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円安は一服、総選挙リスクは円高サイドを警戒へ
  • MRA外国為替レポート

2026年1月19日号

◆先週の市場総括


先週は前週末に浮上した解散総選挙を材料に上下した。自民党が過半数を確保し高市政権が政策を遂行しやすくなる、との思惑で、週初からいわゆる高市トレードで株高円安。日経平均は連休明けの火曜日・水曜日の2日間で2,400円上昇し初の54,000円台で引けた。

ドル円相場は一時159円台へ上昇。米国では経済指標が概ね良好で株価を支え、長期金利は強含み。ドルは底固く推移した。週末には立憲民主党と公明党が新党を結成すると発表。

にわかに自民党過半数確保が不透明となると高市トレードは後退。日経平均は54,000円割れで引け。

ドル円相場は158円10銭で引け。ユーロ円相場は週初には185円台半ばまで上昇していたが週末は183円台前半。

月曜日の東京市場は休場。アジア時間のドル円相場はやや上値の重い展開。前週末日本時間深夜に解散総選挙報道から海外市場で大きく株高円安に振れたまま始まった。

158円ちょうど~20銭で始まると朝方157円50銭に下落したが午後には158円20銭に反発その後欧州市場では157円70銭~158円ちょうどで上下。米国市場に入ると158円20銭に上昇して引けた。

米国ではパウエル議長が刑事訴追を受けていることが明らかに。トランプ大統領の圧力に屈しないと表明。FRBへの独立性を懸念して米国株は一時下落。NYダウは▲500ドル近く下落した。ただその後は持ち直しプラス圏に。NYダウの引けは前週末比+86ドル高の49,590ドル。ナスダックは+10ドル高の6,977ドル。

トランプ大統領がクレジットカード金利の上限を設定する方針を示したことで金融株が大幅安となった。

ユーロドル相場はアジア時間に1.1630で始まり1.1670へ上昇したあと1.1650~60で推移。欧州市場早々には1.1690台へ上昇し1.17ちょうどへ乗せる動きもみられたがその後はじり安。引けは1.1670近辺。

ユーロ円相場は183円80銭~90銭で始まり184円40銭に上昇。その後欧州市場では184円40銭~60銭で推移した。米国市場ではやや上値重く引けは184円50銭近辺。米長期金利はやや上昇。10年債は4.187%、2年債は3.539%。

火曜日の東京市場では日経平均が海外市場の流れのまま大幅高。解散報道でいわゆる高市トレードが活発化して株高円安が進行。AI・半導体・軍需関連が買われた。金利上昇で金融にも買い。引けは前週末比+1,609円高の53,549円。

ドル円相場は158円10銭~20銭で始まり朝方157円90銭台へ下落したが反発し急上昇。夕刻から欧州市場に入ると159円ちょうど近辺へ。その後は158円80銭~90銭で推移したが米国市場に入ると159円20銭まで上昇。159円ちょうどでは底固くそのまま159円20銭近辺で引けた。

ユーロ円相場も堅調。184円50銭で始まり20銭台に下落したあと反発して午後は185円10銭~30銭でもみ合い、欧州市場に入ると185円30銭~50銭まで上昇した。ただその後は伸び悩み。米国市場では10銭~40銭で上下して引けは185円30銭。

ユーロドル相場は東京市場では1.1670で始まりもみ合い小動き横ばい。欧米市場に入ると軟調。米国市場では1.1630台へ下落し引けは1.1640台。片山財務相は円安をけん制する発言。ベッセント財務長官が過度な変動は好ましくないと述べたことが伝わった。

米国株は下落。NYダウは4営業日ぶりに反落。イラン情勢の悪化で地政学的リスクが嫌気された。FRBの独立性を巡る不透明感も重石。ナスダックも3営業日ぶりに反落した。NYダウは▲398ドル安の49,191ドル、ナスダックは▲24ドル安の23,709ドル。

