高市トレード~円安の背景と賞味期限、リスクの本質
- MRA外国為替レポート
2025年10月13日号
◆先週の市場総括
先週は4日土曜日の自民党総裁選で高市新総裁が決定したことを受け、月曜日から株式および+為替市場が大きく変動した。
かねてより高市氏が安倍元首相と親しく積極財政・金融緩和維持を提唱。アベノミクスの後継者とみなされてきたことから市場はリフレ政策を期待。日銀の利上げが遅延するとの見方が強まった。
アベノミクスの連想で株価は大幅高、円は急落。ドル円相場は月曜日の寄り付きから149円50銭に急騰して始まるとそのまま150円台に乗せ、火曜日には152円、水曜日に153円へ。その後は上昇一服し152円~153円近辺で横ばい推移。
木曜日の夜に高市新総裁が、利上げは日銀が決めること、行き過ぎた円安を誘導するつもりはない、財政健全化が必要ないといったことは一度もない、と述べたことも円安に歯止め。
さらに週末には公明党が連立を離脱し高市政権の成立に暗雲、さらに米国ではトランプ大統領が中国に高率関税を課すと述べ株価が大幅安。リスク回避のなか円が買い戻されドル円相場は151円10銭台の安値引け。
日本株はいわゆる高市トレードで急騰。木曜日には48,500円台で引け。ただ週末には政局不安から反落。さらに米国株が急落したことで先物市場では45,200円台まで急落している。
月曜日の東京市場では、4日土曜日に実施された自民党総裁選挙で高市氏が新総裁に決定したことを受け、株価急騰、長期金利上昇、円急落、となった。日経平均は過去4番目の上げ幅となり急騰。引けは前週末比+2,175円高の47,944円。
財政拡張・金融緩和を標榜しアベノミクスを踏襲するリフレ政策への期待が株価を押し上げ。高値警戒感から弱気に傾いていた筋が締め上げられ買戻しに動いたことも要因。個別には防衛関連、AI関連、などの上昇が目立った。
日本国債は長期債中心に売られ金利は上昇。ただ上昇幅は比較的穏やかだった。10年債は1.692%。
為替市場は早朝取引開始から円安に跳ねた。ドル円相場は149円50銭で始まり149円ちょうど近辺に下落したがすぐに反発して夕刻にかけて上昇基調。150円40銭に達した。その後欧州市場では150円台前半で上下し米国市場では一時149円80銭に下落。ただ引けにかけては堅調に推移し150円30銭~40銭で取引を終えた。
ユーロ円相場は175円30銭にはねて始まり174円80銭~175円ちょうどでもみ合いのあと反発。夕刻は176円20銭に上昇した。欧州市場に入ると174円90銭に反落。その後は下げ止まり175円20銭~60銭でもみ合ったあと、米国市場終盤にかけては堅調。引けは176円ちょうど近辺。
ユーロドル相場は1.1730で始まり上値重く横ばい小動き。夕刻は1.1690~1.1710。欧州市場では1.1650~80でもみ合いのあと米国市場引けにかけては持ち直し1.1720近辺で引け。
米国株はまちまち。NYダウは6営業日ぶりに反落したが、S&P500は7営業日続伸、ナスダックは史上最高値を更新した。景気敏感株、消費関連株の一角が利益確定売りで下落。与野党の予算協議がなお難航していることは懸念材料。
一方、個別には半導体製造企業AMD社の株式をオープンAI社が大量購入したことで株価が大幅高。ハイテク株が堅調。NYダウは前日比▲63ドル安の46,694ドル、ナスダックは+161ドル高の22,941ドル。米長期金利は小幅上昇。10年債は4.157%、2年債は3.594%。
火曜日の東京市場では日経平均は大幅続伸後に反落して結局はわずかな上昇にとどまった。米ハイテク株高、円安が支えとなり朝方は+580円ほど上昇し48,500円台に達した。しかし過熱感も根強く後場は売りに押されてほぼ全値戻し。引けは+6円高の47,950円。
