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休暇シーズンとドル金利先安観~円安抑止に援軍も中期的懸念残る
  • MRA外国為替レポート

2025年12月1日号

◆先週の市場総括


先週は月曜日の東京市場が祝日で休場。米国市場が木曜日に感謝祭で休場、金曜日は半日取引で次第に市場参加者が減少し動意薄となった。

日本では大規模な経済対策を含む補正予算が提示され金曜日に閣議決定された。18兆円超の規模で財源として11兆円の国債増発を見込む。市場は引き続き財政悪化、長期金利上昇、円安を警戒。

ただ米国ではFRB有力者の利下げに前向きな発言、弱い経済指標を受けて、12月利下げ織り込みが急速に高まってドルを下押し。ドル円相場はドル要因で一時155円台に下落するなど上値重く、おおむね156円台の推移でドル高円安は一服となった。

一方、ユーロ円相場は底固く181円台に上昇。ドル円相場は休場による市場参加者減少による円売り一服もあるが、ドル安に助けられたかたち。週末には12月会合でのFRB利下げ織り込みは9割近くまで上昇した。

米国株は利下げ期待を材料に堅調。週を通じてNYダウ、ナスダックともに上昇を続けた。日経平均も週末にかけて5万円の大台を回復。3月期決算企業の中間配当を翌週に控えていることも支え。

月曜日の東京市場は休場。アジア市場のドル円相場は156円40銭で始まり80銭に上昇すると、その後欧州市場にかけて終始156円台後半で上下動横ばい。米国市場では157円20銭手前まで上昇したが156円70銭台に反落。70銭台~90銭台でもみ合い引けは156円90銭。

前週末のNY連銀総裁に続いて、この日はウォラー理事が、労働市場の減速を懸念、インフレは落ち着いている、として早期利下げに前向きな姿勢を示した。市場の12月利下げ織り込み確率はさらに上昇して8割に達した。

ユーロドル相場は1.1520で始まり1.15ちょうどに下落したあとは緩やかに上昇して米国市場朝方は1.1550。その後1.1510に反落して引けは1.1520。

ユーロ円相場は180円ちょうどで始まり堅調。米国市場朝方には181円20銭近辺へ上昇した。ただその後はドル円相場の下落に押されて反落し180円70銭~80伝近辺でもみ合い引け。

米国株は堅調。ハイテク株が大幅高。ウォラー理事の発言で早期利下げ期待が強まり、また長期金利低下も支え。米10年債利回りは4.03%へ、2年債は3.501%へ低下した。NYダウは前週末比+202ドル高の46,448ドル、ナスダックは+598ドル高の22,872ドル。VIX指数は20.52へ低下。

火曜日の東京市場では日経平均が小幅高。前日の米国株が利下げ期待を支えにハイテク関連を中心に堅調だったことで朝方から上昇。一時前週末比+500円超値上がりした。ただ午後に入ると急反落。ソフトバンクが大幅安。一時10%以上下落するなど1銘柄で指数を340円ほど押し下げた。

グーグルのAI、gemini3が高評価を受け、ライバルのオープンAIの脅威となるとの見方から、オープンAIに出資しているソフトバンクグループ株が下落した。

ドル円相場は156円90銭で始まり午前中に輸出企業の円買いに押されて60銭近辺に下落その後は80銭に反発したが上値重く夕刻から欧州市場にかけて156円10銭近辺まで下落した。欧州市場では50銭に反発したが米国市場では155円90銭まで下落。

発表された米国の経済指標が全般に弱く、米長期金利が低下してドルを下押した。ただ下落はそこまで。156円30銭に反発して引けは156円ちょうど近辺。

ユーロドル相場は1.1520で始まりもみ合い横ばい。米国市場に入ると1.1580台へユーロ高ドル安が進んだ。ただその後は1.15台後半で上下し引けは1.1570。

ドルインデックスは前日の100.18から99.79へ下落した。

ユーロ円相場は180円70銭で始まり上値重く60銭近辺で推移。欧州市場では180円10銭へ下落した。米国市場にかけては緩やかに持ち直して180円40銭~70銭でもみ合い引けは180円50銭。米国株は続伸。

経済指標が軒並み弱く12月利下げ観測を支えた。長期金利がさらに低下し10年債利回りが一時4%割れ。次期FRB議長にハセットNEC(国家経済会議)委員長が有力との報道で政権からの利下げ圧力が強まるとの思惑を呼んだ。

10年債は4.007%、2年債は3.464%。

NYダウは前日比+664ドル高の47,112ドル、ナスダックは+153ドル高の23,025ドル。VIX指数はさらに低下して20ポイント割れ、18.56。

発表された米国の生産者物価指数(9月、コア指数)は前月比+0.2%と落ち着いた数字となり前月の+0.6%から低下。消費者信頼感指数(11月)は前月94.6から88.7へ大幅に低下して7か月ぶりの低水準。

