高市政策の信認低下~衰えぬ円先安観
- MRA外国為替レポート
2025年11月24日号
◆先週の市場総括
先週の為替市場では大きく円安が進んだ。高市政権のリフレ政策により財政悪化懸念や金融緩和の継続観測から円先安観が根強く円売りが嵩んだ。
高市首相と植田日銀総裁が火曜日に会談を行ったが利上げについてはあいまいなまま。為替市場ではさらに円安が進んだ。
自民党内から25兆円の大型経済対策を政府に要求する意見が出され警戒感が強まるなか、片山財務相・城内経済財政政策担当相、植田総裁、の3者会談が行われたが為替相場については議論せずと伝えられ円安が加速した。円債利回り・長期金利は上昇し、債券安・円安が進んだ。
米国ではFRB高官から利下げに慎重な発言が相次ぎ12月の利下げ確率は3割以下に低下していたが、弱い雇用統計やNY連銀総裁の利下げ積極発言を受けて週末には7割程度まで持ち直した。
ドル円相場は週初154円台半ばで始まり157円台後半まで上昇したが週末にはやや反落して156円台半ば。株価は乱高下。AI関連株、半導体関連株には警戒感が根強く調整基調。
日経平均も同株が乱高下して1,000円を超える上下動が頻発。主力半導体関連は大きく調整した一方、内需関連や好決算銘柄が支え。前週末の50,300円台から48,600円台に下落して引けた。
月曜日の東京市場では日経平均が小幅安。前週末にかけての米株安の流れで寄り付き後早々に5万円の大台割れ。下げ幅は一時▲500円超。ただその後は持ち直し下げ幅を縮めた。日中関係対立激化が重石。
インバウンド関連銘柄が値崩れ。AI関連や半導体関連はしっかりだった。引けは前週末比▲52円安の50,323円。
ドル円相場は底固く小動き。154円50銭台で始まり昼前にはやや強含み午後から欧州市場にかけては60銭~80銭でもみ合い横ばい。欧米市場では一時155円30銭に上昇したが反落して155円ちょうど~20銭でもみ合い引けは155円20銭。
ユーロ円相場は179円60銭で始まりやや下落して30銭~50銭でもみ合い。夕刻から欧州市場では40銭~70銭で上下して60銭台で推移。米国市場では一時180円ちょうどの史上最高値をつけた。引けは179円90銭。
ユーロドル相場は終始小動き。東京市場では1.1620近辺で始まりその後は1.16ちょうど~10でもみ合い。米国市場では1.1580にやや押したが1.16手前でのもみ合いに終始し引けは1.1590。
米国株は主要3指数がそろって大幅安。NYダウ、S&P500は3営業日続落。FRBジェファーソン副議長の利下げ慎重発言で追加利下げ観測が後退し投資家心理が悪化した。
エヌビディア社決算、雇用統計を控え持ち高調整売りも。NYダウは前週末比▲557ドル安の46,590ドル、ナスダックは▲192ドル安の22,708ドル。
米長期金利は強含み。10年債は4.413%でほぼ変わらず。2年債は3.612%へ小幅上昇した。
NY連銀製造業活動指数(11月)は前月10.7から予想6.7への悪化予想に反して18.70へ大きく改善した。
火曜日の東京市場では日経平均が大幅下落。米利下げ期待の後退、米株大幅続落のなか、日中関係の緊張が高まったことで投資家心理が悪化。25日移動平均線を割り込んだことで売りが加速し全面安となった。引けは前日比▲1,620円安の48,702円。
ドル円相場は155円台前半で底固く推移した。155円20銭で始まり10銭~30銭でもみ合い。午後に入ると15時からの高市首相・植田日銀総裁会談を警戒して一時154円80銭に下落したがすぐに持ち直して夕刻から欧州市場にかけて155円を挟んで154円80銭台~20銭で上下した。
米国市場にかけては155円40銭に上昇したあと155円台前半で上下し一時70銭に上昇して引けは155円50銭。
植田総裁は会談後、首相と為替相場についてもちろん議論したが具体的内容は差し控える、と述べた。自民党内から経済対策として25兆円にも及ぶ多額の財政支出拡大を求める意見書を政権に提出との動きもあり、財政悪化懸念から円が売られた。