為替市場ではさらにドル高円安が進んだ。ドル円相場は150円30銭で始まり60銭に上昇したあと30銭~60銭で推移。午前中から午後にかけてはドル主導で堅調。夕刻から欧米市場にかけては一本調子に円安が進み米国市場終盤には152円ちょうどに達して引けは151円90銭。
ユーロ円相場は176円ちょうどで始まり30銭台に上昇したがユーロ安ドル高に押されて夕刻から欧州市場では175円80銭~176円ちょうど。米国市場では円全面安となり引けは177円ちょうど近辺。
ユーロドル相場は1.1710で始まり夕刻までは軟調。1.1660へ下落。その後は1.16台後半でもみ合い横ばい引けは1.1660。
米国株は主要3指数がそろって下落。短期的な過熱感からハイテク株に利益確定売りが嵩み下げを主導した。政府部門一部閉鎖、一時帰休者に給与保障をしない方針も報じられ懸念材料となった。NYダウは▲91ドル安の46,602ドル、ナスダックは▲153ドル安の22,788ドル。
米長期金利は小幅低下。10年債は4.128%、2年債は3.567%。
公表されたNY連銀調査の期待インフレ率(9月)は1年が3.38%と前月3.2%から上昇。3年、5年もどうようにやや上昇した。
水曜日の東京市場では日経平均が反落。前日の米ハイテク株安が重石。最高値圏で推移していたことから利益確定売りが入りやすかった。
半導体関連株中心に調整。一方、円安は支え。半導体関連から物色が他の業種へと広がる動きも。48,000円台で推移する時間も相応に長かった。引けは前日比▲215円安の47,734円。
日本国債10年債利回りの上昇は続きこの日は1.695%。為替市場ではさらに円安が進行。いわゆる高市トレードは止まらず。
ドル円相場は151円80銭~90銭で始まり昼前には152円60銭へ上昇し、その後は30銭~50銭で推移。欧州市場に入ると一段高。153円ちょうど近辺へ上昇した。その後は152円40銭に反落し、その後は引けにかけて152円台後半で大きく上下し152円60銭で取引を終えた。
ユーロ円相場も概ね同様の値動き。177円ちょうどで始まり40銭台に上昇。その後177円ちょうど近辺に押し戻され夕刻までもみ合い。欧州市場に入ると177円90銭台へ上昇し史上最高値を更新。米国市場では177円台で大きく上下して引けは177円50銭。
ユーロドル相場は上値が重かった。1.1660で始まり夕刻にかけてじり安。欧州市場では1.1610~40で推移。米国市場では1.16ちょうど近辺にじり安となり引けは1.1630。
米国株はハイテク株が堅調。ナスダックが史上最高値を更新。エヌビディアのCEOが、半導体需要が大幅に増加している、と述べたことを好感。半導体関連がけん引。
一方、政府機関閉鎖が長引き消費関連には売り。NYダウは前日比▲1ドル安の46,601ドル、ナスダックは+255ドル高の23,043ドル。
米長期金利はまちまち小動き。10年債はやや低下して4.124%、2年債は上昇して3.584%。公表されたFOMC議事要旨では、大半の参加者が年内にさらなる利下げを支持したものの、インフレ懸念が根強いことも示した。
木曜日の東京市場では日経平均が大幅反発。初の48,000円台で引けた。米ハイテク株高を受けて値がさ半導体関連株が上昇をけん引。加えてスイスのロボットメーカーの買収報道でソフトバンクが大幅高となり1銘柄で指数を500円近く押し上げた。円安も後押しし一段高。引けは前日比+845円高の48,580円。
ドル円相場は底固く推移。152円60銭で始まり50銭~70銭でもみ合いのあと40銭~60銭に軟化したが東証引け後に153円10銭へ上昇。その後は152円90銭~153円20銭で上下。
欧州市場では152円50銭に下落したが米国市場朝方は80銭に持ち直し。日本時間10時過ぎのテレビ番組で高市総裁が、財政健全化が必要でないと言ったことはない、利上げについては発言すべきではない、行き過ぎた誘発するつもりはない、と述べた。
