとの見方でソフトウェア関連株が売られた。

エヌビディア、マイクロソフト、セールスフォース、IBMなどの下げが目立った。半導体関連株も弱い。NYダウは前日比▲166ドル安の49,240ドル、ナスダックは▲336ドル安の23,255ドルで引け。

米長期金利は低下。10年債は4.265%、2年債は3.569%。雇用動態調査(12月)の発表は政府機関が短期間ながら閉鎖されていた関係で延期された。

水曜日の東京市場では日経平均が反落。米ハイテク株安、半導体関連株やソフトウェア関連株が軒並み下落したことを嫌気。前日の大幅高のあと総選挙前に利益確定売りが嵩んだ。

一方、中期的な先高観から押し目買いが支え。引けは前日比▲427円安の54,293円。

ドル円相場は155円70銭台で始まり午後には156円20銭~40銭で上下。夕刻から欧州市場にかけて一段高となり156円80銭まで上昇した。米国市場ではドル高円安一服したが底固く、156円台半ばで上下したあと引けは156円90銭近辺。

ユーロ円相場は184円10銭で始まり欧州市場にかけて一貫して上昇を続けた。欧州市場では185円20銭へ。その後は184円台後半に押されて上下したが引けは185円20銭台と高値引け。

ユーロドル相場は動意薄。東京市場では1.1820~40で小動きもみ合い横ばい。欧州市場から米国市場にかけては下落して1.1790~1.1810でもみ合い引けは1.1810。

米国株はまちまち。消費関連、医薬品などディフェンシブ銘柄に買い。一方、半導体関連、ソフトウェア関連は引き続き売り優勢。AMD社が期待外れの決算を受けて大幅安。エヌビディアなど半導体関連株に売りが広がった。NYダウは+260ドル高の49,501ドル、ナスダックは▲350ドル安の22,904ドルで引け。

米長期金利もまちまち。10年債は4.279%へ小幅上昇、2年債は3.557%へ小幅低下。

発表されたISM非製造業景気指数(1月)は前月が54.4から53.8に下方修正され当月は変わらず。雇用指数、受注指数ともに50超を維持しつつもやや悪化した。ADP雇用報告(1月)は雇用者数前月比が前月+37千人から+22千人へ増加が鈍化した。

木曜日の東京市場では日経平均が続落。AI、半導体関連が大幅下落。アジア株安、ビットコインの大幅下落などで市場心理が悪化。セクターローテーションでハイテク株から景気敏感株へのシフトがみられた。引けは前日比▲475円安の53,818円。

日本国債10年債利回りは上昇一服。2.23%台に低下して落ち着いた動きとなった。

ドル円相場は底固く推移。156円90銭台で始まり70銭~90銭台で上下動したあと欧州市場にかけて上昇し157円30銭台へ。ただその後米国市場では弱い雇用指標を受けて156円50銭台へ下落。引けにかけて持ち直して157円ちょうど近辺で引けた。

ユーロ円相場は185円20銭台で始まり184円80銭に下落したが反発して夕刻は185円50銭近辺。その後185円台前半で上下したあと米国市場では下落して184円台後半で上下動。引けは185円ちょうど近辺。

ユーロドル相場は引き続き動意薄、小動き。東京市場では1.1810で始まり上値重く横ばいもみ合い。夕刻に1.1780に下落したあと米国市場で1.1820へ上昇したが上値重く、1.18手前でもみ合い横ばい、引けは1.1780近辺。

米国株はハイテク中心に下落。ハイテク株の下げが止まらず。ソフトウェア関連中心に売りが続いた。またAI関連投資の回収懸念も燻ぶった。ビットコインや貴金属市況の下落で投資家心理が悪化した。

NYダウは前日比▲592ドル安の48,908ドル、ナスダックは▲363ドル安の22,540ドル。VIX指数は21.77へ上昇した。米長期金利はリスク回避のなか低下。

10年債は4.188%、2年債は3.458%。

発表されたチャレンジャー社調査の人員削減数(1月)は108,435人と前月35,553人から急増した。また週次の新規失業保険申請件数は前週209千人から231千人へ増加した。

金曜日の東京市場では日経平均が反発。朝方は米株安を受けて▲800円ほど大きく下落して始まった。しかしその後、自律反発狙い、海外勢が先物主導で買い、高市政権の圧勝を織り込んだ先回り買い、などで上昇に転じた。大引けにかけて一段高。引けは+435円高の54,253円。