ユーロ円相場は179円90銭で始まり午後に一時60銭に下落したが夕刻から欧州市場にかけて堅調に推移して180円20銭まで上昇した。その後は一時180円を割る場面があったが180円30銭まで上昇し引けは180円ちょうど近辺。
ユーロドル相場は小動き。東京市場では1.1590で始まり横ばいもみ合い小動き。欧米市場を通じて1.1580~1.16ちょうどでもみ合い引けは1.1580。
米国株は主要3指数そろって大幅続落。NYダウは4営業日で▲2,100ドルの下落。エヌビディア社の決算前にハイテク株に持ち高調整売りが嵩んだ。NYダウは▲498ドル安の46,091ドル、ナスダックは▲275ドル安の22,432ドルで引け。荒れ相場を懸念してVIX指数は24.69へ上昇した。
米長期金利は小幅低下。10年債は4.119%、2年債は3.574%。
水曜日の東京市場では日経平均が4営業日続落。エヌビディア社決算前に半導体関連株に持ち高調整売り。日中対立でインバウンドへの悪影響、水産物輸出停止なども懸念、投資家心理の重石となった。
為替市場では夕刻から欧米市場にかけて一段と円安が進んだ。片山財務相、城内経済財政政策担当相、植田日銀総裁、の3者会談が開催されたが、市場の動向を高い緊張感をもって注視するとともに丁寧にコミュニケーションをとっていく、との再確認が表明されたのみ。経済対策の規模や為替について具体的な話はしなかったと伝えられた。
現下の円安進行に対してなんら具体的なメッセージはなく介入警戒感が後退。円安が加速した。財政悪化懸念からこの日も日本国債は売られ長期金利は上昇。株安・円安・債券安のトリプル安となった。
ドル円相場は155円50銭で始まり午後にかけてはやや押して20銭~40銭台で推移。ただその後は一本調子に円安が進み、FRBによる利下げ期待の後退もあり米国市場では157円20銭まで上昇してほぼ高値引け。
ユーロ円相場は180円ちょうどで始まり一時179円80銭に押したものの夕刻は180円ちょうど~30銭で上下。欧米市場では一段高となり181円ちょうど近辺へ上昇。その後はドル高ユーロ安に押されたものの引けにかけて円安が加速し181円30銭台の史上最高値、円の史上最安値で引け。
ユーロドル相場は動意薄のあと米国市場で下落。東京市場では1.1580で始まり小動きもみ合い横ばい。欧米市場では1.1570~1.16ちょうど近辺で上下。その後はドル高に押されて1.1520へ下落し引けは1.1540。ドルインデックスは100.11と大台を回復した。
公表されたFOMC議事要旨(10月28日・29日開催分)では、多くの参加者が利下げ見送りを主張、一方で複数は利下げを支持と記された。利下げ見送りが優勢だったことで、市場の12月会合利下げ織り込みは3割程度へ低下した。
米長期金利は上昇。10年債は4.14%、2年債は3.597%。
米国株は下落一服し持ち直し。決算警戒での持ち高調整はひとまず一服。ハイテク株は堅調。主力株には買い直しも。ただ利下げ期待の後退は重石。
NYダウは+47ドル高の46,138ドル、ナスダックは+131ドル高の22,564ドルで引け。VIX指数は前日の24.69から低下したが23.66となお高止まり。
発表された米国の貿易収支(8月)は貿易赤字の縮小を示した。
木曜日の東京市場では日経平均が急反発、急騰。一時前日比+2,000円超上昇した。米国市場引け後に発表された注目のエヌビディア社の決算が売上利益ともに予想を上回り良好な見通し、ガイダンスを示したことで一気に安心感が広がった。
主力半導体関連株、AI関連株が買われ全体を主導してほぼ全面高。一方、日本国債長期債が売られ長期金利が上昇したことは重石となり上げ幅を縮めた。引けは前日比+1,286円高の49,823円。
ソフトバンクグループ、東京エレクトロン、アドバンテスト、の3社で690円ほど指数を押し上げ。