米長期金利はやや低下。10年債は4.18%、2年債は3.53%。

発表された米国のCPI(12月)は前年同月比+2.7%で前月と変わらず予想と一致。コア指数は+2.6%で前月と変わらず予想+2.7%よりやや低かった。

新築住宅販売(10月)は季節調整済み年率換算で738千戸と予想710千戸より強く前月711千戸から増加した。

世界銀行は経済見通しを発表。世界全体の成長率を今年2.6%とし前回予想2.4%から上方修正。来年も2.7%とし2.6%からやや上方修正した。

日本は今年、来年ともに0.8%の予想。米国は今年2.2%と前回1.6%から大幅に上方修正、ただ来年は1.9%に低下と予測した。

水曜日の東京市場では日経平均が連日の大幅高。高市トレードが続いた。初の54,000円台で引け。史上最高値を更新した。高値警戒感があるなかでも追随買いをせざるを得ない状況。高市政権が政策推進しやすくなるとの思惑が背景。引けは+792円高の54,341円。

ドル円相場は159円10銭~20銭で始まり40銭台へ上昇。ただその後は上値を抑えられた。夕刻から欧州市場にかけて158円20銭近辺まで下落。米国市場では10銭近辺まで下げた。その後は持ち直して引けは158円40銭。

ユーロ円相場は185円30銭で始まり60銭へ上昇したがその後上値は重く20銭台~60銭で上下。夕刻から欧州市場、さらに米国市場にかけて184円30銭まで下落。その後は184円30銭~40銭で上下し60銭に反発したあと引けは184円50銭。

ユーロドル相場は東京市場では1.1640~50の狭いレンジで夕刻にかけて小動きもみ合い横ばい。欧州市場では1.1650~60でもみ合い、米国市場ではやや軟化して1.1640で引けた。

米国株は続落。半導体関連、銀行株が下落。中国がエヌビディア製半導体の輸入を許可せず。クレジット金利上限規制は金融株の重石。NYダウは前日比▲42ドル安の49,149ドル、ナスダックは▲238ドル安の23,471ドル。

米長期金利は低下。10年債は4.139%、2年債は3.515%。

発表された米国のPPI(11月)は前年同月比+3.0%と前月+2.6%から上昇加速し予想+2.7%を上回った。コア指数も+3.0%と予想より強め。小売売上高(11月)は前月比+0.6%と堅調。

公表された米地区連銀経済報告(ベージュブック)では、前回以降米経済は緩やかに成長、としてわずかに上方修正。消費は二極分化と記された。

木曜日の東京市場では日経平均が反落。イラン情勢悪化で地政学リスクが意識され、米国株安も重石となった。ハイテク、半導体関連の一角が売られ一時▲600円超下落。このところの急上昇の反動で利益確定売りが出やすかった。

一方、解散総選挙で先高観は根強く景気敏感株は底固かった。台湾TSMC社の決算で半導体関連株が持ち直し下げ幅を縮めた。引けは▲230円安の54,110円。

ドル円相場は158円40銭で始まり20銭~60銭で上下したあと午後は40銭~70銭。欧州市場から米国市場朝方にかけて158円90銭目前まで上昇した。米国の経済指標が堅調。その後は反落し引けは158円60銭近辺。

ユーロ円相場は184円50銭で始まり20銭~60銭で夕刻から欧州市場にかけて上下動。米国市場ではユーロ安ドル高に押されて183円90銭へ下落。引けは184円10銭台。

ユーロドル相場は東京市場では1.1640台で始まり小動きもみ合い横ばい、夕刻は1.1630~40。米国市場では1.1590台へ下落したが反発して引けは1.1610。米国株は上昇。金融株が個別決算を受けて上昇。TSMC決算を好感して半導体関連が買われた。

経済指標が雇用の底固さを示し、景況感指数も良好で景気楽観を支えた。NYダウは+292ドル高の49,442ドル。ナスダックは+58ドル高の23,530ドル。米長期金利は上昇。

10年債は4.171%、2年債は3.568%。

発表された米国の週次の失業保険申請件数は新規申請が198千件と予想215千件を下回り前週207千件から減少。継続需給も前週の1,903千件から1,884千件へ減少した。