これを受けて一時152円10銭台へ下落。ただすぐに持ち直し152円90銭~153円20銭でもみ合い引けは153円ちょうど近辺。円安一服のあと米国時間ではドルが堅調となった。
ユーロドル相場は東京市場では1.1630で始まり1.16台前半で緩やかに上下。欧州市場から米国市場にかけて軟調となり1.1540~60で推移して引けた。ドルインデックスは月曜日から連日上昇し引けは99.40。
ユーロ円相場は177円50銭で始まり底固く夕刻には90銭近辺は上昇。欧州市場に入ると177円40銭近辺へ下落してもみ合い高市発言で176円80銭へ続落。その後は177円40銭へ反発したが上値重く176円台後半で上下して引けは177円ちょうど。
米国株は下落。NYダウは4営業日続落。主力株に利益確定売りが嵩んだ。中国のレアアース輸出規制で国内投資が促進されるとの思惑で関連株が上昇した。利下げ期待は引き続き下支え。NYダウは前日比▲243ドル安の46,358ドル。ナスダックは▲18ドル安の23,024ドル。
米長期金利は小幅上昇。10年債は4.142%、2年債は3.596%。NY連銀のウィリアムズ総裁は、年内の追加利下げを支持、関税によるインフレへの影響は予想より弱い、労働市場のさらなる悪化を懸念、と述べた。
金曜日の東京市場では日経平均が反落。朝方から売り優勢。週初から大幅に上昇し過熱感が強いなか週末で利益確定売りが嵩んだ。自公連立への不安視、高市トレードの逆流懸念も強まった。防衛関連に利益確定売りが目立った。引けは▲491円安の48,088円。
引け後に公明党の連立政権離脱が確定し日経平均先物が大幅安。下げ幅は1,000円に達した。
為替市場では円買戻しが優勢。ドル円相場は153円ちょうどで始まり朝方から軟調。午後には152円60銭台へ下落。その後は152円台後半で上下動。米国市場朝方は152円50銭近辺。
その後トランプ大統領が中国のレアアース輸出規制に怒りをあらわにし、対中関税を100%引き上げ、予定されていた米中首脳会談の延期の可能性をも表明。米中関係悪化懸念、株価大幅安、の流れでドル安円高がさらに進んだ。
151円50銭に下落し、一時152円台に戻したものの引けにかけて急落して151円10銭台で取引を終えた。
ユーロドル相場は東京市場から欧州市場にかけて小動き。1.1560で始まりもみ合い横ばい、欧州市場では1.15台後半で上下。その後米国市場では1.1630へユーロ高ドル安。一時1.16ちょうどへ下落したが引けにかけてドル安が強まり1.1630近辺で取引を終えた。
ユーロ円相場は軟調。177円ちょうどで始まり午後には176円60銭台。その後欧州市場では176円30銭台から177円ちょうどで大きく上下して米国市場朝方は176円50銭近辺。その後はさらに下落して176円ちょうどから引けは175円70銭まで下落して取引を終えた。
米国株は大幅安。対中関税引き上げや米中関係の悪化、政府機関の閉鎖による職員の解雇が始まったこと、など嫌気される材料が目白押し。NYダウは▲878ドル安の45,479ドル。ナスダックは▲820ドル安の22,204ドル。VIX指数は21.66ポイントへ上昇。
日経平均先物は東証引け値から▲2,440円の大幅下落。米長期金利はリスク回避から低下。10年債は4.037%、2年債は3.527%。
◆今週の3つの注目ポイント
1. 日本の政治情勢
公明党が連立政権を離脱したことを受けて政局が流動化。週末にかけていわゆる高市トレード、株高円安が逆転する動きがみられた。政権交代の可能性も高まっているが、自民党の連立構想がどのように展開するか。
高市政権の成否が市場を大きく左右しよう。政治が材料となれば不透明感が増し、荒れ相場が当面続くとみられる。円相場には上下双方のリスクが高まった状態が続く。
2. 米国の予算協議、あらたな関税、米中対立
米国でも政治・外交が材料に。なお予算協議が難航し政府機関の閉鎖が長期化。政府職員の一時帰休のみならず解雇が始まった。市場心理にはじわじわと重石になっているが、協議の進展があるか。