為替市場では円安継続。木原官房長官が円安に警戒感を示したが効かず。ドル円相場は157円20銭で始まり朝方156円90銭に下落したが反発して午後から夕方にかけて157円80銭目前まで上昇。その後欧州市場が始まると157円10銭近辺まで反落したが持ち直し。米国市場では20銭~80銭で乱高下し引けは157円50銭近辺。
ユーロ円相場は181円30銭台で始まり朝方181円割れに下落。その後夕刻にかけては堅調で181円70銭まで上昇した。欧州市場に入ると181円ちょうど近辺に下落したがそこまで。米国市場では182円に達してもみ合い、181円台後半で上下して引けは60銭近辺。
ユーロドル相場は終始1.15~1.1550の狭いレンジで方向感なく推移。米国市場終盤は1.1520~40でもみ合い引けは1.1530。
米国株は主要3指数がそろって下落。ハイテク株が大幅安。エヌビディア社の決算は良好だったが、半導体納入先の過剰投資に対する懸念は払しょくされず。この日もFRB高官から利下げに慎重な発言があり重石となった。
NYダウの引けは▲386ドル安の45,752ドル、ナスダックは▲486ドル安の22,078ドル。VIX指数は26.42へさらに上昇した。
遅ればせながら発表された9月の雇用統計で失業率が前月4.3%から4.4%に小幅上昇。非農業部門雇用者数前月比は+119 千人と予想を上回ったが前月が+22千人増から▲4千人減へ下方修正された。これを受けて利下げ確率は40%程度に戻した。
米長期金利は低下。10年債は4.094%、2年債は3.545%。
金曜日の東京市場では日経平均が大幅反落。前日の米ハイテク株安を受けてAI関連、半導体関連銘柄が軒並み下落。午後には下げ幅が一時▲1,300円に達した。一方、内需関連、好業績銘柄には買い。相場を下支えた。引けは前日比▲1,198円安の48,675円。
ソフトバンクグループ、東京エレクトロン、アドバンテストの3社で日経平均を▲1,300円ほど押し下げた。為替市場では円買戻しが進んだ。
発表された消費者物価指数(CPI、10月)は市場予想通りだったが、生鮮食品とエネルギーを除くベースで前年同月比+3.1%と前月+3.0%から加速。総合指数も+3.0%。
日銀委員からの利上げ前向き発言もあり、12月会合での利上げ織り込みが高まった。また週を通じて円は売られてきたため週末の手仕舞いも寄与したとみられる。
ドル円相場は157円50銭で始まりじり安。夕刻には157円ちょうど。欧州市場に入ると156円60銭に下落して60銭~90銭で上下。米国市場では12月利下げ確率が高まったとの見方に156円20銭まで下落。その後はもみ合い引けは156円40銭近辺。
発表されたミシガン大学消費者信頼感指数(11月確報)は速報50.3から51.0に上方修正された。ただ期待インフレ率(1年)が速報4.7%から4.5%へ低下。5-10年も速報3.6%から3.4%に低下。
またNY連銀総裁が金融政策は短期的に一段と調整する余地がある、と12月会合での利下げを暗に匂わせた。市場の12月利下げ織り込みは4割から7割程度まで跳ね上がった。
米長期金利はまちまち。10年債はほぼ横ばいの4.062%だったが2年債は3.508%へ低下。ドルを押し下げた。
ユーロ円相場は東京市場では181円60銭で始まり夕刻は40銭近辺。その後欧州市場では180円30銭へ大きく下落して30銭~70銭で上下。さらに米国市場では179円80銭まで下落してその後は180円ちょうど~20銭で上下し引けは180円00台。
ユーロドル相場は小動き。1.1530で始まり欧米市場を通じて1.15台前半で緩やかに上下動。米国市場では一時1.1490に下落したが引けは1.1520近辺。
米国株は反発。利下げ期待が支えとなった。NYダウは前日比+493ドル高の46,245ドル、ナスダックは+195ドル高の22,273ドル。VIX指数はやや低下して23.43。