フィラデルフィア連銀製造業景気指数(1月)は12.60と前月▲8.8から改善しプラスに。NY連銀製造業景気指数(1月)も前月▲3.90から7.70へ改善した。

金曜日の東京市場では日経平均が続落。立憲民主党と公明党が新党結成を発表。自民党過半数獲得への期待が後退し利益確定売りが優勢。TSMC決算を受けた流れで半導体関連はしっかりだった。引けは▲174円安の53,936円。

ドル円相場は上値の重い展開。158円60銭近辺で始まると昼前には158円ちょうど近辺へ下落。午後にかけて40銭に上昇したものの反落して欧州市場では158円10銭~20銭でもみ合い。米国市場に入ると157円80銭台へ下落し158円を挟んで上下。引けは158円10銭近辺。

ユーロ円相場は一貫して軟調。184円10銭台で始まり昼前に183円30銭台。その後90銭に反発したが欧州市場では1831円50銭~80銭。米国市場では続落して183円20銭まで下げ引けは183円30銭~40銭。

ユーロドル相場は動意薄。1.1610近辺で終始小動きもみ合い横ばい。欧州市場では1.1620近辺で推移。米国市場では1.1580台へ下落して引けは1.16ちょうど近辺。

米国株は小幅安。FRB議長人事を巡る不透明感、長期金利上昇、が株価の重石となった。一方半導体関連株は底固かった。NYダウは▲83ドル安の49,359ドル、ナスダックは▲14ドル安の23,515ドル。

トランプ大統領は、次期FRB議長の最有力候補とされている国家経済会議(NEC)委員長のハセット氏について、今後も仕事を続けてほしい、と発言。次期議長人事が不透明となった。10年債利回りは4.229%へ、2年債利回りは3.595%へ上昇した。

◆今週の3つの注目ポイント


月曜日の米国市場はキング牧師記念日で休場。

1.高市首相会見(解散総選挙について)

19日月曜日に高市首相が記者会見を開催。解散総選挙に至った経緯などを国民に説明する。

先週は解散報道を受けて週初から株高円安が進んだ。高市首相の高支持率を背景に自民党が過半数を確保し、政権の政策運営が円滑になるとの見方が背景。

積極財政、リフレ政策が進みやすくなるとの見方。ただ週末には立憲民主党と公明党が対抗勢力として新党を結成。にわかに過半数確保が不透明になった。

会見で何を語るのか。市場の期待感が高まるのか。逆に新味なく材料出尽くし、大義なく不透明感が強まるか。株高円安が再開するか、一服ないし反転するか。

2.日銀金融政策決定会合、植田総裁会見

木曜日・金曜日の2日間、日銀は金融政策決定会合を開催。終了後、午後15時半から植田総裁が定例会見を行う。今会合では政策金利の変更は予想されていない。

解散総選挙で高市政権の基盤が強化された場合、日銀の利上げが行いにくくなるのではないか、との思わくが台頭している。

また足元で中国からの経済的圧力が強まっている。こうした状況変化で日銀の継続利上げに前向きなスタンスが揺らいでいないか。幾分かでも積極利上げ方針に陰りがみえれば円売りの材料とされやすく留意を要する。

3.米国の経済指標

米国景気に楽観が強まっている。さらに後押しされるか。

木曜日 個人所得・消費支出(11月、前月比、前月+0.4%・+0.8%) PCEデフレーター(同、前年同月比、前月+2.7%、コア、前月+2.8%)

金曜日 PMI景況感指数(1月速報、製造業、予想52.0、前月51.8、サービス業、予想52.8、前月52.5) ミシガン大学消費者態度指数(1月確報、速報54.0)

19日月曜日から23日金曜日まで、ダボス会議(世界経済フォーラム)が開催される。テクノロジーに関する議論が特徴的となりそうだが、株価に後押しとなるか。また要人が多く参加され様々な発言に留意。

米国では火曜日に最高裁がトランプ関税について判断を下す可能性がある。また不透明となっているFRB次期議長候補についてトランプ大統領が明確にする可能性がある。日本では木曜日に通関統計(12月)、金曜日にCPI(12月)が発表される。景気物価動向の見方に変化を生じる数字となるか。中国では月曜日に主要経済指標が発表される。