またトランプ大統領は先週、中国のレアアース輸出規制に対して反発し、対中関税をすべての輸入品に対して11月1日から100%上乗せすると述べた。
米中対立の激化は、まず市場心理を悪化させ、追って企業心理も悪化する可能性が高い。インフレ圧力が高まるリスクがあるが消費者心理が悪化して景気に悪影響をもたらす可能性が高い。その進展には留意が必要だ。
3. 米国の経済指標、ベージュブック、当局者発言
米国の経済指標は政府機関閉鎖の影響で延期されるものが散見される。今週は物価指標が注目されるがすでにCPIは24日に発表延期の予定となった。
景気の現状把握は民間部門の指標に頼らざるを得なくなった。また定性的な景気物価判断の重要さが増す。
15日水曜日に発表されるベージュブック(米地区連銀経済報告)が政策判断に与える影響は大きいとみられ注目される。また足元の状況を当局者がどう判断しているか。
火曜日にパウエル議長が講演。また地区連銀総裁や連銀理事の発言も多く注目される。
水曜日 CPI(消費者物価指数、9月、前年同月比、予想+3.1%、前月+2.9%、コア、予想+3.1%、前月と変わらず、発表は24日に延期予定) NY連銀製造業景気指数(10月、予想0.0、前月8.7)
木曜日 PPI(生産者物価指数、9月、前年同月比、予想+2.7%、前月+2.6%) 小売売上高(9月、前月比、予想+0.4%、前月+0.6%、除く自動車、予想+0.3%、前月+0.7%) 週次の失業保険申請件数 フィラデルフィア連銀製造業景気指数(10月、予想9.0、前月23.2)
金曜日 住宅着工件数(9月、季節調整済み年率換算、予想1,310千戸、前月1,307千戸) 輸入物価指数(9月、前月比、予想+0.1%、前月+0.3%) 鉱工業生産(9月、前月比、予想0.0、前月+0.1%)
ほか、米国では企業決算(7ー9月期)の発表が佳境に入る。13日から18日までIMF・世銀総会が開催され、合わせてG20財務相中央銀行総裁会議も開催される。金融当局者の発言が多い。
◆今週のMRA's Eye
高市トレード~円安の背景と賞味期限、リスクの本質
先週はいわゆる高市トレードで急速な日本株高・円安が進行した。その背景や要因をあらためて整理し、その持続力やリスクを整理しておくことは重要だ。
その前に、まず政治が材料となった場合は各市場が荒れ相場となる、ボラティリティが高まることを想定しておく必要がある。値動きの方向はランダムで株も円相場も激しく上下するリスクが高い。まさしく政治の世界は一寸先が闇のためだ。
自民党総裁選で高市総裁が誕生したことは、とくに海外勢にとって想定外、リスクシナリオだったとみられる。戦略の修正を急速に行う必要に迫られたことが大きい。その方向は、これまでの高市氏の発言、安倍派、とくに元安倍首相と近かったことから、アベノミクスの再来と受け止められた。
様々な情報や単に高市氏のこれまでの発言や報道のフロントラインに飛びつき、日本のマクロ政策が財政拡張・金融緩和に舵切りされるとの見方に転換を迫られたとみられる。市場参加者、とくに海外勢は、急速に相場シナリオ修正、リスク回避をせざるを得なかっただろう。
先週市場で生じたことは、急速なポジション調整、あるいは様々な報道のフロントラインや値動きに乗じたトレンドフォローだったとみられる。
日本株はリフレ政策への期待から急騰。高市総裁が重視する国内成長産業への投資、防衛関連、AI関連、エネルギー関連、などの銘柄が上昇をけん引した。海外勢は日本株に強気ではあったが、さらに日本株を積み増す必要に迫られただろう。
日本株がグローバル株式市場のなかで大幅にアウトパフォームするなか、投資比率がアンダーウェートになっていれば致命傷となる。さらにオーバーウェートとしているほうが社内や投資家への説明がしやすい。