発表されたPMI景況感指数(11月)は、ユーロ圏製造業が前月50.0に対し50.2、サービス業が53.0に対し53.1とやや改善。米国の製造業は52.5から51.9へやや悪化、サービス業は54.8から55.0へやや改善した。
◆今週の3つの注目ポイント
木曜日は感謝祭で米国市場は休場。金曜日はブラックフライデー、債券・株式市場は短縮取引。実質的には休場に近い状況とみられ、ロングウィークエンドとなる。
1. 米地区連銀経済報告(ベージュブック)
水曜日にベージュブックが公表される。FOMCでの政策判断のための重要な基礎資料としての位置づけだが、今回はとくに、政府機関の閉鎖が続いてきた間の各地区の景気物価動向の実態を知るうえで貴重な資料となる。
また数人の地区連銀総裁から利下げに慎重な発言が相次いでいたが、それを裏付けるような景気の底固さあるいはインフレ懸念を示す内容が確認されるのか。あるいは雇用情勢の悪化が各地から報告され利下げを促すような内容となるのか。
2. 米国の経済指標
政府機関の閉鎖が解除されたことで徐々に指標の発表が続く。政府以外の指標は予定通り。
月曜日 はダラス連銀製造業景気指数(11月、前月▲5.0)
火曜日 PPI(生産者物価指数、10月、前年同月比、前月+2.6%、コア、同+2.8%) 小売売上高(9月、前月比、予想+0.4%、前月+0.6%) リッチモンド連銀製造業指数(11月、前月▲4) ケースシラー住宅価格指数(9月、前年同月比、前月+1.6%)
水曜日 週次の失業保険申請件数 耐久財受注(9月、前月比、予想+0.3%、前月+2.6%) シカゴ購買部協会景気指数(11月、前月43.8) 個人所得・消費支出(9月、前月比、予想+0.4%・+0.4%、前月+0.4%・+0.6%) 消費支出価格指数(同、PCEデフレーター、前年同月比、予想+2.9%、前月+2.9%)
3. 日本の経済指標
日銀の12月会合での利上げ観測が高まるなか、経済指標がそれを支持する内容となるか。
金曜日 失業率(10月、予想2.5%、前月2.6%) 有効求人倍率(同、予想1.20倍、前月1.20倍) 東京都区部CPI(11月、除く生鮮食品、前年同月比、予想+2.7%、前月+2.8%) 鉱工業生産(10月、前月比、予想▲0.6%、前月+2.6%)
◆今週のMRA's Eye
高市政策の信認低下~衰えぬ円先安観
先週は大きく円安が進んだ。高市首相と植田総裁の会談が実施され、為替相場について議論したとみられるが、詳細の内容は伏せられた。
また利上げについては、金融正常化の方向性は首相の理解を得られたようだが、総裁の口ぶりからすると、首相の納得感はしぶしぶというイメージ。円安にブレーキをかけるほどの劇的なシグナルは得られなかった。
さらに、片山財務相、城内経済財政担当相、植田総裁の3者会談も実施されたが、こちらでは為替相場について議論もされなかったと報じられている。
片山財務相は再三円安に対する警戒姿勢を示しいわば口先介入を実施。市場では介入警戒感も漂い始めていたが、なお遠いとの見方で円売りに安心感を与えたかたちとなった。
その傍らで円売りを刺激したのが高市政権による経済対策。自民党内の「責任ある積極財政を推進する議員連盟」が25兆円もの経済対策を提言。高市首相は財務省からの17兆円の対策を不十分として差し戻し。結局21兆円超の経済対策原案が議論されることとなった。
高市首相は、積極財政により日本経済を強くする、と宣言。リフレ政策への傾斜を再確認。市場ではこうした高市政権の政策を不安視。財政悪化を懸念して日本国債が売られ長期金利が急上昇。
本来、長期金利上昇は金利面から円高を促すはずだが、債券安・長期金利急上昇・円急落が併存する状況に陥った。
株価は米国株の動向に乱高下。高市政策を好感した上昇は一服。AIや半導体関連からディフェンシブ銘柄への資金シフト、投資家に守りの姿勢が強まった。
日本株は総じて頭打ち。調整のリスクも孕む。債券安・株安・円安のトリプル安はかろうじて回避されているが、債券安・円安の同時進行、とくに円安の加速は際立っている。