水曜日の東京市場では日経平均が大幅高。米利下げ観測を背景とした米株高の流れを受けて堅調。AI関連、半導体関連の上昇は一服したが内需関連に物色が広がった。

建設株が軒並み年初来高値を更新。証券会社の目標株価の引き上げが続き、当該銘柄の上昇が目立った。引けは前日比+899円高の49,559円。

ドル円相場は156円ちょうど近辺で始まり30銭台に上昇したあと155円60銭台に下落。

一部通信社が、日銀は12月利上げの可能性に市場を対応させるためコミュニケーション方法を調整している、と報じ、利上げ期待が高まったことが要因。ただその後は反発し夕刻は156円ちょうど~20銭、

欧州市場では30銭~50銭で上下し米国市場で一時70銭台へ上昇。その後は押し戻されて引けは156円40銭。ユーロ円相場は180円50銭で始まり90銭台に上昇したあと日銀の12月利上げ観測の高まりで30銭台に反落。

ただその後は株高・リスク選好の強まりにつれて上昇し、夕刻から欧州市場にかけて180円90銭台~181円20銭で上下動。米国市場では一段高となり181円20銭~40銭で上下し引けは181円40銭。

ユーロドル相場は終始小動き。東京市場では1.1570で始まり欧米市場にかけて一貫して1.15台後半でもみ合い引けは1.1590台。

総じてドルは軟調。この日も弱い米経済指標がドルの重石となった。

週次の失業保険申請件数は新規申請が216千件と前週222千件からやや減少。ただ継続受給件数が1,960千件と前月1,953千件からやや増加して引き続き高水準。シカゴ購買部協会景気指数(11月)は前月43.8から36.3へ大幅に悪化。2024年5月以来の低水準となった。

公表された米地区連銀経済報告(ベージュブック)では、前回報告から経済動向はほぼ変わらず、とされたが、雇用はやや減少、半分の地区が労働需要の弱さを指摘した。

米10年債利回りは3.998%へ低下し4%割れ。2年債はほぼ変わらずの3.477%。

米国株は続伸。追加利下げ観測が引き続き支え。NYダウは一時+400ドル超上昇。ただ市場参加者がすでに感謝祭前で減少し動意薄となった。引けは+314ドル高の47,427ドル。ナスダックは+189ドル高の23,214ドル。VIX指数はさらに低下して17.19。

木曜日の東京市場では日経平均が大幅続伸。前日の米主要株価指数が続伸した流れで海外勢からの買いが優勢。このところ調整していた値がさ半導体関連株に見直し買いが入った。一時+700円超上昇。

ただ午後には上昇一服。指数が5万円の大台を回復すると、利益確定売り、戻り売りが上値を抑えた。引けは前日比+608円高の50,167円。

ドル円相場は156円40銭で始まり朝方輸出企業の円買いに155円70銭近辺へ下落したがすぐに156円20銭に反発した。

その後は上値重く、再び一時155円80銭に下落したあとは、米国市場が感謝祭で休場となることから動意薄。156円20銭~40銭で小動き横ばいもみ合い156円30銭で取引を終えた。

この日は日銀の野口審議委員の講演が注目された。ハト派であることから利上げをけん制するとみられたが、利上げに対してさほどネガティブなトーンではなかった。

ユーロ円相場も同様の値動き。181円40銭で始まり180円70銭に下落したあと181円30銭へすぐに反発。その後は上値重く181円をはさんで上下し欧米市場では181円20銭~30銭で小動きもみ合い引けは181円30銭。

ユーロドル相場は終始動意薄。1.1590台で始まると1.16ちょうどを挟んでもみ合い横ばい小動き。欧米市場では1.1590~1.16ちょうどで推移して1.1590台で取引を終えた。米国市場は感謝祭で休場。

金曜日の東京市場では日経平均が小幅続伸。AI関連銘柄への高値警戒感は根強く利益確定売りに押された。

一方、3月期決算企業の中間配当支払いを来週に控え、資金面から受給を支えるとの見方が支えとなった。総支払額は8兆円超と見込まれる。引けは前日比+86円高の50,253円。

為替市場は感謝祭明け、ブラックフライデーで米国市場が半日取引となることで動意薄。ドル円相場は156円20銭~40銭の狭いレンジでもみ合い横ばい。欧州市場では156円ちょうど近辺に下落したがそこまで。156円ちょうど~40銭で上下し引けは20銭近辺。

ユーロドル相場は1.1590台で始まり1.1580近辺でもみ合い横ばい。欧州市場に入り1.1550台に下落したが米国市場では1.16ちょうど近辺へ反発しそのまま引けた。