総裁選前には過熱感や高値警戒感で弱気に傾き、先物を売り越し、ショートとなっていた市場参加者もいたはずだ。こうした弱気筋・ショートが一気に締め上げられた、ショートスクイズとなり、あらたな買い手も巻き込んで急騰したとみられる。
こうした株式市場の動きは円相場にも波及したとみられる。総裁選直前までは利上げ前倒し観測が浮上し10月会合での利上げ実施との見方も台頭していた。
それが急転直下、リフレ政策、アベノミクスへの回帰、金融緩和維持姿勢で日銀の利上げが遅延するとの見方に修正せざるを得なくなった。これにより円買いの手仕舞い、円売りを余儀なくされたとみられる。
さらに、日本株急騰が円売りに拍車をかけた。日銀が超金融緩和政策をとって以降、海外投資家は日本株買いをしながら為替のリスクをとらず株式保有金額と同額の円売りヘッジをすることが大半となった。
ヘッジをしなければ日本株買いは円買いとなり円高要因。しかしヘッジつきなら中立となる。
さらに株価が上昇し保有日本株の時価総額が増加した場合、円売りヘッジの金額を同額増やす必要がある。
総裁選以前に日本株買いが活発化して保有金額が膨らんでいたところで、株価急騰・時価総額急拡大となり、ヘッジの円売りが急増。株高に平行して円安が進んだ大きな要因となったとみられる。
こうした動きも円買いポジションの締め上げに寄与しただろう。
こうしたことから、円安の初期段階は一服したとみられる。円高を見込んだポジションはひとまず一掃されたはずだ。
つぎに株価動向がポイントとなるが、こちらも急騰が一服したとみればヘッジの円売りがさらに急増し円安をけん引する可能性は小さい。逆に株価が調整局面となれば、保有株式時価総額が減少するため、ヘッジの円売りを圧縮する必要が生じる。株価調整が円買い戻しを誘発することになる。
国内では公明党の連立政権離脱で高市政権の誕生が危ぶまれている。リフレ政策への期待で飛びついた投資家には冷や水が浴びせられた。
さらにトランプ大統領があらたに対中関税を大幅に引き上げる意向を示し米国株が急落。すでに日経平均先物は金曜日の東証引けから3,000円近く急落しており、連休明けの東京市場は大荒れとなりそうだ。
月曜日は休場だが、為替市場で円相場はひと足先に大きく変動しそうだ。株価急落で円高となるか、あるいは逆に政局流動化、政権交代への不安から円売りが再燃するか。ボラティリティが高まるのは確実として、方向は上下双方ともにありうる。
市場の反応から一歩離れて、高市氏の政策スタンスとその影響をもう少し掘り下げてみておく必要もある。
総裁就任で、アベノミクス2.0、といわれるが、様々な発言をみると、やはりアベノミクスとの違いがありそうだ。巷間で取り沙汰されている、積極財政・金融緩和、からやや距離を感じる。
そもそも、足元で物価高が国民の大問題となり政治の喫緊の課題となるなか、リフレ政策をとることはありえない。
高市氏も、財政健全化が必要ないとはひと言も言ったことはない、円安に誘導することもない、金融政策の手段は日銀に任せている、と述べた。
こうしたことを総合してアベノミクスとの相違点を特徴づけるなら、マクロ政策かミクロ政策か、の違いではないか。
アベノミクスはデフレ下の積極財政・金融緩和というマクロ政策。「サナエノミクス」はインフレ下でミクロの成長戦略重視ということになろうか。
アベノミクスが置き去りにした成長戦略のやり直し、補完、そして完成ということにもなろうか。それが上手くいくという前提であれば、株価はゆるりと上昇、日本経済の見直し、金融は正常化、円は緩やかに復権、ということになろう。
ただ足元ではその高市政権の誕生が怪しくなっている。
政権交代となり、成長戦略がないがしろになり、放漫財政に傾くようなら、なお円が長期的に下落するリスクもある。アップフロントの市場の反応が一巡したあと、政権交代ならあらたな短期的荒れ相場に。その後は時間をかけて長期戦略も見極める局面となりそうだ。
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