ドル円相場は157円ちょうど近辺で始まり156円50銭に下落したあと156円台後半で上下動。夕刻から欧州市場にかけて上昇し157円10銭へ。その後米国市場にかけて157円を挟んで156円80銭~157円10銭で上下し引けにかけてやや上昇して157円20銭近辺の高値引け。

米国株が急反発。日経平均先物が2,200円ほどの大幅高で56,500円台へ上昇したことを受けて円安が進んだ。

ユーロ円相場は東京市場では185円ちょうど近辺で始まり184円台後半で上下動。夕刻から欧州市場にかけては185円を挟んで上下し185円30銭に上昇した。その後米国市場では株高を背景に円安が進み185円80銭の高値引けとなった。

ユーロドル相場は東京市場では1.1780で始まり1.18手前の狭いレンジで横ばいもみ合い小動き。米国市場では小幅高。1.1810~30でもみ合い引けは1.1820。

米国株は急反発。NYダウは初の5万ドル台で引けた。テック大手がデータセンター投資の上積み方針を示したことで半導体需要増への期待が再燃した。設備投資全体への広がりも期待され製造業全体に買いが広がった。

エネルギー、素材、資本財の好調が続いた。NYダウは+1,206ドル高の50,115ドル、ナスダックは+490ドル高の23,031ドルで引け。VIX指数は17.76へ低下。

米長期金利は小幅上昇。10年債は4.205%、2年債は3.498%。

ミシガン大学消費者態度指数(2月速報)は前月56.4から予想55.0への悪化に反して57.3へ改善した。この日予定されていた雇用統計(1月)の発表は2月10日に延期された。

◆今週の3つの注目ポイント


1.総選挙の結果

総選挙の結果は9日月曜日の未明に大勢が判明。予想通り自民党、与党の大勝となるか。結果を織り込んで株高、円安が進んできたあと、各市場の動向がどうか。

株価は週末の海外市場で日経平均先物が56,500円へ急騰。円も軟調で取引を終えた。結果が予想通りなら株価は海外市場先物の通りに大幅高となるか。あおりで円は円安にはねて始まるか。円安を試す展開となるか。

この場合は高市首相が何を語るかにも注目が集まろう。一方、結果が予想外なら波乱の展開も。株安、円高に振れる可能性、あるいは株安、円安に振れる可能性もありうる。

2.米国の経済指標

先週の米経済指標はまちまちだった。景気の底固さを示す指標の傍らで雇用関連指標には弱さもみられた。今週は先週発表が延期となった雇用統計の発表が控える。

火曜日 輸入物価(12月) 小売売上高(12月、前月比、予想+0.4%、前月+0.6%)

水曜日 雇用統計(1月、非農業部門雇用者数前月比、予想+70千人、前月+50千人、失業率、予想4.4%で前月と不変、平均時給、前年同月比、予想+3.7%、前月+3.8%)

木曜日 週次の失業保険申請件数 中古住宅販売(1月、季節調整済み年率換算、予想424万戸、前月435万戸)

金曜日 CPI(1月、前年同月比、予想+2.5%、前月+2.7%、コア、予想+2.5%、前月+2.6%)

3.日本の経済指標

月曜日に国際収支(12月)が発表される。貿易収支、サービス収支の動向はあらためてどうか。

高市政権発足後の円安の影響がそろそろ顕在化する時期となる。サービス収支を中心に赤字拡大に効いているか否か。中国の対日制裁の影響を受ける旅行収支の動向はどうか。

また景気ウォッチャー調査(1月)が発表される。巷の景況感は改善しているか。

◆今週のMRA's Eye


グローバル市場の変調と総選挙・日本株・円相場

先週は様々な市場で波乱、値動きの荒い展開がみられた。しかし最終的にはリスク選好が回復。日米の株価、日経平均とNYダウは市場最高値を更新した。

リスク選好が強まるなか円相場は軟調。日経平均先物は週末の米国市場で急騰。56,500円に乗せている。自民党圧勝を先取りするかたちで買われた。円相場も米国市場で安値引けとなった。

日本では目先の総選挙が注目材料ではあるが、グローバルには先週から各市場で揺らぎがみられる。きっかけはFRBの利下げ期待が後退するなか、次期議長にウォーシュ氏が指名されたことだろう。

それまで主として米国の金融緩和継続、ドル金利先安観を背景に様々なリスク資産価格が上昇してきた。米国株はとくに金融緩和の恩恵を受けるグロース株、ハイテク株、AI関連株の上昇が続いてきたが、徐々にその勢いに陰りがみえていた。