ユーロ円相場は181円20銭~30銭で始まり午前中に180円90銭に下落。その後も上値重く欧州市場では180円50銭~70銭で推移した。ただ米国市場に入ると持ち直し、引けは181円10銭台。

米国市場は半日取引。目新しい材料はなく、米国株は引き続き利下げ期待が支えとなり堅調。NYダウは祝日前の水曜日に比べ+289ドル高の47,716ドル、ナスダックは+151ドル高の23,365ドルで引け。VIX指数は16.35まで低下。

この日も12月利下げ織り込みはさらに強まり9割弱まで高まった。米長期金利は小幅上昇。10年債は4.024%。2年債は3.498%。

◆今週の3つの注目ポイント


1. 植田総裁講演・記者会見

FRBは来週のFOMCを前に当局者の発言がブラックアウト(発言禁止期間)に入る。月曜日にパウエル議長の発言機会があるが、あいさつに終わり、金融政策に関する発言はないとみられる。

一方、その前に、月曜日には日銀植田総裁が講演および記者会見の予定。日銀会合は18日・19日でまだ間があり、金融政策に関する発言はあるとみられる。

このところ委員の発言はいずれも利上げに前向き。ハト派のなかのハト派とみられる野口委員でさえ利上げを否定しなかった。市場の12月利上げ織り込みは高まっているが、それを後押しするかたちになるか。

2. 米国の経済指標

12月FOMCを来週9日・10日に控え最後の週となる。雇用統計の発表は見送りとなるがその他の重要指標の発表が相次ぐ。雇用悪化・景気減速やインフレ抑制が示され12月利下げのダメ押しとなるか。

月曜日 ISM製造業景気指数(11月、予想49.3、前月48.7)

火曜日 雇用動態調査(JOLTS求人数、9月、前月7,227千人)

水曜日 ADP雇用報告(11月、雇用者数前月比増減、予想+20千人、前月+42千人) 輸入物価指数(9月、前月比、予想0.0%、前月+0.3%) 鉱工業生産(9月、前月比、予想▲0.1%、前月+0.3%) 設備稼働率(同、予想77.3%、前月77.4%) ISM非製造業景気指数(11月、予想51.9、前月52.4)

木曜日 チャレンジャー人員削減数(11月) 週次の失業保険申請件数

金曜日 ミシガン大学消費者信頼感指数(12月速報、予想52.0、前月51.0) 個人所得・消費支出(9月、前月比、予想、+0.3%・+0.3%、前月+0.4%・+0.6%) 消費支出価格指数(PCEデフレーター、前年同月比、総合指数、予想+2.8%、前月+2.7%、コア、予想+2.9%で前月と変わらず)

3.  欧州の経済指標欧州では景気底入れ持ち直し期待が高まっていたがやや停滞感も出てきた。

ECBの利下げは打ち止めも次の一手がどちらに傾くか。

月曜日 PMI製造業景気指数(11月改定値、ユーロ圏、速報49.7、ドイツ、48.4)

火曜日 ユーロ圏CPI(11月速報、前年同月比、予想+2.1%で前月と変わらず、コア指数、前月+2.4%)

水曜日 PMIサービス業景気指数(11月改定値、ユーロ圏、速報53.1、ドイツ、同52.7)

木曜日 ユーロ圏小売売上高(10月、前月比、前月▲0.1%、前年同月比、前月▲1.0%)

◆今週のMRA's Eye


休暇シーズンとドル金利先安観~円安抑止に援軍も中期的懸念残る

足元でドル高円安が一服している。先週はおおむね156円台で推移し一時155円台に下落する場面もみられた。その背景には3つの援軍がある。

ひとつは休暇シーズン入り。先週は木曜日が感謝祭で米国市場は休場。金曜日は午前中のみの半日取引。とはいえ金曜日も参加者は少なく、実質的にはロングウィークエンドとなった。

こうした局面では、ポジションの手仕舞いが出て、それまでの流れと逆方向に動きやすい。

休暇中に不測の事態が生じる可能性もあるため、休暇前にある程度ポジションを落としておこうという心理が働く。またあえて休暇前に新たなポジションを構築することも、よほどの確信、材料がなければ難しい。

広義の投機筋は高市政権のリフレ政策を材料に円を売ってきたとみられる。手仕舞いは円買い戻し。あるいは円売り一服となる。先週はこうした短期的な条件が円安に歯止めをかけた。

もうひとつ、大きな援軍はFRBの12月利下げ確率の高まりだ。前週末にNY連銀ウィリアムズ総裁が、金融政策は短期的に一段と調整する余地がある、と述べた。短期的に、という言葉には12月のFOMCでとのニュアンスが含まれているとみられる。