◆今週のMRA's Eye


円安は一服、総選挙リスクは円高サイドを警戒へ

先週はドル円相場が一時159円台、ユーロ円相場が185円台半ばへ上昇した。ただ週末には反落。いわゆる高市トレードによる株高円安が一服した。立憲民主党と公明党が新党結成との動きを受けて、自民党過半数確保が不透明となったことがきっかけとなった。

そもそも、今回のいわゆる高市トレードによる株高円安にはロジックとしてやや無理な点も多い。いくつもの仮定、推測に支えられた部分が多い。解散総選挙で自民党が単独過半数を確保することが大前提。そのうえで高市政権が政策を推進しやすくなるとの見方。

さらに高市政権はなお積極財政、リフレ的な政策を推進するとの見方。財政支出拡大で景気浮揚、財政悪化懸念で長期金利上昇、それにともなって円安が進行、というシナリオ。

このうち、自民党が単独過半数を獲得する見通しはかなり怪しくなった。それだけであれば現状と変わらず維新の会との連立政権のまま。ただ維新の会そのものが揺らいでおり、また自民党との間で不協和音も生じている。

秋波を送る国民民主党は今回の解散総選挙に反発しており与党への合流は今のところ見込み薄。ここまでなら現状と変わらないが、仮に自民党が議席を減らした場合、高市首相にとっては痛手になりかねない。

自民党内で今回の解散総選挙にネガティブな反応も目立つなか、党内の支持が低下する可能性がある。市場が織り込む高市政策推進がスムーズになるとの憶測は脆くも崩れることになる。

また高市政権が政策推進をしやすくなり株価にポジティブとの見方も先の長い話となる。

来年度予算はすでに策定され、通常国会で審議が始まる目前だった。政策推進がしやすくなるといっても、目先は、来年度予算が国会で承認されるところまで。何らかの追加的な予算措置をともなった動きにはならない。細かい経済政策については総裁選の有無にかかわらず再来年度、つまり2027年度以降の話となる。

予算措置以外では外交政策が筆頭だが、これは解散総選挙の有無にかかわらず、すでに高市首相が自由に進められる状況にある。

日中関係は悪化したままと想定され、日米関係が緊密になるかどうかはトランプ政権のスタンス次第で不透明。高市政権の基盤が盤石となったところで、日本の負担がさらに増加していく流れは変わりそうもない。

こうしたなかで進む円安は、財政悪化・長期金利上昇を嫌気した動きではない。そもそも高市政権になって日本株が急騰し、とくに海外勢の日本株買いが積極化していることからすれば、日本売りが生じているとは言い難い。

長期金利の上昇は今のところ金利正常化の範囲内。財政悪化を懸念して円売りが活発化したとは言い難い。アベノミクス的な政策の強化を想起するのは誤りだ。

金融政策の正常化は進んでおり、すでにイールドカーブコントロールなる実質的な日銀による国債引き受けは撤廃された。長期金利の上昇の痛手を避けて財政拡大を続けることは不可能となっている。

さらに円安牽制姿勢は明確で、その延長線上で利上げについても容認姿勢に転じたようだ。総選挙で自民党が過半数となったところで、それを180度転換して日銀に緩和継続圧力を強めるという見方はロジックとして成り立たない。

そうしたなか、足元で進んだ円安は、思惑的な投機的円売りもあろうが、むしろ株高で円売りが誘発された、とみたほうが良さそうだ。

株価急騰で保有日本株の時価総額が増加し、それにともなって為替ヘッジの円売りを積み増す動きが生じたことが大きいと推察される。

投機的な思惑による円売りは持続が難しい。とくに自民党過半数が怪しくなったなか、さらには高市首相にとってリスクが増した可能性があるなか、投機的な円売りを積み上げることは困難だろう。

また株価もここまで急騰してきたが、解散総選挙への期待で高市トレードによるさらなる上積みは難しそうだ。今後は実際の総選挙で自民が過半数を得られるかどうかの見極めに。リスクとしては自民が議席を減らした場合で、高市トレードには大きな反動が生じる可能性がある。

その他の外部条件を除いて考えれば、ひとまず円売り、円安は一服。総選挙のリスクバイアスはむしろ円買戻し、円高サイドにやや傾いたとみる必要もありそうだ。


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