そうしたなか年末年初には貴金属価格が加速度的に上昇。ビットコインなど仮想通貨も堅調に推移してきた。しかし先週にかけてこれらは大きく調整している。

期待先行とはいえなお経済活動の実態を伴うAI、半導体関連株の調整はさほどでもない。しかし貴金属やビットコインは大きく調整した。金融相場のほころびが、まず周縁ともいえる市場にみられ始めたと解釈できそうだ。

米国株ではこのところ明らかにセクターローテーションがみられる。ハイテク株などグロース株から景気敏感株やディフェンシブ株などへ資金シフトが生じている。

ハイテク株は成長期待で買われるためPERが高くなりやすく、その逆数(1/PER)である株式益回りは低下する。金利対比でみた割高感は強くなる。

金融緩和局面ではその割高感も気にならないが、金融緩和に陰りがみえれば割高感が意識されやすい。金利低下を追い風とする株価上昇、すなわち金融相場が怪しくなれば、真っ先に逆風を受けるのがこうした株だ。

米国景気の底固さから利下げ遅延観測が強まるなか、グロース株からバリュー株へ、ハイテク株から景気敏感株さらにはディフェンシブ株へ、資金シフト、セクターローテーションの動きが強まるのは道理にかなう。

加速度的に急騰していた、貴金属や高値圏にあったビットコインが急落したことは、そうした流れに沿ったものだ。

とくに次期議長にウォーシュ氏が指名されたことが市場心理に与えた影響は大きかったのではないか。候補者のなかでは、かつて量的緩和に反対して理事を辞職していた経緯もあり、もっともタカ派的なイメージがある。

市場はFRBの緩和頼みが薄々限界と気づいていたところで、最後のひと押しとなった可能性がある。

その傍らで日本株の堅調が続いている。足元のグローバル市場の動きとは異質な感さえある。それを支えているのは高市首相がかかげるリフレ的な政策スタンスだろう。

海外投資家にとって、米国で金融相場が終焉を迎えつつあるなか、マクロ政策面から安心して株を買えるのが日本ということだろう。

日銀は追加利上げ姿勢を積極化させているものの、なお超金融緩和の解除を緩やかに実施している範囲内。また政権が掲げる成長戦略というフレーズも、とりあえずは海外投資家にポジティブとみえる。海外投資家の日本株買いは、セクターローテーションの一種とみてよいのではないか。

円安容認ともとれる高市首相の発言は、物価高で苦しむ日本人にとっては苦々しい受け止めとなるが、海外投資家はそうしたことは意にも介さない。

むしろ企業収益にプラスであれば、あるいは円安が緩やかであり、また円安の要因とされる財政悪化がさほど懸念するほどでなければ、好感する材料となる。問題は、本当に財政悪化がさほど心配しなくても良いのか、円安が加速する可能性はないのか、だ。

選挙結果は不透明。事前には与党大勝、自民党が単独過半数を確保する大勝、との予測もみられる。しかしふたを開けてみなければわからない。また予想通り大勝となったところで、果たして財政悪化が急速に進むのか、その結果、円安が急速に進むのかはさらに不透明だ。

巷間噂になっているとおり与党が消費税減税を実施せず、あるいはむしろ増税となるなら話は全く変わってくる。

一方、野党が勢いを盛り返し、高市政権が力を減ずるようであれば、財政悪化懸念が後退し、また円高になるのか、といえばそうとも限らない。

今は予定された、秩序ある円安ともいえるが、政局混迷が嫌気されて無秩序な円安となるリスクもある。

リスク選好という見地からは、日本株に賭けた海外投資家にとってさらなるダメージとなりかねない。セクターローテーションが機能せず、混乱に陥る可能性がある。リスク回避、株価調整、は、当初は円買い戻し、円高につながる可能性はある。しかし持続するかどうかは不透明だ。

結局のところ、総選挙後に日本の政治が安定するのか、健全な状況を保てるのか、バランスのとれた経済政策が維持されるのか。過度なリフレ政策にブレーキがかかり、財政悪化が加速する懸念が払しょくされるのか。

一方で成長戦略そのものは維持されるのか。選挙結果を受けた当初のリアクションのみならず、その後の政策動向を見極めていくフェーズになる。

目先は円安リスクが高いとみえるが、すでに与党大勝を織り込んだなかでは過度な円安が進むリスクは比較的小さいのではないか。

一方、選挙結果が予想外となった場合の反応のほうが読みにくい。円高もあるが円安もありうる。

日銀が金融正常化を積極的に推し進めれば円安はもう一段修正される可能性が高い。円安の修正度合いは、それも含めて、最終的には日本経済がさらに正常化、回復、成長軌道に乗っていけるかどうか。その判断にはなお時間を要しそうだ。


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