高市政権の姿勢がなおもリフレ政策に傾斜しており、なお積極財政を強調していることから、政策への不安感、円先安観が沈静化する兆しはみえない。
グローバルにディスインフレからインフレの時代に移行する流れのなか、リフレ政策をとれば通貨安や物価高を招くことは経済原則から自明。
米国からもリスクを指摘されている。それでも政策スタンスを維持する姿勢に、市場は対話というよりも対決姿勢を強めている感すらある。
2022年9月にイギリスでトラス政権が誕生。早々に大規模な財政拡大策を打ち出した。これにより長期金利が急騰、ポンドは対ドルで史上最安値へ急落、株価も大幅安に。トリプル安が急速に進んだ。経済政策への不信任を市場が突き付けたかたち。
これをうけてトラス政権は政策修正を余儀なくされ結局は退陣。44日の短命に終わった。
市場はその後正常化。かつて90年代にヘッジファンドのジョージ・ソロスが欧州通貨メカニズム内にとどまることに無理があるとみられたポンドを売り仕掛けし、防戦に回った英国中銀が最終的に敗れ離脱を余儀なくされた。国家対市場で市場が勝利した典型的なケースだったが、またしても市場が勝利するに至った。
現時点では高市政権の政策は市場の信認を失っている。
イギリスのケースに比べて救われているのは、日本国債の保有は国内勢が圧倒的に多く、海外勢の保有が少ないこと。これと無関係ではないが、イギリスが経常赤字だったのに対し、日本が経常黒字であること。これにより債券安を起点とする円安の進行は緩和する可能性が高い。
ただ、経常黒字も政府が大幅赤字、民間がそれを上回る大幅黒字である結果。日本の企業・家計・投資家の信認を失えば危うい。支持率の低下とともにとくに円安が大きく進み、政権を揺るがすリスクも十分に考えられる。
そうしたリスクシナリオに、目先は多少の助け舟もみられる。ドル高円安の急伸は、高市政権の圧力による日銀の利上げ見送り観測と、FRB内における意見対立による利下げ見送り観測の高まりも一定程度寄与している。先週はそこに変化もみられた。
日銀の利上げについては政権から渋々ながらも容認とのニュアンスが透ける。日銀の政策委員からは早期利上げを示唆する意見も散見された。
一方、米国では雇用関連指標に悪化がみられ、FRB高官のなかでも重要視されるNY連銀総裁が早期利下げに前向きな発言をしたことから、12月利下げ確率は3割程度から7割程度まで急回復した。こうした日米金融政策のリスクバイアスの変化は、一定程度、ドル高円安に歯止めをかけている。
実際に12月会合でFRBが利下げ、日銀が利上げ、となればひとまず歯止めがかかる可能性もある。
また時期的な問題も円には短期的に援軍となる可能性もある。今週は木曜日が感謝祭で米国市場は休場、金曜日はブラックフライデーで半日取引。実質的に週末はロングウィークエンドとなる。その結果、これまでのポジションの手仕舞いが誘発される可能性が高い。
円を投機的に売ってきたなら、手仕舞いで円の買戻しが生じ、円高に振れるリスクもある。やや長い目でみれば、クリスマス休暇に向けての休暇シーズン入りとなり、11月末にヘッジファンド決算、12月末には投資家の年次決算も控えることから利益確定の動きが強まりやすい時期だ。これが円にとってフォローとなる可能性もある。
ただ長期的にみて円先安観が緩和しなければ円安一服は一時的にとどまる。高市政権が政策修正するのか、あるいは市場との対話を重視して発信を変更するのか。政治的にはそうした変更は難しそうにみえる。
今後も政治・政策が円にとって最大の不安材料。円安が投機的であれば、一本調子の円安も続かないとみられる。しかし、円先安観、円の信認低下を転換させる材料がなければじりじりと円安が進むリスクは否めない。そうしてみると、高市政権の支持率低下は、円安に歯止めをかける一つの材料かもしれない。
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