NY連銀総裁は他の地区連銀総裁が入れ替わりでFOMCメンバーとなるなか、常任メンバーとして参加することからその立場は一段上の重要メンバー。

またウォール街とも密接に情報交換し、金融市場の状況も把握している。そうしたことからその発言には他の地区連銀総裁とは異なる重みがある。

その発言を受けて、市場の12月利下げ織り込みは4割から7割に急上昇して始まった。さらに日本が祝日で休場となった月曜日には、ウォラー理事が、労働市場の減速を懸念、インフレは落ち着いている、利下げが妥当、と発言した。これで利下げ確率は8割まで上昇。ドル先安観が強まった。

さらに米国の経済指標もドルを押し下げた。FRB関係者の発言を裏付けるように、先週発表された米国の経済指標は軒並み弱かった。

小売売上高(9月)は前月比で+0.2%増加したものの予想を下回り前月+0.6%から減速した。9月のデータでありやや古いものの、逆にすでに9月時点で弱い数字であることに変わらない。

消費者信頼感指数(11月)は最新のデータとなったが、こちらは前月94.6から88.7へ急速に悪化して7か月ぶりの低水準となった。週次の失業保険申請件数の継続受給者数は1,960千人と高止まり。シカゴ購買部協会景気指数(11月)は前月43.8から36.3へ悪化して2024年5月以来の低さとなった。

公表された米地区連銀経済報告(ベージュブック)では経済状況は前回報告からほぼ変わらずとされたものの、およそ半分の地区が労働需要の弱さを指摘した。

これらを受けて、先週末には12月FOMCでの利下げ確率は9割弱まで上昇。市場ではほぼ利下げが確実と織り込んだ。これもドルを抑制する要因に。ドルインデックスは週初に100ポイント台で始まったが、週末には99.46ポイントへ下落した。

そうしたなか、日本サイドでも日銀の政策委員が利上げに前向きな姿勢を示し、円安の抑止にひと役買った。

すでに2名の委員が金融政策決定会合で利上げを主張して反対票を投じてきた。それに加え、他のメンバーもこのところの講演で早期利上げに前向きな発言をしている。

ハト派中のハト派とされている野口委員でさえ、利上げは早くても遅くてもいけない、と述べた。12月の利上げを示唆していないものの、利上げそのものは否定しなかった。植田総裁は、最近の円安が利上げを促す一因との認識を示している。

高市政権・政府サイドは円安急進に警戒感を示してきた。片山財務相は幾度となく市場をけん制する発言を繰り返してきた。

ただ実際に円買い介入を実施できるのか、市場は疑念をもってみている。外貨準備の額に限度がある。そのうえで、ここ数年のドル売り円買い介入によって準備高は減少。

さらに今後はトランプ政権との「ディール」によって約束した巨額の対米投資に活用するプランもある。片山財務相は、当然介入も視野に入っている、と強弁したが、以前よりは実施しにくくなっているのは間違いない。

介入を実施する水準についても、過去のケースをみれば新値をつけてから。すなわち、現状では160円を超えてからとなるのが通例と考えられる。160円手前で実施した場合、160円が防衛ラインと意識され、逆に市場の徹底的な攻撃を受けて失敗に終わる可能性が高い。

さらに、為替介入はマクロ政策とくに金融政策を伴わなければ効果がないといわれる。効果をあげるためには日銀の利上げが前提条件だ。トランプ政権のベッセント財務長官は、金融政策を適正に調整すれば円相場もしかるべき水準に落ち着く、と日本に警告している。対米折衝の面からも、日銀の利上げなくして円買い介入なし、という状況だろう。

高市政権にとってベストなシナリオは、FRBがまず来週利下げを実施し、その後、18日・19日の日銀金融政策決定会合で利上げを実施。それによってドル高円安が抑制されるかどうか。

最悪のシナリオは日銀金融政策決定会合前に160円を突破されるケース。円買い介入に動きにくい時間帯であることから手をこまねいてみているだけになりかねない。

幸い、米国サイドの状況がドル安を促してくれている。日本サイドでは日銀の利上げを示唆して時間稼ぎをすれば、最悪のシナリオを回避できる可能性が高まった。

ただ中期的にみれば余談を許さない状況に変わりはない。補正予算によって11兆円の国債増発となる見込み。財政悪化による円の信認低下が解消するわけではない。ドル円相場だけをみれば先週はドル高円安が一服している。

しかしユーロ円相場はユーロ高円安に動いた。必ずしも円高に振れたわけではなく、ドル安が助け舟になりドル高円安が一服したに過ぎない。米国の利下げ、日本の利上げがほぼ織り込まれての今の水準。

実際に金利が動けば相応のドル安円高効果はある。ただその先を示唆する追加的な材料がなければ、140円台に回帰するのはそう簡単ではなさそうだ。


主要指標は、有料版「MRA外国為替レポート」にてご確認いただけます。
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